文芸のジャンルとはよくいう言葉ですが、明確な定義などあるはずがありません。特に短詩文芸においてはそのあいまいなところが魅力ともいえるでしょう。字数や書き方にも原則こそあれ、一刀両断的に定義することはむしろ文芸からは遠い考え方といえます。わずかの純粋さと俗の矛盾のなかで作句の日々です。(Y)
ここに九州で発行されているジャンルをこえた2つの文芸誌を紹介します。
「連衆」(れんじゅう) 編集・発行人 谷口 慎也(大牟田市) 年4回発行
もう30年以上前から発行されているのですが、俳句と川柳が一緒に載せられています。俳句が主ですが俳句誌ではなく、表紙には〈短詩型文学誌〉という表記があります。5人の川柳人の名前が見えます。
ユーフラテス川の呼吸で起き上がる 笹田かなえ
影は影である 名前はまだない 神田カナン
階段の途中でダチョウ倶楽部かな 楢崎進弘
踊らばや乳房を薔薇と呼び替えて 情野千里
鮟鱇鍋ひっくり返す夢ばかり わ いちろう
「We」(うぃ。) 共同編集発行人 加藤 知子 西田 和平(熊本市) 年2回発行
これは俳句短歌誌とうたってありますが川柳も載っています。しかも俳句川柳の区別なく同列に配置されています。たぶん2人が川柳人でしょう。
(適材適所)ビル・マーレイは壁になる いなだ豆乃助
薔薇園の薔薇になったりせぬように 〃
父だろう余分に貼ってある切手 しまもと莱浮
定位置に挟まりだした干しぶどう 〃
※ 編集発行人の加藤知子さんに『We』編集の考え方をおたずねしたところ次のようなお返事をいただきました。
「『We』は、年2回なので句会報みたいなものというより読み物として面白いものを目指しています。
俳句として提出されたものは俳句
川柳として提出されたものは川柳
短歌として提出されたものは短歌
それぞれのボ-ダーにある作品であれ、だれが何と言おうと作者がそういえばそうなのです。そして、短詩としては線引きをする必要はないのかもしれません。ただそこに作品がありそれを味わうのみ」