熊本県川柳研究協議会(熊本川柳研)

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会員エッセイ

2021-10-03 10:00:00 | 会員エッセイ

           三十六計逃げるにしかず

中国の兵法には、策がいよいよ行き詰ったら逃げよというのがある。

猫の世界でも、「尻尾を巻いて逃げる」行為は立派な戦術行動として認められている。とかく人間の争いではこの逃げるという行為が出来ないばかりに、命のやりとりまでしてしまう。既に状況が変わって今までの計画では実行が困難なのに、面子にこだわり今まで投下した資金や努力が無駄になるといいつのって撤退しない。所謂サンクコストの呪縛というやつである。

撤退(逃げ方)も計画(考慮)の内に入れておかないと、小出しに戦力を投入し続けた挙句取返しがつかなった例は枚挙にいとまがない。「玉砕」とか「死守」とかいう文言は、古い話ではない。

日頃の生活においても、我慢の限界を設定しておいて、逃出す手筈や助けを求める算段を時々は考えておく必要がある。泣くという行為もある種の逃げの行動だが、しばしば生きるための安全弁として機能する。子供の「甘え泣き、抗議泣き、悔し泣き」等から、大人では「同情・怒り・淋しさ泣き」が主流になってくるが、例外的に「嘘泣き」も追加されるからややこしい。ただ、最後に「泣いて誤魔化すな」という極め台詞は余程考えた方がよい。子供から泣くゆとりを奪い、大人から人に縋るゆとりを奪ってしまう。泣くときはしっかり泣こう。

諦めて力が抜けて生返り    しろ猫

  月下の白薔薇 byしろ猫