茶語花香

人生は旅なり。
中国茶をはじめ、花のある暮らし、読書、旅などを中心に、日常の出来事を綴ります。

建長寺四ツ頭茶会

2019-10-24 20:21:09 | 展示会・イベント

『茶味的麁相』の翻訳を携わっていた頃、著者の李曙韵氏に、ぜひ一度「四ツ頭茶会」を体験した方がいいとのアドバイスを頂きました。その内容を触れた会談は翻訳本『中国茶のこころ』のインタービューにも記載されています。いつしかその言葉が頭から離れなくて、今年はタイミングよく、うらりんさんと二人で行くことができました。

現在分かった範囲の話しをさせて頂くと、四ツ頭茶会を開かれる禅寺は、京都の建仁寺、鎌倉の建長寺、鎌倉円覚寺と京都東福寺のようです。

建長寺では、鎌倉時代に南宋から渡来した禅僧大覚禅師(号蘭渓)の忌日にちなんで、毎年10月24 日に開かれます。

四茶席&点心席
(四ツ頭茶席、薄茶席二席、中国茶席)

四ツ頭茶席の受付でチケットをもらいました。私がもらった番号は19番でした。この時点で自分が頭(正客)になるなんて思ってもみなかったです。(正客一人に八人の相伴客を連れていく形なので、1番、10 番、19番、28 番の番号を引いた人が頭になる訳)。うらりんさんに、「頭に当たるとちょっと変わった事をやらなくてはならないと聞きますけど、今日はね、二人とも当たらない気がします…」なんて会話も軽々としていました。


四ツ頭茶席の指定時間までまだ時間ありましたので法堂の中国茶席にまず伺いました。

こちらには私達のお知り合いが沢山いらっしゃいまして、皆さんに挨拶できて嬉しかったです。(朝早くから本当にお疲れ様でした!)


天頂に亡き日本画巨匠小泉淳作の「雲龍図」が描かれ、その真っ下の席に運良く当たりました(小泉巨匠の描いた龍の爪は「五爪」でしたね)

特上な席に腰をかけ心も落ち着き、頂きました夜来香は棗の味わいに感じました。

この夜来香は、特別なものらしいです。今年中国広東省から単欉製茶非遺産伝承人の文国偉氏がいらして、四ツ頭茶会のために特別に届けたお茶だそうです。カトリーヌさんが積極的に私を文さんに紹介してくれました。ありがたいです。単そうのご縁、烏崬のご縁、これからも広げてほしい大先輩の思いをしっかり請負い、私もそう願いました。

中国茶席を後にし、四ツ頭茶席へ向かいました。ここで参加者全員はまず四ツ頭茶席の要領を案内するビデオを見せられます。説明に加わったお坊さんのトークが、落語家っぽくて面白かったです。隣のうらりんさんが

「うふふ、うふふ」

と受けていました。

四ツ頭茶席、思いのほか、全然緊張感なく、リラックスできそうです。ビデオ学習の後、叉手(しゃしゅ)の姿勢を取り参加者全員で方丈の間へと移動します。

四ツ頭茶席では、一切撮影は出来ません。確かに場所は方丈の間だった気がしますが、巨匠淳作氏の襖絵をまた見入ってしまいました。

しばらくしたら菓子箱にこんにゃくと建長寺の鐘をちなんだ干菓子がまず運ばれ、その右側に天目台に漆の抹茶碗が載せられています。抹茶碗に粉末のお抹茶があらかじめ入っています。

四ツ頭茶席の醍醐味は、客の私達が、左手に天目台に右手に茶碗をしっかり支え、そこに左手に急須に右手に茶筅を持つお坊さん達が潔く登場します。客の碗にまず湯を注ぎ、素早く両手を交差したまま茶筅で客の一人ひとりの茶碗にシャシャシャと茶を点てていきます。なんだかとても格好よかったです。茶菓子のこんにゃくはその場で頂き、干菓子は懐紙に包み仕舞います。お抹茶も美味しかったです。

四人の頭(正客)の一人に当たったけれど、正直難しい事もなく、座布団を遠慮するという仕草を取る以外、むしろこなすことがほかの客より少ないように思います。


四ツ頭茶席が終わった頃、ちょうど11 時を回ったところで、うらりんさんと二人で早めの点心席に入りました。

鎌倉 鉢の木というところのお弁当も美味しかったです。「けんちん」が建長寺にちなみ、本家本元でお坊さん手作りのけんちん汁がありがたく頂きました。


食後、得月楼の廊下を歩きながら、庭園を眺めて薄茶室に入りました。添釜は年によって担当する流派が変わり、今年は武者小路さんが担当します。


お菓子とお抹茶を頂いた後、ゆっくりと「秋菊在佳色」と書かれた掛け軸を鑑賞できました。その雰囲気にぴったり生けられた秋花にしばしうっとりしました。


茶道具の銘など知るはずもない私ですが、ここの蓋置がユニークで印象に残りました。十分に大茶会の雰囲気を味わう事ができました。

移動して普段僧侶達修行の道場で立ち入り禁止の少林窟でもう一席の薄茶を頂きました。

屏風絵の前に品のいい白髪女性亭主が正座していて、凛とした佇まいがとっても素敵でした。こちらの席で韓国から観光か何かでたまたまいらした青年が正客になる運びとなり、またなかなか和んだお席でした。

ここで印象に残ったお道具。

そして香合に見立てたイギリスのもの

少林窟の庭でうらりんさんとツーショット撮ろうとしたら、一人のお坊さんがやってきて、写真ダメと言われるのかと思っていたら、なんと撮ってくれました。

ありがたい。

建長寺のお坊さん、みんな明るくて、そしてみんな優しかったなあ。

なんの知識もなく、いきなり飛び込んだ四ツ頭茶会は、いっぺんに沢山の体験をさせてくれました。
薄茶席も茶道が知らない故、逆に怖いもの知らずでした。

『日々是好日』に書かれた大茶会の行列もなく、沢山の着物姿が秋空下の建長寺に色添えていました。

うらりんさん、◯◯の中、一緒に来てくれて本当にありがとう!気晴らしできた一日でした。

2019.11.1 追伸
南宋から受け継がれ、日本に現存する四ツ頭茶礼について詳しく書かれた論文を見つけましたのでどうぞご興味のある方はご一読下さい。

大先輩の俳茶居さんのブログも当日の様子が分かる内容になっていて、より深い内容を書かれています。とっても参考になると思います。