舞蛙堂本舗リターンズ!~スタジオMダンスアカデミーblog

ダンス(フラ・ベリーダンス他)と読書と旅行とカエル三昧の日々を綴る徒然日記。

パウスカート再考

2006-07-23 22:50:32 | ダンス話&スタジオM
今日は、こないだ下野新聞で作り方を紹介したことですし、パウスカートについて再考してみたいとおもいます。
本文にも「レッスンに欠かせない」と書かれているパウスカート。
そう鵜呑みにしているフラダンサーはかなり多いですね。実際、うちの教室でも愛用している人が多いです。
しかし、敢えてここでひとつパウスカートの功罪を客観的に考えているのも一興ではないかと。


まずパウスカートの長所としては、
(1) 入手(購入・製作)が簡単
(2) これだけで「らしい」雰囲気になれる
(3) 自分のステップがよく見える
(4) 腰が揺れているように見える

などが挙げられます。

第一の点は、とくに入門のときに一番重要ですね。
今やパウスカートはいろんなところで入手できますし、器用な人なら、こないだの下野新聞の記事みたいなものを見て作ることもできます。
うちに来る問い合わせでも「何を着たらよいか」で悩む方がたくさんいらっしゃるので、これは習い事の取っ掛かりとしてすごく良いとおもいます。

そして第二の点、ハワイアン柄のパウスカートさえはけば、それだけでプチコスプレになっちゃうのも魅力です。
たとえばバレエなどの練習にいちいち必要な装備を考えると、ホント簡単に練習モードに入れるわけです。足も裸足でOKですし。
何種類か持っているとイメチェンもできますしね。

第三の長所は実用面の話です。
もっともプロから見れば、生徒さんが足の見えない格好であっても腰の揺れなどで足運びが合っているか分かりますので、あくまでも自分が練習する上での利点ですね。
動いてる真っ最中だと左右が逆になってて気付かないということもままあるので、鏡で見た時に、自分のステップが周りと揃っているか一目で確かめるために便利です。

しかしですね。問題は第四です。
「腰がよく揺れる」ではなく「揺れているように見える」であることが、実はおそろしく問題なのですよ。

フラが腰の揺れる踊りであることは周知の事実ですね。
そこで当然の成り行きとして、多くの人がフラを踊るにあたって懸命に振ろうとするわけです。
そして、パウスカートをはいて腰を振った場合、スカートはとりあえず揺れてくれます。
たとえどんな振り方であってもです。

実際のフラの腰は、あくまでも自然に足運びに伴われるものです。
ステップの後からついていくように、ゆったり揺れているものなのですね。
しかしパウスカートは、この正しい揺れ方ではなくても、とりあえず揺れてくれてしまいます。

すると、スカートが揺れていることに気を良くし、ちゃんと振れていると勘違いしたまま怪しい振り方を究めた結果、自分の踊りに深刻なクセがついてしまいます。
独自調査によれば、具体的には「タイミングが早すぎる」「ガニ股」「へっぴり腰」「ウェストから振っちゃう」などが起こりやすい悲劇です。

とくに「自分はよく腰が動いてる」と勘違いして、自主トレで一生懸命振り方を作り上げてしまった時が一番悲惨です。
「まったくの初心者が踊れるようになる」ことより「経験者が怪しい癖を取る」ことの方がずっと難しいのです。
また、こうして起きた悲劇は見ている方にも辛いですが、本人にとっても将来的に腰痛や膝へのダメージの原因となるので、ほんと、気をつけてください。

もちろんね。パウスカートで練習していても、正しい腰の揺れ方をしっかり学べば、何の問題もないですよ。
でも往々にして、パウスカートというのは腰の揺れ方やガニ股か否かなどを適度にカモフラージュしてくれちゃうモノなので、パウスカートをはいた自分を客観的に見るのはなかなか難しいとおもわれます。

一番の対策は、うかつに自主トレをしないことですね。
特に「技術向上のための自主トレ」はその手の悲劇の温床となりやすいため、本当におすすめできません。
メリモのDVDあたりでうまい人の踊りを見た方がよっぽど役立ちます。

その手の悲劇は、本番用のぴったりしたドレスを着る段になって初めて露呈します。
しかし、その頃には最早治すのが難しいほど身体に染み付いていることが多いですね。
まれに、「パウスカートのみで練習してしまったがために悲劇が起こっている図」を、舞台上で見出すことがあります。
うちの生徒さんなら、舞台まで上がってしまう前にアドバイスのしようもあるんだけどねえ。


これらの悲劇に対し、私から提案できる予防策は二つ:「練習着の工夫」と「パウスカートの着方」です。

まず練習着ですが、パウスカートだけに限定せず、いろんなものを着て踊ることをおすすめします。
私の場合、パウスカート以外にワンピースもパンツルックもフラレッスンに取り入れます。
おもに踊る曲によって装いを変えます。衣装が決まっていれば、それに準じたものを選びます。
フリ(スピン)の入る曲や道具もの、カヒコの練習のときはパウスカートです。スローなどフェミニンな踊りを究めたいときはワンピース。パンツは意外な装いかもしれませんが、膝の向きをチェックするには意外といいです。

ちなみに、われらがスタジオMでは、練習には何を着てもオッケーという設定です。
揃って見えることが命の本番と違い、うちのレッスンは楽しむことが最優先というスタンスなので、一番のる格好で踊った方が楽しいじゃないですか。
だから、練習着一式を車に乗っけといて着た切り雀という人から、練習からすでに花まで重装備という人までいろいろです。

次にパウスカートの着方です。
たんなるコスプレの域を超えて実用面で活用するために、どうせ着るなら以下のことをアドバイスいたします:
まず、なるべく分量の多いものを選ぶこと。
自分で作る場合、新聞に書いておいたように4メートルは使いましょう(※ちなみにうちの本番用はもっと多いです。加えて裁ち方にもいろいろと工夫があるのですが、練習用ならとりあえずこの量があれば普通に作ったんで充分です)。
分量さえ多ければ、形はなるたけシンプルなのがいいですね。
あと、ゴムを入れるところの折り返しの余白部分は「パウスカートに張りを出すためのもの」なので、表に出すんじゃなくて、裏側に折り返すものです。
トップスも重要です。なるべくぴったりしてて身体の線が出るものの方が、パウスカートの効果が発揮できます。
とくにまずいのは普通のダブダブTシャツです。あれは上半身の動きが(正確には上半身が動いてないことが)全くチェックできなくなってしまうので、やめたほうがいいです。

そして、パウスカートは腰ではきましょう
あー、「パウスカートを着るためのチャントを唱えつつ頭から被る」なんてまどろっこしいことスッ飛ばしたっていいから、とにかく腰ではいてください。
でないとウェストでコキコキと腰を振るつらい踊りになってしまいます。
同じ理由から、いくら何を着て踊ってもいいといってもウェストではくボトムスはよしましょう。
最近ハワイアンプリントで作ったウェスト履きのスカートなる謎きわまりない物体が出回っておりますので、くれぐれもお気をつけください。
やっぱり、パウスカートのように腰ではくものか、さもなくばワンピースなど全くどこも区切らない服装がよろしいかとおもいます。


とまあ、ヨタ話に長らくお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
では「パウスカート再考」、レッスン着選びのささやかな一助となれば、幸いに存じます。

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