舞蛙堂本舗リターンズ!~スタジオMダンスアカデミーblog

ダンス(フラ・ベリーダンス他)と読書と旅行とカエル三昧の日々を綴る徒然日記。

関口和之・ウクレレピクニックinハワイ 虹の唄が結ぶアロハのこころ

2014-09-11 04:47:00 | ダンス話&スタジオM
先ほど、遅まきながら録画でBSジャパンの『関口和之・ウクレレピクニックinハワイ 虹の唄が結ぶアロハのこころ』という番組を観ました
いやはや、近年まれに見る良質のハワイ&フラ番組でございました

番組案内は今でもこちらの番組公式サイトでご覧いただけますので、未見の方は是非どうぞ


ナビゲーターはサザンオールスターズの関口和之さん。最近はイベント「ウクレレピクニック」主宰で有名な方です。
っていうか関口さん、実はもう18年近くウクレレ教室をなさっているんですってね。


番組は関口さんがハワイを訪れ、まずオアフ島のダウンタウンにあるウクレレ工房「カマカ」の門を叩く所から始まります。
カマカはハワイで最も名高い老舗ウクレレメーカーです。母マミちゃんはハワイでのド貧乏留学生時代、身近な人から一流ミュージシャンまでハワイの人達が揃いも揃ってカマカのウクレレを使っているのに気づき、ド貧乏のくせにダウンタウンの工房を訪ねてウクレレをゲットしたそうです。
その記念すべきウクレレは今もウチにありますよ。もちろんオーダーメイドなどではありませんが、それでも結構良い物のようです(ちなみに今オーダーすると出来上がるまでに2~3年かかるらしいですわよ。思わずケリーバッグかよ!とツッコんでしまいました)。

そんなマミちゃんに言わせると、カマカのお店は彼女が訪れたン十年前(ヒント:ソウルトレイン)からほとんど変わってないそうな。
さらに、三代目オーナーさんの説明によれば、ウクレレに貴重なコア・ウッドを使う所も製法も約100年前と同じだそうです。
1世紀にわたって同じものを守り続け、さらに次世代に繋げようという姿勢は大変素晴らしいですね。

工房見学の後は、オーナーさんと息子さんによる"Kane'ohe"の演奏も拝聴出来ました。
いや~、良い声ですね三代目さん。カマカのウクレレの音色の美しさはすっかりおなじみですし、カマカの創業者一族のお二人がその美しさを最大限に引き出す演奏スキルをお持ちでも全く驚きませんが、声まで素晴らしいというのは想像を超えてました。

VTRで創業者一族の皆さんが揃ってウクレレを奏でている写真や、大人が製作している横で男の子がウクレレを爪弾いている写真などもあり、音楽が普通の人々のすぐそばにあるハワイにおいても、やはり生まれながらこういう家庭環境でなければ育たないモノがあるなあと痛感した次第です。


さて、続いて「60年前からハワイの心を持っている一人の日本人女性が…」というナレーションが入り、おっと思っていたら予想通りここで早川先生の話題に繋がりました
しかし舞台はハワイアンズではなく未だハワイ。今度はどこへ行くの?と思ったら、なんとなんと、イリマフラスタジオを訪ねるという流れになりました


早川先生と佐竹先生が半世紀以上前に初めて教えを受け、その20年くらい後には母マミちゃんもお世話になったイリマフラスタジオ。
もっとも、現在の主宰者は当時のクムであったアンティ・ルイス・カレイキ(番組中では「ルイーズ」表記でしたが、私は早川先生とウチの母の呼び方に倣ってあくまでも「ルイス」とお呼びさせていただきます)のお嬢さんであるラニガール・カレイキさんですし、教室の所在地も今はワイマーナロだそうです。
マミちゃんが行っていた当時はリリハにあったそうな。ただ番組によれば、最初期は教会で教えていたとか、教室の位置もたびたび移転したとの事です。


関口さんが来訪を告げると、いきなりレイを片手にオリを詠いつつドアを開けて迎えたラニ先生。
おいおいおい、そ、それはちょっとヤラセ臭過ぎるんじゃ……(汗)
クムと言っても流石にレイを手に玄関のドアを開けて挨拶もそこそこにオリを始めるなんて事はまず無いぞ。訪問者が配達員や集金の人かもしれないし(笑)。

私の想像だと、きっと番組サイドから「いかにもフラの先生っぽく登場してください」って言われたんじゃないかなあ。
実はウチも昔、ある番組の取材でそういわれた事があったりします(笑)。
いかにもフラの先生っぽく、しかしあくまでも自然にこのシーンを撮るんだったら、まずはハワイアンらしく玄関先で普通にハグして、場面を切り替えてからオリ&レイを贈るシーンに繋げた方が良かったんじゃなかろーか…。


しかし、その後に続くシーンは私のそんな大きなお世話を空の彼方に吹き飛ばす素晴らしい内容でした。
ラニ先生は貴重なイリマフラスタジオの過去の写真を見せつつ(おお、アンティ・ルカ&ルイスのお姿も!!!)早川先生と出会った当時の事をお話ししてくださいました。
といっても、当時のラニ先生は未だ幼いと言えるお年頃です。何しろ母が留学した時点(ソウルトレイン)でもまだお子さんだったのですから。
早川先生も佐竹先生も、母が留学している間にもたびたびイリマフラスタジオにお越しになってはクムの教えを受けていらっしゃったそうですので、ラニ先生もお若かったとはいえお二人の姿は強く印象に残っていらっしゃるのでしょう。

それに、マミちゃんがいた時代といえばすでにお二人はハワイアンセンターで指導にあたっておられたわけで、指導者の立場となってもなお学び続けようとする両先生の姿勢には大いに見習うべきものがあります。

そもそもラニ先生のお話によれば、アンティ・ルカ&ルイスが日本人である早川先生にフラを教えようと決断なさったのは、そのフラを学ぼうとする真摯な姿勢に心を動かされた為のようです。
なんせ60年前の事、当時は日本では言うまでもなく、ハワイでさえフラが現在ほど多くの人に学ばれていた時代ではなかったはず(ハワイでハワイアン・ルネッサンスが起るのはもっとずっと後の事です)。
そんな時代にあって、日本人に教えようというご決断は並大抵のものではありません。
「何故日本人などに教えるのか」と他の人達から非難の目を向けられても、「彼女達は私にアロハと言っている。だから私もアロハを返すのよ」とおっしゃって、日本人を受け入れてくださったそうです。



な、な、な、何という事だ。ウチの母もその恩恵を思いっきり受けさせていただいたって事じゃないの。



当時、義務教育を終えたばかりの母は何も深い事を考えず、ただフラを学びたいという一心だけで、早川先生と佐竹先生にイリマフラスタジオをご紹介いただいたそうです。
今みたいに著名な先生方が日本でワークショップを開いてくださるような時代ではないし、まして日本人に暖簾分けしてくれるハワイのクムまで出て来る時代になるなどとは想像もつかなかったというのは分っていたけれど、それにしても当時母が素晴らしいクムに師事出来たのは、先達である両先生とアンティ・ルカ&ルイスの寛大なアロハの賜物であったとは、この番組を見るまで気づきませんでした。
実際に踊ってくださっているラニさんの映像を観て、呑気に「ラニさんの踊りやっぱイリマだわ~」などと当り前過ぎる感想を述べてウィスキー飲んでヘラヘラしている本人に代って、私が額を床に擦り付けてありがたや~ありがたや~と拝んでおきました。


ひとしきり拝んで正気に戻ると、確かに母の言うとおりラニ先生の踊りは素晴らしくイリマでした。いやまあ当り前ではあるんですけど。
もう最初のカホロとベーシックの手(当時のイリマでAバンプと呼ばれていたもの)だけで既視感が半端ないです。
「ゆっくりと動かすのよ」などといった動き方の特徴はもちろん、「これだと悪魔の手」などと悪い例をやる所もまったくおんなじ(笑)

イリマの踊り方を文章にするならば、「ハンドモーションはしっかり付くし、ステップに伴ってヒップもゆったりとスウェイするけれど、あくまでも軸はしっかりしていて姿勢も崩さない」という感じでしょうか。
あとラニ先生もおっしゃっていたとおり、動きは常にゆっくりと優雅に。アップテンポの曲であっても忙しそうには踊りません。
日本ではもちろん、ハワイでもイリマ・スタイルそのものの踊りを観られる機会は極めて少ないので、本当に嬉しい映像でした。


うわああ。イリマフラスタジオ訪問シーンの描写に力を入れ過ぎて、番組の序盤だけで4,000字近く行ってしまった
まあ、その後の展開は特に私が個人的に語る内容ではないのでザックリとご紹介します(笑)。


関口さんは早川先生が最高顧問を務めておられるハワイアンズの学院50周年記念東京公演をご覧になり、その舞台でダンシングチームの方々が踊った"Another Rainbow"の歌手であるBaba B.さんを訪ねました。
Babaさんはご自身の苦しい時期とこの曲との出合いが重なって、大きな励ましとなったエピソードなどをお話しくださり、この曲のテーマである東日本大震災で被災した方々へ馳せる思いも語っていらっしゃいました。


そしてBabaさんが日本へ。
実際に被災地を訪ねたあと、ハワイアンズのショーやレッスン風景をご覧になり、最後に早川先生や関口さんも見守る中、ビーチシアター上でダンシングチームの皆さんと"Another Rainbow"の生演奏で共演されました。


しかしAnother Rainbow、いい曲だなあ。
曲調がすごくハワイっぽいフィーリングなんですよね。この曲に合わせて踊ったら、ハワイらしい踊り方になれるはず。
内容的にも、特定の場所や出来事を歌うに留まらず、あらゆる壁に直面した人を元気づける内容になっています。だからこそBabaさんの当時の状況とも重なるものがあったのでしょうね。


2時間近い長丁場の番組でしたが、途中一切の中弛みを感じさせず、最後まで夢中になって観てしまいました。
こういう良質なハワイ番組をもっと作ってくれたら嬉しいなあ。
欲を言えば、ハワイのフラを踊るハワイのダンサーをもっと観られたらさらによかったなあ。ラニ先生が踊るシーンをもっと長くしてくれるとか。ウクレレピクニックのシーンにも、チラッと「おお、あの方は!」というフラが写っていたので、チラリズムに留まらずもっと見せてくれたらよかったのに。


というのも、番組中で早川先生がイリマフラスタジオの門を叩いた当時を振り返って、こうおっしゃったのです。
「元々ダンサーであった私がしばらくハワイで過ごした後、帰国前に1曲くらいハワイの踊りを学んでおこうという事で習いに行きました。ところが私達の踊りをご覧になったクムからお叱りを受けたのです。『私達はそんな風に踊らない。それはフラじゃない』と」


そうです。
たとえ他の踊りのプロであろうとも、フラはたった1曲覚えたくらいでどうにかなる踊りではないのです。



このエピソードの何より素晴らしい所は、そうお叱りを受けた早川先生が、それっきりフラと縁を切るのではなく、逆に本物を学ぶべく奮起して本格的にクムの個人指導を受けるに至った、という所です。

しかしながら、一般の方にはフラがそれほどまでに奥深いものである事はほとんど知られていません。
したがって、このエピソードを聞いても、「ハワイのフラ」と「そうでないフラ」の違いだけでなく、クムのお叱りの言葉の重みや、それによってさらに向上心を高めた早川先生の偉大さについても、実際の数%も伝わらない事が、私には歯痒くてたまらないのです。


本物のハワイのフラを一度や二度観たくらいでは、その違いは伝わらないかもしれない。
下手をするとダンサーの容姿とか年齢みたいなくだらない瑣末事にしか目がいかない視聴者がほとんどなのかもしれない。
それでも、こういうテーマの時には視聴者がハワイのフラを目にする機会を出来るだけ多く作って欲しいのです。
何度も観ているうちに、少しずつ「ハワイのフラ」「本物のフラ」の姿が伝わるはずですから。






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