二人が、意識を取り戻したのは、別々の病院だった。
交通機動隊と、事故処理班が一車線を規制して事故処理を行った。昼になるくらいの時間帯だったこともあり、後続の車を巻き込むことはなかった。ただ、ダークグリーンのジャガーは炎上し、生存者はいなかった。
現場検証から、宣伝カーとジャガーの二台だけが関わる事故でいないことが予測された。身元の確認にあたっては、小西さんから送られた書類が運転席に折り重なるように転がっていたヒカルとマサルの上にのっていたこと、そこから、小西さんに一報が行き、マサルの免許証で、白金に電話が入った。マサルの父親の秘書に直ぐに連絡が入り、県警を通じて、報道に対する規制が掛けられた。事故はダークグリーンのジャガーによる一方的な過失とされ、死者二名の事故にもかかわらず新聞報道されることはなかった。そのころ、東名高速の死亡事故はそんなに珍しいことではなかったからか。
報われないのはジャガーの二人だった。身元を確認するものが全て燃えてしまい、ようやく判別することができたナンバープレートから、所有者の常任に連絡が入ったのだが、あまり利用しない車で、確認したところ、駐車場にないことから、盗難されたと思われると返事が返ってきた。身元確認はしばらく行われたが、結局、無縁仏として処理されることになった。
救急病院から二台の搬送車両が用意され、一台は東京に、もう一台は名古屋に向かった。
マサルはかつて、世話になったことのある白金の大学付属病医院に、ヒカルは市立大病医院に送られた。二人の移動が可能だったのは、幸い、致命傷はなく、打撲と一部裂傷だけで、心拍数、呼吸、血圧ともに正常値だったからだ。ただ、横転した際に、頭を打っている可能性があり、その検査ができる病院が選ばれ、搬送された。
それついて、意識が戻らないことを懸念した若い医師が搬送を止めるように提案したが聞き入れられなかった。確かに、その時の救急病院では脳の検査はできなかったのだが。
人件費も、車両代も、かなりの金額がかかる搬送だったが、小西さんとマサルの父親側の利害が一致し、外部に漏れることなく、それらは遂行された。
突然の出来事、つまり、死を意識しなければならないほどの危険に遭遇した際、人間はその精神を保護するため、あるいは、その恐怖から逃れるために、意識を一時的に閉鎖する、ということが行われたのだろうか。
意識が戻るまでに、マサルが二日、ヒカルが三日必要だった。
交通機動隊と、事故処理班が一車線を規制して事故処理を行った。昼になるくらいの時間帯だったこともあり、後続の車を巻き込むことはなかった。ただ、ダークグリーンのジャガーは炎上し、生存者はいなかった。
現場検証から、宣伝カーとジャガーの二台だけが関わる事故でいないことが予測された。身元の確認にあたっては、小西さんから送られた書類が運転席に折り重なるように転がっていたヒカルとマサルの上にのっていたこと、そこから、小西さんに一報が行き、マサルの免許証で、白金に電話が入った。マサルの父親の秘書に直ぐに連絡が入り、県警を通じて、報道に対する規制が掛けられた。事故はダークグリーンのジャガーによる一方的な過失とされ、死者二名の事故にもかかわらず新聞報道されることはなかった。そのころ、東名高速の死亡事故はそんなに珍しいことではなかったからか。
報われないのはジャガーの二人だった。身元を確認するものが全て燃えてしまい、ようやく判別することができたナンバープレートから、所有者の常任に連絡が入ったのだが、あまり利用しない車で、確認したところ、駐車場にないことから、盗難されたと思われると返事が返ってきた。身元確認はしばらく行われたが、結局、無縁仏として処理されることになった。
救急病院から二台の搬送車両が用意され、一台は東京に、もう一台は名古屋に向かった。
マサルはかつて、世話になったことのある白金の大学付属病医院に、ヒカルは市立大病医院に送られた。二人の移動が可能だったのは、幸い、致命傷はなく、打撲と一部裂傷だけで、心拍数、呼吸、血圧ともに正常値だったからだ。ただ、横転した際に、頭を打っている可能性があり、その検査ができる病院が選ばれ、搬送された。
それついて、意識が戻らないことを懸念した若い医師が搬送を止めるように提案したが聞き入れられなかった。確かに、その時の救急病院では脳の検査はできなかったのだが。
人件費も、車両代も、かなりの金額がかかる搬送だったが、小西さんとマサルの父親側の利害が一致し、外部に漏れることなく、それらは遂行された。
突然の出来事、つまり、死を意識しなければならないほどの危険に遭遇した際、人間はその精神を保護するため、あるいは、その恐怖から逃れるために、意識を一時的に閉鎖する、ということが行われたのだろうか。
意識が戻るまでに、マサルが二日、ヒカルが三日必要だった。