仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

どこでどうして、何のために5

2011年06月30日 14時50分25秒 | Weblog
ダウンビースト。本八幡の繁華街の隅にある小さなバーで先輩は待った。体つきからして、まだ、未成年とはっきりわかる女がケバイ顔で入ってきた。先輩の顔をじっと見た
「萩尾さんに言われてきたんだけど。」
「ああ、頼むよ。あれ、後の人は。」
「まだよ。そのうち来るんじゃない。」
「そのうちって・・・」
「そこのテーブルで飲んでるから・・、どうするの。こっちがいけばいいの。」
「いや、いい感じになったら、こっちからいくよ。」
「そう。」
カウンター越しのマスターに気づくとすぐに行ってしまった。先輩は待った。
 彼は事務処理が遅れて、なかなか、署を出れなかった。約束の時間が過ぎていた。先輩から聞いた電話番号に電話をした。
「じゃ、一杯やっているかな。」
彼は急いで本八幡に向かった。
 先輩は次の日、非番にしていた。彼はそんなに遅くならないだろうと踏んでいた。代表に選ばれたお祝いをやろうと先輩に言われた。世話になった人だったので断るつもりはなかった。 本八幡は彼のテリトリーではなかった。ロータリーをぐるっと回って、もう一度、電話をした。先輩が迎えに来てくれた。そのころ。ダウンビーストの面子もそろっていた。



どこでどうして、何のために4

2011年06月20日 16時59分52秒 | Weblog
 千葉県警は、その事実を隠蔽した。
 
 警務部教養課所属の彼は競技ライフルの選手として注目されてきていた。彼を指導し、彼にライフルを教えた二歳年上の先輩は、彼が実力を上げ、自分が抜かされされるのではないかと、心配した。先輩の予想どおり、彼は全国大会の代表に選ばれた。先輩は、自分が選ばれるはずの代表に彼がなったことを恨んだ。
 先輩は作戦を実行した。風紀二係の資料を調べ、以前に売春禁止法違反で捕まった女の住所をいくつかピックアップし、相談を持ちかけた。そちらの世界へ足をいれれば、骨の髄までしゃぶりとられることなど、考えもしなかった。五人目くらいまでは先輩が警官であることから、相手にもされなかった。


どこでどうして、何のために3

2011年06月15日 15時09分40秒 | Weblog
スコープを覗いていた。汗がまつげにたまった。革の手袋をはずして、汗をぬぐった。

どうして、俺が

依頼はメールできた。銀行にはいつもの依頼料の金額よりゼロが一つ多い金額が振り込まれていた。されに面倒なことには、依頼人を特定するためのものがなかった。メールのアドレスをたどってもフリーメールだったらしく、すでに存在しなかった。無視してもよかった。
 添付された資料は最初の一ページを見ただけで対象が誰なのかわかった。彼女が・・・・

どうする

「受け」をまわしてもよかった。同業者はいくらでもいた。方法も考えた。身体が見える場所に行きたくなかった。身体が触れる方法もためらわれた。射撃場に通った。昔ほど正確には撃てなかった。
 もう一度、スコープを覗いた。





どこでどうして、何のために2

2011年06月10日 14時33分36秒 | Weblog
 生真面目なほどに彼女は「宰」の教えを尊重した。信者を取り込む際も、「命の水」による強制的なマインドコントロールを極力避けさせた。幹部全員の再教育を敢行し、個人資産の全面的な寄付を要求した。そのため、幹部の中から脱退者が出た。一時期、「流魂」はスリム化した。外部への内容漏洩を防ぐために武闘派は、脱退者の追跡、監視、時には脅しもおこなった。脱退者は誓約書を書かされ、全てを他言しないことを約束させられた。しかし、今までの蓄財を寄付するように強要することはなかった。彼女は人を理解していた。今までの「流魂」の犯罪まがいの勧誘もこの処理によって、外部に漏れることはなかった。
 
 「流魂」は、清楚で、隠微な団体へと変容していった。

 女性の信者が男性を上回った。「命の水」に頼ることなく、性的な行為は、その行為自体が崇高なものであるかように演出されていった。金欲を捨て、物欲を捨て、一瞬が永遠につながる行為がその行為だった。

「闇」を恐れ。「闇」の中での行為が真実であることを

「死」を恐れ。「死」以外に真実がないことを

 そして
 
真愛弥の許しによって、

真愛弥の愛によって

醜き自身が変容していくことを

そのマインドコントロールの基礎においた。

成果は上がった。

どこでどうして、何のために

2011年06月09日 13時23分08秒 | Weblog
捜索隊など出すわけもない。むしろその方が都合がいい。
「宰はお隠れになった。」
伝令は執行部から、各支部へ流れた。
全権の掌握と地位の確立、腐敗体制のてこ入れ、完全なピラミッド型の支持系統の確立、と同時に金の流れを明確にする独立した財務組織編制、まさに経営者と呼ぶにふさわしかった。
武闘派の独立をおさえるための女子部の再編と慰労部の設立、慰労部は自らの支配下に置いた。もちろん、すべてのトップは彼女と「宰」の娘だ。彼女ではない。
管理を強化するために、お互いを監視し、報告する「清言会」が月に一度、二人の御前で開かれた。
参加は自身が計画的に選んだ面々だった。その場に幹部がよばれ、その実態が報告されるた。とはいうものの、選ばれた面々の顔は見ることは出来ず、声も電気的に変えられていて、幹部がその人物を特定することは出来ないのだが。