その暗闇にブラックライトが灯っていた。いかにもアンダーな雰囲気が漂っていた。リハーサルが始まったのが午後六時だった。リハーサルといっても、本八幡のハウスとはぜんぜん違っていた。音響設備もヴォーカルとドラムスを拾うだけで、楽器はアンプの生音だった。「ベース」のルームの機材のほうが数段上の感じがした。バンドは三つで、持ち時間も定かではなかった。
「ジミーに声をかけてよ。そんなに気取ったところじゃないから、リハのつもりで出てくれればいいよ」
平井さんの紹介で、というと、スキンヘッドのおデブさんが出てきた。暗闇のようなその店でサングラスを掛けていた。怖そうだった。
「アー平井さんから聞いてるよー。かなり面白いことしてくれるんだって。」
ボーイソプラノだった。皆は噴出しそうになった。サングラスを外すとまん丸な輪郭に小さな目の子豚さんのような顔が出てきた。また、噴出しそうになった。マーが握手して、打ち合わせをした。
フードアンドドリンクのカウンターがあって、その横にもう一つ遮音用の厚い扉があった。そこをあけると同じように暗闇に近い空間があり、そこが会場だった。本八幡のハウスの立ち見席くらいの大きさで部屋の四隅にアンプがセットされていた。真中にマイクスタンドが並んでいた。やはり、ビーエススエイトが一番早く来たらしく、バンドらしい人影はなかった。
「楽屋はないから、着替えはトイレでね。」
ジミーさんが言った。
「機材はどうしましょか。」
「セットできるのは壁際にセットしておいていいよ。」
「アーそうだ、モニターは真中しかないから、聞こえるところでやってよ。」
「ハイ。」
「音出ししてみる。」
そういうと、入り口の扉の脇に言って、調光のつまみを回した。少し明るくなった。マーとマサルがセッティングを相談し始めた。残りの皆で機材を取りに行った。
キーボードをどうするか、二台あるギターアンプのうちの一台を使うことにした。というのもそこのミキサーではヴォーカルマイクとドラムスを拾うと空きがなかった。
「何か、あやしいね。」
ハルが嬉しそうに言った。
「ハル、何か期待してるのか。」
「そうじゃないけど。」
不思議な場所だった。京王線の幡ヶ谷の駅を降りて、商店街を抜けたあたりの路地を入ったところに入り口があった。マンションの一階に花屋があって、その脇のドアがそのスペースに通じていた。タテ看があって、汚い、ヘタウマというより汚い字で出演バンドが並んでいた。知らない人が見たら、それ自体がオブジェに見えて、けしてライブをやるような店があるとは思わなかっただろう。
駐車場は少し離れたところにあった。機材と衣装を運びながら、マサミが唸った。
「平井さんって・・・・・。」
「どうしたのよ。」
「機材が重いから、着いてから話す。」
ヒカルがマサミのキーボードを持った。
「ゴメン、別に自分の楽器を持つことなかったね。」
ヒデオは皆の衣装とマサルのエフェクターケースを持っていた。ハルがマサルのギター、ミサキがマーのスネアとスチックケース、ペダルケース。アキコは皆の荷物を持っていた。交換する形でヒカルのベースをマサミが持ったのだが、肩には掛けれるのだが、重さはキーボードと変わらなかった。
マサルとマーが走ってきた。
「ゴメン、ゴメン。」
「打ち合わせはいいの。」
「何か打ち合わせって感じじゃないんだ。」
「何よ、それ。」
「勝手にやってね、感じでさ。」
そういうと脹れっ面のマサミのベースをマサルが取り上げ、ミサキの一式をマーが引き取った。ハルが膨れた。
「ハル、持とうか。」
「いいわよ、だいじょうぶ。」
笑いながら、マサルがベースと反対の肩にギターを担いだ。手ぶらになったハルとミサキ、マサミはヒデオとアキコの荷物を手伝った。
「仁に見せたかったな。」
「今回は難しいよ。」
「そうだね。でも住所は教えたんでしょ。」
「いちようね。」
「ジミーに声をかけてよ。そんなに気取ったところじゃないから、リハのつもりで出てくれればいいよ」
平井さんの紹介で、というと、スキンヘッドのおデブさんが出てきた。暗闇のようなその店でサングラスを掛けていた。怖そうだった。
「アー平井さんから聞いてるよー。かなり面白いことしてくれるんだって。」
ボーイソプラノだった。皆は噴出しそうになった。サングラスを外すとまん丸な輪郭に小さな目の子豚さんのような顔が出てきた。また、噴出しそうになった。マーが握手して、打ち合わせをした。
フードアンドドリンクのカウンターがあって、その横にもう一つ遮音用の厚い扉があった。そこをあけると同じように暗闇に近い空間があり、そこが会場だった。本八幡のハウスの立ち見席くらいの大きさで部屋の四隅にアンプがセットされていた。真中にマイクスタンドが並んでいた。やはり、ビーエススエイトが一番早く来たらしく、バンドらしい人影はなかった。
「楽屋はないから、着替えはトイレでね。」
ジミーさんが言った。
「機材はどうしましょか。」
「セットできるのは壁際にセットしておいていいよ。」
「アーそうだ、モニターは真中しかないから、聞こえるところでやってよ。」
「ハイ。」
「音出ししてみる。」
そういうと、入り口の扉の脇に言って、調光のつまみを回した。少し明るくなった。マーとマサルがセッティングを相談し始めた。残りの皆で機材を取りに行った。
キーボードをどうするか、二台あるギターアンプのうちの一台を使うことにした。というのもそこのミキサーではヴォーカルマイクとドラムスを拾うと空きがなかった。
「何か、あやしいね。」
ハルが嬉しそうに言った。
「ハル、何か期待してるのか。」
「そうじゃないけど。」
不思議な場所だった。京王線の幡ヶ谷の駅を降りて、商店街を抜けたあたりの路地を入ったところに入り口があった。マンションの一階に花屋があって、その脇のドアがそのスペースに通じていた。タテ看があって、汚い、ヘタウマというより汚い字で出演バンドが並んでいた。知らない人が見たら、それ自体がオブジェに見えて、けしてライブをやるような店があるとは思わなかっただろう。
駐車場は少し離れたところにあった。機材と衣装を運びながら、マサミが唸った。
「平井さんって・・・・・。」
「どうしたのよ。」
「機材が重いから、着いてから話す。」
ヒカルがマサミのキーボードを持った。
「ゴメン、別に自分の楽器を持つことなかったね。」
ヒデオは皆の衣装とマサルのエフェクターケースを持っていた。ハルがマサルのギター、ミサキがマーのスネアとスチックケース、ペダルケース。アキコは皆の荷物を持っていた。交換する形でヒカルのベースをマサミが持ったのだが、肩には掛けれるのだが、重さはキーボードと変わらなかった。
マサルとマーが走ってきた。
「ゴメン、ゴメン。」
「打ち合わせはいいの。」
「何か打ち合わせって感じじゃないんだ。」
「何よ、それ。」
「勝手にやってね、感じでさ。」
そういうと脹れっ面のマサミのベースをマサルが取り上げ、ミサキの一式をマーが引き取った。ハルが膨れた。
「ハル、持とうか。」
「いいわよ、だいじょうぶ。」
笑いながら、マサルがベースと反対の肩にギターを担いだ。手ぶらになったハルとミサキ、マサミはヒデオとアキコの荷物を手伝った。
「仁に見せたかったな。」
「今回は難しいよ。」
「そうだね。でも住所は教えたんでしょ。」
「いちようね。」