ヒカルが部屋に戻ったのは夜の12時を回っていた。ヒカルはグラスに氷をいれ、ウォッカを注いだ。ヒカルの部屋は当時なら標準といえる6畳一間に簡素な台所、トイレが付いた物件だった。ただ、入り口は各部屋ごと独立していて幾分良いほうだった。が、その個別のドアが災いした。それは1時を回ったくらいだった。ノックの音がした。酔いの回り始めたヒカルでもドキッとした。その時間にヒカルを尋ねる人は、軽音の先輩くらいだ。学院に近いことから、終電を逃した先輩がごくまれにではあるが宿として乱入した。ヒカルはそんな時、不快感を隠さなかった。それを知ってか、そのころはご無沙汰だった。
「誰、」
ヒカルは怪訝そうな声で尋ねた。
「今日はありがとうございました。美咲と申します。」
女の声がした。えっ、ヒカルの頭の中で声の記憶が駆け巡った。聞いたことはあるが確かな存在としての記憶はない。ドアを開けた。女が立っていた。足の先から頭の上までジーと見回した。記憶の糸がつながった。それはマサルと学園を出るとき突然駆け寄って手かざしをした女だった。
「誰、」
ヒカルは怪訝そうな声で尋ねた。
「今日はありがとうございました。美咲と申します。」
女の声がした。えっ、ヒカルの頭の中で声の記憶が駆け巡った。聞いたことはあるが確かな存在としての記憶はない。ドアを開けた。女が立っていた。足の先から頭の上までジーと見回した。記憶の糸がつながった。それはマサルと学園を出るとき突然駆け寄って手かざしをした女だった。