仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

指紋の感性10

2012年04月27日 16時31分00秒 | Weblog
「マサル、モウパイできるのか。」
「なんですか。」
「見ないで捨ててんじゃん。」
「真似してたらなんとなくわかるんですよ。」
「すごいな。」
「だから、普通じゃないのよ。」
「確かに「ビーエス」の演奏も普通じゃないもんな。」
「メロディとか、リズムとかじゃないもの。」
「なんだろうねえ。引き込まれるって感じかな。」
「そう、なんか、うねりの中にいるみたいな。」
「スグリさんのバンドもすごいじゃないですか。みんな、踊ってて。」
「ジミーさんところに来るお客さんは、スグリフリークだからね。」
「それにポップだし、みんなサビとか、一緒に歌ってるし。」
「ジミーさんのところには清水さんあんまりこないな。」
「えー、いやなのよ。ああいうところ。」
「どういう風に売るつもりなんだろ、タイムリミットもあるし。」
「タイムリミットですか。」
「歳だよ。歳。」
「もお、それ言わないでよ。」
「お悩みなんですかあ。」
「そりゃ悩むわよ。」
「清水さんはなんて言ってんの。」
「それはともかく、ロン。」
「トコちゃん。」

指紋の感性9

2012年04月26日 17時27分17秒 | Weblog
「いつか、スグリさんとやりたいな。」
「いつでもできますよお。お隣だから。」
「何言ってんのよ。」
「えっ。」
「なんら、これ終わってからみんなで頑張る。」
「マサルはそんなんじゃないわよ。」
「そうでもないですけど。」
「男はみんなおんなじさあ。」
「いえ、そうじゃなくて、スグリさんとセッションとかしてみたいなって。」
「ふふ、志向が違うからねえ。」
「いいわよ。」
「なんか、面白そうじゃないですか。「ビーエス」の飛び入り参加とか。」
「プロ志向だからねえ。」
「もう、ジローちゃん、ウ、ル、サ、イ。」
「プロ志向って、どうしてプロになりたいんですか。」
「有名になってさあ、シンちゃんとトメさんともう一度やりたいの。」
「それだけですか。」
「お金持ちになりたい。」
「そう、金持ちになりたいねえ。」
「そうですか。」
「マサルはどうなの。」
「あっ、そのまえにロンです。」
「あちゃー。スーアンコーテンパってんのになあ。」

指紋の感性8

2012年04月25日 16時42分52秒 | Weblog
「ねえ、儲かるの。マサル。」
「また聞いてるし。」
「だってえ。」
「わかる、わかるよ。スグリは身を挺して、バンド活動を続けているもんね。」
「そう、女も捨てて。」
「捨ててないわよ。」
「間違えた。女心も捨てて。」
「どういうことですか。」
「マサル君は、スグリの毒牙に犯されてないようです。」
「へー。」
「もう、いい加減にしなさいよ。」
「おーコワ。」
「わたし、どうでもいいのよ。そんなことは。有名になりたいのよ。売れたいのよ。そのためなら、何でもやるわ。」
「おとこだねえ。」
「女よ。」
「そして、今度は俺がロンだあ。」
「何よ。なんなのよ。」

「スグリさん、仕事してるんですか。」
「てっとり早くお金が稼げる仕事をしとります。」
「この前は危なかったけどな。」
「ほんと、怖かった。ジローちゃんが来てくれなかったら、危なかった。」
「どうしたんですか。」
「清く正しく性的欲望を満たそうとするのが健康優良児ですが、中には、チョイとおかしなのもいるんですよ、これが。」
「そうなのよ。写真撮らせろってしつこくてさあ、ナイフとかチラつかせるのよ。これおかしいなって思ったら、ナイフで私の服、ズタズタにしてさあ、ナイフをこっちに向けたまま、オナニー始めるのよ。逃げようとしたらさあ、ブンブン振り回すのよ。」
「そんなことあったんですか。」
「そんときさあ、ジローちゃんが運んでくれてて。」
「ピンと来たんだなあ。」
「ジローちゃんが窓から入ってきてくれてさあ。」
「決死の救出。」
「そんなカッコいいもんじゃなかったな。」
「ナイフ持った手をカーテンで縛って、足をけっとばしたら、簡単に倒れて、ボコボコ蹴っ飛ばしたら、ニヤーって笑って、いっちゃてんだよ。」
「そうなのよお。」
「ガンって蹴ると、ニヤーって気持ちよさそうな顔して、そっちの趣味なら最初からおとなしくしろって。」
「それって、どこでそんなことになったんですか。」
「そいつのうち。」
「えー。」
「まっ、想像に任せるけど、スグリは気合が違うんだよ。」
「そうよ。ロン。」

指紋の感性7

2012年04月20日 16時58分29秒 | Weblog
「ぼくがいけなかったですか。」
「マサルのせいじゃないわよ。」
「やあ、さあ、スグリがガンバってるのは、俺ら二人は知ってるじゃんかあ。だから、清水さんに義理立てしなくても、ほかも当ってみてもいいんじゃないかって思うんだよ。」
「パーカッションの人はどうしちゃったんですか。」
「トメさんはね。」
「いなくなっちゃたんだと。」
「シンちゃんがいなくなってから、トメさんのこと、お前がバンマスやれって清水さんに言われて・・・清水さん男には厳しくて、バンマスわなあ、バンドのメンツがこの先どうやって食うかまで考えなきゃダメなんだ・・とかさあ、言うわけよ。」
「へー。」
「トメさん、もともと、プロ志向とかじゃないから・・・連絡してもでなくなって、リハも来なくなって・・・」
「えっ、じゃあ、今、誰が曲、作ってるんですか。」
「ス、グ、リ。」
「すごいですね。」
「私は、メロと歌詞を作って、ボードがさあ、清水さん好みにアレンジするのよ。」
「今、スグリさんとこのバンマスって誰なんですか。」
「ス、グ、リ。」
「だからねえ、お金かかるのよ。」
「清水さんうまいよなあ。ほかのメンバーはサポートみたいなこと言ってさあ、集客とかの負担はみんな、スグリだろ。」
「なんでそんなこと知ってんのよ。」
「付き合い長いじゃん。」
「たまに目に入っちゃたんだよ。君の記録ノートが。」
「見たの。」
「見てはいない。チラッと目に入っただけです。」
「同じじゃない。」
「すんまソン。」
「いいけどね、あんたたちに隠し事してもしょうがないし。」
「ローン。」
「もうおおおお。」

指紋の感性6

2012年04月11日 14時36分36秒 | Weblog
「この前、初めて聞いたじゃないですか。スグリさんのバンド。」
「初めてだったの。」
「すみません。ビーエスって、ライブのときしかいかないんですよ。」
「そうなのよねえ。そういうところもちがうのよねえ。」
「かっこいいいじゃん。」
「いえ、そんなんじゃないんです。「ベース」が今、諏訪じゃないですか。市川のときより夜、時間があるんですよ。」
「ねえ、ジミーさんところはどうして出るようになったの。」
「ああ、本八幡の平井さんの紹介です。」
「平井さんって、昭雄さんところ。」
「そうです。」
「うちも、本八幡出てるのよ。」
「そうなんですか。」
「でもあそこ、ノルマ厳しいでしょ。チケットも高いしさあ、お客さんもね。ジミーさんところのほうがきやすいみたい。」
「触りやすいしね。」
「なによ。」
「でも、スグリさんのとこって、本八幡のほうが似合っている感じしますけどね。」
「小屋ね。あっちのほうが好きなんだけど・・・」
「スグリもそろそろ、清水さんと切れたほうがいいじゃねえの。」
「なんでよ。」
「裕紀はデビューしたんだろ。」
「したわよ。」
「アイツ、おまえより、後からじゃねえ。清水さんと知り合ったの。」
「こんなこと言うのもなんだけど、清水さんみたいな立場の人ってさあ、自分でさあ、キープがないとだめなんだって。」
「キープって何ですか。」
「営業会議のときとかにさあ、自分にはこれだけの人材がいて、今度は誰を押したいって言うときのためにね。」
「そうなんですか。」
「なによ。わたしたちがそれだって言うの。」
「そういうわけじゃないけど。」
「ロン」
「変な話してるから、ツキが逃げちゃったじゃない。」

指紋の感性5

2012年04月06日 16時57分51秒 | Weblog
「あら、いやだ。」
「何だよ。」
「なんでもなあい。」
「あやしいなあ。」
「そんでさあ。」
「なんでしょうかねえ、ハイパイがすごかったようですよ。」
「何でわかるのよ。」
「付き合い長いだろ。」
「そうなんですか。僕の来る前は誰がやってたんですか。」
「えっ、鋭いこと聞くねえ。」
「マサルの入る前はね。やっぱり、素人さんを誘って、カモってたのよ。」
「カモですか。」
「スグリ、そんなことバラスなよ。」
「いいじゃない。マサルはカモになんないわよ。」
「確かに、感じが違うな。」
「最初、勝たせてさあ、後でガッポリいただくわけよ。」
「まあね、でも、イカサマはやらないわよ。」
「当りハイをわざと振るのさ。」
「そんなことできるんですか。」
「あんた、役も知らないのに簡単に上がるもんね。」
「なんとなく、セブンブリッジみたいだから。」
「そんでもって、クソッ手じゃないんだよ。」
「ふしぎよねえ。」
「ついてるやつはいるんだよ。」
「そうね。ついてないとお金掛かるもんね。」
「なんか、身にしみるなあ。」
「はは、株だったそうだろ。証券さんが最初は儲けさせて、損したら、ドロンだ。」
「あんたが、何で証券さんのこと知ってんのよ。」
「ダチがさあ、証券の営業でさあ、人が変わったで言うか、すごいんだよ。」
「へー、そんな友達いるんだ。」
「俺、高校のときは、優秀だったんだぜ。」
「信じられん。」
「まっ、いいや、世の中にはついている奴がいるんだよ。」
「そのツキがきたみたい。」
「ええ。」
「ロン、コクシムソウ。ジローちゃんごめんね。」
「警戒してたのに。」

「ビーエスはいいわよね。」
「何がですか。」
「アバンギャルドっていうか。前衛的っていうか。」
「好き勝手にやっているっていうか。」
「そんな風に聞こえるんですか。」
「そうじゃないのよ。」
「ふふ。」
「ジローちゃん。」
「するどいねえ、」
「付き合い長いでしょ。」
「そうか。」
「私も始めたころは、ビーエスみたいな感じだったのよ。」
「そうなんですか。」
「うん、ギターとパーカスと三人バンドだった。」
「違うじゃん。」
「音楽のスタイルのことよ。」
「ギターのシンちゃんがすごくてさあ。」
「ビデオでギター弾いてる人ですか。」
「ううん、違うの。」
「そうなんですか。」
「うん、始めたころはさあ、シンちゃんのリフにトメさんが合わせて・・でさあ、私、自然とメロディがでてきたのよ。」
「すげー、プロみてえ。」
「もう、バカ。そのメロディにシンちゃんが反応してさあ、どんどん、空気が変わっていくの。面白かったなあ。」
「シンちゃん、いえ、シンさん、やめちゃったんですか。」
「やめたって言うか、ライブハウスにね。たまたま、来ていた清水さんがさあ、気に入ってくれて・・・」
「まあ、昔の話だから。でも、今の事務所のお偉方。」
「うん、プロ指向って言葉がはやっていたのよ。それで、プロになる気があるのかって聞かれて・・・・それなら、バンドの形態をかえろって、ドラムとキーボードとベースを入れろっていわれたのよ。」
「ふうん。」
「それで、シンちゃん、お前がバンマスなんだから、しっかりしろっていわれて。」
「長くなるよ。」
「いつだったかなあ、清水さんがさあ、ドラムとキーボードとベースを見つけたから、スタジオに来いって言われてさあ、セッションしたのよ。そのとき、一曲ブルースかなんかやったら、シンちゃんが突然、清水さんを殴って出ていちゃたのよ。」
「それっきり、それっきり、もう。」
「ちょっとお。」
「スンません。」
「それからはさあ、清水さんのプロデュースていうか、こういう曲を作れって言われて・・・・。」
「大変ですね。」
「大変だよ。ちゃんと契約むすんでもいないのに。なあ。」
「さあ、やるか。」
「もう。」
「流れたしな。ハコだからな、終われますかってんだよ。」

指紋の感性4

2012年04月03日 18時14分45秒 | Weblog
「お金って、不思議よねえ。バンドやるのにもお金が掛かるし、ご飯食べるのにも掛かる。」
「当たり前だろ。」
「マージャンするのにも掛かるのよ。」
「何言ってんだよ。」
「私の父親ってさあ、はじめは、工員だったのよ。でもね。六浦さんって人にさあ、上の会社の人なんだけど、工場やらないかって言われて、借金して工場作ったのよ。」
「何を作ってたんですか。」
「バネみたいなの。炊飯ジャーとかさあ、ポンと押すとガチャってなるでしょ。そこに使う部品とか。」
「へー。」
「一個、十二円くらいでさあ、いろんなの合わせて月に十万個くらいかな。でもね、六浦さんは前の会社からは四十円くらいで仕入れてたんだって。」
「お前詳しいね。」
「だって。お母さんがさあ、出て行く前にいつも言ってたのよ。」
「えー、出て行っちゃたんですか。」
「おまえ、月、百二十万の収入をけってか。」
「だからさあ、手取りって言うか。うちで使えるお金って、そのうちの十分の一くらいだって。」
「そんなわけないよ。個人事業主か、会社か知らないけど、生活費なんて経費でぜんぶでるぜ。」
「そうのー。でもね、でもね。機械とかの借金とかあって、なんか、たいへんだったみたいでさあ、」
「男でもいたんじゃねえの。」
「何よ。」
「冗談、冗談だよ。オー、こわ、」
「あの、お話の途中なんですけど、ロンです。」
「またかよー。」

「あんた、ほんとに負けないわよねえ。でもさあ、ここのも賭けてるってわかってるわよね。」
「ああ、この前、お金払ってるの見たから知ってます。」
「お金、あるの。」
「この前、スグリさんが払っていたくらいは。」
「誘っておいて変だけど、きっちり、もらうからね。」
「オイ、スグリ、それは勝ってから言いましょうねえ。お嬢さん。」
「もう。なによそれ。」
「テンパイ、ソクリー、ロンでござる。」
「なにいいい。」

「だから、お金って不思議なのよ。父親さあ、六浦さんとこの仕事なくなってさあ、て言うか。すごいのね。六浦さん、忙しいときは、まだか。まだかってかんじだったのに、製品規格が変わったって言って仕事くれなくなっちゃったんだよ。」
「ひどいね。」
「ほんとはね、韓国からもっと安く入る商社を見つけたみたいなんだけど。」
「それもお母さん情報ですか。」
「そう。」
「詳しすぎる。くわしすぎるねえ、それは。」
「六浦さんとお母さんが・・・・・考えたことなかった。」
「あやしいねえ。」
「でも、父親もすごいの。会社の借金はさあ、倒産したからチャラでしょう。自分はケッコウ溜め込んでいたみたい。ほかにも、お家持ってたみたい。」
「お前はどうなの。」
「私はあ、まあね、好きなことやるんだったら、自分で何とかしろって言われて。でも、ここは好きに使っていいって・・・・・」
「まあ、すごいじゃん。その歳で、一軒家だぜ。」
「はは、面白いのはさあ、誰か、俺のことを聞きにきたら、間借り人なんでわかりません言えだって。」
「すごいね。お前の親父。でもさあ、ここも持ってかれてもおかしくないんじゃない。」
「ここの持ち主はおじいちゃんになってたみたいなの。」
「へえ、複雑だねえ。」
「あがっちゃった。」
「え、もう、ハンチャンやるからな。勝ち逃げなんてしないよなあ。ス、グ、リさん。」

指紋の感性3

2012年04月02日 17時18分55秒 | Weblog
「わー、こんなのもできちゃうんですか。すごいですね。」
「エロいだろう。スグリ。」
「大丈夫なんですか。」
「そりゃーさあ、この辺のは、裏ものよ。表には出さないわ。」
「とかいって、清水さんにはこっちから見せたんだろ。」
「もう。」
「あの。」
「何。」
「上がってもいいですか。」
「何よ。」
「ロンです。」
「えー。」

「スタジオ代って、高いんですか。」
「今、競争激しいからね。ケッコウとるのよ。」
「競争って。」
「テレビでさあ、バンド天国とか知らない。」
「テレビ見ないので。」
「なるほど。」
「スグリ、ほんとうにおもしろいな。マサルって。」
「ふふーん、トコちゃん。ロン。」
「なにい。」

「でも、スグリはすごいんだよ。」
「わかります。」
「君の知っているスグリはほんの一部分だけだと思うよ。」
「そう、そう、スグリはバンドのためなら、いやいや、バンドにかかる金のためなら何でもするからな。」
「いいの。そんなことは。」
「なんですかあ。それ。うーん。スグリさんって何歳なんですか。」
「バカ。女に歳を聞くんじゃない。」
「僕もそんなに若くないんですけど。スグリさんなんか不思議で。」
「マサル、若いんじゃないの。ずっと敬語使っているじゃん。」
「いやー、大家さんですから。」
「意外と律儀だねえ。」
「そこが怖いのよ。ロン。」
「ねえさん、ノッてきましたねえ。」
「ふん、何よ。マンガンよ。」
「どひゃー。」