仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

再会と言えるのか5

2012年05月29日 15時44分30秒 | Weblog
新しい仁が一番最後にバスを降りた。
バス停から、歩いて四十分、「ベース」までは距離があった。
新しい仁は、友達と遊ぶことがあまりなかった。
隣村にあった分校が閉鎖され、町場の小学校に通うことになった。
時間がかかった。

新しい仁は、それでも、学校が好きだった。

「ベース」帰るとよく寝た。

新しくできた「ルーム」にも顔を出した。

よく笑った。

仁と同様、普段は普通の子供だった。
「ベース」には映りの悪いテレビが一台とラジオが二台、外の情報を得るものはそれだけだった。
オージがテレビをつけると新しい仁は横に座った。
食事の時もオージの隣にいた。
ヒデオもアキコもリツコもほかのメンバーも子供と遊べない新しい仁を気にかけた。
新しい仁は皆のそれがわかるのか、おどけて皆を楽しませた。

新しい仁が「ベース」についたとき、得体のしれない生き物はオージの横にいた。
「誰だいね、こんなもんを連れてきたのは。いけんじ、昔はねえ、こういうもんは産婆が始末しただに、いまは違うでね。」
「どうしていいか、わからなくて、すみません。それに、何にか・・・・。」
「いいのよ。マサル、拾っちゃたんだからしょうがないわ。」
「なまけ病じゃねえだかやあ。昔はいたでね。だがせえ、そういうもんは金持ちのうちだけせ。そういうもんだじ。」
「オージ、いいよ。この人はいいよ。」
「そうかい、そうかい。」
「力が尽きたんだ。」
「いいわね、おめさまがいうなら、いいずら。」
「だいじょうぶ。だいじょうぶ。・・・かなあ。」
食事をどうするか、着替えや排便排尿を誰が見るのか。オージの言うとおり、それは大変なことなのかもしれない。
仁が山から戻ってきた。
新しい仁が仁を見た。
仁はうなずいた。
マサルは仁に期待した。
が、その夜はスグリを歓迎する宴会になった。

再会と言えるのか4

2012年05月25日 15時50分56秒 | Weblog
マサルとスグリは軽トラで追いかえた。
ヒデオも軽トラの速度に合わせて運転した。

リツコとアキコは持ちうる限りの技術と知識を総動員して、男を調べた。
が、身体的な異常を見つけることはできなかった。
若干の衰弱は読み取れたが、それ以外の病的なものを示す症状はなかった。

誰も、気づかなかった。

それが誰なのか。

スグリが「ベース」を訪れるのは初めてだった。
その景色に驚いた。

新しい仁がアキコのおじいさんを「オージ」と呼んでから、オージは若返った。
オージの活躍で、耕作面積が一機に拡がった。
オージの地所以外のまわりの休耕地を許可もなく開拓した。
オージは開拓してから、役場にいって所有者の電話番号を聞き出し、電話した。
今なら、決してできることではないが、そのころは、まだ、おおらかだった。
「よし坊、本家だけど、丈夫にしてるかい。おめ様の畑も、田んぼもえらいことになってるで、おらほでよくしとくでね。
いいわ、いいわ、売れるようになったら、また、きれいにしとくで、心配するない。」
そんな電話を何本かかけて、話は済んだ。
オージの家、新しい「ベース」から見渡せるすべての土地をオージの指示で整地し、水路を作り、きれいに区分けし、農耕地として再生させた。
マーやサンちゃんはオージと喧嘩をしながら、作付の品目の選択や種取の方法を覚えた。
農薬や化学肥料を使えば、その生産量は格段に増える。
戦後の農業政策は、とにかく量産することが先決で、それらを使うことが当たり前になっていた。
そんな中で化学肥料も農薬も使わずに生産することは時代錯誤とも言えた。
「そんなやり方はじっ様のころのやり方ずら。骨が折れるだけずらい。」
と言いながらも、農協依存のやり方を受け入れなかったオージはさらに効率のいい栽培法をマーやサンちゃんと一緒に見つけていった。
土地に適した作物、挑戦できる作物、それらを検証するための実験用の農耕地。
知恵と知識と気力が融合し、「ベース」は拡大した。

ハイエースの後ろで前の景色がわからいに状態で「ベース」についたスグリは、というよりマサルの横でほとんど寝ていたのだが、
すれ違うのがぎりぎりの道の先に空が大きく広がる場所があるなどと想像もしていなかった。
それは感動だった。

緑、日差し、風。

都会にしては緑に恵まれた高井戸に住んでいても、息づく緑の驚異を目の前にして、身震いするより仕方がなかった。
「すごーい、ここ日本よねえ。」
「はは、そうだよ。」

それどころではないだろう。

と思っても、やはり「ベース」に抱かれることはマサルにとっても心地の良いものだった。

得体のしれない生き物のために車いすが用意されていた。
オージの連れ合いがその生涯の最後に移動手段として使ったものだった。
ヒデオに担がれるようにして車いすに乗った生き物を新しい「ベース」に運んだ。

再会と言えるのか3

2012年05月22日 17時19分13秒 | Weblog
経験のないことに遭遇すると人間はどう対処していいかわからなくなる。
マサルもいくつかの危機に遭遇したが、今回は勝手が違った。
どうなったのか、どうしたらよいのか解らなかった。
当然、スグリもわからなかった。
昨日まで、普通に動いていた人間が、突然、動けなくなるなどということはありえないことだ。
名前もわからない。
年齢もわからない。
所持品はない。
この状態で、どう対処するべきなのか。
かつてのマサルなら、金の力に物を言わせ、病院へ駆け込んだのかもしれない。
が、今のマサルには父親のカードも、ベンベーもない。

保険証も持っていない人間。
名前もない人間。
住所もない人間

識別不可能な人間

そんな人間は社会が拒絶する。
安心と安全のために識別不可能な人間は排除される。

スグリはジローさんとトコちゃんに電話した。
二人とも留守だった。
「いいよ。迷惑かけるから。」
「でも・・・・。」

フル回転するマサルの頭。

ヒロムのベッドの前で頭を垂れて座り込むマサル。
スグリは後ろからマサルを抱きしめた。
昨日とは違う思いがスグリの中にできていた。
マサルもスグリの暖かさを感じた。

「ありがとう。」

マサルの頭の中にヒカルの顔が浮かんできた。
「そうだ。」
「どうしたの。」
「「ベース」に電話してみるよ。」
「なにそれ。」
「そうなんだよ。「ベース」には看護婦が二人もいるんだよ。」
「わおう。それよ。」
二人は抱き合って喜んだ。

「ベース」はすぐに動いた。
マサルが拾った得体のしれない生き物でも「ベース」は受け入れた。
去る者は追わず、来るものは拒まず。
その態度、その姿勢に変わりはなかった。それがどんな状態でも。

ヒデオがハイエースの荷台にベッドを作り、諏訪を出た。
リツコとアキコが同乗した。

電話で体温、呼吸、心拍数、飲食の可否が問われ、スグリとマサルは動かないヒロムに体温計を突っ込み、胸に耳を当て、急須を口元にあてた。
体温も正常で、呼吸も問題がなく、心拍数は若干少なかった。
水は飲めた。
後でリツコがそれはしなくてよかったのだといった。
もし、呑み込めなくて肺に入っちゃったら、取り返しがつかなかいことになっていたと言われ、マサルとスグリは青くなった。

そんな中、マサルは金がないことの無力感を感じた。
また、動ける身体があることが「ベース」の活動を守っていることも感じた。

再会と言えるのか2

2012年05月21日 16時49分30秒 | Weblog
顔のティーの字の部分、ヒロムであることを認識できるはずだった。
が、頭の中のどこかの部分が邪魔をしていた。
ヒロムとつるんで夜明けのファミレスにいっていたころの記憶が逆にマサルの認識を狂わせた。

まさか、これがヒロムであるわけがない。
この擦り切れたような男がヒロムであるわけがない。

事態は困った方向へ向かっていた。

マサルがスグリと戯れの時を終えてスグリの部屋から自分の部屋に戻った。
ヒロムはベッドの淵から頭を落とし、ぐったりしていた。
目は開いていた。

「そんな恰好で苦しくないの。」
返事がなかった。

石鹸のにおいが気になった。
スグリは自分が使っているフランス製の石鹸でマサルを洗い倒した。
マサルも反撃した。
狭い風呂、二人は立った状態で戯れた。
楽しかった。

大きめのティーシャツに着替えて、スウェットをはいた。
ヒロムは同じ格好をしていた。
「苦しくないの。」
マサルは感じた。
ヒロムの頭をかかえるようにしてベッドに戻した。
目が動いた。
マサルを追っていた。
「どうかしたの。」
口がパクパク動いた。
「しゃべれないの。」
瞼がパチパチ、閉じたり開いたりした。
ヒロムの顔をじっと見た。
表情の変化がほとんどなかった。
ただ、目尻から涙がこぼれ始めた。
「どうしたんだよ。昨日まで普通だったのに・・・。」
マサルは恐怖に似たものを感じた。
「ちょっと待ってて。」

マサルは部屋を出て、スグリの部屋をノックした。

再会と言えるのか

2012年05月18日 15時01分48秒 | Weblog
人ごみの中に消えていった。

押し寄せる野次馬。
タクシーの下になった女の顔。
野次馬の肩が肩にぶつかった。
よろけて倒れた。
足の間を這うようにして、歩道の隅で振り返った。
体格の良い正義感に満ち溢れているような男が、運転手を引きづり出した。
客は後部座席から降りてこれなかった。
パトカーと救急車の音が遠くから聞こえてきた。
足が勝手に動いた。

ヒトゴミ
ヒトゴミ
ヒトゴミ

すり抜けるようにして、その場所から逃げた。
誰もその女と自分の関係を指摘しなった。

いつの間にか走っていた。

繰り返される夢。

脳裏を離れない女の顔。

意識が無意識に勝って目が覚めそうになっても、引きずり込まれるように夢の中に戻される繰り返し。

音、キシミ、振動、声。

もうどうでもいいことなのに。

死者の行列が目の前を行進していく。

彼らが自分を見ている。

恨みと怒りが目の中から飛び出してくる。

細い糸になって身体を縛り付ける。

「俺が殺したのか。」

言葉が、口から飛び出す。

その声に驚いて、覚醒する。

細い糸が脳に絡み付き、また、夢の中に引きずり込まれる。

もうどうでもいいことなのに。

汗のにおい。

身体の中の不純物が汗と混ざり合い、恐怖と悲しみが汗と混ざり合い、鼻をつく。

目が覚めても、工事用の大きな鉄板が身体を押さえつけているように重く、頭しか動かない。

重さが、また、夢の中に引っ張り込む。

朝日のようにさわやかに4

2012年05月15日 15時29分14秒 | Weblog
それでも彼は目覚めなかった。
深い眠り。
不快な眠り。
何かが、意識を抑え込んでいた。
覚醒を妨げるもの。
木造のその家は、動きに合わせて振動を伝えていたはずなのだが。

外階段を下りる音がして、スグリが風呂の窓から顔を出した。
「トコちゃん帰るの。」
「うん。」
「ひょっとして、起きてた。」
「寝てた。さっき目が覚めた。」
「誰もいなくてびっくりした。」
「いいや、まっ、今日は帰るわ。」
「じゃあね。」
スグリが浴槽に立って、窓から身体を乗り出した。
トコちゃんはスグリを抱えるようにして唇と乳首にキッスした。
「じゃあ、また。」

湯加減が難しかった。
ガス式の風呂釜についている給湯用の蛇口にホースを付けた。
「ねね、水でいいわ。」
「ハイ。」
「ふふ、ハイなんて。」
二、三回流した。
「もういいわ。」
「ハイ。」
「シャワーにしよう。」
「ハイ。」
「ねえ、マサル、何歳なの。」
「え、なんで。」
「なんかさあ、私とそんなに変わらないんじゃない。」
「スグリさんは。」
「三十路、過ぎたくらいかな。」
「じゃあ、おんなじくらいかな。」
「そうでしょう。普通でいいよ。しゃべるの。」
「なんか、早かったなあ、仁たちとあってから・・・。」
「仁って、あの工事に来た人。」
「そうです。」
「だからさあ、普通でいいの。」
「はは、そうだね。あっ、スグリさん。」
「だからあ、スグリさんもやめてよ。」
「はは、ねえ、さっきさあ、ジローさんも、トコちゃんさんも協力してくれたって言ってたよね。なんか不思議なんだけど、彼氏さんは・・」
「あいつはマージャンも興味ないみたいだけど、女にも興味ないのよ。」
「何それ。」
「清水さんがよこしたのよ。部屋ないから、面倒見ろって。」
「なんかよくわかんないなあ。」
「ホモなのよ。清水さんのネコなの。」
「清水さんって。」
「一度、二人でご奉仕させられたのよ。私、涙が止まらなくなって、ビンビン泣きだしたら、清水さんがお前は帰れって。。・」
「それでも、言いなりなっちゃうの。」
「そうね、なってたんだね。さっきさあ、マサルが、恋って言ったじゃない。それでさあ、もういいかなって思ったわ。」
「なんか。」
「恋かあ、忘れてたなあ、そんな言葉。」
「僕もほんとはなんであんなこと言ったのかわからなかった。」
「そうなの。」
「うん。でも、言葉が出た。」
「でも、いいわ。なんか、吹っ切れそうよ。恋だったらさあ、覚めるじゃない。ジローちゃんやトコちゃんと別のとこら探そうかな。」
「ウッ。」
「ねえ、もう一回、しない。」
「ここで。」
「うん。」
「狭いよ。」
「だって、うれしいんだもん。」

朝日のようにさわやかに3

2012年05月09日 16時47分04秒 | Weblog
布一枚のカーテンの隙間から、朝日が差し込んだ。
掃除の嫌いなスグリの部屋に立ち上るホコリが光の線を作り、雲間から差し込む天の光のようだった。
スグリの収縮がおわるまでと思っていたのだが、二人とも浅い眠りに落ちた。
柔らかい乳房の感触が心地好かった。
勢いを失ったマサル自身はスグリの中から押し出された。
スグリ自身からは、暖かさを失った体液が漏れ始めた。
「あー大変だあ。」
スグリは飛び起き、板張りの台所に走った。
バケツを取り出し、そのうえでエム字に股を開いた。
「フッ。」
気合を入れるとボッ、ピチャンと音がした。
「マサル、マサル、来て。」
マサルも台所に突進した。
「そこに、そこに、ホースがあるでしょう。それを蛇口に入れて、先をちょうだい。」
「えっ、どこ。」
「そこの右、右。」
「これ。」
「そう、早く。」
ホースの先にはヒョウタンのような金物がついていた。
先に小さな穴が放射状にあいていた。
「何、これ。」
「ビデよ。ちょっと前にさあ、馬鹿な客が目黒エンペラーの一番いい部屋取って待ってたのよ。そこでさあ、アッサリすんだあとトイレで見つけたの。すごいんだよ。普通の洋式トイレの横に、もう一つ、トイレみたいなのがあって、その先についてたから、ギッてきちゃった。」
「へー、そうなんだ。」
「見てないで貸してよ。」
「おましろいねえ。」
「マサル、いいて言ったら水出して、ストップって言ったら止めてね。」
「オーケー。」
「いいよ。出して。」
ゴボ、ゴボ、ゴボ
「ストップ、フッ。」
ジャー
「いいよ。出して。」
ゴボ、ゴボ、ゴボ
「ストップ、フッ。」
ジャー
「何やってんの。」
「洗ってんのよ。子供で来たら、大変じゃない。」
「そうなの。」
「そうなのって、ジローちゃんとさあ、危険日にしたときにさあ、これで流したら大丈夫だったのよ。」
「いいのに。」
「何が。」
「子供できても。」
「何言ってんのよ。」
「できたら、産めばいいじゃん。」
「簡単に言うわね。女は大変なのよ。産んだことないけど。」
「新しい仁がね、生まれて、「ベース」の子供になったんだ。」
「何それ。」
「なんか、子供ができたら、みんなで育てるんだって、そんな感じなんだよ。」
「ふふ、ほんとにマサルって面白いわね。普通じゃないわね。」
「そうかなあ。「ベース」のみんなは同じだと思うよ。」
「そう、でも今日は、流すわ。あら、バケツがいっぱいになっちゃった。」
流しにバケツの水とその中に溶け込んだマサルの分身を流した。
「もう一度お願い。」
「ねえ、下に行かない。」
「あー、そうか、そうね。お風呂で流せばいいのよね。」
マサルはスグリが投げてよこしたスウェットの上着をはおって、スグリはスケスケのネグリジェみたいなのをはおって、外階段を下りた。

朝日のようにさわやかに2

2012年05月08日 14時37分17秒 | Weblog
「ねえ、気持ちよかった。」
「うん。いえ。はい。」
「いいのよ。普通で。」
「すごい。なんか、よくわからないうちにスパークって感じでした。」
「ふふ、これなら、お金もらえるでしょ。」
「お金ですか。」
「マサルから取ったりしないわよ。」
「でも、なんか、すごい。」
「いつもはね、いれる前に口に仕込んだコンドームつけちゃうのよ。」
「口でですか。」
「いやじゃない。そのままやられたら。」
「すごい。」
「ふふ、マサルは特別。」
「うれしい。」
「ジローちゃんも、トコちゃんも、特別よ。」
「兄弟ですか。」
「そうね。」
「今度は僕が・・・・。」
「いいのよ。私、こういうのこだわんないだけどね。清水さんとはダメなのよ。」
「ダメって。」
「言いなりなの。」
「言いなりって。」
「いわれるままにご奉仕しちゃうのよ。」
「そうなんですか。」
「だかさあ、悔しくてさあ、仕事で寝るときは秒殺したいのよ。鍛えたし、研究したわ。ジローちゃんも、トコちゃんも協力してくれたわ。」
「面白いですね。」
「そう。」
「清水さんに恋してるんですか。」
「恋なんて・・・。奥さんも、子供もいるのよ。」
「でも、言いなりなんでしょ」
「そうか、恋・・・。アン。」
「不思議ですね。「ベース」でみんなでそうなるときとは全然違ってた。」
「ウン、アッ。み、み、みんなでしたりするの。」
「するっていうか。なっちゃうていうか・・・。」
「ウン、ウン、ウン。イイ、イイ、ソコ、イイ。」
「だから、個人的なセクスってすごく久しぶりっていうか、このごろ、ぜんぜん、なかったから・・・。」
「個人的なセックス、ウウウウウウ。ねえ、エエエエ。」
「ウオ。」
「ダメ、もうダメ、ねえ、ねえ、ねえ。」
「ハウ。」
「ねえ来て、来て来て。」
「ウッ。」

ハア ハア ハア
ヒー ヒー ヒー
フッ  フッ フッ フッ
アヘ  アヘ アヘ アヘ
ホッ ホッ ホッ ホッ

ウッ   ウッ  ウッ  ウッ ウッウッウッウッ

「ダメ、止めちゃ、ダメ、ダメエエエエ。」
「デモ、デモ、デモ、デモ。」
「お願い、ネ、ネ、ネ、ネ。」

アーアーアーアーアー   アー

ハア ハア ハア ハア

「マッ、マサルー。」
「ウオー。」

朝日のようにさわやかに

2012年05月07日 16時34分40秒 | Weblog
長い舌が絡まってきた。
口の中で動き回った。
と、次はちぎれるほど舌を吸われた。
耳をかじって、含んで、長い舌がなめまわした。

長い指が絡まってきた。
バックルを外して、ジッパーを下げ、スッと中に侵入してきた。
指は根元から先に向かって動いた。
勃起した先を、ふちを、触る、離れる、包む、さする。
指は生きていた。

マージャン卓代わりのテーブルを隅に押しのけ、トコちゃんに毛布を掛けると始まった。

ボタンを外すのがうまかった。
服をはがすのもうまかった。
キッスをしながら、全裸にされていた。

トコちゃんが、十五分で起きてくるような気がした。
「だいじょうぶよ。今日は起きないわ。」

髪留めを外した。
軽いカールのかかった髪が、へそのあたりをくすぐった。

長い舌が絡まってきた。
舌に絡まった時よりも激しく、優しく、きつく、緩く、舌が絡まった。
唇が、ギュッと、スーッと、キュッキュッとくわえた。

マグロ状態だった。

スッと立ち上がった。
パッと裸なった。

エム字に足を開いて、生きている指が絡み付き、グーッと挿入させられた。
膝をつくと、手を取った。
細い身体の上でブルンと揺れる乳房に導かれた。
柔らかさが心地好かった。

今までの快感に感謝して、乳房を、乳首を、脇バラを、手のひらと指がうごめいた。

下腹部でロックンロールが揺れだした。
スロー、スロー、クイック、クイック
クイック、クイック、クイック、クイック

クイック、クイック、クイック、クイック、クイック、クイック、クイック、クイック

スロー、スロー、スロー、スロー、スロー、スロー

スグリの手がマサルの手を取った。
大きな乳房に導き、鷲掴みにするように催促しているようだった。
マサルの手に力が入った。
スグリは指を下腹部に潜り込ませ、その振動とは違うリズムを刻んだ。

クイック、クイック、クイック、クイック、クイック、クイック、クイック、クイック

ピクンとする前に腰を上げ、口づけた。

指紋の感性12

2012年05月02日 14時57分29秒 | Weblog
落ちていた。
ベッドから落ちていた。
薄らいでいく街灯の明かりが差し込んでいた。
築年数がたっているスグリの家の窓は古かった。
木の窓枠にはめ込まれた歪の大きいガラスがカタカタと音を立てるほどだった。
歪んだ明かりが男の顔を照らしていた。
一瞬、ビクッとした。
波うつ光。
男の顔を見た。
綺麗な顔だった。
無精ひげが点々と生えてはいるもののその明りの中に浮かび上がった顔は綺麗だった。
目と鼻と口が作り出すティーの字。
マサルは凝視した。
誰かに似ていた。
ずいぶん昔のような気がした。
男を知っているような感覚にとらわれた。
ドアが開いた。
「逃げたの。」
「寝てます。ベッドから落ちたみたい。」
「そう、アンタも物好きねえ。わたしもあんまりこだわらないけど、お金でも取られたら悲しいわよ。」
「なんか、昔、あったことがあるような気がして。」
「まあいいわ。始めるわよ。」

朝は安直にあけた。
清算してみると誰も勝っていなかった。
負けてもいなかった。

「こんなものね。あんたたちと長い時間やっても、結局、チャラよね。」
「まあ、いいじゃん。親交を深めたわけだし。」
「もう、深すぎるわよ。」
「いやいや。マサルとさ。」
「まあね。そんなとこね。」
「ありがとうございます。スグリさん、今度、セッションしましょうよ。」
「もちろん。まっ、時間があったらね。」
「時間はあるんじゃない。マージャンとかやんなきゃ。」
「そうか。」
「眠い。眠いよ。」
「トコちゃん、寝て、寝て。大丈夫、今日は襲ったりしないから。」
「今日はと来たね。」
「ジローちゃん元気なの。」
「あそこは元気そうだけど、俺も、今日は帰るは。」
「そう、じゃあ、夜、電話するね。」
「ああ。」
「じゃあ、僕も。」
「マサルはいいじゃない。隣だもの。まだ。」
「あっ、ハイ。」