ヒロムは溜息をついた。下げた手を握り締めて、ウーと唸りながら振り上げ、ベース」の定位地になったテーブルを殴りつけた。ドンという音が部屋全体に響いた。
ヒトミが来た。
「どうしたの。」
ヒロムの着替えを持っていた。
「ヒーちゃん」
「何」
「右手でこれ握ってみて」
そう言うと右腕をさし出した。
「何よ。」
「いいから」
ヒトミはヒロムのわきに洗濯物を置いて、遠慮しがちにヒロムの右腕を握った。
「違うなー、もっと、色っぽく握れない。」
「えー、なによそれ!。」
ヒトミは何度か試みた。ヒロムは腕の位置を変えたり、自分で触ったり、頭をかしげたり、最後には ウーと唸った。
ヒトミはヒロムの行動が時々、解らなくなった。それでも、ヒロムに言われると協力してしまう。ヒロムに恋愛感情を持っているわけでもなかった。何かに集中し始めるとまわりのことが見えなくなる。ヒトミのほうが年上なのにそんなことは少しも気にしない。生意気で、清潔感がなくて、時に自分が一番と思っているようにも感じる。でも、いやな奴、とは思えない。かわいいと感じるときもある。世話をやかずにはいられない。弟、そんな感じなのかな。いろいろと頭の中を言葉が飛び交った。
「どうしたのよ。」
返事がない。
「ヒロム!」
「あっ、ゴメン。」
と言うだけだった。ヒロムはまた、思考に入っていた。こうなると人の声は聞こえない。ヒトミはフーと息をついて、事務所の整理を始めた。ヒロムが「ベース」にいるのはいいのだが、事務所のいたるところにヒロムの思考のための残骸が散らかってしまった。書類やメモ、雑誌の切れ端、ヒトミがそれらをわかる範囲で分類し、テーブルのキチンと並べていった。ヒロムの近くに来てまた、床に落ちている書類を取ろうとしたとき、ヒロムの手がヒトミのヒップを撫でた。
「ヒヤァー。何するのよー。」
振り向くとヒロムの顔が見るからにエロっぽく歪んでいた。
「大きなお尻」
「ちょっと、なに、考えているのよー」
フフと笑うような顔のヒロム。
「今度の火曜、何処か行かない。」
ヒトミは怒ったような顔をしながら、なんとも突然の提案に戸惑った。断る理由もないので、
「どこに行くのよ。」
今度はヒロムが口ごもった。ヒトミは自分が人いいと思うことがよくあった。悟の時もそうだった。ヒロムに関しては尊敬すべき点もあった。何かの調査にでもつき合わされるのかと勝手に解釈をした。
「いいわよ」
そう返事をするとうれしいそうな顔で、もう別のことに思考がいっているらしいヒロムがいた。
そうこうしているうちにいつものメンバー集まった。マサルはT会の集会以来、毎日、顔を出すことはなくなった。六人組や常任については、ヒロムが形成した下部組織に任せるところが多くなり、自由に事務所に顔を出すといった雰囲気だった。ヒロムはそれ自体にも何か物足りなさを感じていた。
ヒトミが来た。
「どうしたの。」
ヒロムの着替えを持っていた。
「ヒーちゃん」
「何」
「右手でこれ握ってみて」
そう言うと右腕をさし出した。
「何よ。」
「いいから」
ヒトミはヒロムのわきに洗濯物を置いて、遠慮しがちにヒロムの右腕を握った。
「違うなー、もっと、色っぽく握れない。」
「えー、なによそれ!。」
ヒトミは何度か試みた。ヒロムは腕の位置を変えたり、自分で触ったり、頭をかしげたり、最後には ウーと唸った。
ヒトミはヒロムの行動が時々、解らなくなった。それでも、ヒロムに言われると協力してしまう。ヒロムに恋愛感情を持っているわけでもなかった。何かに集中し始めるとまわりのことが見えなくなる。ヒトミのほうが年上なのにそんなことは少しも気にしない。生意気で、清潔感がなくて、時に自分が一番と思っているようにも感じる。でも、いやな奴、とは思えない。かわいいと感じるときもある。世話をやかずにはいられない。弟、そんな感じなのかな。いろいろと頭の中を言葉が飛び交った。
「どうしたのよ。」
返事がない。
「ヒロム!」
「あっ、ゴメン。」
と言うだけだった。ヒロムはまた、思考に入っていた。こうなると人の声は聞こえない。ヒトミはフーと息をついて、事務所の整理を始めた。ヒロムが「ベース」にいるのはいいのだが、事務所のいたるところにヒロムの思考のための残骸が散らかってしまった。書類やメモ、雑誌の切れ端、ヒトミがそれらをわかる範囲で分類し、テーブルのキチンと並べていった。ヒロムの近くに来てまた、床に落ちている書類を取ろうとしたとき、ヒロムの手がヒトミのヒップを撫でた。
「ヒヤァー。何するのよー。」
振り向くとヒロムの顔が見るからにエロっぽく歪んでいた。
「大きなお尻」
「ちょっと、なに、考えているのよー」
フフと笑うような顔のヒロム。
「今度の火曜、何処か行かない。」
ヒトミは怒ったような顔をしながら、なんとも突然の提案に戸惑った。断る理由もないので、
「どこに行くのよ。」
今度はヒロムが口ごもった。ヒトミは自分が人いいと思うことがよくあった。悟の時もそうだった。ヒロムに関しては尊敬すべき点もあった。何かの調査にでもつき合わされるのかと勝手に解釈をした。
「いいわよ」
そう返事をするとうれしいそうな顔で、もう別のことに思考がいっているらしいヒロムがいた。
そうこうしているうちにいつものメンバー集まった。マサルはT会の集会以来、毎日、顔を出すことはなくなった。六人組や常任については、ヒロムが形成した下部組織に任せるところが多くなり、自由に事務所に顔を出すといった雰囲気だった。ヒロムはそれ自体にも何か物足りなさを感じていた。