仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

新王を探せ13

2010年03月30日 15時43分33秒 | Weblog
 ヒトミはツカサの待つホンダライフに向かってゆっくりと歩いた。スペイン坂の「ベース」のことや、「神聖な儀式」、渋谷のテルホや、病院の壁、いろんなことが頭の中で回っていた。何かを決める時、いつも、ヒロムがそばにいたことを思い出した。そして、ヒロムを捨てたのが自分であることも。

 あの中には・・・・・・
 あの頃には・・・・・

どうしていいか、どうしたらいいのか、解らなかった。ただ、ただ、涙が出てきた。

 ヒロムもほんとうはあの世界を作りたかったんじゃないかしら・・・・・
 魂の部分で感じる共生って言ってた・・・・・・
 もう感じることもないけれど・・・・・・
 あの時のように世界が一つだって思えたら・・・・・・
 違うかな。それなら、「命の水」はいらないか・・・・・・
 私になにができるのかしら・・・・・

 ツカサは車の前で立っていた。ヒトミは走り出した。何年も会っていなかった懐かしい人に再会したように、大きく手を拡げ、ツカサに抱きついた。涙が、涙が、さらに溢れ出た。
 ツカサはヒトミを強く抱きしめた。ヒトミの涙の訳はわからなくても、強く、強く抱きしめた。

 姫でも、ヒトミさんでもかまわない・・・・・
 ここにこうして、いるじゃないか・・・・・
 守らなければならない人が・・・・・・
 この手で傷つけてしまった人が・・・・・

時間が過ぎていった。そのままの状態で、過ぎていった。

 ツカサは、ヒトミの身体を一度離すと、しっかりとヒトミの目を見た。そして、口づけた。その口づけは、従う者の口づけではなかった。ツカサの意志が、魂が、ヒトミに伝わった。ヒトミは嬉しかった。

「帰ろうか。」
ヒトミが言った。
「ハイ。」
「ハイじゃないでしょ。」
「いえ。」
「いいの。解るの。あなたの気持ちが。だから、少しづつ、普通にして。ね。」
「ハイ。」
「ハイじゃないってば。」
クスクス、笑った。泣いていたヒトミがクスクス笑った。ツカサも嬉しかった。二人はホンダライフに乗り込んだ。

 その車の後方、五百メートルの場所で、高性能の双眼鏡を凝視していた武闘派も車の中の武闘派に合図して、車に乗り込んだ。河川敷に車を移動し、ホンダライフが通りすぎるのを待った。

新王を探せ12

2010年03月29日 17時33分42秒 | Weblog
 大きなテーブルの上には飲みかけのビールや食べかけの料理がのっていた。椅子を数えたわけではなかったが、大所帯のようだった。が、食堂には誰もいなかった。ルームの中が見える二重ガラスの窓の前で膝を折り、そっと、中を覗いた。
 ヒデオがいた。マサミがいた。アキコがいた。ヒカルもマサルもいた。他の人たちは知らなかった。
 だが、最も衝撃を受けたのは、仁だった。

仁はその知らない女性の隣で赤ん坊を抱いてきた。軽くリズムを取りながら、そこで繰り広げられている演奏とパフォーマンスを見ていた。その表情は今までヒトミが見たことのない笑顔だった。優しさと愛に満ちた・・・・・ヒトミには、そう見えた。
 誰もヒトミに気付かなかった。顔が、そこに集う全ての人の顔が笑顔だった。ヒトミはもう一度、膝を折った。彼らが気付くわけなどないと思いながらも足音を忍ばせて、身体を縮めて、玄関を出た。その途端、再び、涙が溢れ出た。

 どうしようもない感情が、ヒトミをとらえた。


新王を探せ11

2010年03月25日 17時06分49秒 | Weblog
 ツカサの運転するホンダライフが目的地に着く前に、寄り道をしたのは言うまでもない。ツカサは行為の間も、再び走り出した車の中でも、考え続けていた。葛藤していた。

姫は姫なのだ。
が、姫は姫でいることが、辛いという。
では、私の、いや、俺の姫は何処にいるのか。
俺が傷つけたのは、姫だったはずだ。
が、姫はヒトミさんだ。
俺はヒトミさんを傷つけたのか。
ヒトミさんの命を奪おうとしたのか。
ヒトミさんと姫は同じではないのか。

答えは出なかった。しかし、その葛藤の始まりが、洗われたツカサの脳を少しづつ正常な状態にもどしていくことになった。切れた神経細胞が再び、繋がり始めた。が、その時、確かに認識できたことは、知りすぎた身体、知られすぎた身体、切っても切れない絆が二人の間にあるということだけだった。

 市川市に入った車は川沿いを走った。そして、その明りが見えた。

「ねえ、ここで少し待ってて。」
「姫。」
「ううん。ヒトミで、いくの。ヒトミが、昔の仲間に会いに行くの。」
「ヒトミさん。」
「うれしい。そう呼んでくれて。」
「何かあったら、大声で。」
「大丈夫、昔の仲間に会いに行くんだから。」

 新しい「ベース」はミサキの作り出した農場がその建物を取り囲んでいた。緑の香りがそこかしこから、立ち上り、一瞬、眩暈を覚えるほどだった。武闘派の格好をしてきたことが良かった。スニーカーでなければ、土手から「ベース」に向かう道で転んでいただろう。
 土手を下りたあたりから、音が聞こえていた。リズムが響いていた。ヒデオの車があった。懐かしかった。あのころとおなじ車だった。ベンベーもあった。ヒトミは涙が出そうだった。
 玄関の鍵を開いていた。音は内容がわかる程度に聞こえるようになっていた。音のするほうへ、そう、「ベース」のルームへヒトミは向かった。


新王を探せ10

2010年03月18日 16時52分35秒 | Weblog
大きな穴が開いてるみたいなの。
心の真中に大きな穴がポカンって開いてるの。
「流魂」じゃなかったんだよ。最初は・・・・。
仁がいて、みんな、心のどこかに穴が開いている人たちが集まって・・・・。
触れ合って、セクスをして、感じて、魂の部分で感じて。
一緒だって思って。
穴がふさがった。
だから。
もしかしたら。
穴の開いている人たちを助けて上げれるんじゃないかって・・・・。

変わってきちゃったの。
ヒデオも仁も、マサミもアキコもいなくなって。
ヒロムが独りになっちゃったような気がして・・・。

ヒロムは頭が良くて、人がどんどん増えて、いつのまにか、姫って呼ばれるようになって・・・・。

あなたのナイフで背中を切られたとき、もう死ぬんだって。
でもね。それでもいいかな。これで終わってもいいかなって、思ったの。
もう、その時は穴が開いてたんだね。

痛かったよ。すごく痛かった。なんだか、みんなとつながっていた部分が全部、切れちゃうみたいで・・・。

姫は楽しかった。何でも、思いどおりになるみたいで・・・。

でも、穴はどんどん、大きくなって・・・・
私も、ヒロムも・・・・。」
「ヒ、ヒ、ヒトミさん。」
「えっ。」
「いえ、姫、もうそれ以上、お話にならないでください。」
「どうしたの。」
「私にとって、ヒトミさんは姫なんです。いえ、「流魂」の全てのメンバーにとって、宰と姫は理想なのです。たどり着くべき、最上の姿なのです。ですから・・・。」
「疲れちゃったの。もうね。すごく疲れちゃったの。姫って、誰にも甘えられないんだよ。ツカサ、二人きりのときだけでいいから、ね、お願い、ヒトミでいさせて。」
狭い軽の助手席からヒトミはツカサの腿に両手を伸ばした。

新王を探せ9

2010年03月16日 17時50分25秒 | Weblog
 ヒトミは顔をツカサの胸に付けた。震えながら泣いた。ツカサはたまらず、ヒトミの肩に手をかけた。顔が離れるとヒトミの唇がツカサの唇に重なった。涙がツカサの頬にもつたわり落ちた。ツカサの手がもう一度、ヒトミの肩にかかるとヒトミは助手席に座りなおした。
「いきましょう。」
「ハイ。」

 エンジン音はかなり大きかった。つぶやくようなヒトミの声を聞き取るのは難しかった。それでも、集中して、ツカサはヒトミの声を聞いた。
「どうしてこうなっちゃったんだろう。ヒロムをもっと見てあげればよかったのかなあ・・・・。
私ね。ヒロムがケビンを追いかけて走り出したとき、私も走ろうかと思ったの。
でもそれは、一瞬で、頭の中で、姫の自分が止めたの。
だから、姫の自分が大切なんだって・・・・。
今日ね。始まりを確かめたかった。
それで自分も確かめたかった。
そしたら、あのころの自分が戻ってきて、よけいにわからなくなっちゃった。


新王を探せ8

2010年03月15日 17時17分46秒 | Weblog
 ツカサの選んだ順路は世田谷通りから三軒茶屋に出て二百四十六号に入り、渋谷を抜けて、国道一号線に出るというものだった。首都高を使っても良かったが、安全を考えてというより、そうしなければならないという意識が理由もなく働いた。
 渋谷の駅にかかったところでヒトミが言った。
「ねえ、ツカサ、青山をみたいわ。」
「ハイ。」
「その前に公園通りのパルコの前で止めて。」
「はい。」

 その頃、「ベース」、「神聖な儀式」を始めた「ベース」は、その内容を大きく変えていた。「神聖な儀式」そのものも、各支部で開催されるようになり、青山墓地の裏のその場所は、上層階を執行部の事務所とし、地階を「死の部屋」をはじめとする胎動、新星の教育施設として構成されていた。ピアノのあったホールは見る影もなかった。アップグレーディングポリシーに基づく「流魂」の教育は青山の教育施設に入れることを非常に貴重なことのように演出していた。

 車はパルコの前で止まった。
「ツカサ、ちょっと待ってて。」
ヒトミはスペイン坂のそば屋の前の「ベース」を見たかった。八時過ぎのその場所は、人通りが多すぎた。ヒトミは一瞥するだけで、車に戻った。
「いいわ。もう、いきましょう。」
「はい。」
 次に、ツカサは、ヒトミの指示で、青山の「ベース」の道路を挟んで反対側に車を止めた。照明が「流魂」の看板を浮かび上がらせていた。正面のドアの前には武闘派が二人立っていた。車を降りて、ヒトミは青のビルを見た。そんなに長い時間ではなかった。車のドアを開け、乗り込んだヒトミの声が震えていた。
「どうか、なされなした。」
「なんでもないわ。」
ヒトミがツカサにもたれかかった。ヒトミの肩の震えがツカサを緊張させた
「ねえ、行こう。少し離れて、ここから少し離れて。」
ツカサはどうしていいか解らなかった。エンジンをかけ、走り出した。墓地の中に続く、舗装路を曲がって、少し奥まったところで車をとめた。ヒトミはハンドルを持つ、ツカサの左手を頭の後ろを通して、自分の肩に乗せた。ツカサの胸に頭をつけた。
「ねえ、ツカサ、二人きりのときは敬語は止めて。ね。おねがい。」
そういうと、また、震えがツカサに伝わった。
「どうされました。」
「だから・・・・。」
「すみません。どういっていいか。解らなくて・・・。」
「私ね、ヒトミに戻る時間が欲しいの。姫でなくて、ヒトミに。」
「ハイ。」
「どうして姫になっちゃったんだろうって・・・・、初めのころとずいぶん変わっちゃったなあって・・・。」
「ハイ。」
「だからあ・・・。難しいかな。なんかね。少し疲れたって感じがするの。偉そうにするのが・・・・。」


新王を探せ7

2010年03月12日 16時51分56秒 | Weblog
 秘密裏にすすめられたヒロムと仁の捜索はヒロムに付いては名古屋というキーポイントがあるので比較的にやりやすいはずだった。仁ついては、その手がかりが見つからなかった。マサミの元のアパートを訪ねても、転居先を聞き出すことはできなかった。まして、新しい「ベース」ができていることなど想像できなった。
 そんな時、ヒトミが「ベース」が青山墓地の裏手に移動した頃の六人組の住所を書いたダイアリィーを見つけた。その住所を頼りに一人づつ検証していく以外にたどり着く方法はないだろうということになった。ヒトミはツカサに指示を出した。当時は親族のフリをすれば、住民票くらい簡単に取れた。が、転居後に転居先を聞きだすことは難しかった。
 そこで、武闘派のひとりが、かつて、友人が当て逃げをされたときのことを思い出し、ツカサに進言した。その無謀な作戦は以下のように進められた。
 ヒデオが住んでいたアパートの住人をひとり、金で誘惑し、当て逃げ事件をでっち上げた。ヒデオが借りていた駐車場で友人が当て逃げにあい、その時ととまっていたのが、ヒデオの車だったと区役所で説明して、転居先を教えてくれるように頼み込んだ。一時間にわたる交渉の末、区役所の職員は疲れ果てた。
「閲覧だけですよ。書類にするとわたしが困りますから・・・。」
といって台帳を開いた。
「あっ、メモはだめですよ。」
その時、付き添った武闘派とアパートの住人が番地と住所を分けて覚え、区役所の外でメモを取った。
 その結果、ヒロムよりむしろ仁のほうが先に見つけ出すことに成功した。後に、金で誘惑されたアパートの住人が「死の部屋」に押し込まれ、脳を洗われ、「流魂」に入信したのは言うまでもない。

 その夜、ヒトミはツカサと二人だけで、新居を出た。車は、武闘派の部下が用意した。武闘派以外の常連に気付かれないように、武闘派女子部の空手の達人がヒトミの身代わりとなって、寝室のベッドにもぐりこみ、ヒトミが女子の衣装を着て、ツカサの後に続いた。車は、ホンダのライフだった。
「はは、おもちゃみたいね。」
「すみません。」
「そうじゃないわ。面白いってことよ。」
その頃はナビなどなかった。前日に、ツカサは地図を頭に叩き込んだ。振動、音、窓から吹き込む風、ヒトミは興奮した。

新王を探せ6

2010年03月08日 14時59分57秒 | Weblog
ツカサは崩れ落ちるヒトミを抱きしめ、横に寝かせた。荒い息が静かになると、ヒトミはツカサの胸に手をのせた。
「あなたは素敵よ。」
ヒトミはツカサの頭を両手で押さえるようにして口付けた。
「ねえ、背中を触って。」
ツカサはビクと震えた。
「ねえ。」
ツカサは右手の掌をヒトミの背中に回した。ツカサの掌は恐怖に似た感情で震えていた。
「もう少し下よ。」
首の直ぐ下にあった掌をゆっくりとしたに移動した。柔らかな皮膚の感触が突然、ガザという感じで硬い皮膚の突起に当った。掌は震えながら、背中を離れようとした。
「だめ。触って。」
掌はその突起から始まる傷の上にとどまった。
「そこがね、私のあなたの絆よ。けして切れることのない絆よ。しっかり触ってみてね。」
ヒトミは背中に手を回し、ツカサの腕を取った。円を描くように背中の傷をツカサになぞらせた。
「抱いて。」
ツカサはヒトミを抱きしめた。
「もっと、強く抱いて。」
ツカサは傷から掌を離せることでほっとした。そして、ヒトミが壊れない程度の力で身体の接触している部分から全ての体温が感じられるほどに抱きしめた。
「私ね。あなたが好きよ。だからね。・・・・・。「流魂」はね、もう、ヒロムのものでも、私のものでもないわ。私やヒロムの指示として、あなたたちに伝わるのは、皆、執行部の決定なのよ。私たちは、もう、飾りでしかなかったの。だから、ヒロムは出て行ったんだと思うの。
 あの時、執行部の人たちが本気でヒロムを探そうとしていないのがわかったの。でも彼らは、何も決めないわ。決めたとしても会議をしないとだめなのよ。責任を取りたくないから。なにかね。ヒロムがとても可哀想に思えて、これで見つかっても、ヒロムの魂が戻らないような気がして、それでね。私が言ったの。」
ヒトミは胸に着けていた顔をツカサのほうに向けた
「あれからね。私も怖くなったの。執行部にとって、私も、いつかいらなくなる時が来るんじゃないかって・・・・。」
ヒトミはツカサの男にしては大き目の乳首を撫でていた。
「あなたが私を傷つけた。でもね。それは姫の背中なの。だからね。ヒトミとしてね。あなたが私の支えになって欲しいの。」
乳首に口付けた。
「お願いがあるの。」
「はい。」
「執行部には内緒で、仁とヒロムを探して欲しいの。」
「えっ。」
フニャとしたツカサ自身をまさぐった。
「お願い。私ね。力が欲しいの。あなたの力が・・・・。」
「うっ。」
ヒトミの手に力が入った。
「ねえ、もう一度、背中を触って・・・、ううん、背中にキッスして。」
ヒトミはツカサ自身を握ったまま、うつ伏せになった。そして、ツカサ自身を自分の尻の上に置くようにしてツカサを導いた。ツカサはヒトミをまたぐようにして、ヒトミに重なった。両手を突っ張って、上体を起すと、隠微な照明の中で背中の傷が浮き上がった。ツカサは涙が出そうになった。
「ねえ、キッスして、優しくキッスして。」
ヒトミの背中に暖かな滴が落ちた。震えながら、それをなぞるようにツカサはキッスした。



新王を探せ5

2010年03月05日 17時37分10秒 | Weblog
ヒトミはツカサ自身を両手で触っていた。
「もう一度、しよう。」
そういうと肌掛けの中にもぐりこんだ。隠微な照明の中で、ヒトミはツカサ自身をまた、くわえた。
「姫。」
大きく勃起すると唇に力を入れ、吸い上げた。プオンという音とともにヒトミは唇を離した。
「ツカサ、素敵よ。」
上になって、ヒトミ自身でツカサ自身をくわえ込んでから、ヒトミが聞いた。
「ツカサはどうして、そんなに素直なの。」
「いえ、・・・・。」
腰を動かしながらヒトミは聞いた。
「ツカサは満足しているの。」
「私など、生きていく価値のない人間です。姫を傷つけ、命を奪おうとしました。そんな私を、宰と姫がお許しくださった。今ここにいることだけでも、私には、もったいないと思います。」
「完璧ね。ヒロムと執行部の研究成果ってとこかしら。」
ツカサはヒトミのテンポに合わせて腰を使った。
「ウン。」
ヒトミの身体がよじれた。
「でもね、ツカサ、あなたはとても綺麗よ。そして、武闘派をまとめる力もあるわ。その力を使えば、「流魂」の中で、もっと上にいけるんじゃない。」
ヒトミの腰の動きもツカサと同調する形で激しくなった。
「ウン。ウン。アン。」
会話を続けるのが・・・・・
「ね、ねえ、ねえ、ねえ。」
こんな時でも、ツカサは発射するタイミングを計っていた。ヒトミが満たされるまで、じっとこらえた。
「いい、いい、いいよ。いいわ。ねえ、ねえ、ねえ。」
ひとみ自身がピクンと震えて、ツカサ自身を締め付けた。さらに激しく腰を使い、ヒトミのタイミングに合わせて、ツカサは発射した。
「あっ、いいー。」
付きあげた腰の上でヒトミが仰け反った。しばらくその状態をキープして、ヒトミの身体を支えながら、ゆっくりと腰を元の位置に戻した。
 ヒトミはツカサ自身をくわえ込んだまま、ツカサの腹の上で、手を付き、うなだれた。
ひとみ自身がピクン、ピクンとツカサ自身を締め付けた。そのたびに、ツカサ自身も萎える前の踏ん張りで、ピクン、ピクンと動いた。

新王を探せ4

2010年03月04日 14時17分08秒 | Weblog
 女性たちがヒトミの身体から水滴を丁寧に拭き取るまでにツカサは自分の身体を拭き、バスタオルを腰に巻こうとした。ヒトミはそのバスタオルを剥がした。
「お願い。」
そういうとツカサはヒトミを抱きかかえベッドルームに戻った。

 時々、ヒトミはツカサをいじめた。ベッドに寝かせ、股間を踏みつけたり、立たせたままツカサ自身を紐で縛り、紐を伸ばして首にかけ、勃起してくるの眺めたり、犬のポーズでヒトミの股間をなめさせたりした。いじめというより、ヒトミの悪戯だった。ツカサはヒトミのリクエストに全て答えた。従順なツカサの行為はヒトミが姫であることを確かめるための行為でもあった。

 その日のヒトミは違った。ベッドルームに着くとヒトミはツカサをベッドに寝るように命じた。無防備な状態でツカサが天井を見上げるとヒトミはツカサの上に覆いかぶさり、濃厚なキッスをした。そして、唇と舌、指先、身体の全ての部分を使って、ツカサを愛した。ツカサ自身を口に含みもした。ツカサは緊張した。いつも、要求されることに慣れていた。尽くすことに慣れていた。だから、されることには慣れていなかった。ツカサ自身はなかなか勃起しなかった。
「どうしたの。」
普段のヒトミと比べ物にならないくらいの優しいトーンが耳もとで響いた。
「いえ。」
ヒトミは左手で睾丸を優しく包み、右手の小指と親指でツカサ自身を愛した。そして、もう一度、ツカサ自身を含んだ。快感の波が押し寄せてきた。ヒトミの口の中でツカサ自身は大きくなった。
 ヒトミは濡れていた。ツカサをベッドの上に座らせた。初めての「神聖な儀式」の時の仁とおなじ格好をさせた。足を組むツカサの外側に大きく足を開いて立ち、ツカサの顔の前にヒトミのモシャモシャがあらわれた。ツカサの鼻先をモシャモシャが唇に触れながら、徐々に降りていった。頭を抱えるようにしながら、ヒトミ自身はツカサ自身に向かった。あの時のようにすんなりとはいかなかった。ヒトミは右手でツカサ自身を捕らえ、自身に導いた。完全に結合するとヒトミの腰が動き出した。ツカサもベッドの反発力を利用して上下に揺れた。ツカサの動きの激しさが増すとヒトミは足を伸ばした。ツカサの腰は転圧機のように激しく振動した。
「アー。」
新居に声が響いた。ヒトミは大きく仰け反り、果てた。同時にツカサの分身がヒトミの内奥を満たした。不規則に震えながら、ヒトミはツカサにしがみ付いた。

 二人はベッドにもぐりこんでいた。ヒトミは主人に甘える猫のような声を出した。
「ねえ。」
「はい。」
「あの時、私が止めなかったら、ツカサはヒロムを探していたかった。」
「はい、いえ。」
「いいのよ。今日は姫じゃなくて、ヒトミが聞いてるの。」
「そんな。」
「どうしたの。」
「私にとって姫は姫ですし、宰は宰です。」
「そう。」
悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「じゃあ、ツカサ、正直に言いなさい。探すつもりだったの。」
「はっ、はい。」
「そうよね。ツカサはそういう風に造られたんだから、しかたないか。」
「あの・・・・。」
「私ね。仲間が欲しいのよ。ほんとうの仲間が・・・・。
ヒロムがあんなふうになっちゃったでしょ。それから、私はひとりなんだって、感じるの。」
「はい。」