仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

電車はゆれて

2009年01月28日 16時14分24秒 | Weblog
アー間に合った。よかったぁ。
このくらいの時間なら、座れるのね。
ふー、シャツが二枚でしょ。トランクスとズボンと、あっ、洗濯機の電源・・・・
切った。切った。
何。この臭い。ハーン。ポワゾンね。
ほんとにこの臭いで・・・・そんな気分になるのかなぁ。
自分でつけてると解らないけど、獣の臭いというよりもおしっこの臭いね。
わー、化粧もハデなこと。
夜のお仕事かなぁ。
そんなに美人じゃないけど。
足キレイ。
あっ、乗り換え乗り換え。ごめんなさいねっと。
やっぱり遠いなぁ。目黒と比べたら。
切符。切符。
エーと、ここはいらないのよね。なんか慣れないなぁ。
定期買おうかなぁ。でも・・・
毎日行くわけじゃないし。
そうか・・・・回数券でもいいんだ。あれ、電車来てる。
フー。よかった。
渋谷かー。どこに行くつもりなんだろう。
ウフ、楽しみ。
アレ、あの子。「ベース」・・・・
わかんない。昔はみんなの顔知ってたんだけど・・・・
まっ、いいか。どうしよう。声かけたら、私のことは知ってるかも・・・
はあー、座らないや。
井の頭線のほうが混んでるのよね。
あそこがいいな。綺麗だし、なんかそれっぽくないし。
アレアレ、降りるわよ。押さないでよ。
急行だったけ。もう。
あっ、座れる座れる。
アレ、あの子いないじゃない。降りたのかなぁ。
まっ、「ベース」に行くにはまだ早いかな。
駒場いいなあ、緑がいっぱいで、
「ベース」の周りも多いけど墓地だものね。
そうだ。神仙でおりよ。
違う違うよお。急行だよー。

電話の向こうでⅣ

2009年01月27日 16時20分22秒 | Weblog
ヒロム、私。

うん、連絡は取ってるんだけど。

マサミ、お店変わったみたいなの。

やっぱり、マサミの部屋に行ってみないとだめね。

そんなこと言ったってマサルも来るかどうかわからないし。

うん、うん、いいよ。今度、演劇部の車で行ってみるから。

はいはい、これから行くから、「ベース」でね。

えっ。

渋谷。

渋谷でどうするの。

嘘よ。嘘。いやなわけないじゃない。

うん、B.Y.Gね。

うん、待ってて。直ぐ出るわ。

うん、じゃあね。

電話の向こうでⅢ

2009年01月27日 12時50分37秒 | Weblog
あッ、すみません。ビューティーサロン西村ともうしますが、マサミさんはいらっしゃいますか。

はあ、お支払いがまだの分がありまして、

えっ、お辞めになったんですか。いつ、

そうなんですか。どなたか連絡先をご存知の方は・・・

すみません。

どうも、はじめまして、はい。

テツさん、ご無理を言ってすみません。

はい。はい、はい。

えっ、男性が連絡したほうがいいんですか。

お店の事情でぇ。

解りました。

大丈夫です。メモは取りましたから。

マサミさんはお元気で・・・

そうですか。あまり連絡はされてないんですか。

お忙しいところすみません。

お手数をお掛けいたしました。ありがとうございました。失礼いたします。

電話の向こうでⅡ

2009年01月23日 15時53分41秒 | Weblog
マサル。マサルでしょ。やっとつながったわ。
何処か行ってたの。旅行でもしてたの?

なに、なにかあったの。

そう、元気なの。

ヒロムが会いたがっているのよ。

どうして黙っているの。

そんな、つまらなそうに返事しないでよ。

だから、最近、みんな来ないのよ。

はい、はい、まあいいわ。時間ができたら、来てよね。

ヒロムが大事な話があるようなこといっていたから。

詳しいことは解らないわ。直接聞いてみてよ。

私、うん、変わらないけど・・・仕事は止めたは

うん、ヒロムのマンションにいるの。

何よ。へんな笑い方しないでよ。

解った。解ったわ。

そう、よろしくね。待ってるわ。

電話の向こうで

2009年01月22日 15時52分23秒 | Weblog
さびしいってわけじゃないのよ。ヒロムが忙しいからしょうがないのかな。
でもね、ヒロム、このごろ怖いくらいなのよ。
どうしてみんな来なくなったんだっていってるわ。
全部やんなきゃいけないじゃないかって

そうなの。ヒカルたちが住んでいた桜上水のマンションにいるの。

うん、そう、

あまり戻る気はないのね。

うん、それは言わないわ。
でも残念ね。
「神聖な儀式」の時を思い出すの。みんなで頑張れた時のことね。

責めてるんじゃなくてぇ。私もね。何かが変わったって思うから。

じゃあね。たまには顔出してよ。一応、「六人組」は特別だから、いつでも歓迎するわ。

うん、じゃあまた。ヒデオにもよろしく言ってね。

テンションがものを言う。Ⅷ

2009年01月19日 17時13分35秒 | Weblog
 ハルが目覚めた。身体が痛かった。頭はフラフラしていた。足をほどき、バスルームのほうに歩き出した。マーも目覚めた。マーは、何が起こったのか、思い出そうとした。やはり、身体が痛かった。特に、初めての経験に酷使された部分が。立ち上がり、ハルを追いかけた。
 マサルは、次の夢を見ていた。黒い影がマサルを追いかけていた。また、スペイン坂の「ベース」で刺されたところに刃物が刺さった。肌の奥の肉の間に刃物が侵入してきた。痛みはなかった。血が流れた。身体のすべての血が流れ出していくようだった。意識が遠のいていくのを感じた。傷口に向かって身体のすべての部分が収縮していくようだった。肉も骨もすべてが血の流れと同化し、そのまま流されてしまうような感覚。ただ、恐怖はなかった。
 バスルームの二人は身体を洗った。
「すごいな。」
マーがポツンと言った。
「ハル。」
「何。」
「なんでもない。」
マーはハルのあまりに自然な動きが気になった。
いつ、ここに来たのか。
どうして知り合ったのか。
マーの頭の中で言葉が回った。ハルがバスタブにお湯をため、石鹸を入れた。泡だらけの手がマーに触れた。マーの身体に電気が走った。感覚はまだ、テンションの中にいた。ブルッと震えた。ハルの誘いのままにバスタブに入った。ハルと一緒に風呂に入るのがずいぶん久しぶりのように思えた。バスタブの中のマーをハルはブラシで丁寧に洗った。マーはその感覚の中で先ほどの疑問が消えていくのを感じた。交代でハルを洗った。
 バスローブを着て、リビングに戻ると、マサルはまだ目を閉じていた。二人は顔を見合わせ、マサルをかかえるとバスルームに運んだ。マサルは目覚め始めていた。ゆっくりとバスタブに沈んだ。ブラシで洗い始めた二人の首を押さえ、交互にキッスした。二人は驚いた。二人は申し合わせたようにマサルの足を取り、引っ張った。マサルの頭が沈んだ。沈みながら、マサルは湯を二人にかけた。楽しかった。ハルがシャワーを取り、二人に浴びせた。笑いながら三人は子供のように遊んだ。
 そして、ハルを真中に三人で肩を組んでベッドルームに行った。三人で寝てもまだ余るベッドで寝た。

テンションがものを言う。Ⅶ

2009年01月15日 17時03分31秒 | Weblog
 何度も三人はハテた。はじめてマーはハルの中でハテた。マサルの中でも。マサルもハルの中でハテた。マーの中でも。
 上を向いて両足を天井に向けて伸ばしたハルにマーが横向きで挿入した。挿入しているマーにマサルが挿入した。
 激しさはなかった。
 強引さもなかった。
すべてが自然に進行した。そのフレーズのように淡々と高揚は増していった。
 そこには何の規制も抑制もなかった。所有も拒否もなかった。快感よりも温かい共鳴があった。魂が響きあい、肉体が溶け合った。
 マーとハルは存在の無意味さと存在の確かさを同時に感じた。
 マサルは懐かしさとともにその中に浸った。
 マサルの背中の傷にマーが気付いた。ハルも気付いた。二人は代わる代わる、その傷を舐めた。その傷からも魂の糸は進入してきた。
 マサルが刺される前の「ベース」。そこで営まれた行為。同じ次元の共鳴感が三人を包んでいた。
 部屋にはオリーブオイルと精液と愛液の甘い臭いが充満していた。彼ら自身は感じることができなくても、その臭いが彼らをさらに溶かしていった。時間の感覚もなかった。三人はお互いの手が届くところまで足を絡め合い、不思議な三角形を作った。そして、いつしか眠りについた。身体の中ではマサルがさずかったそのフレーズと魂の糸が意識の地平と無意識の深遠を繋ぐかのように大きなウネリとなって彼らを捉えていた。同じ夢でも見ているかのように。

テンションがものを言う。Ⅵ

2009年01月14日 16時14分21秒 | Weblog
 ハルの手から、マイクを取った。ハルの手がダランと落ちた。口元は動いていた。マサルが膝をついた。マーを見た。マーも膝をついた。もう一度、マーを見た。マーはハルのバスローブに手をかけた。マサルの瞳の動きにあわせて、マーはバスローブをズリ下げた。ハルの身体は綺麗だった。ややピンク色に色ずいて、薄く湯気が立っていた。思わず、背中に口づけた。ハルの身体は、ビクンとゆれ、マサルのほうに倒れ掛かった。マサルは、ハルの肩に手をかけ、ハルの身体をおこした。マサルの視線が再び、マーに向いた。視線に誘われるようにマサルの動きに合わせて、マーは立った。マサルの手がハルの肩から離れた。マサルは、掌を上に向けて、マーの腕を取った。マーの肌はマサルの掌の温度を感じた。ゆっくりとマサルの腕が移動して、マーの掌と重なった。掌から熱が伝わった。その熱がマーの心の中の嫉妬も、自尊心も、嫌悪感も、敵意も、すべてを溶かしていった。プレイの波動が続いているようだった。その波以外のすべてのものから開放されてゆくような感覚。 マーの頭の中もとけていた。マサルはマーの汗まみれのティーシャツの裾に手を掛けた。ゆっくりと持ち上げた。マーは手を上げてされるがままになっていた。ティーシャツを床に落とした。マサルの瞳が動いた。マーはマサルのシャツのボタンをはずした。シャツが床に落ちた。見つめたまま、ハルをよけるようにして向かい合った。ベルトをしていないマーのジーンズのボタンをマサルが外し、ジッパーを下げた。膝を落としながら、ジーンズを下げた。マー自身がテントを張っていた。そのテントも下げた。足を抜くとマーは裸足だった。今度はマーがマサルの脇に手を入れた。フーという感じでマサルが立った。マサルがしたようにマーもマサルのジーンズを、身体を隠すすべてのものを取り除いた。
 膝を落としているマーの背中からゆっくりとしたボディータッチをマサルが始めた。魂の糸がマーの身体の中に入っていった。二人の行為にハルも自然と溶け込んだ。触れ合いは重なりに発展した。今までにないゆっくりとしたマーの挿入をハルが受け入れるとマサルはキッチンからオリーブオイルを取ってきた。そして、ベッドルームからタオルケットを持ってきた。二人の身体をその上に誘った。上から挿入しているマーの背中にオリーブオイルをたらした。オイルは背筋からマーの割れ目に浸透した。身体の位置を変えて、挿入の形を変えて、ハルの身体にも、マサルの身体にもオイルが浸透した。ハルの身体の中に二人が入り、マーの中にマサルが、マサルの中にマーが、プレイのままに魂の糸が絡み合った。

テンションがものを言う。Ⅴ

2009年01月13日 15時45分51秒 | Weblog
 マサルはハルの胸の谷間にマイクを当てた。ハルは外部からの刺激にハッとした。トランスの中から意識が戻った。ハルは自分の身体のまわりを見回した。オーバーニーのソックス以外、すべての衣服は床に落ちていた。突然立ち上がり、胸とハル自身を掌で覆った。羞恥の感情がハルをとらえた。マサルはマイクを床にゆっくり置いた。ハルは足の指で衣服をかき集めようとした。下を向いているハルの顎にマサルは手を当てた。目が合うとバスルームの方向に視線を向けた。ハルは、マサルの意図を感じた。走り去るようにハルはバスルームに向かった。後ろから聞こえる音がハルに裸体となった意味を教えていた。バスローブをはおり、ハルが戻った。マサルの視線がマイクを持てというかのように動いた。
 そして、マーとマサルの音が再び、ウネリの応酬に変わった。耳から入る音、いや、身体全体にウネリは押し寄せた。バスローブの帯を解いて、ハルは肌にマイクを押し当てた。右手で胸の谷間にマイクを当て、乳房を左手の掌で押した。
「ザザ、ズーザザ」
可笑しな音がスピーカーから飛び出した。よろけて、マイクが床に落ちた。
「ゴン、ゴゴゴ。」
慌ててマイクを拾った。ハウリングが起きた。
「キーン。キー。」
ハルはマイクを左手で持ち、右手はハル自身に向かった。ウネリが再び、あのフレーズへと変化していった。
「すー、はー。」
ハルの吐息をマイクが拾った。その音はハルを先ほど感じた羞恥心から開放していった。勝手に動く右手の指先。
「アウ、アウ、アーン。スー、ハー。」
リフレインが波のように続いた。
「アッ、アッ、アッ、アッ、アッ、・・・・」
絶妙のタイミングでハルの声が重なった。単調でありながら、「エロチック」なフレーズは強さを増したかと思うとやわらかになり、激しくなったかと思うと、小さくなった。興奮は徐々に増した。フィルインもなく、アドリブもなく、淡々と繰り返されるリフレイン。
「アーウッ。アーウッ。アーウッ。アーウッ。」
そして。
「アー。」
ハルの声が響いた。ハルの膝が床に落ちた。しばらくの間、ハルの身体はユラユラと揺れていた。マイクをダランと下げていた。再び、マイクを両手で持った。唇にマイクが張り付いた。尻を床に付けた。
「抱いて。」
ヴォイスが響いた。リフレインとヴォイスがリビングを回りだした。波動が彼らの身体を揺さぶった。マサルがマーの前に移動した。視線がマーに向けられた。マーの顔がマサルのほうに移動した。視線がマーのプレイを止めさせた。視線はハルのいる場所へ誘った。マーは最後に、掌でトップシンバルを引っ叩き、ハルの後ろに立った。マサルはそのサスティーンにフレーズの最後の音を重ね、アンプにギターを向け、その音をフィードバックさせた。ハルのヴォイスは続いていた。マサルはマイクのヴォリュームを下げた。そして、ゆっくりとハルの前に立った。

テンションがものを言う。Ⅳ

2009年01月08日 17時54分47秒 | Weblog
 ハルの細い指が動いた。ほとんどトランス状態に入っているハル。指先が自分のそれとは思えなかった。指先は音の進入経路を探すかのように勝手に動いた。頭をかきむしり、耳を押さえ、顔面を這って、首筋、乳房、腹、下腹部へと流れていった。ハル自身を通り過ぎ、太腿から足先へ、そして、再び、ハル自身に向かった。立ったまま、指に先導され、ハルの身体は折れ曲がり、指がハル自身に向かうと膝を落とした。
 マサルも、マーもハルの変化に気付いていなかった。二人は激しい音の応酬の中で、言葉のいらない会話を交わしていた。会話はやがて、抱擁になり、愛撫に変わり、セクスへと発展していった。そんな中から、マサルのフレーズが生まれた。それに呼応して、マーのドラミングもゆっくりと挿入が始まったかのように変化した。二人とも勃起していた。今まで一度も目を合わせなかったマサルがマーを見た。同時に、マーもマサルを見た。エクスタシーを彼らは同時に感じた。そして、微笑んだ。言葉のいらない信頼感が二人にはできていた。そしてまた、同時にハルを見た。二人は同時に驚いた。
 ハルもこの渦の中で同じものを感じていると思った。ハルの指は自身に触れようとしているところだった。マサルは、左手だけでフレーズを崩さないようにフレットを叩きながら、ミキサーのマイクのボリュームを上げた。マーの音は既にマサルの次を知っているかのようにフレーズを補った。