もし、このまま、ツカサが許してくれたら、二人で遠いところへ行きたい。
誰にも会うことのない遠い遠いところへ
誰にも気付かれない遠い遠いところへ
私が生きていたことを知る人がだれもいない遠い遠いところへ
でも、でも、怖い。怖い。
ヒトミの震えがツカサに伝わった。
「ねえ、ツカサ、私と・・・・。」
「なんでしょう。」
「私と・・・。」
言葉にはならなかった。沈黙が怖かった。
「私なんか生きている価値、ないでしょう。」
「何を言うんですか。」
「だって、いつも自分のことしか考えてないし、自分がよければいいって・・・。代々木の大会のとき、はじめて知ったの。「流魂」が凄く大きくなってて、そして、その中の何人かは・・・・。わたしは、姫だったんだって。」
「姫、いえ、ヒトミさん。彼らにとっても、私にとっても、姫は姫でした。そんな言い方をしていいのかわかりませんが、姫は姫ではなくなりました。」
「どういうこと。」
「私は、貴重な体験をしました。死の意味を考えました。そして、姫と宰が生きる意味だと思いました。ただ、私の武闘派が私を拘束したとき、私の中で・・・
姫をお守りするために常におそばにいようとする私を、彼らがそうさせなかったとき、いえ、もっと前から、わたしの心は「流魂」から離れていたのかもしれません。姫が姫でなく、ヒトミさんだといわれた日から、いいえ、宰がお隠れになったときからかもしれません。」
「あの時は、私もヒロムを見捨てたわ。私が姫で・・・。」
「そうかもしれません。でも、ヒトミさんは、あの時、宰が苦しんでおられるのを知っておられた。」
「そんな、優しくしないで・・・。」
「姫、いえ、ヒトミさん、私は生きていることの罪を「流魂」で知りました。虚無を知ることで、意味のない生き方を知ることができました。宰のため、姫のために生きることが、わたしの全てとなりました。しかし、あなたが姫でなく、ヒトミと言われたとき、私は、全ての価値が変わっていくように思えたのです。
私の恋人を飲み込んだ「流魂」。そして、今、姫も宰も見捨てる「流魂」。
あなたのそばにいます。あなたのそばにいることを許してもらえるのなら、私は・・・。」
「ツカサ、わたしもうね。生きていけないかもしれない。」
「いえ、あなたが生きていなければ、私は守ることができません。」
「ツカサ。」
「私は、いつ、この世界から離れてもいいのです。でも、あなたと、あなたと生きていたいと思うのです。」
「ツカサ。」
それしか言えなかった。ヒトミは涙がボロボロ出ているのに気付いていなかった。
ツカサの手が涙をぬぐった。
誰にも会うことのない遠い遠いところへ
誰にも気付かれない遠い遠いところへ
私が生きていたことを知る人がだれもいない遠い遠いところへ
でも、でも、怖い。怖い。
ヒトミの震えがツカサに伝わった。
「ねえ、ツカサ、私と・・・・。」
「なんでしょう。」
「私と・・・。」
言葉にはならなかった。沈黙が怖かった。
「私なんか生きている価値、ないでしょう。」
「何を言うんですか。」
「だって、いつも自分のことしか考えてないし、自分がよければいいって・・・。代々木の大会のとき、はじめて知ったの。「流魂」が凄く大きくなってて、そして、その中の何人かは・・・・。わたしは、姫だったんだって。」
「姫、いえ、ヒトミさん。彼らにとっても、私にとっても、姫は姫でした。そんな言い方をしていいのかわかりませんが、姫は姫ではなくなりました。」
「どういうこと。」
「私は、貴重な体験をしました。死の意味を考えました。そして、姫と宰が生きる意味だと思いました。ただ、私の武闘派が私を拘束したとき、私の中で・・・
姫をお守りするために常におそばにいようとする私を、彼らがそうさせなかったとき、いえ、もっと前から、わたしの心は「流魂」から離れていたのかもしれません。姫が姫でなく、ヒトミさんだといわれた日から、いいえ、宰がお隠れになったときからかもしれません。」
「あの時は、私もヒロムを見捨てたわ。私が姫で・・・。」
「そうかもしれません。でも、ヒトミさんは、あの時、宰が苦しんでおられるのを知っておられた。」
「そんな、優しくしないで・・・。」
「姫、いえ、ヒトミさん、私は生きていることの罪を「流魂」で知りました。虚無を知ることで、意味のない生き方を知ることができました。宰のため、姫のために生きることが、わたしの全てとなりました。しかし、あなたが姫でなく、ヒトミと言われたとき、私は、全ての価値が変わっていくように思えたのです。
私の恋人を飲み込んだ「流魂」。そして、今、姫も宰も見捨てる「流魂」。
あなたのそばにいます。あなたのそばにいることを許してもらえるのなら、私は・・・。」
「ツカサ、わたしもうね。生きていけないかもしれない。」
「いえ、あなたが生きていなければ、私は守ることができません。」
「ツカサ。」
「私は、いつ、この世界から離れてもいいのです。でも、あなたと、あなたと生きていたいと思うのです。」
「ツカサ。」
それしか言えなかった。ヒトミは涙がボロボロ出ているのに気付いていなかった。
ツカサの手が涙をぬぐった。