仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

ほんとはねⅤ

2008年10月31日 17時08分44秒 | Weblog
 マサルは何種類かあるブラシの中から、一番、毛の柔らかいハンディータイプのを取った。泡だった石鹸をブラシの先ですくって、ハルの右手を取った。マサルの左手の掌の中にハルの右手がすっぽりと入った。手の甲から腕にマサルは優しくブラシを動かした。
「くすぐったいよう。」
そういいながらも嬉しそうな顔でハルはマサルを見た。慌てて洗った顔には薄くマスカラの後が残っていた。化粧で武装しないハルの顔はあどけなさが残る可愛い顔だった。マサルは肩から胸元、反対の手と身体をのりだすようにして、ハルの肌にブラシをかけた。刺激は優しかった。皮膚の表面から電気のような信号が体の中を走り出した。強く刺すような刺激ではなかった。電気が一度、身体の中心に集まり、柔らかい刺激になって表層に戻ってくるような流れ、暖かな流れをハルは感じた。高揚は静かに始まった。
 マサルはハルをかかえ上げ、バスタブに座らせた。背中を、胸を、自身を、優しいブラッシングが包んでいった。腕を上げ、脇を、バスタブに入り、腰を下ろしてハルの足を肩にのせ、太腿から足首にブラシを滑らせた。マサルはハルにブラシをかけながら、自分がしている行為が誰か他の人がしていることのように、遠くから見ているような不思議な感覚にとらわれた。
 何故、ハルの身体を洗っているのだろう。
こうしてゆっくりと見るハルの身体は華奢だった。身体全体にあどけなさを感じた。一部分、発達したバストは別として。
 動かすブラシを見ながら、マサルは懐かしさを感じていた。それはマサルが洗うのではなく、マサルがブラッシングをされている記憶だった。高校を卒業するくらいまで、風呂で清美さんがマサルの身体を洗ってくれた。マサルが十歳くらいの時に清美さんは見習いでマサルの家に来た。忙しい両親に代わってマサルの面倒を見ていた森口さんの下で働いていた。森口さんは子供のころからマサルを風呂に入れたり、公園に連れて行ったりしてくれた。遊び半分でマサルの入浴を担当するようになった清美さんは弟でもできたように楽しそうにマサルの身体にブラシをかけた。時々、遊びは別の方向に進みもしたのだが。
 ブラシの感触は気持ちがよかった。小学校のころは清美さんも裸で入ってきた。年齢が進むにつれて、水着をつけるようになったのだが、それがかえっておかしなことになる原因になったのかもしれない。局部まで任せるマサルもその原因を作っていたのだろう。恋愛とはまった違う感覚で二人は性的な遊びを楽しんだ。今、ハルにブラシをかけながら、マサルはなぜか、楽しくなっていた。

ほんとはねⅣ

2008年10月30日 13時19分21秒 | Weblog
「ねえ、よかった。」
「何?」
「だからー、昨日よかった。」
マサルの頭の中でさっきのハルの言葉がよぎった。
「よかったよ。」
「ほんと!嬉しい。」
両手を後ろに回して、マサル自身を握った。マサルの手はハルの乳房を優しく擦った。乳首を人差し指と中指ではさんで震動をくわえた。
「アンっ。」
ハルの身体がビクンと揺れた。さらに、中指を立てて、乳首の先端に震動を加えた。
「アンっ。」
ハルの腰が落ちて、マサルの手から離れた。ハルはそのまま、マサルのほうを向くと、マサルのジーパンのファスナーに手をかけた。ファスナーを下げると左手でジーンズを開いて、右手を中に入れてきた。マサルは慌てた。両手が宙に浮いた。トランクスを下げて、中位の状態のマサル自身を取り出した。両手で、握ると、先に唇を当て、しごき始めた。ハルの握る力がギュッという感じで強まった。根本から先っちょへ力強い前後運動が始まった。昨日と同じように性的興奮と言うよりも肉体的反応で、ハルの握り締める力に反発するようにマサル自身が大きくなった。ハルの右手が前後運動を続け、左手がマサルの股間の下に移動した。先っちょの唇はマサル自身をくわえ込み、力を入れ、吸い付くようにしながら前後運動に入った。肉体的反応は頂点に向かった。マサルはハルの肩を叩いた。
「ねえ。」
声をかけるとくわえたままハルはマサルを見上げた。
「ちょっと待って。」
ハルの唇が自身を放した。
「どうしたの。」
「うん。」
「気持ちいいでしょう。マーちゃん、これ好きなのよ。いつもイイっていってくれるの。」
マサルがハルの肩に手をかけ、少し力を入れて身体を離した。
「待って、私も準備するから。」
そう言うとマサル自身から手を離し、立ち上がり、チェックのスカートの両脇を持ち上げ、パンティーに親指を入れてスーっと降ろした。右足を抜いて、膝を落とすと、少し腰を上げ、両手をスカートの中にしのばせた。
「ねえ。」
マサルを見た。
「見ないで。」
そういいながらも、ジーパンから突き出している斜め四十五度に勃起したマサル自身を左手で捕まえ、自分の口のほうに引っ張った。
「ちょっと待ってよ。」
「どうしたの。マーちゃんこういうの大好きなのよ。こういうふうにするといい女だって言ってくれるの。」
確かにマサルの経験したことのない状況だった。ただ、肉体的な脳の反応のようで、性的興奮を感じなかった。
「僕はマーちゃんじゃないから、もう少しゆっくりしない。」
「エッ。男の人ってこういうの好きなんでしょ?」
「なんか無理やりみたいで・・・・、」
ハルは自身から手を離した。
「じゃあ、どうしたらいいの。ねえ、どうしたらいのよー。」
ハルの顔が崩れた。涙がこぼれた。
「わかんないもん。マーちゃんはイイって言うもん。」
両手で顔を覆い、泣き出した。マサルは困った。マサル自身がダランとしてジーパンの窓から出ていた。一度、自身をトランクスに仕舞い込み、ファスナーを上げた。恐る恐るハルに近づいた。どうしていいか解らなかった。ブラウスと腕の間から覗く乳房の線が色っぽかった。ハルの前で跪いて、ソウッと抱いた。ハルはそのまま、マサルに身を任せた。
「私、おかしくなちゃったの。マーちゃんこと好きよ。でもね。でもね。昨日からおかしくなっちゃたの。お店にいてもあなたのことが気になって、いっぱい、失敗しちゃった。マーちゃんのことは好きだけど、あなたのことも好きになちゃったの。どうしていいか、解らないんだもの。」
マサルは返事ができなかった。ハルの頭を撫でた。ハルの顔が動いた。マサルはハルに口づけた。ハルの手がマサルの背中に回った。
「ねえ。」
唇を離して、腕を取り、マサルはハルを見た。ハルの顔にはマスカラの線ができていた。
「シャワー浴びない。」
落ち着いたのか、ハルは肯いた。腕のボタンを取って、ブラウスを肩からはずし、ブラも腕を這わせた。ハルをかかえたまま立ち上がり、腰に手を回して、スカートのファスナーを下ろした。ヒラリという感じで足元に落ちた。マサルはハルを抱きあげた。記憶の中のハルがいた。オーバーニーのソックスだけの裸体は非常にエロチックだった。
「僕のも脱がして。」
マサルを脱がすのは簡単だった。トレーナーの裾を持って引っ張った。大き目のバックルをはずして、ファスナーを降ろせばそのまま足元に落ちた。トランクスにハルが手をかけた。腰を落としながら下げた。ダランとしたマサル自身を見た。
「大きいね。」
マサルは自身を手で隠した。片手でハルの腕を取って、立たせた。ハルを抱きかかえ、リビングのドアを足で開け、キッチンの隣のバスルームの前で下ろした。全面がガラス張りの洗面台を見た。
「凄いね。ホテルみたい。」
鏡に映った自分を見て、洗面台に足をかけ、ソックスを丸めた。丸めながら、鏡に映った顔を見て
「凄い顔になっちゃった。石鹸かしてね」
と言うと洗顔石鹸を取って、顔を洗った。
 バスルームは、外人向けのマンションだけあって広かった。足の付いたバスタブがあり、ひまわりの形のシャワーヘッドがその上にあった。マサルはバスタブにお湯を溜め、粉石けんを振りまいた。
「お洗濯みたいね。」
ハルは不思議そうに見ていた。泡だったところでマサルはハルを抱いてバスタブに入れた。足を伸ばしてバスタブの淵に頭をのせてもまだ余裕があった。
「アー気持ちいい。」
思わず声が出た。

ほんとはねⅢ

2008年10月28日 16時14分11秒 | Weblog
「ねえ、音、聞こえなかった?」
「同じこと、聞こうと思ってた。」
二人はそこにいないキーボードの音やヴォーカルの声が聞こえていた。
「でも、マサル、凄いね。レコード聴いてるみたいだった。」
「明菜もいいリズムしてたよ。」
「ハルって呼んで。」
「何で。」
「ほんとはね。春菜って名前なの。」
「明菜じゃないの。」
「それはお店に出る時の名前よ。」
「もう一回、何かやる。」
「ううん、やめとくわ。今度失敗して、今みたいな感覚になれなかったら、もったいないもん。」
マサルはギターをはずした。ドラムセットの中に座っていたハルはスティックをケースに戻し、マサルに近づいた。マサルがギターをスタンドにおいて振り向くと、目の前にハルがいた。
「アーびっくりした。」
ハルはマサルに抱きついた。
「どうしたの?」
「いいじゃない。もうしちゃったし、感動したの。」
マサルも胸に耳を当てているハルに手を添えた。
「ほんとはね。あなたが二人目なの。お店で誘われても、どうしてもそんな気にならないの。」
「そう、ずいぶん慣れてる感じがしたけど。」
「もう、あなたって、ほんとに鈍感ね。昨日のがほんとうか、試そうと思ったのに。」
ハルはマサルから離れると背を向けた。
「ほんとうに感動してたのに・・・・。マーちゃんをはじめて見たときくらい感動してたのに・・・ううん、それ以上だったのにー。」
「どうしたの?なに、怒っているの?」
マサルがハルの肩に手をかけた。イヤイヤをするようにハルが肩を震わせた。
「ほんとに軽い女じゃないのよ。昨日ははじめてだったし、あなたがとても綺麗だったし・・・・ほんとにマーちゃん以外の人としたことないんだから。」
マサルは後ろからハルを抱いた。ハルはマサルの腕を取った。
「マーちゃん、ドレムでしょ。住むとこ、大変なの。もう何回も引越したのよ。練習してると怒鳴られて・・・やっとね。今のマンションが見つかったの。ピアノ弾いてもいいとこで、一階の隅の部屋だから、文句言われないのよ。」
ハルは身体をユラユラさせた。マサル自身がハルの腰の辺りに密着した。
「でもね。お金が足りないの。だから、お店に・・・・・。」
「マーちゃん、好きなんだね。」
「そうなんだけど・・・・。」
マサルはブラウスのボタンの間に手を入れた。ハルは一度、その手を押さえた。マサルの手が止まった。押さえた手が離れて、マサルの手の下のボタンをはずした。
 ゆっくり中指を肌とブラの間に忍ばせた。柔らかかった。指を乳首の周りで遊ばせて、谷間に戻るとハルがまた手を押さえた。フロントフックブラだった。指でカチャカチャすると簡単に外れた。掌を拡げた。ハルはマサルの手の上のボタンもはずした。その手は下のボタンもはずした。すべてはずし終わると、マサルとハルの身体の間に入ってきた。ジーパンの上から、ハルはマサル自身を触った。まだ、半分くらいだった。マサルはハルの耳たぶにキッスした。

ほんとはねⅡ

2008年10月27日 16時04分23秒 | Weblog
そう言うと、ソファーの前のテーブルに置いたグラスを持って一気に飲み干し、ステレオやビデオの隣に位置する楽器のほうに歩き始めた。
「凄いねー。ほんとにスタジオみたい。」
ドレムスの前で止まると振り向いた。
「ねえ、触ってもいい。」
「いいよ。」
カーデガンを脱いで、マサルのほうに投げた。ドラムスの椅子に座った。
「スティックは?」
「フロアーの横にあるけど。」
「あった!」
明菜はベードラを踏み、簡単なエイトビートを刻んだ。
「ドレム叩けるんだ?」
「これしかできないけど。」
「誰かに習ったの?」
「習ったわけじゃないけど、彼がドラマーなの。」
「彼がいるの?」
「彼がいるから、働いてるの。」
「何で?」
「ねえ、ギター弾いて。」
マサルも一気に飲み干して、ギターを取った。明菜のドレムは単純だった。単純なせいか心地のいいエイトビートが感じられた。明菜の叩くテンポにのれそうな「スモークオンザウォーター」をマサルは試した。ビデオシステムとシイクロするときよりも自分の音が際立った。明菜のリズムはフィルインもなければ、ユニゾンもなった。ただ、ただ、エイトビートを刻んだ。
 スネアが少し遅れた。それが一拍目と三拍目を長くした。その微妙な遅れが二人で作る拍の長さにグルーブをつけた。マサルはライブインジャパンのフルコーラスを演奏した。エンディングのブレイクはさすがに外したが、明菜は必死で付いていった。
 音の止まった中で二人は余韻に浸った。

ほんとはね

2008年10月24日 15時14分55秒 | Weblog
マサルはソファーの前に立っていた。
「どうして立ってるの。」
言われて気づいた。
「こっちに座らない。」
マサルは明菜の横に座った。
「私のこと、どう思っている?」
「どうって?」
「昨日はね。私、ナンパするのも・・・・・・。されたのかな。はじめてだったし、ちょっと、変だったの。」
「へんって?」
「だから、私ね。そんなに軽い女じゃないよ。」
「そんなのどうでもいいよ。僕も一人でいたくなかっただけだし。」
明菜は一瞬、マサルを見た。マサルは明菜のほうを見ていなかった。明菜がうつむいた。髪が明菜の顔を隠した。しばらく沈黙が続いた。
「あなたって正直ね。」
顔を起し、マサルを見た。冗談ぽく、言った。
「でも、もてないわ。」
「そうなの。」
「綺麗な顔なのにね。」
明菜は立ち上がった。
「でもいいわ。正直な人は好きよ。」

受話器の向こうでⅢ

2008年10月23日 16時11分22秒 | Weblog
坂の中腹まで、ほぼ全力疾走で走った。エントランスを抜けて、階段を駆け上がり、マサルの部屋の前で手を離した。息が切れていた。マサルは鍵を開けて中に入り、腰を下ろした。膝に手を当て、明菜は、ハー、ハーしていた。
「ここがあなたの部屋なの。」
「そうだよ。」
「凄いわね。」
「そんなことないよ。」
「どうして走ったの。」
「いいから、中に入りなよ。」
マサルは手を差し出した。明菜は、苦しげに身体を起こして手を握った。クッと引いたかと思うとマサルの上にダイブした。明菜の身体がマサルの上に重なった。マサルの胸に柔らかいブラの中の乳房の感触が伝わった。マサルの顔の横に明菜の顔があった。明菜は上半身を起し、マサルの顔を見た。
「どうして走ったの。」
「早く、二人きりになりたくて。」
「うそ。」
そういいながら明菜は嬉しそうな顔をしてマサルにキッスをした。マサルの開いた股の間に明菜の足があった。自身の上に自身があった。明菜の唇が、マサルの下唇を噛み、唇を開かせた。舌が唇の周りを一周した。薄く開いた唇から明菜の舌が入ってきた。ツンツンとマサルの舌を突き、上から下へ、下から上へと絡みつき、マサルの舌を誘い出した。マサルの舌が明菜の唇を通過した瞬間、明菜はマサルの舌を思い切り吸った。根本から引きちぎられそうな痛みをマサルは感じた、と同時に、わずかな快感も。痛みが快感を上回った。マサルは明菜の背中を叩いた。明菜は唇を離した。
「うそをついたからよ。」
そう言うとマサルの上から降りた。マサルの横に座ると、部屋を見渡した。マサルは口をガクガクさせながら、身体を起こし、ドアを閉めた。明菜はリビングに上がり込んでいた。
「凄い部屋ね。」
明菜はリビングを歩き回りながら言った。
「バンドやっているの?」
「やってないよ。」
「凄い機材じゃない。」
「ああ。」
マサルは明菜の行動を横目で見ながら、寝室へ入り、窓を開けた。道路を見下ろした。ミサキはいなかった。フーと溜息をついて、リビングに戻ると明菜がソファーに座っていた。
「スタジオみたいね。」
「うん」
「全部できるの。」
「全部じゃないけど。」
「何をやるの。」
「ギターかな。」
「これってビデオ。」
明菜はビデオシステムを指差していった。
「そうだよ。」
「何か見せて。」
マサルはセットされていた「ウッドストック」のビデオを再生した。ジミヘンが終わりそうだったので、ジミヘンの頭まで戻した。
「これね。」
「そう。」
明菜の視線はビデオに奪われた。
「何か飲む?」
「何があるの?」
「うーん。」
「何でもいいけど、昨日みたいのは止めてね。あの後、お店で大変だったんだから。」
「解った。」
マサルがキッチンに行こうとすると電話が鳴った。
「マサルさん、清美ですけど、今日はいらっしゃるんですか。」
「ああ、清美さん、今日は友だちがきてるから、いいよ。」
「でも、今週はまだ一度もいってませんし。」
「じゃあ、明日きて。」
「解りました。」
マサルが受話器を置くと、明菜が聞いた。
「誰?」
「誰って・・・。家政婦の清美さん、週に二回くらい掃除しにきてくれるんだ。」
「家政婦?」
あたりを見回した。
「散らかっているけど綺麗よね。この部屋・・・、ベンベーも、白金のお家も凄いけど・・・・お金もちなんだねえ。」
明菜は溜息をついた。マサルはキッチンに行ってコーラとウォッカを持ってきた。
「昨日、何か入れたでしょ?」
「エッ。」
「あの後もなんかムラムラして・・・・。」
「ウォッカ?」
サイドボードから、グラスを出した。
「あっ、氷いる?」
「ええ。」
マサルがキッチンから氷を持ってくると明菜はグラスにコーラとウォッカを入れていた。マサルからアイスペールを受け取り、キューブアイスを二、三個落とした。
「下北、よく来るの。」
「住んでいるの。」
「エッ。」
「北口のほうだけど。」
「そうなんだ。」
マサルは何か嬉しかった。マサルの部屋に人が来ることはほとんどなかった。明菜の顔を見た。かなり濃い目の化粧だった。でも綺麗だった。
「この部屋、涼しいね。」
「寒い?」
「いいえ。クーラー?」
「うん。」
明菜はまた部屋を見回した。
「違うんだねえ。」
「何が?」
「生活が。」
明菜はウォッカ入りコーラを口にした。マサルも気付いたようにコーラを手にした。
「どうして、原宿にいたの。」
「うーん、買い物ってのは嘘でえ。」
「今日、同伴してくれる人、探していたの。」
「それで、僕が引っ掛かったわけか。」
「違うわ。あんなことしたの、はじめてよ。私、同伴できなくて、先輩がナンパするんだよって言うから・・・・」
「そうなの。」
「あなたこそ。原宿でナンパしてるんでしょう?」
「うーん、ナンパはしようとするけど、成功はしたことないよ。」
「嘘、」
「嘘じゃないよ。」
「そんなに綺麗なのに。」
「綺麗?」
「あなたの顔って、魅力的よ。あなたじゃなければ、車に乗らなかったわ。」
「ほんと?」
「あなた、自分のこと、いい男だと思っているでしょ。?」
「なに言ってるんだよ。そんなこと思ったことないよ。」
明菜は髪留めを外した。髪をほどいた。
「ねえ。」
明菜はグラスを置いた。マサルを見つめた。

受話器の向こうでⅡ

2008年10月22日 11時55分25秒 | Weblog
マサルはギターを持たなかった。ジミヘンのギターを聴いた。チューニングが完全とはいえないその音色は微妙なチョーキングやハマリングで、その音自体の正確性を問題にしなかった。それのフレーズもノートを外れても気にならない存在感があった。それはエロチックだった。性的興奮にも似た高揚感がマサルをとらえた。マサルが音量を上げた。立ち上がり、キッチンに行こうとした。電話が鳴った。ソファーに戻り受話器を取った。
「はい。」
「下北着いたよー。」
明菜だった。
「凄い音ね。あれ、ジミヘン聞いているのー。」
マサルは音量を下げた。
「ジミヘン知ってるの。」
「アッ、うん、たまに聴くの。」
「へー、びっくりだね。」
「どうして、いいじゃない聴いたって。」
「女の子でジミヘン聴くって、あまり聞いた事ないから・・」
「女の子はベーシティーローラーズでも聴いてればいい、なんて思っているんでしょ。」
「そんなことないよ。」
「ねえ、どこの住んでいるのよ。」
「ここくるの?]
「南口、北口、どっち?」
「南口。」
「ケンタッキーのほう、ロフトのほう?」
「ケンタのほう。」
「解ったわ。茶沢通りで電話するね。」
電話が切れた。切断音が聞こえていた。しばらくそれを聞いていた。けして、昨日のホテルがよかったわけではなかった。けれども期待が何処かにあった。受話器を置き、電話を見ていた。
 電話が鳴った。
「ケンタッキーの向かいの本屋の前にいるから、迎えに来てね。」
返事も聞かずに切れた。切断音が鳴っていた。マサルは慌てて着替えた。トランクスも新しいのにした。バスルームで鏡を見て、鍵だけ持って部屋を出た。
 マサルは坂を下った。明菜は本屋の前で雑誌を手にしていた。昨日とは違い、赤いコンバースのショートカットと緑と赤、黄色のボーダーのオーバーニーのソックス、チェックの膝上のスカート、胸にフリルの付いたブラウスに淡いピンクのカーデガンというスタイルだった。髪を結い、後ろでまとめ、顔の輪郭がはっきり解った。マサルの目はなぜかオーバーニーのソックスに集中した。昨日の事が頭の中で映像になった。ベッドの上で明菜はソックスを脱いでいなかった。バスルームに消える後姿、黒のオーバーニーのソックスが全裸でいるよりもエロチックだったことを思い出した。フラフラでわけもわからない状況だったのに、それは記憶されていた。突然、股間が反応していた。
 マサルは茶沢通りの反対側で止まった。明菜は直ぐに気付き、手を振った。嬉しそうな笑顔が綺麗だった。昨日は顔の表情まで記憶に止めることはできなかった。とその後ろに、ケンタッキーの向こうのパチンコ屋のあたりに、ミサキがいた。マサルは慌てて手招きをした。明菜は車の来るのもかまわず、道路を渡った。クラクションの音が響き渡った。マサルは明菜の手を取ると走った。抱きつこうとした明菜はよろけながら、マサルにつられて走った。チラッとマサルは後ろを見た。ミサキは気付いていないようだった。

受話器の向こうで

2008年10月21日 16時07分40秒 | Weblog
マサルの部屋の電話が鳴った。
「私、私よ。」
「誰?」
「今、どこにいると思う。」
「誰?」
「今ね、MG大の公衆電話からかけてるの。」
「だから、誰?」
「あのね・・」
マサルは電話を切った。
直ぐに鳴った。
「なんで切るのよお。」
「だから、誰。」
「明菜よ。」
「エッ。」
 昨日のことが頭の中によみがえった。昨日、クスリが効きすぎて、どこに行くのもいやになり、部屋に戻った。いつものようにアンプに電源を入れて、ビデオシステムをオンにし、ディープパープルを弾こうとした。シンクロするはずの演奏が、と言うより、マサルの指が勝手に動いた。聞いたことのないフレーズが「チャイルドインタイム」の上を走り出した。ユニゾンのフレーズはほとんどなく、狂気のような変拍子と不協和音がマサルの耳にフィードバックしてきた。それはなぜか、解らなかった。指が意思を持ち、フレットの隙間さえとらえているようだった。心地良さがあった。エロチックな臭いがいた。いつの間にか、マサルは勃起していた。
 演奏は延々と続き、ビデオテープは既に終わっていた。マサルの中では聞いたことのないメンバーの音が聞こえていた。ドラムス、ベース、ボーカルは仁だった。
 弦が切れた。
 マサルはギターを外し、勃起した自身を握った。そのとたん、ミサキの顔が浮かんできた。既にミサキの身体は想像できるのだが、身体は昼の情事の明菜だった。昼の感覚をマサル自身が覚えているかのように、握り締めた右手が感覚を模倣するかのように、激しい締め付けと腰の震動がマサル自身を襲った。やはり、右手はマサル意思の届かない生き物のように動いた。そして、マサルは力尽きた。
 いま、その明菜が受話器の向こうにいた。
「あなたの家、大きいのね。びっくりしちゃった。」
「エッ。」
「ねえ、もう一度、あなたの家の前に行くから、窓から顔出してよ。」
マサルは気付いた。
「白金の家に行ったの。」
「ええ、」
「そこにはいないよ。」
「何で、学生証に書いてあったじゃない。」
「学生証見たの?」
「・・・・・・・」
「ねえ。」
「あなたのこと、気に入ったし、変な人だったら困るし・・・・」
「いつ?」
「あなたがシャワーしている時・・・・」
「何で?」
「だから、気に入っちゃったんだってばー。突然押しかけてびっくりさせようと思ったの。」
「ふーん。」
「今どこにいるのよー。」
段々、荒っぽい言葉になってきた。
「どこでもいいだろー。」
「なによー。そんな言い方、ないじゃない。」
マサルの頭の中で昨日の事がフーという感じで浮かんできた。マサル自身が火照った。マサルは電話を切った。直ぐに鳴った。
「ごめんなさい。怒ったー。」
「そんなことないけど。」
「ほんとはお願いがあるの。」
「なに。」
「今日ね、同伴指定日なのよ。」
「なにそれ。」
「だからー。同伴しないとペナルティー取られちゃうの。」
「何の。」
「お店よ。同伴すれば、ボーナスが付くの。ね、ね、お願い。これから会って。」
「うーん。」
「最初の一時間だけでいいの。そうすれば、ポッキリ料金だけだから。私が出すから。それなら、ボーナスより安いし。」
勃起してきた。
「いいよ。」
「どこに行けばいいの。」
「新宿でいいじゃん。」
「今どこにいるのよ。」
「下北。」
「下北に着いたら、電話するわね。」
電話が切れた。マサルは受話器を耳に当てたままだった。切断音が鳴っていた。しまった、と思った。テンポにのせられた。
 マサルは出かけようかと思った。時計を見た。昨日、ミサキを追いかけている時間だった。道路に面した寝室の窓に向かった。同じ時間に同じように行動するとは限らない。窓から道路を見下ろした。犬を連れたご婦人が散歩していた。窓を開けて、見渡した。ミサキはいなかった。
 マサルはリビングに戻り、財布を確かめた。カード類はあった。学生証も、保険証もあった。マサルはもしもの時のために、学生証と保険証は持ち歩いていた。なぜか、可笑しくなった。一人で笑った。
 ビデオシステムに「ウッドストック」のビデオを入れて、ソファーに寝そべった。「ジミーヘンドリックス」がソロを弾いていた。ハッとした。昨日の音が共鳴しているようだった。

ひとりでいるよりいいかな。Ⅸ

2008年10月16日 14時33分10秒 | Weblog
明菜は手を伸ばしティッシュを取った。マサル自身の下にティッシュをおいて、こぼれないようにコンドームを外した。先をキュッと結び、弱々しいマサル自身をティッシュでくるんだ。ベッドを降りて、ベッドの横にあるボックスにコンドームを投げ入れた。薄く笑みを浮かべながら。
「シャワー浴びてくるね。」
そういうとバスルームに消えた。マサルは軽い貧血の中で何が起こったのか、考えていた。何かを失ったような感覚が頭の中に拡がった。クスリの作用を待ちたかった。夢想が、というよりも無理やりミサキを想像した。けれども、激しいだるさと失われた感覚がミサキを思い浮かべることも難しくした。
 髪にタオルを巻いて、バスタオルにくるまった明菜が出てきた。
「フー、気持ちよかった。」
そういうと、マサルの横に座った。
「あなたもシャワーしてきなよ。」
明菜はマサルの腹を擦り、弱々しいマサル自身に時々触れた。
「ティッシュ、シャワーしないと取れないわよ。」
まだ、フラフラしそうだった。目を合わせないで上体を起こした。明菜はマサルの肩に手をかけ、背中に耳を当て、囁いた。
「あなた、意外と大きいのね。私のにぴったりよ。こんなに感じたのって、凄く久しぶりよ。」
マサルは返事をすることもなく、頭を振りながら、バスルームに向かった。確かに自身にティッシュが張り付いていた。自身にシャワーをかけ、洗い落とし、液体石鹸を身体中に塗りたくり、シャワーを一番強くして、痛いほどシャワーを浴びた。バスタオルで身体を拭き、部屋に戻ると、明菜はもう服を着ていた。その微笑みは、関係が成立しているような、勝ち誇ったような感じさえした。明菜はビトンのポーチから、ルージュを出した。マサルはベッドの上のトランクスとジーンズをはき、ティーシャツを着た。
「ねえ、新宿まで送ってよ。」
甘えるような、けれど逆らうことはできない声がマサルに届いた。マサルはビクンとした。返事ができなかった。
「ねえ、送ってー。」
マサルは肯いた。精算を済ませ、ベンベーに戻った。中央道を走る間、会話はほとんどなかった。幡ヶ谷を過ぎたあたりで明菜が言った。
「こんな凄い車乗ってるから・・・・・・・学生さんなんだね。」
「何、」
「電話番号教えて。」
マサルは突然の問いかけに焦った。でたらめを言ってもよかったのだが。
「四一五の二・・・・・」
クスリのせいか、それとも、明菜の威圧感がそうさせたのか、素直に答えてしまった。明菜は空で繰り返すと、メモ帳を取り出し、書きとめた。
「新宿で降りたら、靖国通りね。」
ベンベーは歌舞伎町に抜ける道のところで止まった。車を降りると明菜は運転席のほうに回り、名刺を差し出した。
「パラダイスビュー フロアーレディー 明菜」
店の名前と明菜の名前があった。
「今度、お店にも来てね。今日、同伴してくれてもいいけど、車だしね。私、キスはしないのよ。でも、あなたは特別、好きなっちゃったみたい。今度、電話するね。楽しかったよ。」
と言うと、マサルの首に手を回し、顔を引き寄せ、キスをした。強烈に吸い、舌を入れ、強烈に舌を吸い、音を立てながら離した。周りにいた人たちが笑いながら、二人のほうを見ているのをマサルは見た。
「じゃあね。」
頬を擦り付けて、手を取り、マサルの腕が伸びきるまで握り締め、引っ張った。力がフッと抜けた。後ろ向きで手を振りながら、明菜は人ごみの中に消えた。
 マサルは何かわからないが、ものすごく悲しい気分になった。アクセルをいっぱいに踏み込んだ。ホイルスピンをしながら、ベンベーは発進した。

ひとりでいるよりいいかな。Ⅷ

2008年10月15日 16時46分35秒 | Weblog
マサルはゆっくりと挿入した。「ベース」の時のように柔らかく緩やかな動きで明菜の中を感じていた。明菜のそこが動き出した。マサル自身を噛む様に締め付けた。腰が動いた。マサル自身の動きを止め、明菜自身が上下するように動き出した。その動きに答えることはマサルにはできなかった。身体を起こし、腕を明菜の両脇で突っ張り、足を踏ん張って、マサル自身の位置がずれないようにするのがやっとだった。顔を見ないようにしていたのだが、身体を起こすと明菜の顔が目に入った。目を瞑り、口を半分開き、、マサルの腕を握り、顔は卑猥に崩れていた。
 動きが止まった。明菜はマサルの腕を取り、腰に足を絡めた。マサルは耐え切れず、明菜の上に重なった。
「私が上ね。」
ねだるような甘い声で明菜が言った。マサルは言われるままに下になった。明菜は上になると身体を起こし、首を後ろにそらしながら、自分で乳房をまさぐり、腰を使った。前後の動きが中心で、ただ、加速が凄かった。マサルは腰がこんなに早く動くものかと驚愕した。締め付けと動きはマサル自身を激しく刺激し、頂点が直ぐそこに来た。マサル自身がピクンと動くのが早いか、明菜は腰を上げ、マサルの腿の上に座った。マサルの分身は放物線を描きながら、マサルの腹の上に落ちてきた。
「えー。もういっちゃったのー。」
冗談ぽく明菜は言った。明菜はマサルの腹の上の分身をティッシュで拭くと、だらんとしたマサル自身を手で包んだ。さらに先っぽを口でくわえ、舌で転がしながら、両手で激しくしごいた。性的興奮というよりも肉体的反応でマサル自身は勃起した。明菜はティッシュの横に用意されたコンドームを取り、口に含むとマサル自身に上手に装着した。
「うふふ。」
明菜の顔は卑猥に、さらに挑戦的に歪んだ。マサルも笑うしかなかった。明菜はマサルにまたがるとマサル自身を握り、自身に誘導した。そして、マサルの腹の上に手を置き、激しい振動が再び始まった。マサルは発射するのを必死でこらえた。激しい前後の動きが頂点に達した。二度、ゆっくりとしごくように前後に動き、明菜の動きが止まった。締め付けは収縮に変わった。ヒクヒクと痙攣のような収縮の中でマサルは二度目の発射をした。マサルの発射と同時にギュウっとマサル自身を明菜自身が締め付けた。さらにビクンとマサル自身は反応し、すべてを出し尽くした。明菜はマサル自身が小さくなるまでまたがったまま、余韻に浸っていた。マサルは顔に腕をのせ、軽い貧血を感じていた。
 マサル自身が完全に力を失うと明菜はコンドームの根本を押さえながら、腰を浮かせた。