劇場公開された香港映画を見るのは楽しい。私のお気に入りは「吼えろ!ドラゴン起て!ジャガー」「空手ヘラクレス」「カラテ愚連隊」などである。まだ見てない映画もいっぱいあってどれも見たくなってしまうけれど、これが趣味なんだから仕方がない。その映画がいっぱい載っているチラシ大全集なんてもう目の毒である。
74年に劇場公開された”ドラゴン映画”はシネアルバム1975によれば27本もあった。当時の宣伝費も含めた総費用が1本あたり約3000万円と少ない方であった為これ程の本数の映画が公開出来たのだそうだ。単にブームの波からと思っていたがこんな話まであったとは今まで知らなかった。全く客が入らなかった映画から興収ランキングで上位に入る作品まで満遍なく輸入され、そこそこの売上げだったのだから凄い。
その中の1本に「危うし!タイガー」(以下、「硬漢」と略す)があった。
巻末のフィルムリスト’74はアイウエオ順に並んでいるので最初に出てくる。
ここの製作プロダクションの記述は誤りで富國影業の製作である。
タイトルカット
またこの本には当時の上映された状況について興味深い記述があった。
以下引用。
封切られた中国功夫映画は日本語に吹き替えられた3本と原盤のまま上映された1本を除きすべて英語版である。
というものだ。確かに日本語はいくつかあったが、原版とは北京語のままという意味なのだろうか?
また日本の時代劇との違いなどについても触れられている。復讐ものが多くてネチネチしていて陰湿であり、また東南アジア諸国は暴力や残酷描写には検閲がうるさいからマカロニウエスタンほど残酷さを徹底できない、とあった。確かにそうだ。私が現在見ているものも残酷過ぎず鑑賞には丁度合っていて都合がよい面もあるのだと思う。
公開当時は表に陳星(サイン入り)、裏面が香港空手スター名鑑と称したミニポスターが配られていたようである。このスター名鑑は読み始めると面白くて止まらない内容だ。(山形の香澄堂書店さんどうもありがとうございました)
これに載っているスターの名前を是非書いておこう。
チェン・シン、ブルース・リー、チェン・カンタイ、倉田保昭、チャーリー・チャン、リー・フォアマン、ジミー・ウォング、フーシェン、ブルース・リャン、カオ・チャンの10人。
この年代(74年)のスターだとこうなるようだ。(うーん、納得。)あれ??カオ・チャンだって。マニアックではあるが、厳選してうまくまとめられておりこれを書いた人も偉いと思います。
ところで米・伊合作映画「ウエスタン」(68)を御存知だろうか。
これは復讐を代行するガンマンを描いた西部劇でワンチャイじゃなくてアメリカの方のシリーズ第1弾であった。「硬漢」にはこの「ウエスタン」のサントラ(モリコーネ作曲)からBGMが流用されている。
サントラCDはココ↓(試聴可)
http://www.neowing.co.jp/detailview.html?KEY=BVCM-35317
この「ウエスタン」にはブロンソンが出演し、監督のレオーネは先に出来上がったモリコーネの曲をイメージしてブロンソンの映画を作り上げたという。富國影業の「硬漢」製作者たちはどうだろうか。ブロンソンのイメージをそのまま陳星に当てはめこれを具象化したのではないだろうか。そして流れるテーマソングはシャイアンではなくて最早チェン・シンのテーマと言ってもいいほど良くかかっていた。
庄司じゃありません。陳星です!
以下は各スタッフについて。
監督は江洪である。70年代を中心に活躍したこの人の名前を聞いたことがあると思うのだが、この「硬漢」をキッカケに当時新人だった張力との関わりが多くなり、張力は江洪監督作品に毎回出演するようになる。江洪は不思議な事に「硬漢」から突如監督として現れた。この名前はこの映画が作られた時点ではまだ誰も知らない名前であった。
それもそのはず実は邵氏で脚本を書いていた人物だったからで「キングボクサー大逆転」『埋伏』『金毛獅王』などの脚本を担当していた江揚、その人なのである。
つまり彼は定評のあった脚本家であったのにそれを隠し、監督昇進にあたって江洪と改名してこの映画の監督を務めたのだ。邵氏では「キングボクサー大逆転」の脚本を最後に富國の監督に進出したと思われる。そして映画に初出演した張力を育てることを決意したのかも知れない。
また、副導演には趙魯江の名が・・。こちらではお馴染みの魯江ですが、彼も邵氏から富國への移籍組だったんですね。
武術指導は袁和平で、単独の武術指導としてはこれが最初の作品ではないだろうか。(とは言っても袁祥仁も出演しているので、どこまでが単独でどこまでが共同なのかの解釈が非常に難しい。。)また、クレジットでは火星がLeoと表記されているのが?なのと、陳雄(英名:Kent Chen)が誰の事なのかが不明であった。(これもパズルね^^;)
「硬漢」は御存知"シャフトのテーマ"に乗ってはじまる。
民国初年。劉山虎(孫嵐)をボスに据えた麻薬密売組織を壊滅させる目的で秘密捜査官・陳強(陳星)は警察局長から潜入捜査を命じられた。陳強は刑務所に潜入し計画通り組織の唐龍(山怪)に接触。唐龍には全く怪しまれずに二人で脱獄することに成功した。
小さな港のある村で陳強は腕の立つ青年張平(于洋)に会う。張平たちは埠頭に到着した船から荷物の陸揚げ作業をしていた。陳強もその一員となって村に潜伏中であった。作業を取り仕切っていた組織の曹彪(馮克安。馮堅名義)は大牛(火星)に暴行を働き、手下に大牛を片付けるよう命令、乱闘騒ぎになる。そこに張平に続いて陳強が加わってさすがの曹彪も怪力の持ち主、陳強の剛腕にはかなわなかった。
張平が陳強を家に連れて帰ると張平の妹(凌欣)が待っていた。妹は腕っぷしの強い陳強に想いを寄せる。家を去って大牛とも分かれた陳強は突然男に襲撃される。必死に応戦する陳強だったが顔を見合わせると男は唐龍だった。二人は再会を喜ぶが陳強は刑務所仲間の顔を見せ芝居を打っておいた。襲わせたのは曹彪の悪巧みだったが、唐龍は再会に気を良くしこれにより陳強は組織の仲間に入ることに成功する。だが曹彪は陳強を不審に思っていた。一方、陳強の部下の雷峰(張力)も漁民に扮し潜入を開始する。
その頃組織の幹部、方世雄(方野)とその手下(王青)らが密売品を積んだ船で港に到着した。早速出くわした大牛と妹に搦む方世雄だったが、丁度通りがかった陳強に割って入られ蹴り合いを始める。方世雄はボスの劉山虎がやってくると喧嘩を止め皆に紹介されるとアジトへ行く。これで組織の主要な人物はすべて集まった。
その後、陳強は一人外へ出て何処かへ向かう。曹彪が陳強を尾行すると陳強が雷峰と連絡を取っているところを目撃した。
組織の有能な部下曹彪は用心棒数人を手配し埠頭の警備をさせた。
陳強から情報を得た雷峰は劉山虎を逮捕する為、密売の証拠品を船の積荷から何とかして発見しようと試みる。雷峰は敵に見つかってしまうが、大勢の敵を相手にヌンチャクを使って応戦する。この騒ぎに張平と大牛の二人は感づいて様子を窺っていた。そこに陳強もひとり現れた。さらに劉山虎たちも部下からの報告で現場へ急行。陳強の取る行動を監視していた。
陳強は騒ぎを解決させるため、雷峰を倒すフリをし、うまく海中へ連れ込み死んだ様に見せかけた。物影から見ていた張平、大牛の二人は陳強が曹彪の味方になったのを見て不満が募る。陳強が一人になるところを待って張平は陳強に手を出した。しかしその場は駆けつけた妹に止められる。
陳強は人気のない山で雷峰と合流した。雷峰はもちろん無事であった。その夜、陳強たちは証拠探しに倉庫へ忍び込んだ。しかし、これはワナだった。劉山虎に今迄取った行動から捜査官であることを見破られてしまったのだ。雷峰が助けに入るが陳強は捕まり、鎖で縛られた挙句拷問にかけられる。雷峰は大牛に身分を明かし、陳強救出に向かう為、張平の手も借りる。すると方世雄とその部下(王青、袁祥仁) が家を襲ってきた。大牛は殺害され、妹も組織の手下(袁日初)にナイフで刺されてしまう。
その頃、鎖を引きちぎって脱出した陳強は劉山虎のアジトへ向かう。まずは得意技の頭蓋骨割りを浴びせ曹彪は陳強の怪力の前に倒れた。そのまま陳強、雷峰、張平の三人は組織との決戦に縺れ込む。張平は方世雄。雷峰は方世雄の手下(王青)、そして陳強は唐龍が相手だ。死闘を繰り返した結果、一人また一人と倒れていくが、陳強は強敵・唐龍を打ち負かした。最後に残った劉山虎だが、逃亡は許されず陳強に捕まって物語は幕を閉じた。
硬漢の陳星が悪者を倒していく姿はやはりブロンソンのイメージに近い。"鷹爪功"を使うブロンソンもいいではないですか。
陳星も組織と村人の間に挟まれ戸惑いながらも捜査を進めるなんて展開でかなり好演していたと思うのだ。一見、重要でないと思える火星や于洋の妹、馮克安など全ての人物が絡んでおりスムーズな展開もなかなか面白い。
有名なシーン。相手は李超と判明
ただ『蕩寇灘』と似た雰囲気を持つが同じ製作会社でも呉思遠のものとは違う。監督が変われば当然ながら印象も変わる。これは余談だが、ちょっと気になる編集があった。冒頭に波のシーンがあるが、ほんの一瞬だけわざわざ南海影業のオープニングを本編に流用していたのである。こんなことまでするとはある意味凄いことだと思う。
見せ場であるラストバトルは袁和平の殺陣が光る素晴らしい出来。さすがは袁和平だ。『蕩寇灘』と同じBGMで猛ダッシュする陳星も健在である。ラスト近くは中国の有名な山で撮ったそうなのだが、熱気が伝わってくる格闘シーンは微笑ましいものです。現場の気温も相当高く暑そうだがとても見応え、そして感動があると思う。とにかく陳星はサイを持たせたら世界一似合う男(当時)である。(十手じゃありませんぜ。>日野先生)サイが陳星の手に渡るまでの展開も面白く山怪のバタフライソード戦は最も迫力のあった一番の見せ所であったと思われる。
音楽も周福良ワールド全開な作品であることは間違いないところ。このサントラを聴けばその世界にどっぷりと浸れるのだ。
香港では確かに『蕩寇灘』や『黒名単』に比べヒットしなかった(それでも80万香港ドルを叩き出したが)。日本ではこちらが劇場公開されてしまった。やはり『黒名單』などではなく「硬漢」が公開された理由も分かるような気もした。(同じ富國の『蕩寇灘』より格闘シーンが多く全体の質が上がっている感がある。)
また、陳星の代表作として揺るぎない作品と確信できました。
次回は協利作品を取り上げます。ー終ー
劉山虎め。貴様は許さん!
74年に劇場公開された”ドラゴン映画”はシネアルバム1975によれば27本もあった。当時の宣伝費も含めた総費用が1本あたり約3000万円と少ない方であった為これ程の本数の映画が公開出来たのだそうだ。単にブームの波からと思っていたがこんな話まであったとは今まで知らなかった。全く客が入らなかった映画から興収ランキングで上位に入る作品まで満遍なく輸入され、そこそこの売上げだったのだから凄い。
その中の1本に「危うし!タイガー」(以下、「硬漢」と略す)があった。
巻末のフィルムリスト’74はアイウエオ順に並んでいるので最初に出てくる。
ここの製作プロダクションの記述は誤りで富國影業の製作である。
タイトルカット
またこの本には当時の上映された状況について興味深い記述があった。
以下引用。
封切られた中国功夫映画は日本語に吹き替えられた3本と原盤のまま上映された1本を除きすべて英語版である。
というものだ。確かに日本語はいくつかあったが、原版とは北京語のままという意味なのだろうか?
また日本の時代劇との違いなどについても触れられている。復讐ものが多くてネチネチしていて陰湿であり、また東南アジア諸国は暴力や残酷描写には検閲がうるさいからマカロニウエスタンほど残酷さを徹底できない、とあった。確かにそうだ。私が現在見ているものも残酷過ぎず鑑賞には丁度合っていて都合がよい面もあるのだと思う。
公開当時は表に陳星(サイン入り)、裏面が香港空手スター名鑑と称したミニポスターが配られていたようである。このスター名鑑は読み始めると面白くて止まらない内容だ。(山形の香澄堂書店さんどうもありがとうございました)
これに載っているスターの名前を是非書いておこう。
チェン・シン、ブルース・リー、チェン・カンタイ、倉田保昭、チャーリー・チャン、リー・フォアマン、ジミー・ウォング、フーシェン、ブルース・リャン、カオ・チャンの10人。
この年代(74年)のスターだとこうなるようだ。(うーん、納得。)あれ??カオ・チャンだって。マニアックではあるが、厳選してうまくまとめられておりこれを書いた人も偉いと思います。
ところで米・伊合作映画「ウエスタン」(68)を御存知だろうか。
これは復讐を代行するガンマンを描いた西部劇でワンチャイじゃなくてアメリカの方のシリーズ第1弾であった。「硬漢」にはこの「ウエスタン」のサントラ(モリコーネ作曲)からBGMが流用されている。
サントラCDはココ↓(試聴可)
http://www.neowing.co.jp/detailview.html?KEY=BVCM-35317
この「ウエスタン」にはブロンソンが出演し、監督のレオーネは先に出来上がったモリコーネの曲をイメージしてブロンソンの映画を作り上げたという。富國影業の「硬漢」製作者たちはどうだろうか。ブロンソンのイメージをそのまま陳星に当てはめこれを具象化したのではないだろうか。そして流れるテーマソングはシャイアンではなくて最早チェン・シンのテーマと言ってもいいほど良くかかっていた。
庄司じゃありません。陳星です!
以下は各スタッフについて。
監督は江洪である。70年代を中心に活躍したこの人の名前を聞いたことがあると思うのだが、この「硬漢」をキッカケに当時新人だった張力との関わりが多くなり、張力は江洪監督作品に毎回出演するようになる。江洪は不思議な事に「硬漢」から突如監督として現れた。この名前はこの映画が作られた時点ではまだ誰も知らない名前であった。
それもそのはず実は邵氏で脚本を書いていた人物だったからで「キングボクサー大逆転」『埋伏』『金毛獅王』などの脚本を担当していた江揚、その人なのである。
つまり彼は定評のあった脚本家であったのにそれを隠し、監督昇進にあたって江洪と改名してこの映画の監督を務めたのだ。邵氏では「キングボクサー大逆転」の脚本を最後に富國の監督に進出したと思われる。そして映画に初出演した張力を育てることを決意したのかも知れない。
また、副導演には趙魯江の名が・・。こちらではお馴染みの魯江ですが、彼も邵氏から富國への移籍組だったんですね。
武術指導は袁和平で、単独の武術指導としてはこれが最初の作品ではないだろうか。(とは言っても袁祥仁も出演しているので、どこまでが単独でどこまでが共同なのかの解釈が非常に難しい。。)また、クレジットでは火星がLeoと表記されているのが?なのと、陳雄(英名:Kent Chen)が誰の事なのかが不明であった。(これもパズルね^^;)
「硬漢」は御存知"シャフトのテーマ"に乗ってはじまる。
民国初年。劉山虎(孫嵐)をボスに据えた麻薬密売組織を壊滅させる目的で秘密捜査官・陳強(陳星)は警察局長から潜入捜査を命じられた。陳強は刑務所に潜入し計画通り組織の唐龍(山怪)に接触。唐龍には全く怪しまれずに二人で脱獄することに成功した。
小さな港のある村で陳強は腕の立つ青年張平(于洋)に会う。張平たちは埠頭に到着した船から荷物の陸揚げ作業をしていた。陳強もその一員となって村に潜伏中であった。作業を取り仕切っていた組織の曹彪(馮克安。馮堅名義)は大牛(火星)に暴行を働き、手下に大牛を片付けるよう命令、乱闘騒ぎになる。そこに張平に続いて陳強が加わってさすがの曹彪も怪力の持ち主、陳強の剛腕にはかなわなかった。
張平が陳強を家に連れて帰ると張平の妹(凌欣)が待っていた。妹は腕っぷしの強い陳強に想いを寄せる。家を去って大牛とも分かれた陳強は突然男に襲撃される。必死に応戦する陳強だったが顔を見合わせると男は唐龍だった。二人は再会を喜ぶが陳強は刑務所仲間の顔を見せ芝居を打っておいた。襲わせたのは曹彪の悪巧みだったが、唐龍は再会に気を良くしこれにより陳強は組織の仲間に入ることに成功する。だが曹彪は陳強を不審に思っていた。一方、陳強の部下の雷峰(張力)も漁民に扮し潜入を開始する。
その頃組織の幹部、方世雄(方野)とその手下(王青)らが密売品を積んだ船で港に到着した。早速出くわした大牛と妹に搦む方世雄だったが、丁度通りがかった陳強に割って入られ蹴り合いを始める。方世雄はボスの劉山虎がやってくると喧嘩を止め皆に紹介されるとアジトへ行く。これで組織の主要な人物はすべて集まった。
その後、陳強は一人外へ出て何処かへ向かう。曹彪が陳強を尾行すると陳強が雷峰と連絡を取っているところを目撃した。
組織の有能な部下曹彪は用心棒数人を手配し埠頭の警備をさせた。
陳強から情報を得た雷峰は劉山虎を逮捕する為、密売の証拠品を船の積荷から何とかして発見しようと試みる。雷峰は敵に見つかってしまうが、大勢の敵を相手にヌンチャクを使って応戦する。この騒ぎに張平と大牛の二人は感づいて様子を窺っていた。そこに陳強もひとり現れた。さらに劉山虎たちも部下からの報告で現場へ急行。陳強の取る行動を監視していた。
陳強は騒ぎを解決させるため、雷峰を倒すフリをし、うまく海中へ連れ込み死んだ様に見せかけた。物影から見ていた張平、大牛の二人は陳強が曹彪の味方になったのを見て不満が募る。陳強が一人になるところを待って張平は陳強に手を出した。しかしその場は駆けつけた妹に止められる。
陳強は人気のない山で雷峰と合流した。雷峰はもちろん無事であった。その夜、陳強たちは証拠探しに倉庫へ忍び込んだ。しかし、これはワナだった。劉山虎に今迄取った行動から捜査官であることを見破られてしまったのだ。雷峰が助けに入るが陳強は捕まり、鎖で縛られた挙句拷問にかけられる。雷峰は大牛に身分を明かし、陳強救出に向かう為、張平の手も借りる。すると方世雄とその部下(王青、袁祥仁) が家を襲ってきた。大牛は殺害され、妹も組織の手下(袁日初)にナイフで刺されてしまう。
その頃、鎖を引きちぎって脱出した陳強は劉山虎のアジトへ向かう。まずは得意技の頭蓋骨割りを浴びせ曹彪は陳強の怪力の前に倒れた。そのまま陳強、雷峰、張平の三人は組織との決戦に縺れ込む。張平は方世雄。雷峰は方世雄の手下(王青)、そして陳強は唐龍が相手だ。死闘を繰り返した結果、一人また一人と倒れていくが、陳強は強敵・唐龍を打ち負かした。最後に残った劉山虎だが、逃亡は許されず陳強に捕まって物語は幕を閉じた。
硬漢の陳星が悪者を倒していく姿はやはりブロンソンのイメージに近い。"鷹爪功"を使うブロンソンもいいではないですか。
陳星も組織と村人の間に挟まれ戸惑いながらも捜査を進めるなんて展開でかなり好演していたと思うのだ。一見、重要でないと思える火星や于洋の妹、馮克安など全ての人物が絡んでおりスムーズな展開もなかなか面白い。
有名なシーン。相手は李超と判明
ただ『蕩寇灘』と似た雰囲気を持つが同じ製作会社でも呉思遠のものとは違う。監督が変われば当然ながら印象も変わる。これは余談だが、ちょっと気になる編集があった。冒頭に波のシーンがあるが、ほんの一瞬だけわざわざ南海影業のオープニングを本編に流用していたのである。こんなことまでするとはある意味凄いことだと思う。
見せ場であるラストバトルは袁和平の殺陣が光る素晴らしい出来。さすがは袁和平だ。『蕩寇灘』と同じBGMで猛ダッシュする陳星も健在である。ラスト近くは中国の有名な山で撮ったそうなのだが、熱気が伝わってくる格闘シーンは微笑ましいものです。現場の気温も相当高く暑そうだがとても見応え、そして感動があると思う。とにかく陳星はサイを持たせたら世界一似合う男(当時)である。(十手じゃありませんぜ。>日野先生)サイが陳星の手に渡るまでの展開も面白く山怪のバタフライソード戦は最も迫力のあった一番の見せ所であったと思われる。
音楽も周福良ワールド全開な作品であることは間違いないところ。このサントラを聴けばその世界にどっぷりと浸れるのだ。
香港では確かに『蕩寇灘』や『黒名単』に比べヒットしなかった(それでも80万香港ドルを叩き出したが)。日本ではこちらが劇場公開されてしまった。やはり『黒名單』などではなく「硬漢」が公開された理由も分かるような気もした。(同じ富國の『蕩寇灘』より格闘シーンが多く全体の質が上がっている感がある。)
また、陳星の代表作として揺るぎない作品と確信できました。
次回は協利作品を取り上げます。ー終ー
劉山虎め。貴様は許さん!
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