Dさんの嘆きはひとかたならぬものだった。
「マスター、あんまりじゃないですか、自分の娘がいじめに関わっていたなんて。」
「それも、よりによっていじめる方ですよ。」
Dさんの娘さんは、今年小学校5年生になると聞いていた。
Dさんはそう言いながら、ホワイト レディーを口にした。
Dさんのお好みはジンベースのカクテル。
ホワイト レディーは、ドライジンにコアントローとレモンジュースを加えてシェイクする。
ドライジンをブランデーに変えるとサイドカーになる。
この後のDさんのオーダーは、ジントニックと思って間違いない。
さて、Dさんの話によると、今週火曜日に、奥さんが学校に呼ばれて、
娘さんが、数人で同じクラスの女の子をいじめているという注意が、担任からあったそうだ。
Dさんがいつものように、9時過ぎに家に帰ると、奥さんからその話を聞き、
娘さんを問い詰めて、そのいじめが間違いないことを確かめたそうである。
「私は初めて娘を叩きましたよ。」と言ったDさんの顔は本当に悲しそうだった。
翌日は、早めに仕事を終え、奥さん共々、娘さんを連れていじめた子の家に謝罪に行ったそうだ。
それでもまだ、Dさんの心は晴れなかったそうで、
その帰りに、近くのファミレスに家族で寄って、娘さんといじめについてしっかり話し込んだということだった。
Dさんによると、
Dさんがやはり小学校5年生の時、同じクラスの2人の男の子に、
ほぼ1年間にわたり、いじめられたそうである。
暴力沙汰や、金銭的なことはなかったが、その苦しみによく耐えたものだということだった。
卒業後、いつか仕返しをしてやろうと、合気道の道場に通い、
その2人を頭に浮かべながら練習に励んだという。
いつしか身体の小さかったDさんは、中学校を卒業する頃には、175㎝を超え、
いじめていた2人よりも大きくなって、2人はDさんに会っても、コソコソと身を隠すようになった。
そういう姿を見て、Dさんはいつしか仕返しのことも忘れてしまったと、声を出して笑っていた。
Dさんの娘さんにいじめられていた女の子の母親は、ほとんど家事をしないような人で、
そのため、子どもたちは風呂に入らない日もあったり、
着替えをしないこともあったりということで、
クラスで、「汚い」「臭い」と言われて、一部にそれがエスカレートしていじめになったようだ。
「いじめられる方にも一因あるようなことを言う親もあったんですが」
「自分の娘だけにはそういう考えを持って欲しくなかったんです。」
「いじめられた女の子に何の責任があるんですか。その子はどうすれば良かったんですか。」
「悲しいですよ。情けないですよ。娘が、何でその子の気持ちになってあげられなかったのか。」
Dさんは本当に悔しそうに言って、ジントニックをあおった。
Dさんは、今日はあまりつまみに興味がなさそうだったので、
ピスタチオを少し強めにローストして出した。
イラン産のピスタチオの方が、アメリカ産より若干コクと甘味が強いようだ。
しかし、娘さんのことに気を取られているDさんには、その違いは分かって貰えないようだった。
その後、Dさんの娘さんのいじめ事件がどうなったかですって。
さあ、私も詳しくは聞いていません。
あなたもいじめられたことがあるんですって、それはそれは。
その後の経緯をお知りになりたければ、一度名も知らぬ駅に来てみませんか。
※この話及び登場人物も基本的にはフィクションです。
「マスター、あんまりじゃないですか、自分の娘がいじめに関わっていたなんて。」
「それも、よりによっていじめる方ですよ。」
Dさんの娘さんは、今年小学校5年生になると聞いていた。
Dさんはそう言いながら、ホワイト レディーを口にした。
Dさんのお好みはジンベースのカクテル。
ホワイト レディーは、ドライジンにコアントローとレモンジュースを加えてシェイクする。
ドライジンをブランデーに変えるとサイドカーになる。
この後のDさんのオーダーは、ジントニックと思って間違いない。
さて、Dさんの話によると、今週火曜日に、奥さんが学校に呼ばれて、
娘さんが、数人で同じクラスの女の子をいじめているという注意が、担任からあったそうだ。
Dさんがいつものように、9時過ぎに家に帰ると、奥さんからその話を聞き、
娘さんを問い詰めて、そのいじめが間違いないことを確かめたそうである。
「私は初めて娘を叩きましたよ。」と言ったDさんの顔は本当に悲しそうだった。
翌日は、早めに仕事を終え、奥さん共々、娘さんを連れていじめた子の家に謝罪に行ったそうだ。
それでもまだ、Dさんの心は晴れなかったそうで、
その帰りに、近くのファミレスに家族で寄って、娘さんといじめについてしっかり話し込んだということだった。
Dさんによると、
Dさんがやはり小学校5年生の時、同じクラスの2人の男の子に、
ほぼ1年間にわたり、いじめられたそうである。
暴力沙汰や、金銭的なことはなかったが、その苦しみによく耐えたものだということだった。
卒業後、いつか仕返しをしてやろうと、合気道の道場に通い、
その2人を頭に浮かべながら練習に励んだという。
いつしか身体の小さかったDさんは、中学校を卒業する頃には、175㎝を超え、
いじめていた2人よりも大きくなって、2人はDさんに会っても、コソコソと身を隠すようになった。
そういう姿を見て、Dさんはいつしか仕返しのことも忘れてしまったと、声を出して笑っていた。
Dさんの娘さんにいじめられていた女の子の母親は、ほとんど家事をしないような人で、
そのため、子どもたちは風呂に入らない日もあったり、
着替えをしないこともあったりということで、
クラスで、「汚い」「臭い」と言われて、一部にそれがエスカレートしていじめになったようだ。
「いじめられる方にも一因あるようなことを言う親もあったんですが」
「自分の娘だけにはそういう考えを持って欲しくなかったんです。」
「いじめられた女の子に何の責任があるんですか。その子はどうすれば良かったんですか。」
「悲しいですよ。情けないですよ。娘が、何でその子の気持ちになってあげられなかったのか。」
Dさんは本当に悔しそうに言って、ジントニックをあおった。
Dさんは、今日はあまりつまみに興味がなさそうだったので、
ピスタチオを少し強めにローストして出した。
イラン産のピスタチオの方が、アメリカ産より若干コクと甘味が強いようだ。
しかし、娘さんのことに気を取られているDさんには、その違いは分かって貰えないようだった。
その後、Dさんの娘さんのいじめ事件がどうなったかですって。
さあ、私も詳しくは聞いていません。
あなたもいじめられたことがあるんですって、それはそれは。
その後の経緯をお知りになりたければ、一度名も知らぬ駅に来てみませんか。
※この話及び登場人物も基本的にはフィクションです。