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抗がん剤投与に年間3500万円…高額な薬価なぜ 製薬会社「開発費増加」/算定過程は非公開

2016年06月26日 | 医薬
抗がん剤投与に年間3500万円…高額な薬価なぜ
製薬会社「開発費増加」/算定過程は非公開
2016/6/26 3:30 日経新聞 朝刊

 医師が処方する医薬品の公定価格(薬価)の高騰が問題視されている。画期的な効果を見せる半面、投与に年間1千万円以上かかる薬も登場。高齢化で医療費が膨らみ、財政へのしわ寄せが看過できなくなっている。一方、製薬会社は「適正な価格」が認められなければ先進的な新薬開発は難しいとの立場だ。薬価はどうあるべきなのだろうか。



1カ月分で100万円以上かかる薬もある
(東京都港区の調剤薬局)
 「『密室』で価格が決められ、年間売上高が1千億円を超える医薬品が出てくる。国民的な理解は到底得られないのではないか」。4月13日、厚生労働省で開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)。中川俊男・日本医師会副会長はこう指摘し、「抜本的に制度を見直すべきだ」と迫った。



 超高額の医薬品が相次いでいる。代表例は2014年9月発売の抗がん剤「オプジーボ」。がん細胞には免疫細胞の攻撃を防ぐ仕組みがあるが、これを解除する新しいタイプの薬だ。

 まず皮膚がんの一種「悪性黒色腫(メラノーマ)」向けに承認され、肺がんにも保険適用が拡大された。ヒトの免疫力を使ってがんを死滅に追い込む機能が注目される一方、標準的な投与方法で薬代は年間3500万円に及ぶ。他にもC型肝炎治療薬「ハーボニー」は昨年9月の発売時、服用終了までの3カ月分で670万円の薬価がついた。

 高額療養費制度などで患者の自己負担は一定の枠内に抑えられる。しかし国の財政負担は大きい。ある試算によれば、オプジーボの投与対象は5万人ほど。仮に全員に使われると、薬剤費は年間1兆7500億円に膨らむ計算だ。

 なぜ薬価が高騰するのか。大規模な臨床試験などで研究開発費が膨らむ。微生物や細胞を培養して造り、コストが高い「生物製剤」が増えている側面もある。ただそれだけではない。

 薬価の決め方は2パターンに大別される。製造コストや研究開発費、営業利益などを積み上げる「原価計算方式」と、効能が似た既存の薬と比較して導く「類似薬効比較方式」だ。

 厚労省で薬事行政に関わった東京大学大学院の小野俊介准教授(薬学系研究科)は「原価方式は企業の言い値で薬価が決まる部分がある」と指摘する。例えば製造効率などが実際より低く申告された場合、「妥当かどうかを行政が検証するのは難しい」。影響は比較方式にも及ぶ。原価方式で高くなった薬が基準では、製造コストが大幅に低くなっても薬価は高止まりしやすい。

 中医協の下部組織で薬価を事実上決める「薬価算定組織」の会議は非公開だ。厚労省は「企業秘密が絡むため」とするが、客観的に議論されたのかどうか、第三者にはうかがえない。

 対象患者が増えても、すぐに薬価を見直す仕組みはない。オプジーボでは最初に承認されたメラノーマの対象患者を470人と見込んでいた。少人数の利用でも開発費を回収できるよう、薬価は高く設定された。

 しかし昨年12月に「非小細胞肺がん」にも適用が拡大され、対象は数万人に膨らんだ。販売する小野薬品工業の16年度の売り上げ予想は1260億円。メラノーマで承認申請した際の売り上げ予想の実に40倍だ。

 厚労省は対策に乗り出している。今年4月に「特例拡大再算定」と呼ぶ制度を導入。年間1千億円以上売れたら薬価を最大で25%、1500億円以上なら同50%下げる仕組みだ。4種類が対象となり、「ハーボニー」は32%下げられた。

 製薬会社は反発。多田正世・前日本製薬工業協会会長は制度決定の際、「市場規模拡大だけで薬価を引き下げるルールは、イノベーションの適切な評価に反しており容認できない」と表明。米国研究製薬工業協会のジョージ・A・スキャンゴス会長も「薬価が突然下がるような仕組みがあると、日本に投資しづらくなる」と批判した。

 医療費の4分の1を占める薬剤費。財政に限りがある中、下押し圧力は今後も高まるだろう。下げすぎれば企業の競争力をそぐ。海外勢が日本での承認を後回しにして「ドラッグ・ラグ」も生まれかねない。難しいかじ取りが続く。

(野村和博、辻征弥)