ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

土師ダム

2017-07-25 19:27:45 | 広島県
2017年7月16日 土師ダム 
 
古来より『中国太郎』と呼ばれ中国地方最大の河川である江の川は流域に大きな水の恵みをもたらす一方で、豪雨の度に洪水被害を引き起こしとりわけ主要支流が合流する三次盆地ではその被害が顕著になっていました。
戦後、江の川水系の治水はまず河川改修による堤防築造などを中心として行われましたが、1965年(昭和40年)6月と7月に連続して大きな洪水被害に見舞われ抜本的な洪水対策を求める声が一気に高まりました。
他方、広島は原爆投下から奇跡的な復興を遂げ自動車、造船など重工業を中心に大きく発展、併せて人口も急増し都市用水の新たな水源確保が喫緊の課題となってきました。
治水・利水両面の課題を解決すべく、建設省(現国交省)は『江の川水系工事実施基本計画』を改定して江の川上流部下土師地点に多目的ダムの建設を決定、ダム建設反対派との交渉を4年でまとめ、1970年(昭和45年)に着工し1974年(昭和49年)に竣工したのが土師ダムです。
 
治水面では2006年(平成18年)に竣工した灰塚ダムと連携して江の川洪水調節を行うほか、既得取水権としての灌漑用水への補給と河川流量の保持を目的としています。
特筆すべきは利水で、約19キロの分水トンネルで1日約30万立米の水を流域変更して太田川に送り、広島市・呉市・東広島市・竹原市さらには瀬戸内海島嶼部に上水道用水及び工業用水を供給しています。また分水トンネル出口の中国電力可部発電所で最大出力3万8000キロワットの発電も行っています。
 
分水トンネルによる流域変更概要図(国交省土師ダム管理ホームページより)
 
今回は中国道千代田インターから県道5号を南下して土師ダムを目指しました。
ダム直下の久保橋からダムと正対できるほか、天端も車道となっており車で通行することができます。
 
クレストにラジアルゲートが3門 オリフィスのラジアルゲートが2門
そのほか利水放流バルブと低位放流設備を備えています。
ダムでは珍しく黄色く塗装されたゲート操作室がとにかくよく目立ちます。
 
左岸のケーブルカー
堤体直下にあった運動施設と連動して使用されていたのでしょうか?
 
右岸から
堤体右岸側が湾曲しており、ミニ弥栄ダムといったところです。
左岸に管理事務所があります。
 
右岸展望台から俯瞰
堤高は50メートルと低めですが、湾曲した右岸がダムを精悍に見せています。
 
左岸から。
 
左岸のインクライン。
 
左は低位放流設備
右手手前は利水放流バルブ 右手奥は増設された管理用小水力発電所。
 
ダム湖(八千代湖)総貯水容量は4730万立米
ダム湖上流にはダム記念公園があり、サイクリングターミナルやスポーツセンターなどが設置されています。
 
天端から
町に隣接したダムです。
 
天端も湾曲しています。
 
上流から
左から低位放流設備の予備ゲート、取水設備(利水放流設備)、ラジアルゲート、オリフィスの予備ゲート、量水塔。
 
日本海に注ぐ江の川の水を流域変更で広島に送る重要な役割を持つ土師ダムです。
 
 
追記
土師ダムには3150万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに738万9000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1980 土師ダム(1076)
広島県安芸高田市八千代町土師
北緯34度38分37秒,東経132度37分16秒
江の川水系江の川
FNAWIP
50メートル
300メートル
47300千㎥/41100千㎥
国交省中国地方整備局
1973年
◎治水協定が締結されたダム


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