ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

稲倉池

2020-10-05 12:13:55 | 大阪府
2020年9月26日 稲倉池
 
稲倉池は大阪府泉佐野市日根野の佐野川水系稲倉川にある灌漑及び上水目的のロックフィルダムです。
ダム便覧に大阪府の事業で1957年(昭和32年)に竣工と記されており、管理は稲倉池土地改良区が受託しています。同土地改良区への灌漑用市の供給のほか、簡易上水道の水源になっているようです。
1957年竣工のロックフィルダムということで日本で4番目に古いロックフィルダムということになります。
また池の左岸には泉佐野市営稲倉青少年野外活動センターがありログハウスやキャンプ場などが整備され、ダム下も埋め立てられて運動用グランドになっています。
 
府道62号の『水呑み地蔵』バス停先で右手の枝道に入り、次の分岐を右手に採ると稲倉池に到着します。
湖畔には立派な竣工記念碑がありますが、フェンスに囲まれ裏面を見ることができません。
たぶたぶんこの石碑に稲倉池建設に至る経緯や竣工年度が書かれているはずなんですが・・・・。
 
洪水吐と上流面
上流面はコンクリートで護岸されています。
 
右岸の横越流式洪水吐。
なかなか立派な大きさです。
 
洪水吐導流部。
 
下流から導流部を見上げると。
ちょっと草木が邪魔。
 
ダム便覧によれば堤高32.2メートルと溜池にしてはけっこうな高さを誇るのですが・・・・
堤体直下には盛土が施され運動用グランドになっています。
隣接する野外活動センターの施設の一つかと思います。
 
天端から見た洪水吐。
 
総貯水容量128万3000立米と、灌漑用溜池としてはかなり大規模です。
 
左岸の斜樋と取水設備を遠望。
ちょっとすっきりと撮れる場所がありませんでした。
 
天端を挟んで上下流面
ダム下は埋め立てられグランドに
天端は車両通行可能ですが対岸で行きどまり。
 
左岸に稲倉池建設工事の安全を祈願して勧請された神社が鎮座しています。
 
1429 稲倉池(1563) 
ため池コード 272130051
大阪府泉佐野市日根野
佐野川水系稲倉川
AW
32.2メートル
173.1メートル
1283千㎥/1183千㎥
稲倉池土地改良区
1957年 

新滝の池

2020-10-04 23:06:36 | 大阪府
2020年9月26日 新滝の池
 
新滝の池は大阪府泉佐野市上之郷の樫井川水系樫井川左支流(河川名不明)にある灌漑目的の曲線重力式コンクリートダムです。 
大阪府泉南地域は瀬戸内海式気候に属し年間降水量が少ないうえに大河がなく、古くから灌漑用水源を溜池や中小河川に依存してきました。
高度経済成長期に入り、泉南地区では従来の稲作に加えていわゆる『近郊農業』としてタマネギや水ナスの栽培が盛んとなり、新たな灌漑用水源の確保が大きな課題となってきました。
こうした中、農林省の補助を受けた大阪府の事業で既存の上之郷新池を再開発してコンクリートダム化し、1995年(平成7年)に竣工したのが新滝の池です。
運用開始後は上之郷土地改良区が受託管理を行い管内の農地に灌漑用水の供給を行っています。
 
新滝の池一番の特徴は京都南禅寺の琵琶湖疏水水路閣をモチーフにした煉瓦積み風の化粧型枠が施された赤い堤体です。
実は2006年(平成18年)に建設される泉南農業公園調整池もよく似たモチーフなのですが、どちらも(株)共生という会社による設計となっています。
さらに堤体はアーチ状に湾曲した曲線重力式、そして堤体下流面に盛土が施されコンクリートダムにも関わらず下流面が森という非常に珍しいダムとなっています。
 
ダムの手前に車20台程度が止められる駐車場があります。
ダム入り口にゲートがありここからは徒歩でダムに向かいます。
泉南という地域柄、不法投棄や破壊行為を防ぐためのゲートかと思います。
 
と言っても20~30メートルも歩けばダム右岸に到着。
天端脇に横山ノック元知事の筆による竣工記念碑がたっています。
 
こちらは泉佐野市による竣工記念碑
『新滝之池』となっています。
 
右岸上流から
堤体がアーチ状に湾曲、煉瓦積み風の化粧型枠を施した赤い堤体は文字通り異色のダム。
さらに堤体は満水位を境に濃淡が施されたツートン。
 
洪水吐は重力式コンクリートダムでは珍しい横越流式。
洪水吐脇に取水設備があります。
 
アングルを変えて。
 
車が余裕で通れる広い天端。
大阪らしく不法投棄や破壊行為、落書きなどが絶えなかったためダム手前にゲートを設置したようです。
 
総貯水容量50万立米はコンクリートダムとしては小さめ。
需要期が終わりつつあるせいかずいぶん水位が低くなっています。
 
湾曲した赤い堤体下流面を撮りたいのですが、盛土に植えられた木が伸びてご覧の状態。
桜が多いので落葉した冬場ならもう少し良く見れるかもしれません。
 
上流面
水位が下がったこの時期だからこその眺め。
 
さらに上流から。
 
ダム湖畔は一周2キロ弱のトリムコースとなっており、休日ということもあり多くの方がランニングやウォーキングを楽しんでいました。
なおこの上流2キロには新滝の池の兄貴分である滝ノ池があり、こちらもダムの要件を満たしダム便覧にも掲載されています。
今回は時間の関係でスルーしましたが、機会があれば再訪し滝ノ池まで足を伸ばしてみるつもりです。
 
3127 新滝の池(1562)
大阪府泉佐野市上之郷
樫井川水系樫井川左支流
26メートル
105メートル
500千㎥/480千㎥
上之郷土地改良区
1995年

大谷池(再)

2020-10-04 22:18:50 | 大阪府
2020年9月26日 大谷池(再)
 
大谷池(再)は大阪府阪南市自然田の男里川水系菟砥川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
大阪府泉南地域は瀬戸内海式気候に属し年間降水量は僅か1300ミリ前後、さらに大河がないため淡路島や讃岐と並ぶ日本有数の溜池密集地帯となっています。
大谷池もそんな溜池の一つで、もとは18世紀に築造された溜池でした。
現地改修碑によれば1969年(昭和44年)に大阪府の事業として大規模改修が着手され1972年(昭和47年)に竣工し現在の姿になったようです。
なおダム便覧の竣工年度は1971年(昭和46年)になっていますが、ここでは改修碑の1972年を採用します。
池の管理は受益者で組織された大谷池水利組合が行っています。
 
府道257号で大阪リハビリステーション病院の先を左に折れ産廃業者の敷地をやり過ごすと大谷池に到着します。
池の手前に建つ改修記念碑。
ネットで検索しても大した情報がヒットせず、この改修碑が貴重な情報源です。
 
天端は舗装され道路はさらに上流の裏芝池へと続きますが、道には草木が覆い通る車も多くはなさそう。
手前の車は釣り人のもの。
 
取水設備
いかにも大阪らしい落書き。
 
天端からの眺め
足元に配水場らしき建物
ダム下へも行けないことはありませんが、入口に工事車両が止まっていたので自重しました。
 
天端からは大阪湾を挟んで淡路島が見えます。
かつて農耕地だった場所も宅地化が進み、池の受益農家も数が減っているようです。
 
灌漑用溜池としてはやや小ぶりな、総貯水容量11万5000立米の貯水池。
 
右岸の洪水吐
伸びているパイプは河川維持放流用でしょうか?
 
洪水吐導流部。
 
時節柄草木が繁茂し、撮影ポイントは多くありません。
ダム下へも行けないことはありませんでしたが、入口に工事用用車両が止まっていたので自重しました。
日本屈指の溜池密集地帯ですが、都市化が進み受益農家が減少、周辺でも管理されない溜池が増えているようです。
 
3325 大谷池(再)(1561) 
ため池コード 272320008
大阪府阪南市自然田
男里川水系菟砥川
18.7メートル
97メートル
115千㎥/115千㎥
大谷池水利組合
1972年 

泉南農業公園調整池

2020-10-03 21:47:02 | 大阪府
2020年9月26日 泉南農業公園調整池
 
泉南農業公園調整池は大阪府泉南市信達岡中にある防災調整池です。
泉南市営農業公園(花咲ファーム)の建設にあたり、山林造成・森林伐採による土砂や雨水流出量の増加に対処する目的で2006年(平成18年)に建設されました。
建設予定地ダムサイトの地盤が脆弱なため、経済効率性や十分な貯水容量確保などを考慮し『鋼製マルチサスペンション型コンクリートバットレス』という非常に珍しい型式が採用されています。
具体的には、堤体本体は圧縮強度の強いコンクリートのバットレス、遮水板は引っ張り強度の強いスチール製というハイブリッド構造で、見た目の姿は下流面は赤い笹流ダム、剛性を高めるために凹凸のついた遮水板はスチール製の豊稔池と言った風です。
泉南農業公園調整池は堤高が14.9メートルと河川法上のダムの要件を満たしていませんが、非常に珍しい型式のダムということでダム便覧には参考掲載で登録されています。
 
泉南市営農業公園の駐車場手前に泉南農業公園調整池があります。
建設から14年経過し、池周辺は草木が伸び全体をすっきりと見渡せるスポットはありません。
なんとか草木の切れ目から下流面を撮影。
直下は溜池の背水になっており、下流側にも水が溜まっています。
堤体は赤く着色され煉瓦風の化粧型枠が施されています。
京都南禅寺の琵琶湖疏水水路閣をモチーフにしたそうですが、せっかくのデザインも草が伸び放題では人目につくこともできません。
 
上流面
道路からはこれが限界。
 
堤頂部
一応天端と呼ぶんでしょうか?
 
防災調整池ということで普段は貯水池は空っぽです。
右手の円筒形のものが洪水吐になり、一定以上の水が溜まるっとここからトンネル導水路で水が流下する仕組みです。
 
 
スチール製の遮水板は剛性を高めるため凹凸がつけられています。
スチールは引っ張強度が強いため、下側がアーチになって凹凸になっています。
 
ダム便覧には草木が伸びる以前の写真が多数掲載されてています。
今は草木が繁茂し写真と同じポイントからダムを眺めることはできません。たぶん日本で唯一と思われる珍しい型式のダムなので、せめて上流側の草を刈って頂ければと思うのですが。
 
S007 泉南農業公園調整池(1560) 
大阪府泉南市信達岡中
男里川水系
14.9メートル
61メートル
----/----
泉南市
2006年

堀河ダム

2020-10-02 13:40:25 | 大阪府
2020年9月26日 堀河ダム
 
堀河(ほりご)ダムは大阪府泉南市信達童子畑の男里川水系金熊寺川右支流堀河川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
大阪府泉南地域は瀬戸内海式気候に属し年間降水量が少ないうえに大河がなく、古くから灌漑用水源を溜池や中小河川に依存するなどし、安定した水源確保が農家の悲願となっていました。
1956年(昭和31年)の町村合併で誕生した泉南町(現泉南市)も同様で、地元による陳情の結果1962年(昭和37年)に農林省の補助を受けた府の事業として農業用ダム建設が採択され1970年(昭和45年)に堀河ダムが竣工しました。
運用開始後は泉南市が受託管理を行っています。
なおダム便覧では竣工年度を1971年(昭和46年)としていますが、ここでは竣工記念碑の1970年を採用します。
 
阪和自動車道泉南インターから府道63号泉佐野岩出線を和歌山方面に南下し信達童子畑集落を過ぎると左手に堀河ダムが姿を見せます。
府道からダム下へ続く道路を進みますが、木が茂りダム下には近づけません。
 
いったん府道を北に戻り信達童子畑集落入口で左手の旧道に入り、さらに直後の分岐を左に採ると堀河ダムに到着します。
こちらはダム左岸から
昭和40年代のダムということで農業用ですがクレストにはローラーゲートを装備しています。
 
堀河ダムで注目すべきは堤体に書かれた文字(黄色のマル)
どうやってこんなところに落書きを?と思われますが、たぶん測量か調査の際に書かれたものじゃないかと思います。
 
右岸から。
 
右岸ダムサイトの竣工記念碑。
 
右岸の山側擁壁は地元の風景を描いた壁画になっていましたが、見るも無残な落書き多数。
全国のダムを回っていますが、大阪のダムや溜池はどこに行っても落書きや不法投棄が多いのには驚かされます。
土地柄と言えばそれまでですが、民度の低さは同じ関西出身者として恥ずかしい限りです。
 
上流から
農業ダムとしては立派な取水設備とゲート。
 
天端は車両通行可能
左岸にも道路があり府道63号に通じています。
 
天端から
樹木に覆われているのでわかりづらいのですが、どうやら減勢工の両側に放流設備らしいものはありません。
取水された水は堤体下部のコンジットから放流されるようです。
 
左岸から府道へ通じるトラス橋。
2枚目と3枚目の写真はここから撮ったものです。
 
総貯水容量279万5000立米と農業用ダムとしては結構大きな貯水池。
 
湖岸には桜の木が多く『大阪みどりの百選』に選ばれ、春には多くの人出があるようです。
 
1432 堀河ダム(1559)
ため池コード 272280037
大阪府泉南市信達童子畑
男里川水系堀河川
45.4メートル
130メートル
2795千㎥/2519千㎥
泉南市
1970年