2017年5月 7日 高暮ダム
2021年5月25日
高暮ダムは広島県庄原市高野町高暮の江の川水系神野瀬川にある中国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
日中戦争長期化に加えて日米開戦もあり軍需工場が集積していた広島・呉への電力供給拡大のため、日本発送電は広島県内各所での電源開発を活発化させます。
高暮ダムもそんなダムの一つで1940年(昭和15年)に建設着手され1944年(昭和19年)に竣工、ここで取水された水は神野瀬発電所に導水され最大2万キロワットのダム水路式発電を行います。
1951年(昭和26年)の電気事業再編政令により高暮ダムおよび神野瀬発電所は中国電力が事業継承し現在に至っています。
高暮ダムの堤高69.4メートルは戦前のダムとしては6番目、江の川水系のダムとしては最高であり、戦時中の貴重な土木建築物としてBランクの近代土木遺産に選定されています。
一方で当ダムおよび発電所建設に際しては日本人のみならず朝鮮人応募工を含む過酷な労働という影の部分が纏わり付き、ダムサイトには日本人労働者の慰霊碑とは別に朝鮮人労働者の慰霊碑も建立されています。
高暮ダムには2017年(平成29年)5月に訪問しましたが、この時はゲートの改修工事中のため天端の立ち入りはできず。改修工事の完了を待って2021年(令和3年)5月に再訪しました。
ダムへは県道457号線を使い神野瀬川上下流両方からアクセスが可能ですが、どちらも隘路の険道となるため運転には注意が必要です。
下流から
これは初回訪問時のものです。
ゲートの改修工事中のため堤体に仮設通路や重機が乗った状態ですが、一番の特徴である導流壁のカーブはしっかりと見ることができます。
再訪時は下流県道が災害で通行止めのためこの位置まで行けませんでした。
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右岸から
天端高欄には三日月形の「抜き」。
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右岸親柱にある諸元プレートと日本発送電の社章。
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今でもニッパツの社章が残るダムは珍しいのでは?
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照明はガス灯風の凝った造り。
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初回訪問時は日中なのになぜか点灯していました。
四国電力の大橋ダムを想起するデザイン。
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高暮堰堤の銘版。
脇には日本發送電株式會社の名前が。
日本発送電の名前が残るダムはここと高知の長沢ダムくらいか?
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ダム湖は神野瀬湖
総貯水容量は3965万8000立米でダム湖の大半が県立自然公園になっています。
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左岸の取水口。
取水ゲートはキャタピラゲートです。
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利水放流設備
河川法改正を受けて2000年(平成12年)に増設されました。
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上流面
対岸に管理事務所とインクラインがあります。
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5門のラジアルゲートは2018年(平成30年)までの改修で一新されたもの。
ゲートハウスは操作室は江の川や斐伊川水系の中国電力のダム同様被覆されています。
手前には2000年(平成12年)に付加された河川維持放流用取水ゲートがあります。
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右岸の建物はプラントの遺構。
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改修を待って再訪叶った高暮ダムですが、今度はダム下流の県道が通行止めで下流からの姿を拝むことができませんでした。
とはいえ、珍しいニッパツの社章が残るダム。
お気に入りのダムの一つです。
(追記)
高暮ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
1947 高暮ダム (0989)
広島県庄原市高野町高暮
江の川水系神野瀬川
P
G
69.4メートル
195.7メートル
39658千㎥/35858千㎥
中国電力
1944年
◎治水協定が締結されたダム