2022年11月21日 星山ダム
星山ダムは左岸が宮崎県西臼杵郡日之影村七折、右岸が同村分城の一級河川五ヶ瀬川本流にある旭化成(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
五ヶ瀬川水系では日本窒素肥料(株)(日窒)が1923年(大正11年)の延岡進出を契機に、自家発電向け電源開発に着手します。
日窒は重要軍事物資である火薬の最大手メーカーだったこともあり、日本発送電による発電施設接収を免れたのみならず電力国家管理法成立後も自社発電施設の建設を進めます。
そして1942年(昭和17年)に完成したのが星山ダムおよび発電所で、星山ダムで取水された水は約2キロの導水路で発電所に送られ最大最大1万2200キロワットのダム水路式発電が開始されました。
戦後の財閥解体により延岡の日本窒素化学は旭化成工業(株)(現旭化成)として独立、五ヶ瀬川の発電施設も同社が継承し現在に至っています。
これまで下流からは道路沿いの木が邪魔になりダムの全景が見える場所はありませんでした。しかし2022年(令和4年)9月の台風14号により右岸道路の路肩が崩落し視界が広がりました。
12門のラジアルゲートで五ヶ瀬川を締め切ります。
左岸の水叩き
戦中戦後の発電ダムで多く見られます。
河川維持放流のため中央1門が開放中。
左岸の魚道の奥にバットレス状の建造物があります。
プラント跡のようです。
星山ダムでは巻き上げ機や梯子は黄色で統一。
訪問時は巻き上げ機のメンテナンス中
撮影はダメかと思ったんですが、『いいよ』。
部品をすべて解体し、一点ずつチェックしていました。
こちらは発電用取水口
最大毎秒49立米取水します。
左岸の魚道
擁壁のコンクリートは白く、近年改修があったようです。
天端は車両の通行ができますが、9トンの重量制限があります。
戦時色が激しくなる時期のダムですが、天端高欄には四角い窓が施され今どきの無機質な大量生産ダムと一線を画します。
水利使用標識。
上流から
ダム湖は総貯水容量173万1000立米、有効貯水容量93万5000立米。
ダム湖を跨ぐ第三五ヶ瀬川橋梁
2008年(平成20年)に廃線になった高千穂鉄道の鉄道橋で、鋼製トラス橋と日本初の連続方杖ラーメンの複合構造で、国の重要文化財に指定されるとともに選奨土木遺産に選ばれています。
5キロ上流の旭化成五ヶ瀬川発電所
1925年(大正14年)竣工で最大出力1万3500キロワット。
水圧鉄管も含め、これぞ由緒正しき水力発電所と言った美しい佇まい。
五ヶ瀬川は一級河川ですが、本流には治水機能を持つダムはありません。
2021年(令和3年)に『五ヶ瀬川水系河川整備基本方針』 が変更され、五ヶ瀬川の計画高水量が大きくなりました。
喫緊の話ではありませんが、いずれ五ヶ瀬川への新たな治水ダム建設が俎上に上がるかもしれません。
(追記)
星山ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
2812 星山ダム(1952)
左岸 宮崎県西臼杵郡日之影村七折
右岸 同村分城
五ヶ瀬川水系五ヶ瀬川
P
G
30.5メートル
142メートル
1731千㎥/935千㎥
旭化成(株)
1942年
◎治水協定が締結されたダム