ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

安房中央ダム

2024-02-20 08:00:00 | 千葉県
2016年2月21日 安房中央ダム
2024年1月28日
 
安房中央ダムは左岸が千葉県南房総市川谷、右岸が同市御子神の丸山川水系丸山川にある安房中央土地改良区が管理する灌漑目的のアースフィルダムです。
房総半島南端、館山市から南房総市にわたる安房中央地区は地味豊富ながら大河がないなど水利に乏しく安定した水源確保は地域農家の悲願となっていました。
これを受け1961年(昭和36年)に千葉県営かんがい排水事業安房中央地区が着手され1978年(昭和53年)に完了。
これにより灌漑用貯水池である安房中央ダムや基幹幹線水路が建設され、さらにその後の圃場整備事業により1988年(昭和63年)には1000ヘクタールを超える土地改良区域内全域の農地整備が実現しました。
 
安房中央ダムには2016年(平成28年)2月に初訪、2024年(令和6年)1月に再訪しました。
ダムの天端は関係者以外立ち入り禁止となっており下流から見学するのみですが、再訪時はダムを管理する安房中央土地改良区に立入をお願いし、職員様の案内で見学が叶いました。
掲載写真はすべて再訪時のものです。

ダム下から
堤高32メートル、堤頂長110メートルの均一式アース
洪水吐導流部は隧道のため斜水路はありません。

  
下流面はきれいに草が刈られています。
人手不足の中、草刈ロボットを使っているそうです。
ロボットが草を刈る様子を見てみたい。


貯水池は総貯水容量211万3000立米
農業専用ダムとしては千葉県内3番目の規模
手前のプールは堆砂を排出する際の乾燥用。

 
天端からの眺め
ダム下に民家が一軒。
ダムができる前はここが丸山川の流路でした。
ダム下には排出した土砂が積まれています。


インクライン
今は使っておらず正式にはインクラインの遺構。
右手に横越流式洪水吐、貯水池には取水塔。

 
改修工事が終わり貯水池は湛水中。
取水設備は表面取水塔
房総では一の沢堰山田溜池でこの手の取水塔が見られます。
水は房総らしく濁っています。
濁水は灌漑施設などへの負荷はかかりますが、稲作にとっては重要なミネラルを供給します。

 
左岸の横越流式洪水吐。


導流部はトンネル。
越流した水は丸山川に放流されます。


管理事務所
職員の常駐はありませんが、今回は職員様帯同の見学ということで開けていただきました。

  
水利使用標識。


土地改良区設立50周年の記念碑。

 
国道410号線を超えて丸山川に下ります。
向かって左手は洪水吐の減勢工
トンネルを抜けた後はジャンプ台になっており捻りが入ります。
機械室を挟んで右手は放流設備
灌漑用水と維持放流や水位低下放流の分水ゲートがあります。


洪水吐の減勢工
捻りの入ったジャンプ台は初見。

 
こちらは取水塔からの吐口
仮排水路を利用しこの奥にホロージェットバルブがあります。

 
こちらは灌漑用幹線水路
計約25キロの幹線水路で受益農地に用水を補給します。


向かって右手が灌漑用ゲート
左手が維持放流及び水位低下用放流ゲート。


ダムを案内していただいた土地改良区の事務局長さんは千葉県OBでダム管理技士の資格を持つダムのエキスパート。
地理や地質にも精通され、多面的な切り口でダムを案内していただき大変勉強になりました。
厚く御礼申し上げます。

(追記)
安房中央ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0667 安房中央ダム(0236)
左岸 千葉県南房総市川谷
右岸      同市御子神
丸山川水系丸山川
32メートル
110メートル
2113千㎥/2096千㎥
安房中央土地改良区
1972年
◎治水協定が締結されたダム

一の沢堰

2024-02-18 08:00:00 | 千葉県
2017年1月28日 一の沢堰
2024年1月27日
 
一の沢堰は千葉県南房総市小戸の温石川水系一の沢川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1951年(昭和26年)に岩糸第一土地改良区の事業で竣工と記されています。
一方現地記念碑には1946年(昭和21年)の大干ばつを契機に溜池築造機運が高まり、翌年岩糸第一耕地整理組の事業で事業着手するも戦後の食糧難と物価高騰で資金が枯渇。新たに千葉県営事業として採択され総工費2250万円のうち国県からの補助1657万円の補助を受け1952年(昭和27年)に竣工と刻されています。
管理は耕地整理組合を引き継いだ南房総市岩糸第一土地改良区が管理を行っています。

一の沢堰には2017年(平成29年)1月日に初訪、2024年(令和6年)1月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
 
南房総市小戸の県道296号から一の沢川沿いに市道を約1.5キロ北上すると一の沢堰に到着します。
最後は隘路ですが舗装済みで車で池直下まで到達できます。
堤高19メートル(ため池DB19.6メートル)、堤頂長84.5メートル
堤体の草は刈られ今も貴重な水源であることが伺えます。
池の手前は蓮根畑。
(2024年1月27日)

 
池下右岸側の導水路
隧道式洪水吐の吐口と取水設備からの放流口がここで合流します。
(2024年1月27日)
 
灌漑用水路
訪問時は非灌漑期のため水は流れていません。
(2024年1月27日)

右岸から
堤体は犬走を挟んで3段
きれいに刈りこまれています。
(2024年1月27日)
 
天端
初訪時にはなかったフェンスが設置されています。
(2024年1月27日)
 
右岸高所から
こちらは初訪時の写真で貯水池側にはフェンスはありません。
(2017年1月28日)

 
再訪時。
(2024年1月27日)

件の記念碑
池の築造10周年の1962年(昭和37年)に建立されました。
摩耗が激しく読み取るのに苦労しました。
(2024年1月27日)


総貯水容量34万6000立米の貯水池。
水は濁っていますが他所ほどひどくはありません。
取水設備は南房総の農業用貯水池で散見される取水塔。
(2024年1月27日)
 
取水塔をズームアップ
灌漑用ですので当然表面取水となります。
岸から延びるケーブルは水位計の電源用。
(2024年1月27日)
 
下流面
池の受益農地は下流約3キロの岩糸地区になります。
(2024年1月27日)
 
こちらは初訪時
ほぼ満水。
(2017年1月28日)
 
洪水吐は写真左手の建屋向こう側になりますが、フェンスで囲まれ見ることはできません。
(2024年1月27日)
 
0658 一の沢堰(0819)
ため池コード 122340084
千葉県南房総市小戸
温石川水系一の沢
19メートル(ため池データベース19.6メートル)
84.5メートル
346千㎥/346千㎥
南房総市岩糸第一土地改良区
1951年(記念碑1952年)

作名ダム

2024-02-17 08:00:58 | 千葉県
2017年1月28日 作名ダム
2024年1月27日
 
作名ダムは千葉県館山市作名の汐入川水系作名川にある三芳水道企業団が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
館山市では1938年(昭和13年)に房州水道(株)により市街中心部での近代水道が開設されました。
戦後、市営水道として郊外で6簡易水道が逐次整備されますが、1973年(昭和48年)にうち4簡易水道を統合して館山市水道事業が開設され、その際新たな上水用水源として建設されたのが作名ダムです。
1979年(昭和54年)には房州水道及び残り2簡易水道を統合、1996年(平成8年)には南房総広域水道事業団からの受水が始まり水道水供給の安定化が図られました。
さらに1998年(平成10年)に館山市水道事業と市北部の水道事業を担っていた三芳水道企業団が事業統合し現在に至っています。
作名ダムでは一日最大6500立米の水を取水し、直下にある作名浄水場を経て市内に給水しています。

作名ダムには2017年(平成29年)1月に初訪、2024年(令和6年)1月に再訪しました。
当ダムはダムサイトおよび天端は開放されていますがダム下は立ち入り禁止です。
再訪時は許可を得てダム下に立ち入りました。
また掲載写真はすべて再訪時のものとなります。

立入禁止のダム下へ
堤高24.5メートル、堤頂長145メートル
放流設備はクレスト自由越流頂のみ。

 
堤体直下まで接近。
奥に見えるのは作名配水場。


二つのハンドルは取水設備から浄水場へ送る導水管の 水量調節用。
普段水量を変えることはほとんどないそうです。
左手は監査廊入り口。

 
監査廊を覗いてみます
奥に漏水計が見える。

 
天端に向かう途上で
房総の上水ダムではおなじみ、ゲート部分だけ天端が高くなっています。
この位置からは葉が茂ると視界は遮られそう。

 
ちょっと見づらいですが、副ダムの右手から水が漏れています。
こちらは河川維持放流で、取水口から浄水場への導水管から分水されます。

 
右岸から
高欄が下流側にせり出した独特の作り。

 
右岸ダムサイトに立つ建設記念碑。
当ダムの完成により館山市の水道事業は従来の簡易水道から本格的な市営水道へ進化しました。

 
天端から減勢工を見下ろす。
落葉しているのは桜ですが、幹が白化しておりそろそろ寿命か?


左岸からさらに林道が続き天端は車両の通行が可能です。
奥は作名配水場で浄水場からここにポンプアップされたのち市内各地に給水されます。

取水設備の操作機器
4段の多段式取水口と土砂吐ゲートの操作機器が並びますが、現在は一定の比率で取水しているためこれらの機器を操作することはないそうです。
中央の筒状のものは空気孔。

 
左岸はわずかに屈曲しカドになっています。
カドといえばこのショット。

 
ダムの上流面
取水設備は半円形で貯水池に突き出ているのは水位計。

 
総貯水容量は63万立米で貯水容量の約半分は山の東向こうの汐入川本流からの導水に依ります。
そのせいか?他の南房総の貯水池に比べ水の濁りは少なく感じます。


ダム直下の作名浄水場
ここからいったん高台の作名配水池に送られたのち給水されます。

 
南房総地域では、昨今の人口減少や水道施設の老朽化等に対処するために2015年(平成27年)に千葉県が示した「県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)」に従い、安房地区の鋸南町・三芳水道事業団・南房総市・鴨川市各水道事業者の事業統合に向けた調整が進められており、早晩事業の統合が実施される見込みです。
 
0674 作名ダム(0817)
千葉県館山市作名
汐入川水系作名川
24.5メートル
145メートル
630千㎥/590千㎥
三芳水道企業団
1973年

増間ダム

2024-02-16 08:00:00 | 千葉県
2016年2月21日 増間ダム
2024年1月27日
 
増間ダムは千葉県南房総市増間の平久里川水系増間川にある三芳水道企業団が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
昭和30年代に入り房総各自治体では海水浴客など観光客の増大により水道需要が急増し水道事業の整備に迫られます。
房総半島南端に位置する館山市・旧富浦町・旧三芳村は共同で一部事務組合である上水道組合(のちに三芳水道企業団に名称変更)を設立し、その上水道水源として1969年(昭和44年)に竣工したのが増間ダムです。
ダムと浄水場の完成を待って館山市北部地域、旧富浦町・旧三芳村へ一日最大5400立米の給水が開始されました。
その後1996年(平成8年)に南房総広域水道企業団からの受水が開始、さらに1998年(平成10年)に館山市水道事業と統合し現在に至っています。
一方、2006年(平成18年)に富浦町と三芳村を含む安房郡6町1村が合併して新たに南房総市が誕生しますが、これにより南房総市は旧富浦町と旧三芳村は三芳水道企業団、残り5町は南房総市水道事業と市内で水道事業者が異なる状態となっています。

増間ダムには2016年(平成28年)2月に初訪、2024年(令和6年)1月に再訪しました。
ダムは県道258号線沿いにありますが、直下の増間浄水場ともども部外者の立ち入りは制限されています。
初訪時はダム右岸の林道から眺めるにとどまりました。
再訪時は事前に見学申請をしましたが土曜日ということもありダム下浄水場への立ち入りのみ許可を頂けました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。

浄水場入口門扉を開放していただきダム下へ
まず目を引くのは緩やかにカーブを描く残縮型堤体導流壁、ゲート上は千葉の上水ダムではおなじみ、天端が一段高くなっています。
向かって左(右岸側)のコンクリートの張り出しは地山。
(2024年1月27日)


ダム直下に建屋がありますが、これがポンプ室。
取水した水を浄水設備に送ります。
増間川はダムのすぐ下流で平久里川に合流するため、このダムには河川維持放流義務はありません。
副ダム手前の排水口はドレーンからの水。
(2024年1月27日)

 
副ダム。
(2024年1月27日)

 
ダム直下右岸側に浄水設備が並びます。
しかしどのアングルで見ても美しい導流壁。
(2024年1月27日)

こちらは浄水場内の上水汚泥処理設備
当ダムでは濁水が常習化しているため、汚泥処理量も多くなっています。
(2016年2月21日)

 
こちらはダム右岸の林道から。
(2016年2月21日)


同じく林道から
堤頂長145メートルと千葉の上水ダムの中ではなかなかの大きさ。
平日であれば天端に立ち入れたのですが、訪問したのが土曜日で嘱託職員一人体制のため天端の見学は断念。
(2024年1月27日)


(2024年1月27日)


ゲート部分だけ高くなった天端。
(2024年1月27日)


南房総はプレート活動によって隆起した若い堆積層で形成され土砂放出量が多く、どの貯水池も濁りが大きくなります。
とりわけこのダムは濁水が激しくなっています。
曝気装置が稼働していますが、これほど濁りが大きいと効果はないのでは?
当然浄水場への負荷は他所よりも大きくなります。
(2024年1月27日)


フェンス越しに撮った諸元プレート。
(2024年1月27日)

 
高欄の銘板。
(2024年1月27日)

昨今の人口減少、水道施設の老朽化等に対処するために2015年(平成27年)に千葉県が示した「県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)」に従い、安房地区の鋸南町・三芳水道事業団・南房総市・鴨川市各水道事業者の事業統合に向けた調整が進められており、早晩事業の統合が実施される見込みです。
 
0665 増間ダム(0235)
千葉県南房総市増間
平久里川水系増間川
34メートル
145メートル
520千㎥/500千㎥
三芳水道企業団
1969年

仲尾沢堰

2024-02-15 08:00:00 | 千葉県
2016年2月21日 仲尾沢堰
2024年1月27日
 
仲尾沢堰は千葉県南房総市富浦町福澤の岡本川水系福沢川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧では1938年(昭和13年)竣工となっていますが、事業者は記されていません。
一方ため池データベースでは管理者は船形八束水利組合、所有者は船形八束耕地組合となっており、県の補助を受けた耕地組合の事業で1938年に竣工したと思われます。
ちなみに八束は富浦地区南部の旧村名、船形は現在の館山市北部に位置し、仲尾沢堰は市境界を越え館山市北部から南房総市富浦地区最南部を受益地区としているようです。
仲尾沢堰には2016年(平成28年)2月21日に初訪、2024年(令和6年)1月27日に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。

富浦町福澤の国道127号線から福沢川沿いの市道を約3キロ北上すると仲尾沢堰に到着します。
ただ、大上集落の最終民家の先からは未舗装、隘路となるため路肩に車をデポし最後の500メートルは徒歩で向かいました。
池を見て驚くのはその洪水吐の位置。
フィルダムでは越流による堤体崩壊を防ぐため洪水吐は堤体上に作らないのが原則。
ところが仲尾沢堰では右岸寄りですが堤体中ほどに洪水吐が設けられています。
(2024年1月27日) 


堤体はきれいに草が刈られ今も貴重な水源であることが伺えます。
(2024年1月27日) 


洪水吐には細い三本の木を束ねた簡易な橋が渡されています。
(2024年1月27日) 

 
上流面。
(2024年1月27日) 


洪水吐導流部。
(2024年1月27日) 

 
洪水吐を下から見上げます。
コンクリートは比較的新しいので、この位置に洪水吐があるのは改修によるものか?
(2024年1月27日) 

 
こちらは初訪時
貯水池はほぼ満水で越流寸前。
(2016年2月21日)
 
池の下に下りてみます。
右手に斜樋からの底樋管があります。
(2024年1月27日) 

 
(2024年1月27日) 


総貯水容量は13万7000立米
初訪時はほぼ満水
房総らしく貯水池は濁っています。
(2016年2月21日)


こちらは再訪時
水は涸れ貯水池は空っぽ。。
灌漑期終了後にいったん水を抜いたものの少雨で湛水できないのか?
はたまた改修を控えているのか?
(2024年1月27日) 

 
左岸の取水設備
階段式の池栓。
(2024年1月27日) 


左岸の湖底が低いところにわずかに水が残ります。
底樋管からは水は出ていないので、土砂吐ゲートは閉めてるはず。
水を貯めようとしてるけど少雨で堪らないとみるべきか?
(2024年1月27日) 


溜池としては非常に珍しい堤体中ほどに洪水吐がある仲尾沢堰。
同様の溜池としては島根県の深山池を想起します。
それにしても空っぽの貯水池が気がかりです。

0652 仲尾沢堰(0234)
ため池データベース 122340005
千葉県南房総市富浦町福澤
岡本水系福沢川
15.3メートル(DB 15.7メートル)
71メートル
137千㎥/137千㎥
船形八束水利組合
1938年

丹生堰

2024-02-13 08:00:00 | 千葉県
2016年2月21日 丹生堰
2024年1月27日
 
丹生堰は千葉県南房総市富浦町丹生の岡本川水系丹生川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には富浦町八束西土地改良区の事業で1940年に竣工と記されています。
一方現地記念碑には事業者として『安房郡八束村西耕地整理組合』の名があり
『起工 昭和十三年六月二十九日』『竣工 昭和十五年八月三十一日』と刻されています。
耕地整理組合は土地改良区の前身ですので、丹生堰は千葉県の補助を受けた耕地整理組合の事業で1940年(昭和15年)に竣工したということになります。
現在は南房総市富浦町八束西土地改良区が管理を行い丹生川流域および下流の岡本川右岸の水田に灌漑用水を供給しています。
丹生堰には2016年(平成28年)2月21日に初訪、2024年(令和6年)1月27日に再訪しました。
5枚目の記念碑の写真以外はすべて再訪時のものです。

館山道冨浦インター出口から丹生川沿いの指導を約3.5キロ、車で10分ほど北上すると丹生堰に到着します。
池入り口に車止めがありますが、事前に土地改良区に立入りの是非を確認しています。
堤高16.4メートル、堤頂長40メートルで堤体を道路が斜行、きれいに草が刈られており今も貴重な水源であることが伺えます。

 
高速の高架下
丹生川に面して洪水吐の隧道導流部吐口があります。

 
堤体を斜行する道路を進みます。

 
天端はコンクリート舗装ですがすぐ対岸で行き止まり
洪水吐のコンクリートが新しいので、改修工事の際に舗装されたと思われます。

 
天端に立つ記念碑
碑には『丹生川上之池』と刻されており、これが竣工当時の名だったのでしょう。
現在はため池データベースでも『丹生堰』と記されており、当ブログでも丹生堰を採用します。
裏面には池の諸元や関係者の名が刻されていますが、摩耗が激しく一部不明瞭となっています。
灌漑地区として『八束村 丹生 深名 青木』の名があり、灌漑面積は『五十九町八段八畝歩』=約58.6ヘクタールとなっています。
(2016年2月21日)


総貯水容量14万6000立米の貯水池。
ずいぶん水位が下がっていますが、初回訪問時も貯水池は空だったので非灌漑期に水が抜かれ田起こしに向けて湛水されるんだと思います。
房総の灌漑期は4月上旬から、それまでに満水になるか?


右岸の斜樋。
細くて見ずらいですがシャフトが3本。

 
池の直下を館山道が通ります。

 
右岸から
右手は館山道冨浦トンネル。

 
右岸の洪水吐
導流部は隧道で越流した水は2枚目写真の吐口へと流下します。

 
よく見ると隧道天井は凝灰岩の素掘り
改修で下流側はコンクリートで成形されていますが、竣工当初から隧道洪水吐だったようです。


右岸の崖にもトンネルが
入口には水神が祀られています。
もともとの斜樋への道が崩落したためこのトンネルが作られたようです。
ただ反対側出口の落ち葉がすごく進入は自重しました。
今にして思えば、突入すればよかった。

 
0654 丹生堰(0233)
ため池データベース 122340001
千葉県南房総市富浦町丹生
岡本川水系丹生川
16.4メートル
40メートル
146千㎥/146千㎥
富浦町八束西土地改良区
1940年

大谷川ダム

2024-02-12 08:00:55 | 千葉県
2017年1月28日 大谷川ダム
2024年1月26日
 
大谷川(だいやつがわ)ダムは千葉県南房総市山田の平久里川水系大谷川にある南房総市水道局が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
房総半島南部、南総里見八犬伝の舞台として有名な富山町では昭和40年代より町営水道事業開設がすすめられ、その上水用水源として1974年(昭和49年)に竣工したのが大谷川ダムです。
同時にダム直下に富山浄水場が完成し、同年より給水が開始されました。
その後2006年(平成18年)に安房郡6町1村が合併して南房総市が誕生、旧富浦町と旧三芳村を除く水道事業は南房総市水道局に統合されました。

大谷川ダムには2017年(平成29年)1月に初訪、2024年(令和6年)1月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ掲載日時を記載しています。

ダム下流には富山浄水場があり、関係者以外は立入禁止。
よってダム下からダムを見ることは叶いません。
初訪時はダム左岸からの見学にとどまりましたが、再訪時は浄水場の職員様の許可を得てダムを真下から撮影できました。
上水ダムなので洪水吐は自由越流頂1門だけ。
ダムの前の木が邪魔・・・・
(2024年1月26日)


ちょっと位置をずらして
ゲート上の管理橋には赤い鉄骨桁。
向かって右手(左岸側)の建屋はバルブ室。
ちょっと見づらいですがバルブ室の下から手前に黒い鉄管がありこれが浄水場へのライン。
(2024年1月26日)


ダムと同時に建設された富山浄水場
普段は嘱託職員さんが一人常駐しています。
(2024年1月26日)


ここから先はすべて2017年1月28日の写真となります。
左岸から。
昭和30~40年代のダムらしくゲート上は一段高くなっています。


天端への立ち入り許可はもらっていないので、左岸から見学するのみ。


上水ダムの取水設備といえば円形が多いのですがここは四角。
ゲート操作装置が3本見えます。

かなり色あせたダムの銘板。
竣工は昭和49年3月20日
事業者とすべきところ企業者になっていますが当時の富山町。
施工は間組(現安藤ハザマ)。


天端をズームアップ。



 
左岸上流から
ここから見えるのは落葉期のみでしょう。
南房総ではおなじみですが地質的な影響で貯水池はかなり濁っています。
浄水場での処理が大変そう。

 
再訪時は予定に入れておらず時間が余ったの急遽訪問。
当然事前の見学要請はしておらず、ダムマイスターの身分証明書を提示してダム下からの写真のみ撮影させていただきました。

昨今の人口減少、水道施設の老朽化等に対処するために2015年(平成27年)に千葉県が示した「県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)」に従い、安房地区の鋸南町・三芳水道事業団・南房総市・鴨川市各水道事業者の事業統合に向けた調整が進められており、早晩事業の統合が実施される見込みです。
 
2992 大谷川ダム(0815)
千葉県南房総市山田
平久里川水系大谷川
25.5メートル
50メートル
190千㎥/180千㎥
南房総市水道局
1974年

小向ダム

2024-02-09 08:00:31 | 千葉県
2017年1月28日 小向ダム
2024年1月26日
 
小向ダムは千葉県南房総市和田町小向、右岸が同町南三原の三原川水系三原川にある南房総市水道局が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
房総半島南端に位置する旧千倉町・和田町・丸山町は昭和40年代後半から3町共同で水道事業を進めるため一部事務組合である朝夷水道企業団を設立、その上水用水源として1976年(昭和51年)に竣工したのが小向ダムです。
併せてダムに隣接して小向浄水場も完成し、同年3町への給水が開始されました。
その後2006年(平成18年)に安房郡6町1村が合併して新たに南房総市が誕生、旧富浦町と旧三芳村を除く水道事業は南房総市水道局に統合され小向ダムの管理も同局が引き継ぎました。
小向ダムでは2020年(令和2年)にクレストゲート置換工事のため水位を低下させましたが、その後の記録的な少雨により貯水率が30%まで低減、渇水が2か月続き一躍その名を全国に広める事態となりました。

小向ダムには2017年(平成29年)1月に初訪、2024年(令和6年)1月に再訪しました。
初訪時の写真には撮影日時を記載、それ以外の写真はすべて再訪時のものです。

小向ダムは県道186号線沿いにあります。
数多い千葉県の上水ダムでは唯一ゲートを装備した本格的な重力式コンクリートダムです。
さらに洪水吐のローラーゲートも千葉県では珍しく、装備しているのはここと高滝ダムの2基のみです。

 
ゲートをズームアップ
こちらはゲート置換前、栗本鐵工所製のローラーゲート。
(2017年1月28日)

 
こちらは新しいゲート
大同機工製。


ダムの下段に白い水路管と桝が見えます。
これは利水放流用の設備で桝は量水計で放流の際には桝から溢流させる仕組み。

 
天端は対岸に通じる車道になっており、ゲート部分だけ下流側にクランク。


右岸ダムサイトの竣工記念碑。
当時の朝夷水道企業団により昭和51年に竣工と記されています。

 
上流面
ゲート左手に円形取水塔。

 
天端から減勢工を見下ろす
湾曲した2本の導流堤が特徴的
初訪時は左手の桝から河川維持放流が行われていました。
(2017年1月28日)

 
総貯水容量95万立米のダム湖。
房総らしく水は濁っています。

 
新旧ゲートのプレート
このゲート置換工事のため水位を低下させたところ、記録的な少雨のため2020年(令和2年)12月から翌年1月にかけて渇水状態となりました。

 
新ゲートを見おろすと
ここではゲートの昇降にチェーンが使われます。
一般にワイヤーが使われチェーンのローラーゲートは初めて見ました。

 
件のチェーン。

 
円筒形の取水設備
荏原製作所製の選択取水設備。

 
左岸の艇庫とインクライン。

 
右岸にはホロージェットバルブ
利水放流用ではなく水位低下用。

右岸上流から
こちらは初訪時の写真で、円形取水設備の手前に利水放流用のフロート式表面取水設備が設置されています。
ここで取水された水が上から4枚目写真の水路管を経て利水放流されます。
(2017年1月28日)

 
同じアングルで再訪時の写真。
なんとフロート式表面取水設備が沈没。
近々改修予定とのことですが、それまでは利水放流設備は使えずバブルで代用するようです。

 
渇水騒ぎで一躍知名度を上げた小向ダムですが、千葉県で2基しかないローラーゲート装備ダム、さらには非常に珍しいチェーン式ローラーゲートなど見どころの多いダムです。

昨今の人口減少、水道施設の老朽化等に対処するために2015年(平成27年)に千葉県が示した「県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)」に従い、安房地区の鋸南町・三芳水道事業団・南房総市・鴨川市各水道事業者の事業統合に向けた調整が進められており、早晩事業の統合が実施される見込みです。
 
0670 小向ダム(0821)
左岸 千葉県南房総市和田町小向
右岸      同市和田町上三原
三原川水系三原川
37メートル
106メートル
950千㎥/750千㎥
南房総市水道局
1976年

白浜ダム

2024-02-08 08:00:22 | 千葉県
2017年1月28日 白浜ダム
2024年1月26日
 
白浜ダムは左岸が千葉県館山市畑、右岸が同県南房総市白浜町白浜の長尾川水系馬喰川にある南房総市水道局が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
昭和30年代に入り房総各自治体では海水浴客など観光客の増大に対応して、水道事業の開設が進みます。
房総半島南端の旧白浜町でも昭和30年代後半に町営水道の事業認可を受けその上水道水源として1966年(昭和41年)に竣工したのが白浜ダムです。
ダムと合わせて白浜浄水場も完成し、同年給水が開始されました。
その後2006年(平成18年)に安房郡6町1村が合併して南房総市が誕生、旧富浦町と旧三芳村を除く水道事業は南房総市水道局に統合されました。

白浜ダムはダム敷地への立ち入りが禁止され、初回訪問時はダムを見ることはできませんでした。 
2024年(平成26年)の再訪時は事前に南房総市に見学申請し、職員様同行での見学が叶いました。
1枚目の写真は初訪時、あとはすべて再訪時のものとなります。

南房総市白浜町の房総フラワーラインから北へ約4キロ、車で12~3分で白浜ダムに到着します。
道路は舗装済みですが、途中からは隘路になるため運転には注意しましょう。
初訪時は入り口に立ち入り禁止の警告板とチェーンが掛けられていました。
(2017年1月28日)

 
再訪時は厳重なフェンスが設置され、また敷地内には黄色い建屋(電気室)が新設されています。

 
職員さんに鍵を開けていただき敷地内へ。
写真はポンプ
ダムで取水した水をここまでポンプアップしたのち下流約2キロ地点にある白浜浄水場に送水します。

 
天端への入り口
取水口からの配管が伸びています。


堤体を俯瞰
堤高18.5メートル、堤頂長62.3メートルの小ぶりな堤体
堤頂部の白い鉄骨はホイストクレーンで配管の置換など資材運搬用です。

 
天端には導水管が這い、堤頂には白い鉄骨のホイスト
ちょっと他所では見られない独特の眺め。

 
総貯水容量23万立米のダム湖。
少雨で貯水池率は50%ほど。
南房総は若い堆積岩で形成されており、地質的な要因で貯水池の水はどこも濁りがち。

 
湖岸の巡視艇
満水ならこの船のあるあたりまで水があるそうです。


堤頂中央へ
左手のバルコニーが取水設備で配管が複雑に交差。
一本は浄水場向けでもう一つは水位低下放流用。

 
天端から減勢工を見下ろす。

 
放流管をズームアップ
ダムのある馬喰川は長尾川の右支流で河川維持放流義務はないとのこと。
放流管は主として水位低下目的で使用されるようです。


天端にある謎の構造物。
もとはここの照明灯があったそうですが必要ないため撤去、これはその基礎部分。

 
右岸上流から
ゲート部分だけ高くなっているのは昭和30年~40年ごろの上水ダムでよくみられる形状。
クレスト自由越流頂が3門
右から2番目の扶壁が取水設備で貯水池に水管が2本伸びています。
1本は取水用、もう1本は水位低下放流用。
その左手、湖面に突き出たラッパのようなものは水位計。

 
ダムの南側2キロ地点にある白浜浄水場
当然のことながら立ち入りできません。

 
昨今の人口減少、水道施設の老朽化等に対処するために2015年(平成27年)に千葉県が示した「県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)」に従い、安房地区の鋸南町・三芳水道事業団・南房総市・鴨川市各水道事業者の事業統合に向けた調整が進められており、早晩事業の統合が実施される見込みです。
 
2993 白浜ダム(0818)
左岸 千葉県館山市畑
右岸 千葉県南房総市白浜町白浜
長尾川水系馬喰川
18.5メートル
62.3メートル
230千㎥/207千㎥
南房総市水道局
1966年

鋸山ダム・元名ダム 見学

2024-02-07 08:00:00 | ダム取材見学
2024年1月26日 鋸山ダム・元名ダム見学

2024年(令和6年)の本格的なダム活は南房総からスタートすることにしました。
ダム便覧には千葉県のダムとして50基が掲載されていますが、そのうち到達困難な第2袋倉ダムを除く49基は訪問済みです。
しかしその多くはダム巡りを始めて初期のころの訪問で、知識不足もあり見落とし箇所が多々ありました。
そんな中、千葉県では県内水道事業の統合が計画されており、南房総地区でもいすみ市・御宿町・大多喜町・勝浦市の2市2町の水道事業が2025年(令和7年)4月の統合をめどに調整中との記事を目にしました。
他方鋸南町・館山市・南房総市・鴨川市の安房地区でも水道事業統合が検討されており、1月は安房地区、2月は夷隅地区の上水ダムを中心にダムを回ることにしました。

まず最初に訪れたのが鋸南町です。
町はでは鋸山ダムと元名ダムの2基の上水用水源を所有していますが、どちらも関係者以外立入り禁止となっており、見学に際しては事前に「ダム敷地の一時使用届出書」を提出する必要があります。
今回は書類提出後、見学の許可を頂き建設水道課職員様案内での見学が叶いました。
両ダムの概要については鋸山ダム元名ダムの項をご覧ください。

まずは天端から見学開始
天端への入り口にはフェンスが設置されています。


職員さんに鍵を開けていただきます。


ダムへ続く通路
副ダム?止水工?諸説ありましたが職員さん曰く『通路』。
この写真のみ2016年1月12日撮影のものです。


通路を進むと再びフェンスがあります。


フェンスには水利使用標識。


堤体の手前(右岸側)には高さ10メートルほどの地山があります。


地山頂上の竣工記念碑
昭和卅七年九月と記されています。
卅という字は今はほとんど使いません。


記念碑から堤体を見下ろします。


昭和30年代の上水ダムらしく、ゲート部分が一段高くなり取水設備は半円形。


取水設備は4段の選択取水式で、それぞれの取水口の開閉用ハンドルが並びます。 


洪水吐ゲート
扶壁に溝がありますが、完成当初はスライドゲートを装備していたそうです。
その後撤去され今は自由越流頂になっています。


天端からダム下を見下ろします。
ダム直下は鋸南町建設水道課の資材置き場で、中央の白い線の下に浄水場への導水管が埋設されています。
この写真ではほとんどわかりませんが、写真左上部分に微かに東京湾が見えます。


洪水吐導流部
昭和30年代だと、この緩やかな導流壁の建設にはさぞかし手がかかったのでは?


総貯水容量14万7000立米の貯水池。
少雨のため貯水率は40%台まで低下。


取水塔の円形バルコニーを見下ろすと
右手4つは上記のように取水口開閉用ハンドル
左手二つは水量調節用のハンドルですが、いまは開放したままほとんど操作しないそうです。


洪水吐上にもハンドルが並びます。
かつて装備していたスライドゲート開放用のハンドルですが、今はゲートが撤去されたためこのハンドルも用無し。


洪水吐導流部と減勢工。
放流量は多くなく小さな減勢工
奥に副ダムが見えます。


洪水吐中央上流側のバルコニーがあります。
このハンドルは土砂吐ゲート開閉用ですが、ハンドルが撤去されゲートは閉めたまま。

これで天端の見学は終了
ダム下へと向かいます。
普段は閉まっているダム下資材置き場も開放されています。


資材置き場にマイカーで進入
交換予定の水管や古い巡視艇が並びます
白い砂利の下に浄水場への導水管が埋設されています。


白い砂利上に置かれたコーン
横に青い栓が見えます。
実はこれ河川維持放流用のバルブ。


ダムとほぼ正対
洪水吐は当初ゲートを備えていましたが今は自由越流。


導流部下部には土砂吐ゲート
手前の細いパイプは上記コーンから分水された河川維持放流用
訪問時は貯水率が低下したため維持放流は中断。


堤体直下まで接近、ダムにタッチできます。
手前の白い部分は染み出した石灰成分。


これにて鋸山ダムの見学は終了
元名ダムへと移動します。
こちらも立入禁止で職員さんにチェーンを開けていただきます。


天端の手前にもチェーン。


天端からは東京湾越しに伊豆半島まで遠望できます。


天端中央の竣工記念碑。
御影石に昭和55年3月と記されています。


総貯水容量7万7000立米の小さな貯水池。
少雨のため貯水率は40%台。
正面には斜樋。


斜樋をズームアップ。


天端を右岸から撮影
逆光でゴーストが入りました。


右岸の円形越流式洪水吐。


水位が下がっているので貯水池に入って撮影。


越流した水は隧道経由で斜水路へ
ちょうど木の枝が被さった奥に隧道があります。


ロックフィルなので当然上流面もロック材で護岸。
低水位ならではの眺め。


いったん天端に戻りダム下へと向かいます。


堤高28.2メートルをダム下から見上げると
千葉県唯一のロックフィルダムですが、リップラップには灌木が茂とてもロックフィルには見えません。
木が根を張ることでダムの構造に影響はないんでしょうか?


右岸の洪水吐斜水路
洪水吐を越流した水は上記隧道を経由してここを流下します。




洪水吐減勢工脇に放流口があります。
この河川には維持放流義務はなく水位低下用放流口となります。


この鉄板の下に放流口への分水バルブがあります。
でもさび付いた鉄板を見ればわかるように最近はこの放流口は使ってないそうです。


最後に左岸上流湖岸にある取水設備へと向かいます。


取水設備は斜樋で右手がゲート開閉用のハンドル。
基本的に取水量は一定でこのハンドルを回すことはほとんどないとのこと。
左手は水位計。


糸が伸びているのが水位計。


取水設備から洪水吐を遠望
かなり水位が低いのが分かります。


最後に二つのダムから水を送る鋸南町浄水場の写真で今回の見学は終了。


鋸南町水道事業のうち、この二つのダムの占める割合は70%弱
残りは南房総広域水道企業団からの受水になります。
現在南房総地域として夷隅地区及び安房地区それぞれで水道事業の統合がすすめられており、鋸南町・三芳水道企業団・南房総市・鴨川市の水道事業統合がそう遠くない時期に実現する見込みです。

最後にご多忙の中、2つのダムを丁寧に案内していただいた鋸南町建設水道課には厚く御礼申し上げます。

元名ダム

2024-02-06 08:00:00 | 千葉県
2016年1月21日 元名ダム
2024年1月26日

元名ダムは千葉県安房郡鋸南町元名の小磯川水系小磯川にある鋸南町建設水道課が管理する上水道用水目的のロックフィルダムです。
千葉県内では唯一のロックフィルダムとなります。
鋸南町の水道事業は1962年(昭和37年)の鋸山ダムと鋸南町浄水場の完成とともに給水が開始され、水道普及地域の拡大や観光客の増加に対応するため4次にわたる拡張が実施されました。
元名ダムは1975年(昭和40年)に着手された第3次拡張事業の中核施設として1979年(昭和54年)に竣工、翌年より運用が開始されここで取水された水は鋸南町浄水場を経由して町内各所に給水されています。

かつては天端への立ち入りができた時期もあったようですが、今は完全に立ち入りが禁止され2016年(平成28年)1月の初訪時は左岸を通る道路から遠望するにとどまりました。
2024年(令和6年)1月の再訪時は事前に鋸南町に見学申請を行い、建設水道課職員様の案内で見学が叶いました。
1枚目写真が初訪時、あとはすべて再訪時の写真です。
  
国道127号から日本寺方面に向かい、日本寺への道を左手に分けそのまま進むと元名ダム左岸に到着します。
千葉県唯一のロックフィルダムですが、リップラップには草木が繁茂しロックかアースか見分けがつきません。
(2016年1月21日)

 
天端の入り口。
チェーンが掛けられ立入りが制限されています。

 
天端からは東京湾越しに伊豆半島まで遠望できます。
正面は天城山系。

 
天端中央の竣工記念碑。

 
総貯水容量7万7000立米の小さな貯水池。
少雨のため貯水率は40%台。
正面に斜樋があります。

 
斜樋をズームアップ。

 
右岸の円形越流式洪水吐。

 
水位が低いので貯水池内まで下りられます。
ロックフィルなので当然上流面もロック材。


天端に戻りダム下へと降下します。
堤高28.2メートル
登山のガレた岩場下りのよう。


右岸の洪水吐斜水路。
右手は堤体になりますが、樹木が灌木程度まで成長。
ダムの構造に影響はないんでしょうか?

 
減勢工そばの放流口
ダムのある河川では維持放流の義務はなく水位低下用の放流口になりますが、最近は使ってないとのこと。

 
左岸湖岸の斜樋と水位計
ピアノ線のようなものが水位計で、その右手にシャフトがあります。

 
斜樋から洪水吐を遠望
水位が低いのがよくわかります
越流した水はいったん隧道を経て3枚上の写真の斜水路を流下します。

 
元名ダム見学の詳細は鋸山ダム・元名ダム 見学』をご覧ください。

昨今の人口減少、水道施設の老朽化等に対処するために2015年(平成27年)に千葉県が示した「県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)」に従い、安房地区の鋸南町・三芳水道事業団・南房総市・鴨川市各水道事業者の事業統合に向けた調整が進められており、早晩事業の統合が実施される見込みです。
 
0687 元名ダム(0197)
千葉県安房郡鋸南町本名
小磯川水系小磯川
28.2メートル
69メートル
77千㎥/76千㎥
鋸南町建設水道課
1979年

鋸山ダム

2024-02-05 08:00:00 | 千葉県
2016年1月21日 鋸山ダム
2024年1月26日
 
鋸山ダムは千葉県安房郡鋸南町元名の元名川水系元名川にある鋸南町建設水道課が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
昭和30年代に入り房総各自治体では海水浴客など観光客の増大に対応して、水道事業の開設が進みます。
1959年(昭和34年)に旧保田町と勝山町が合併して誕生した鋸南町も例にもれず、合併直後に町営水道を認可、その上水道水源として1962年(昭和37年)に竣工したのが鋸山ダムです。
ダムと合わせて鋸南町浄水場など水道施設も完成し同年給水が開始されました。
その後数次にわたり事業拡張が行われ、1979年(昭和54年)には2番目の水源として元名ダムが竣工、さらに1993年(平成5年)には利根川から取水し水資源機構房総導水路を経由した南房総広域水道企業団(通称南水)からの受水も始まり、現在の鋸南町の水道普及率は99%に及びます。

鋸山ダムはダム下、天端が立ち入り禁止になっており2016年(平成28年)1月の初訪時は下流から遠望するにとどまりました。
2024年(令和6年)1月の再訪時は事前に鋸南町に見学申請を行い、建設水道課職員様の案内で見学が叶いました。
撮影日時のない写真はすべて再訪時のものです。
 
鋸南町の国道127号線から町道を東進、町営鋸南町浄水場をやり過ごし約1.5キロ、車で10分弱で鋸山ダムに到着します。
ダム下は鋸南町建設水道課の資材置き場になっており立ち入り禁止
初訪時はここから遠望するのみでした。
(2017年1月28日)

 
再訪時は敷地の中で見学。
放流設備はクレスト自由越流頂5門だけという上水ダムらしい造り。

 
導流部下部に土砂吐ゲートがあります。
手前に伸びる細く黒い管が河川維持用のパイプ。
訪問時は貯水量が少なくなっており維持放流は中止。


堤体直下まで寄ります。
扶壁に溝が見えますが、完成当初はスライドゲートが嵌め込まれていたそうです。


資材置き場入り口から100メートルほど先に天端への入口があります。
上水用の貯水池ということでフェンスが閉ざされ完全立ち入り禁止。


フェンスの先にはコンクリートの構造物。
各種ダム紹介サイトなどでは副ダム?止水工?などの憶測がありますが・・・
職員さんによれば『これはただの通路』。
(2017年1月28日)


通路の先にもゲートがあり水利使用標識が設置されています。
県管理の二級河川ということで普段目にする水利使用標識とは書式が異なる。


いったん高さ10メートルほどの地山を登ります。
頂上には竣工記念碑があり竣工は昭和卅七年九月と記されています。


記念碑から堤体を見下ろすと
ゲート部が高く上流側の取水設備は半円形で、いかにも昭和30年代の上水ダムらしい造り。


堤頂の幅は1メートルほど。


天端からダム下の眺め
斜めの白い線の下に浄水場への導水管が埋設されています。
ちょっとわかりづらいのですが、写真左上側に微かに東京湾が見えます。
ということで『海が見えるダム』認定!


総貯水容量は14万7000立米
少雨のため貯水率は40%台。
まだ深刻というレベルではありませんが、職員さん曰く『まとまった雨が欲しい』。


クレスト自由越流頂
上記のように完成当初はスライドゲートが設置されておりその溝が残ります。


取水設備上のバルコニーを見下ろします。
右手のハンドルはそれぞれ4段ある取水口の操作用
左の二つのハンドルは水量調節用
基本水量調節は開放のままで、この2つのハンドルを操作することはほとんどないそうです。

 
ゲート上にもハンドルが並びます。
これはかつて設置されていたスライドゲート開閉用でゲートが撤去された今使われることはありません。

これは土砂吐ゲート開閉用
ハンドルは撤去され土砂吐は閉められたまま。


天端から導流部を見下ろす
越流しても放流量は多くなく減勢工も小さい
よく見ると副ダムがあります。


鋸山ダム見学の詳細は鋸山ダム・元名ダム 見学』をご覧ください。

昨今の人口減少、水道施設の老朽化等に対処するために2015年(平成27年)に千葉県が示した「県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)」に従い、安房地区の鋸南町・三芳水道事業団・南房総市・鴨川市各水道事業者の事業統合に向けた調整が進められており、早晩事業の統合が実施される見込みです。
 
0686 鋸山ダム(0198)
千葉県安房郡鋸南町元名
元名川水系元名川
19.1メートル
55メートル
147千㎥/131千㎥
鋸南町建設水道課
1962年