2016年5月21日 刈谷田川ダム
2023年9月23日
刈谷田川ダムは新潟面長岡市栃堀の信濃川水系刈谷田川にある新潟県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
刈谷田川は『谷や田を刈る』という名が示すように暴れ川で豪雨の度に流域での出水被害が多発していました。
1967年(昭和42年)の羽越豪雨を契機に新潟県は県所管各河川の抜本的な治水対策に乗り出します。
刈谷田川では豪雨直後に上流部への多目的ダム建設事業が採択され1974年(昭和49年)より本体着工、1980年(昭和55年)に刈谷田川ダムが竣工しました。
刈谷田川ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで刈谷田川の洪水調節(最大毎秒170立米の洪水カット)、安定した河川流量の維持と既得灌漑用水への補給、上工水の供給を目的としています。
その後1990年(平成2年)に河川維持放流を利用した新潟県企業局刈谷田発電所(最大1100キロワット)が増設されました。
しかし2004年(平成16年)7月の新潟・福島豪雨の際にはダムの計画高を超える洪水に見舞われ、これを機に利水容量の一部が洪水調節容量へ振り替えられ、洪水期には有効貯水容量415万立米の大半が洪水調節容量となる治水重視の運用となりました。
運用の変更と河川整備の成果は大きく、2011年(平成23年)の新潟・福島豪雨の際にはほぼ2004年とほぼ同量の降雨を記録したにもかかわらず刈谷田川流域での洪水被害は軽微にとどまりました。
刈谷田川ダムの容量配分(ダムパンフレットより)
刈谷田川ダムには2016年(平成28年)5月に初訪、2023年(令和5年)9月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
ダムは狭隘な谷間から平野への出口に作られ、細長い漸縮型堤体導流壁がダムを一段と縦長に見せます。
右手前の建屋が県企業局刈谷田発電所。
(2016年5月21日)
洪水吐はクレストラジアルゲート2門、オリフィス高圧ラジアルゲート1門を装備。
導流壁左手四角い穴はオリフィスの空気孔。
(2016年5月21日)
ダム直下に近づくと灌漑用の分水ゲートが現れます。
『大江』と呼ばれる灌漑用水でダムの減勢工から取水しています。
こちらはダム建設以前から慣行水利権でダムの目的としてはNの不特定利水となります。
(2023年9月23日)
副ダムと刈谷田発電所
発電所は河川維持放流を利用した利水従属の小水力発電となります。
(2016年5月21日)
左岸から下流面
下流からの姿とは一転、堤高83.5メートル、堤頂長202.5メートルのダムらしい姿。
(2023年9月23日)
ダム建設に併せて左岸ダムサイトは園地として整備されました。
今はやや荒れ気味ですがこのライオンのモニュメントは何気に目を引きます。
てか、かわいい!
(2023年9月23日)
ダムサイトの竣工記念碑。
(2016年5月21日)
初回訪問時の上流面。
(2016年5月21日)
再訪時は洪水期常時満水位に約1メートル程足りない水位。
コンクリートの茶色い部分が非洪水期満水位となります。
オリフィス上部には予備ゲート
(2023年9月23日)
天端は徒歩のみ開放
インクラインはなく巡視艇はこのクレーンで昇降させます。
(2016年5月21日)
初訪時は天端に置かれた巡視艇が、再訪時はこちらに移動されていました。
(2023年9月23日)
洪水吐導流部と減勢工
上から見ても細長い導流壁、そして減勢工も深い。
(2016年5月21日)
再訪時は河川維持放流用の放流管から放流中。
(2023年9月23日)
発電所の水利使用標識。
利水従属発電となります。
(2023年9月23日)
初訪時のダム湖
非洪水期満水位でEL249.5メートルまで貯留されています。
(2016年5月21日)
再訪時のダム湖
洪水期の制限水位EL239.4メートルから1メートルほど低い水位です。
湖岸の植生を見れば非洪水期との水位差が見て取れるでしょう。
(2023年9月23日)
上流面
奥は選択取水設備、手前はオリフィス予備ゲート
ゲート、取水口スクリーンの枠、クレーンが赤で統一されています。
水位は低く見えますが洪水調節容量が過半を占めるためこれで常時満水位。
洪水期になるとさらに水位が下がります。
(2016年5月21日)
(追記)
刈谷田川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
0771 刈谷田川ダム(0399)
新潟県長岡市栃堀
信濃川水系刈谷田川
FWIP
G
83.5メートル
202.5メートル
4450千㎥/4150千㎥
新潟県土木部
1980年
◎治水協定が締結されたダム