2015年10月10日 八ツ場ダム
2016年10月09日
2023年 9月25日
八ッ場ダムは左岸が群馬県吾妻郡長野原町川原畑、右岸が同町川原湯の一級河川利根川水系吾妻川にある国交省関東地方整備局が直轄管理する多目的重力式コンクリートダムです。
群馬北西部を横断し渋川市で利根川に合流する吾妻川は利根川の主要支流の一つですが、草津白根山をはじめとする火山活動の影響で水質は強酸性であり、吾妻川の治水は酸性水の中和事業がその前提となっていました。
1965年(昭和40年)の品木ダムおよび草津中和工場の完成により吾妻川の水質が改善したことから、1967年(昭和42年)に八ツ場ダム建設が採択されますが激しい反対運動により土地買収は長期化、1994年(平成6年)にようやく付帯工事が着手されました。
しかし民主党政権による事業中止決定などにより事業は翻弄され、2015年(平成27年)1月にようやく本体工事が着手、2019年(令和元年)に事業採択から50年以上を経過し八ッ場ダムが竣工しました。
同年試験湛水時に令和元年台風19号(東日本台風)が襲来、おりしも貯水池が空っぽだったことで吾妻川下流域での洪水被害低減に大きく貢献したのは記憶に新しいところです。
八ッ場ダムは国交省関東地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、吾妻川の洪水調節(最大毎秒2800立米の洪水カット)、安定した河川流量の維持、1都4県1市および2企業団への上水供給、2県への工水供給、群馬県企業局八ッ場発電所でのダム式発電(最大出力1万1700キロワット)を目的としています。
八ッ場ダム建設事業は我が国屈指の長期化事業となり、また政治に大きく翻弄された一方、本体工事着手後は見学会等積極的な広報活動が功を奏し土木ブーム・インフラブームの先鞭となりました。
ダム完成後はダムサイトの『なるほど!やんば情報館』や湖畔の道の駅を中心に関東のダム屈指の集客力を誇るとともに周辺観光の拠点として地域振興に大きく貢献しています。
八ッ場ダムには本体建設工事期間中に二度、さらにダム運用開始後の2023年(令和5年)9月に3度目の訪問をしました。
当ブログではまず完成後のダムを紹介したのち、終盤で建設工事中の写真を掲載します。
左岸ダムサイトの駐車場に車を止めたのち、エレベーターでダム下に下ります。
ダム下も下流園地として整備され、様々なアングルでダムを見上げることができます。
堤高116メートル、堤頂長290.8メートルの立派な躯体。
放流設備は非常用洪水吐としてクレストラジアルゲート4門
水位維持用オリフィスとして高圧ラジアルゲート1門、常用オリフィスとして高圧ラジアルゲート2門
さらに利水放流設備としてホロージェットバブルおよびジェットフローゲートを1門ずつ装備。
洪水吐直下には赤い管理橋(八ッ場もみじ橋)が架かっています。
洪水吐導流部とエレベーター出入口。
エレベーターは9時30分~16時30分に開放。
八ッ場もみじ橋から
クレストラジアルゲート4門と水位維持用オリフィス1門、常用オリフィス2門を見上げます。
ラジアルゲートをズームアップ。
洪水吐減勢工
八ッ場もみじ橋の下に利水放流設備があります。
右がホロージェットバルブ、左がジェットフローゲート。
ちょうど発電所の見学会があったので参加しました。
こちらが発電機で最大11700キロワットの発電を行います。
見学会はプロジェクションマッピングを駆使した斬新なものですが、担当者との質疑応答もなくダム慣れた人には正直物足りない。
エレベーターでダムサイトに上がり左岸上流側にある『やんば見放台』へ。
左手が情報館である『なるほど!やんば資料館』を併設した管理棟。
訪問時はまだ洪水期のため、貯水位はEL555.2メートルの洪水期貯留準備水位。
八ッ場ダムの洪水期は7月~10月5日まで。
それ以外の非洪水期は有効貯水容量すべてが利水容量となります。
左岸から下流面
高い襟が特徴。
ステンレス製の銘板。
総貯水容量1億750万立米のやんば吾妻湖。
正面は八ッ場大橋。
その袂に水陸両用バスが見えます。
直轄ダムらしく天端は2車線幅ありますが、開放は徒歩のみ。
左はエレベーター棟、右は取水設備機械室。
無駄使いは許されない時勢を受けてか?高欄や手すりの意匠は簡素。
ゲート越しに減勢工を見下ろす
あまり見ない黄緑のゲートが新鮮
一方、八ッ場もみじ橋の赤がよく映えます。
アングルを変えて
左岸広場中央の建屋の下に発電所があります。
左上の青い屋根は旧吾妻線を利用した自転車型トロッコの八ッ場駅。
右岸上流から
個人的にはこのアングルからの絵が一番好きかな?
管理棟の左手は巡視艇繋留設備。
ズームアップ
水位は洪水期貯留準備水位。つまり洪水期の満水。
オリフィスの予備ゲートが見れるのはこの時期ならでは。
上流の八ッ場大橋から遠望。
ここからは建設工事中の写真です。
やんば見方台から
9枚目写真と同じ位置になります。
掘削のため発破が行われています。
(2015年10月10日)
発破作業直後。
(2015年10月10日)
これは八ッ場大橋からの眺め
ブルーシートのあたりにかつての吾妻線川原湯温泉の駅がありました。
(2015年10月10日)。
初訪から1年後に再訪。
山留めが完了、いよいよ本体の打設がスタートします。
(2016年10月9日)
本体頭上にはケーブルクレーンが架かり、吾妻線鉄橋跡にはベルトコンベアが設置されています。
(2016年10月9日)
(追記)
八ッ場ダムには洪水調節容量が設定されていますが、豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
0624 八ツ場ダム(0010)
左岸 群馬県吾妻郡長野原町川原畑
右岸 同町川原湯
利根川水系吾妻川
FNWIP
G
116メートル
290.8メートル
107500㎥/90000㎥
国交省関東地方整備局
2019年
◎治水協定が締結されたダム