ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

瀬月内ダム

2022-11-30 23:42:42 | 岩手県
2022年10月22日 瀬月内ダム
 
瀬月内(せつきない)ダムは岩手県久慈市山形町来内の新井田川水系瀬月内川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
瀬月内川下流の九戸郡九戸村の水田及び丘陵地の畑地帯の慢性的水不足を解消するために、農水省の補助を受けた県営かんがい排水事業瀬月内川地区および県営畑地帯総合土地改良事業九戸地区が着手され、その灌漑用水源として1987年(昭和62年)に竣工したのが瀬月内ダムです。
ダムは久慈市にありますが、管理は受益地となる九戸村が受託しており約580ヘクタールの水田・畑地に灌漑用水を供給しています。
その後2017年(平成29年)に利水放流を利用した瀬月内ダム小水力発電所が稼働し最大出力59キロワットの小水力発電が開始されました。
 
ダムの敷地は立ち入り禁止のため、見学は右岸を通る市道からに留まります。
岩手県北部にある他の農業用ロックフィルダム同様下流面には芝が張られ、見た目はアースダムのようです。
寒冷地のため冬場の凍上を防ぐ目的があると思われます。


天端入り口には堅固な門扉。


堤頂長は144.5メートル。


上流面はロック材で護岸
ロック材はかなり小粒。


左岸の横越流式洪水吐、管理事務所、艇庫を遠望。


右岸ダムサイトの説明板。


水利使用標識。


右岸の取水塔
表面取水設備です。
ダム湖は総貯水容量125万立米。


アングルを変えて
当然管理橋は立ち入り禁止。

(追記)
瀬月内ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たな洪水調節容量が確保されることになりました。

0261 瀬月内ダム(1893)
岩手県久慈市山形町来内 
新井田川水系瀬月内川 
 
 
38.5メートル 
144.5メートル 
1250千㎥/1038千㎥ 
九戸町
1987年

大志田ダム

2022-11-30 18:13:33 | 岩手県
2022年10月22日 大志田ダム
 
大志田ダムは岩手県二戸郡一戸町平糠の馬淵川水系平糠川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
二戸市や一戸町は北上高地北端の標高200~400メートルに位置し、水利に乏しい上に少雨且つ寒冷な気候もあり農業は小規模な畑作営農に留まっていました。
しかし高原野菜の品種改良やリンゴ栽培の普及と言った当地に適応した農作物の開発が進んだことで、灌漑施設の整備が強く求められるようになります。
これを受け1993年(平成5年)に農水省による国営農業水利事業馬淵川沿岸地区が着手され、その灌漑用水源として2004年(平成16年)に竣工したのが大志田ダムです。
農業水利事業全体も2011年(平成23年)に竣工し、受益面積約2200ヘクタールに及ぶ灌漑排水設備が整備されました。
運用開始後、ダムの管理は二戸市及び一戸町が共同で受託、また運用開始と同時に河川維持放流を利用した大志田ダム発電所(最大出力810キロワット)が稼働しました。
 
ダム下流の大志田橋からダムと正対できます。
農業用ダムらしく洪水吐は7門のクレスト自由越流頂だけ
ダム下に放流設備と小水力発電所があります。


ダム下は減勢工手前までアプローチできます。
副ダムが2基並びその間にバッフルブロックが設置されています。


ダム下流左岸にある立派な揚水機場。
受益農地は2000ヘクタールに及ぶ上、その半分がダムよりも高地にあるため揚水機場も大がかりなものになっています。


国営農業水利事業の説明版。


下流面
農業用コンクリートダムの場合、漸縮型堤体導流壁が多いのですがここは堤趾導流壁。


天端は立ち入り禁止。
管理事務所に職員さんが駐在されており、交渉すれば立ち入れないこともなかったのですがとにかく大雨。
左岸からの見学にとどめました。


ダム湖は『菜魚湖(ななこ)』
芸能人みたいな名前、いっそこの名前でご当地キャラ作ればいいのに?


左岸管理事務所裏手の艇庫とインクラ。


上流面
受益地の大半は畑作や樹園地で一年を通じて水利権が設定されているため10月でもほぼ満水。


多孔式取水設備。


ダム湖の菜魚湖は総貯水容量1130万立米と本州の農業用ダムとしてはかなり大規模。


(追記)
大志田ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0266 大志田ダム(1892)
岩手県二戸郡一戸町平糠 
馬淵川水系平糠川 
 
 
63.7メートル 
165メートル 
11300千㎥/8600千㎥ 
二戸市・一戸町
2004年
◎治水協定が締結されたダム

一方井ダム

2022-11-29 22:05:05 | 岩手県
2022年10月22日 一方井ダム
 
一方井(いっかたい)ダムは岩手県岩手郡岩手町黒内の北上川水系一方井川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
1972年(昭和47年)に農水省の補助を受けた県営かんがい排水事業一方井地区が着手され、その灌漑用水源として1990年(平成2年)に竣工したのが一方井ダムです。
運用開始後は岩手町が管理を受託し、一方井土地改良区管内約360ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
事業の竣工により従来の稲作に加え畑作も推進され、特にキャベツは『いわて春みどり』のブランドで全国展開する特産品となっています。
さらに2020年(令和2年)には利水放流を利用した一方井ダム小水力発電所(最大出力49.9キロワット)が稼働しました。
 
ダムへ通じる町道の入り口にある一方井ダムの標識。


まずはダム下へ
堤体直下まで立ち入ることができますが、近すぎて堤頂長390メートルの堤体全貌を見ることはできません。
ロックフィルですが下流面には芝が張られ見た目はアース、また提体中段に『一方井』の植栽が施されていますが、この位置からは見ることができません。


監査廊入り口。


ダム下には建屋が二つ並びます。
左は既存の放流設備、右は2020年(令和2年)に新設された小水力発電所。


ダム下への道は洪水吐減勢工を跨ぎます。
導流部は堤体との間に地山を挟んでいるのでこういう眺めになります。


右岸ダムサイトへ向かいます。
横越流式洪水吐
越流した水は上の写真の減勢工へと流下します。


右岸から見た上流面
こちらから見るとロックフィルダムだとわかります。
それにしても長い堤体。
ダム湖は総貯水容量224万立米。


今度は左岸ダムサイトへ
入り口には門扉があり車両進入禁止。


管理事務所があるダムサイトは公園になっており東屋もあります。


下流面は芝が張られて見た目はアース。
凍上防止目的と思われます。


堤頂長390メートルの天端は立ち入り禁止。


管理事務所裏手に艇庫がありこれはそのインクライン。


0260 一方井ダム(1891)
岩手県岩手郡岩手町黒内 
北上川水系一方井川 
 
 
40メートル 
390メートル 
2240千㎥/2170千㎥ 
岩手町農林環境課 
1990年

根石ダム

2022-11-29 18:15:05 | 岩手県
2022年10月22日 根石ダム
 
根石ダムは岩手県八幡平市根石の一級河川米代川水系根石川にある農地防災目的のロックフィルダムです。
火山堆積物が多い岩手県は農地防災ダムの建設に積極的で、防災ダム13基は岐阜県に次ぐ全国2番目の多さとなっています。
根石ダムは岩手県で最も新しい農地防災ダムで、農水省の補助を受けた県営防災ダム事業根石地区により2000年に竣工、完成後は八幡平市が管理を受託し根石川流域85ヘクタールの農地防災を担っています。
なお、八幡平市の大半は太平洋に注ぐ北上川や馬淵川水系となっていますが、当ダムは日本海に注ぐ米代川水系です。

八幡平市田山の国道282号線から根石川沿いの市道を約6キロ北上すると根石ダムに到着します。
まずはダム下から
提体やダム下はきれいに草が刈られ、非常に美しい佇まい 
ロックフィルダムですが凍上防止のため下流面には芝が張られ見た目はアースのよう。


洪水吐導流部から越流しています。
当ダムでは横越流式洪水吐にオリフィス流出孔を設けてあり、流入量はそのまま洪水吐を流下するため常に越流が見られます。
左手は仮排水路の吐口で緊急低位放流ゲートを兼ねています。


右岸から下流面
右岸を長ーい洪水吐導流部が流下します。


農水省の補助ダムではおなじみダムの説明板
こういうの非常にありがたい。


天端から減勢工を望む
減勢工下流の擁壁の絞りがエロい。


非常用洪水吐と常用洪水吐を兼ねる横越流式洪水吐
奥の穴がオリフィス流出孔で通常は流入量がここから流下します。
奥は管理事務所ですが職員の常駐はありません。


上流側から見たオリフィス流出孔
農地防災ダムにおいてこのタイプの常用洪水吐は初見、というか全国でもここだけじゃないかな?


天端は徒歩のみ通行可。
路面を見ればわかりますが、かなりの雨。


下流面とダム下広場
ちょうど草刈りを終えたタイミングでの訪問ということもあるんですが、とにかくきれいに整備されている印象。
ダム下の広場は公園として開放してもいいのでは?とも思えるんですが立入禁止。


上流面
これを見ればロックフィルダムだとわかります。


有効貯水容量=農地防災容量の防災専用ダムですが、総貯水容量142万5000立米のうち堆砂容量が55万立米も確保されており、この分が貯留されています。

ちょうど草刈りを終えたタイミングでの訪問ということもあるんですが、芝が張られた美しいリップラップなど非常に好印象。
今回は雨中での見学となりましたが、できれば好天時に再訪したいダムです。

(追記)
根石ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2924 根石ダム(1890)
岩手県八幡平市根石
米代川水系根石川
41メートル
187.6メートル
1425千㎥/875千㎥
八幡平市
2000年
◎治水協定が締結されたダム

荒沢3号ダム(白沢防災ダム)

2022-11-28 22:40:01 | 岩手県
2022年10月22日 荒沢3号ダム(白沢防災ダム)
 
荒沢3号ダムは岩手県八幡平市の馬淵川水系安比川左支流白沢川にある農地防災目的のアースフィルダムです。
安比川上流域は火山堆積物で形成された脆い地盤で『荒沢』という地名が示すように豪雨の際には土砂流出量が急増し下流域ではしばしば洪水被害が発生しました。
これを受け岩手県は1952年(昭和27年)に農林省(現農水省)の補助を受けた荒沢防災ダム事業を採択、、安比川最上流部への3基の農地防災ダム建設が着手されました。
そして1960年(昭和35年)に3ダム中最初に完成したのが荒沢3号ダム(白沢防災ダム)です。
その後1972年(昭和47年)に荒沢1号ダム(安比防災ダム)が、1989年(平成元年)に荒沢2号ダム(鍋越防災ダム)完成、これにより事業着手から37年の年月をかけた荒沢防災ダム事業はようやく竣工に至りました。
1号~3号ダムは完成後は安代町が管理を受託、現在は町村合併により八幡平市が管理を引き継ぎ、安比川流域の農地防災を担っています。
なお、荒沢1号2号3号という名称はダムの位置によって振られた番号であり、建設順とは関係ありません。

安比温泉郷から鍋越川沿いのダートの林道を西進、最初の分岐を右手に折れると荒沢3号ダムに到着します。
まずはダム下から
右手は常用洪水吐の吐口、奥にアース堤体が見えますがダム下はここから先は立ち入り禁止。


流水型防災ダムで、普段は流入量は放流ゲートからそのまま放流されます。
これはその吐口。


左岸ダムサイトからアース堤体を望みます。
ちょうど草刈りを終えたばかりで芝生の公園のようです。


右岸に非常用洪水吐となる横越流式洪水吐があり、ローラーゲートが垣間見えます。


天端は立ち入り禁止。
ちょうど草刈り作業中で対岸の洪水吐までの立ち入り許可を頂きました。
ところがその直後から土砂降りの雨となり、結局左岸からの見学にとどまりました。


ダムの説明板。


左岸ダムサイトの管理事務所
普段は職員の常駐はありません。


上流面。
手前に常用洪水吐となる放流ゲートがあります。


流水型防災専用ダムのため通常はダム湖には水は溜まりません。
総貯水容量119万4000立米のうち堆砂容量は20万9000立米。
完成から50年経過し堆砂の進行によりダム湖は空っぽ。


放流ゲートをズームアップ。
通常は流入量はここから2枚目写真の吐口に流下させます。


折角天端への立ち入り許可を得たのに、大雨で断念したのが残念。

(追記)
荒沢3号ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0243 荒沢3号ダム(白沢防災ダム)(1889)
岩手県八幡平市大字なし 
馬淵川水系白沢川 
 
 
22メートル 
155メートル 
1194千㎥/985千㎥ 
八幡平市 
1960年
◎治水協定が締結されたダム

荒沢2号ダム(鍋越防災ダム)

2022-11-28 10:27:52 | 岩手県
2022年10月22日 荒沢2号ダム(鍋越防災ダム)
 
荒沢2号ダムは岩手県八幡平市の馬淵川水系安比川左支流鍋越川にある農地防災目的のロックフィルダムです。
安比川上流域は火山堆積物で形成された脆い地盤で『荒沢』という地名が示すように豪雨の際には土砂流出量が急増し下流域ではしばしば洪水被害が発生しました。
これを受け岩手県は1952年(昭和27年)に農林省(現農水省)の補助を受けた荒沢防災ダム事業を採択、安比川最上流部への3基の農地防災ダム建設が着手されました。
1960年(昭和35年)の荒沢3号ダム(白沢防災ダム)、1972年(昭和47年)の荒沢1号ダム(安比防災ダム)に次いで1989年(平成元年)に建設されたのが荒沢2号ダム(鍋越防災ダム)です。
当ダムの完成により事業着手から37年の年月をかけた荒沢防災ダム事業はようやく竣工に至りました。
1号~3号ダムは完成後は安代町が管理を受託、現在は町村合併により八幡平市が管理を引き継ぎ、安比川流域の農地防災を担っています。
なお、荒沢1号2号3号という名称はダムの位置によって振られた番号であり、建設順とは関係ありません。

安比温泉郷から鍋越川沿いのダートの林道を西進すると荒沢2号ダム下に到着します。
提体とともに洪水吐導流部、常用洪水吐からの吐口が一望できますが、ここから先はチェーンが掛けれら関係者以外立ち入り禁止。


洪水吐導流部をズームアップ。


今度はダム左岸高台の展望台に移動。ここからはダムを俯瞰できます。
手前は管理事務所ですが職員の常駐はありません。


展望台からダムサイトへと下ります。
ロックフィルダムですが、冬場の凍上を防ぐためリップラップには芝が張られています。
また提体には九十九折れの管理道路が続きます。


左岸から
手前は常用洪水となる放流ゲート、対岸には非常用洪水吐となる横越流式洪水吐があります。


天端は立ち入り禁止でしたが、草刈り作業のオジサンが『写真を撮るだけなら入ってもいいよ。』らっきぃ!
上記のようにロックフィル堤体には芝が張られ、九十九折れの管理道路が続きます。


防災専用ダムですが堆砂容量20万立米分が貯留されています。


放流ゲートをズームアップ。
平時は流入量はここから1枚目写真の右手トンネル吐口へ放流します。


右岸の洪水吐導流部。


右岸から下流面。


非常用洪水吐となる横越流式洪水吐。


(追記)
荒沢2号ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0242 荒沢2号ダム(鍋越防災ダム)(1888)
岩手県八幡平市大字なし 
馬淵川水系鍋越川 
 
 
45.5メートル 
246.6メートル 
899千㎥/690千㎥ 
八幡平市 
1989年
◎治水協定が締結されたダム

荒沢1号ダム(安比防災ダム)

2022-11-27 17:10:25 | 岩手県
2022年10月22日 荒沢1号ダム(安比防災ダム)
 
荒沢1号ダムは岩手県八幡平市細野の馬淵川水系安比川上流部にある農地防災目的のロックフィルダムです。
安比川上流域は火山堆積物で形成された脆い地盤で『荒沢』という地名が示すように豪雨の際には土砂流出量が急増し下流域ではしばしば洪水被害が発生しました。
これを受け岩手県は1952年(昭和27年)に農林省(現農水省)の補助を受けた荒沢防災ダム事業を採択、安比川最上流部への3基の農地防災ダム建設が着手されました。
1960年(昭和35年)の荒沢3号ダム(白沢防災ダム)に次いで、1972年(昭和47年)に安比川本流に建設されたのが荒沢1号ダム(安比防災ダム)です。
さらに1989年(平成元年)の荒沢2号ダム(鍋越防災ダム)の完成により事業着手から37年の年月をかけた荒沢防災ダム事業はようやく竣工に至りました。
1号~3号ダムは完成後は安代町が管理を受託、現在は町村合併により八幡平市が管理を引き継ぎ、安比川流域の農地防災を担っています。
なお、荒沢1号2号3号という名称はダムの位置によって振られた番号であり、建設順とは関係ありません。

安比川右岸のダートの林道を西に進むと荒沢1号ダムに到着します。
ダムは林道から一段下がった位置にあり、まずダムを俯瞰する形になります。
訪問時は周辺の紅葉がちょうど見ごろを迎えなかなかの眺め。


堤高38メートルのロックフィルダムで、下流側は犬走を挟んだ2段構成。
ダム中央の赤い階段がいいアクセントになっています。
竣工からちょうど50年ですが、リップラップには多少草が生えているだけで他の農業用ロックダムに比べればよく整備されていると言えます。


天端は関係者以外立ち入り禁止のため、右岸からの見学に留まります。
対岸に横越流式洪水吐があり導流部が流下しています。


親柱の銘版。
竣工から50年ですので、さすがに細部はあちこち傷んでします。


荒沢1号ダム1番のポイントは上流面。
ここは稼働中のダムとしては全国で5基しかないコンクリート表面遮水壁型(CFRD)ダムです。
有効貯水容量すべてが農地防災容量のため、ダム湖は空っぽ。


左岸の横越流式洪水吐と赤いゲージの放流ゲートをズームアップ。
流水型防災ダムで、通常は流入量はそのまま放流ゲートから放流し、洪水時はダムでカットして下流の洪水を防ぐ仕組み。


ダム湖が空のため、コンクリート遮水壁全体を見ることができます。
のっぺり感が独特。


放流ゲートをズームアップ。
農地防災フィルダムの場合、円筒形や斜樋型式の常用洪水吐が多いのですが、ここは四角いゲージ。
色褪せているとはいえ赤いカラーと相まってよく目立ちます。


ダムの説明版。


竣工記念碑
正式名称は荒沢1~3号ですが、記念碑では河川名から安比、鍋越、白沢という名称になっています。


(追記)
荒沢1号ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0252 荒沢1号ダム(安比防災ダム)(1887)
岩手県八幡平市細野 
馬淵川水系安比川 
 
 
38メートル 
157.7メートル 
2139千㎥/1808千㎥ 
八幡平市 
1972年
◎治水協定が締結されたダム

外山ダム

2022-11-27 10:00:00 | 岩手県
2022年10月21日 外山ダム
 
外山(そとやま)ダムは左岸が岩手県盛岡市浅岸、右岸が同市薮川の北上川水系外山川にある東北電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1943年(昭和18年)に東北振興電力(株)によって建設され、日本発送電の接収を経て、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により東北電力(株)が事業継承しました。 
ちなみに東北振興電力(株)は昭和初期の冷害や三陸地震、さらには昭和恐慌で疲弊した東北地方の産業振興目的で設立された国策会社です   
外山ダムから直接発電所への取水を行っているわけではなく、外山川流量の季節変動を平準化し下流の米内発電所の発電効率を安定させる目的で建設されました。 
 
盛岡市街から国道455号線を東に約20キロ進むと外山ダムに到着します。
ダム直下に外山大橋が架かり、絶好の展望ポイントとなっています。
外山川を締め切る逆三角形の堤体はなかなかの男前。
提体は竣工当時のものですが、改修や補強によりコンクリートの色調が斑になっています。


アングルを変えて。
背後のダム湖は総貯水容量375万1000立米。
下流の米内発電所の出力は最大4300キロワットで、これだけの設備を要した割には発電能力がずいぶん小さいように思えます。


左岸には横越流式洪水吐があり、導流部が地山を伝って下流に流下します。
洪水吐を跨ぐ管理橋はコンクリートが新しく、改修によって刷新されたようです。
また提体中ほどから放流管が二本突き出ており、これで外山川の流量を調節します。

左岸ダムサイトから
洪水吐の管理橋だけコンクリートが新しいのがわかります。


天端は立ち入り禁止。


横越流式洪水吐の側壁から河川維持放流が行われています。
維持放流の義務化によりバルブが後付けされたのでしょう。


左岸の横越流式洪水吐
薄く越流しています。


上流から洪水吐を望む。


上流面をズームアップ
堤体中央の二つの建屋は放流管の取水口で、ここで放流量を調節します。
手前の建屋は河川維持放流用バルブの操作室。


左岸洪水吐直上には艇庫とインクラインがあります。


追記
外山ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0234 外山ダム(1886)
左岸 岩手県盛岡市浅岸
右岸     同市薮川
北上川水系外山川
 
 
33メートル 
121メートル 
3751千㎥/3233千㎥ 
東北電力(株) 
1943年
◎治水協定が締結されたダム

岩洞ダム

2022-11-26 16:00:00 | 岩手県
2022年10月21日 岩洞ダム

岩洞ダムは岩手県盛岡市薮川の北上川水系丹藤川にある岩手県企業局が管理する灌漑・発電目的のロックフィルダムです。
滝沢市から盛岡市一帯の岩手山麓東裾地帯は透水性の高い火山堆積物で形成され水田には不向きで、戦前まで零細な畑作が営まれるのみでした。
さらに水源となる北上川は松尾鉱山の鉱毒に侵され、大規模な農地開発には新たな水源確保が必須課題となっていました。
こうした中、1941年(昭和16年)に国営岩手山麓開拓建設事業が着手され当地域の本格的な農業開発が開始されます。
戦後事業は『北上特定地域総合開発計画(KVA)』に組み込まれ、農林省により1960年(昭和35年)に灌漑用水源として建設されたのが岩洞ダムです。
岩洞ダムはわが国最初のゾーン型ロックフィルダムで、中規模ロックフィルダムとしては希少な傾斜コア方式を採用、また下流面も犬走を挟んだ階段状になっており外見上も異形のロックフィルダムとなっています。
また総貯水容量6560万立米は本州の農業用ダムとしては最大規模を誇ります。
運用開始後は発電事業者として事業参加した岩手県企業局が管理を受託し、幹線支線合計約300キロの用水路で岩手山麓東裾地域約1500ヘクタールの農地に灌漑用水を供給するとともに、落差530メートルを利用して岩手県企業局岩洞第1及び第2発電所で合わせて最大4万9600キロワットのダム水路式発電を行っています。
事業の竣工により同地域では稲作のほか果実や畑作が盛んとなり、滝沢すいかや寒冷地用サツマイモのクイックスイートなどの特産物も多数誕生しています。
一方ダム湖の岩洞湖は豊かな自然に包まれ、ワカサギ釣りのほかキャンプ、カヌーなど多様なレクリエーションの場となっておりダム湖百選に選ばれています。

盛岡市街から国道453号を東に約35キロ進むと岩洞ダムに到着します。
国道はダム右岸を通っています。
下流面は犬走を挟んだ3段構成、ロックフィルダムでこのような形状は北海道の日新ダムしか思い浮かびません。
対岸の白いコンクリートは洪水吐導流部の法面です。


上流面。


右岸ダムサイトの記念碑。


ダム下は芝生の広場になっていますが立入禁止。
一方天端は徒歩のみ開放。


ダム下の建屋は監査廊入口。
竣工以来50年以上が経過しダムをはじめ灌漑設備の多くで老朽化が進んでいるため、農水省による『国営岩手山麓農業水利事業』により大規模な改修工事が進められています。
駐車中の車や人もそのためのもの。

右岸の繋留設備と巡視艇
奥は管理事務所で岩手県企業局の職員が常駐し、ここでダムカードがもらえます。


左岸下流側の丹藤川。
河川維持放流が行われていますが、この水の取水口がわかりません。


ダム湖の岩洞湖
農業用ダムとしては本州最大の総貯水容量6560万立米を誇り、ダム湖百選に選ばれています。
流域面積219.6平方キロのうち直接流域は48.6平方キロに留まり、集水の約8割は周辺河川からの導水に依ります。
また堆砂がほとんどないのが特徴で、計画堆砂容量を満たすには約70万年かかるとされています。


左岸の洪水吐導流部
訪問時は改修工事が行われていました。


洪水吐のローラーゲート。


上流から。

取水設備はダムから5キロ西側のダム湖インレット近くにありますが、今回は時間の関係でパスとなってしまいました。

(追記)
岩洞ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0242 岩洞ダム(1885)
岩手県盛岡市薮川
北上川水系丹藤川
AP
40メートル
351メートル
65600千㎥/46300千㎥
岩手県企業局
1960年
◎治水協定が締結されたダム

綱取ダム

2022-11-26 10:00:00 | 岩手県
2022年10月21日 綱取ダム

綱取ダムは左岸が岩手県盛岡市新庄、右岸が同市浅岸の北上川水系中津川にある岩手県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
中津川は盛岡市街を貫流し盛岡城の外堀として活用されるなど水の街盛岡のシンボル的河川となっていますが、一方で洪水被害も多く中津川の抜本的な治水は江戸時代以来の課題となっていました。
高度成長期による上水需要の拡大もあり、県は中津川への多目的ダム建設を軸とした中津川総合開発事業に着手し1982年(昭和57年)に竣工したのが綱取ダムです。
綱取ダムは建設省(現国交省)の補助を受けた補助多目的ダムで、中津川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水水への補給、盛岡市への上水道用水の供給を目的としています。

盛岡市街から県道36号上米内湯沢線を東進すると綱取ダムに到着します。
ダム下は二ツ森公園になっており東屋などがあります。
非常用洪水吐はクレスト自由越流頂、一方常用洪水吐はコンジット高圧ラジアルゲートとゲートレスダムへの過渡期のダムと言えます。


昭和50年代のダムらしく前面に張り出したコンジットゲートハウス。


左岸高台に展望台があり堤体やダム湖を俯瞰できます。
ロッジ風の赤い屋根の管理事務所がよく目立ちます。


右岸ダムサイトの記念碑。


上流面
天端を県道36号が通り、越流部は上流側にオフセットされています。


ダム湖は総貯水容量1500万立米
堤体直上に市道の綱取大橋が架かります。
ダム湖のこの位置に橋が架かるのは珍しい。


天端から
放流設備の配置も変わっており、利水用のホロージェットバルブが右岸堤体下部に設置されています。
写真右手の放流はこのホロージェットバルブに依るものです。
右岸下流側の建屋は管理用小水力発電所(最大200キロワット)。


天端は県道36号線、そこそこの交通量があります。
右奥はロッジ風の管理事務所。


左岸から下流面。


ダムの説明版。


綱取大橋から
ダム直上に架かっており、上流面を見るにはこれ以上ない展望ポイント。


右手は取水設備、左はコンジット予備ゲート。

追記
綱取ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0258 綱取ダム(1884)
左岸 岩手県盛岡市新庄
右岸     同市浅岸
北上川水系中津川
FNW
59メートル
247メートル
15000千㎥/13000千㎥
岩手県県土整備部
1982年
◎治水協定が締結されたダム

簗川ダム

2022-11-25 20:00:00 | 岩手県
2022年10月21日 簗川ダム
 
簗川ダムは岩手県盛岡市川目の北上川水系簗川にある岩手県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
国交省の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、簗川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、盛岡市及び矢巾町への上水道用水の供給、利水放流を利用した岩手県企業局簗川発電所でのダム式発電(最大1900キロワット)を目的として2020年(令和2年)に竣工しました。
岩手県内では最も新しいダムであり、また総貯水容量1910万立米は岩手県県土整備部が管理するダムとしては最大となっています。

盛岡市街から国道106号線を東進すると簗川ダムに到達します。
ダム下からは見れないという事前情報がありましたが、とりあえずダム下へ。
ダムの手前にゲートがあり本来は立ち入り禁止ですが、訪問時は県企業局簗川発電所のメンテナンスのためゲートが開いていました。


ダメもとで写真撮影だけでもとお願いするとなんとOK。
非常用洪水吐としてクレスト自由越流頂10門、常用洪水吐として自然調節式オリフィス1門を備えたいかにも今どきのゲートレスダム。
左下の建屋は県企業局簗川発電所。


国道106号に簗川ダムを示す標識があり、これに従うと左岸ダムサイトへ。
左岸のクレーン台座跡が展望台になっておりダムを俯瞰できます。
ダムサイトには駐車スペースが確保され奇麗に整備されています。


天端は徒歩のみ立ち入り可能。


ダムの説明版。


完成してまだ2年、いかにも出来立てと言ったコンクリート。


管理事務所
普段は職員の駐在はなく巡回のみ。


上流面
一見水位が低く見えますがこれで常時満水位。


天端から
減勢工には副ダムが二つ
右手の建屋は県企業局簗川発電所、手前のコンクリートの地下に放流設備があります。


左手がエレベーター棟、右手は取水設備機械室
管理事務所も含めて屋根や壁の角はRを使ったザインで統一されています。


注目すべきは取水設備
外殻がなくむき出しになっており、取水設備の構造がよくわかります。


総貯水容量1910万立米のダム湖
岩手県県土整備部が管理する補助ダムでは最大貯水容量となります。


追記
簗川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2975 簗川ダム(1883)
岩手県盛岡市川目
北上川水系簗川
FNWP
77.2メートル
242.7メートル
19100千㎥/16700千㎥
岩手県県土整備部
2020年
◎治水協定が締結されたダム