2016年4月23日 山王海ダム(再)
山王海ダムは岩手県紫波郡紫波町土館の北上川水系滝名川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
岩手県中央部に位置する紫波平野は灌漑用水源である滝名川の水量が乏しい上に年間降水量も少なく、安定した水源確保は江戸時代からの悲願となっていました。
1944年(昭和19年)に農地開発営団事業として山王海ダム建設が着手され、戦後農林省(現農水省)直轄の国営農業水利事業として引き継がれ1952年(昭和27年)に山王海ダム(元)が竣工しました。
山王海ダム(元)は日本のアースダムとしては初めて土質工学を取り入れて建設され、堤高37.4メートル、堤頂長150メートルは完成当時は東洋一のアースフィルダムと謳われました。
農業水利事業の竣工により紫波平野では畑作から稲作への転換や区画整理が進められますが経営の大規模化に伴い再び用水不足が顕在化しました。
これを受け1978年(昭和53年)から農水省により2期にわたる国営農業水利事業山王海地区が着手されまず1期事業により1991年(平成3年)に新たに葛丸ダムが完成しました。 さらに2期事業では山王海ダムの嵩上げ再開発が進められ2001年(平成13年)に同事業が竣工、ロックフィルダムの山王海ダム(再)が完成しました。
山王海ダムの貯水容量3760万立米は農業用ダムとしては日本最大規模を誇り、葛丸ダムと併せた4225万の貯水量は事業開始前の4.4倍に増大しました。
完成後は岩手県農林水産部が管理を受託し山王海土地改良区約3900ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
また両ダムはトンネル導水路によって結ばれて需要に合わせて水の相互融通が行われます。農業用ダムの2ダム一体運用は今のところ山王海ダム(再)と葛丸ダムだけです。
紫波インターから県道を西に向かい稲荷坂と呼ばれる町道を登って行くと山王海ダムに到着します。
堤体には『平安 山王海 2001』と書かれています。
平安という言葉には、かつてこの地で絶えなかった水を巡る争いが収まるようにという願いが込められています。
減勢工
はっきりと見えませんが、カスケードになっているようです。
巨大な洪水吐。
残念ながらダム本体に立ち入ることができません。
左が管理事務所、右が取水棟。
かつて宮中歌会始でこのダムを詠んだ歌が採用されたのを記念する歌碑です。
ダムができて水を巡る争いが収まったことを喜ぶ歌です。
広いダム湖を一周する車道があり、ダム湖上流には葛丸ダムとの取水、送水口や葛丸川からの導水路などがありましたが、時間の都合でスルーしてしまいました。
追記
山王海(再)ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに641万9000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
0236 山王海ダム(元)
岩手県紫波郡紫波町土館
DamMaps
北上川水系滝名川
A
E
37.4メートル
150メートル
9594千㎥/9594千㎥
1952年
--------------
0263 山王海ダム(再)(0319)
岩手県紫波郡紫波町土館
北上川水系滝名川
A
R
61.5メートル
241.6メートル
38400千㎥/37600千㎥
岩手県農林水産部
2001年再開発竣工
◎治水協定が締結されたダム