ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

小見野々ダム(元)

2021-11-30 00:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 小見野々ダム(元)
 
小見野々(こみのの)ダム(元)は徳島県那賀郡那賀町木頭助の一級河川那珂川本流にある四国電力(株)が管理する発電目的のアーチ式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編により誕生した四国電力(株)は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進めます。
徳島県を貫流する那賀川では中下流域は県企業局が那賀川総合開発事業に参画して日野谷発電所や川口発電所を建設する一方、上流域では四国電力による電源開発が進められ1968年(昭和43年)に竣工したのが小見野々ダムです。
当ダムを上部池、県営(現在は国交省に移管)の長安口ダムを下部池として蔭平発電所で最大出力4万6650キロワットの混合揚水式発電を行います。 
 
一方那賀川では上流部での森林荒廃を主因として河床やダムで計画以上の堆砂が進行し、洪水調節や利水機能の齟齬が顕在化します。
そこで1998年(平成10年)より長安口ダム改造事業が着手される一方、2019年(令和元年)の那賀川水系河川整備計画変更により新たに『小見野々ダム再生事業』が採択されました。
具体的には貯水池内の堆砂の除去と1100万立米の洪水調節容量の確保を目的に2038年(令和20年)竣工をめどに下流への新ダム建設が進められる予定です。

長安口ダムから国道195号線を西へ約15キロ走ると小見野々ダムに到着します。
ダム下へ通じる道路もありますが、上記ダム再生事業のための地質調査が始まっており通行できませんでした。
こちらはダム管理道路わきの慰霊碑。
 
大美谷ダムと同じ仕様の蔭平発電所の説明版。
こちらもボタンを押せば音声解説が聞けます。
 
水利使用標識。
 
管理事務所の前に門扉がありダム敷地への立ち入りはできません。
通常ならば職員さんの都合がつけば中を案内していただけるようですが、訪問時はコロナ対応のため叶いませんでした。
クレストにはラジアルゲート9門を装備
そのほか放流管としてホロージェットバブル1条を備えています。
 
右岸3番目ゲートはフラッシュボードつき。
 
蔭平発電所の取水口。
 
左岸の巡視艇
クレーンで昇降させます。
 
総貯水容量1675万立米に対し有効貯水容量は1142万立米で堆砂率32%。
網場には大量の流木が掛かっています。
那賀川の堆砂問題は上流域の森林荒廃が主因とされており、流木の多さは森林荒廃の証左ともいえます。
 
上流から遠望
左手が管理事務所。
 
 
ダム下へのアプローチは国交省の地質調査で叶わず、ダム敷地内への立ち入りもコロナ対応で叶わず。 
ちょっと相性が良くなかった小見野々ダムです。 
小見野々ダム再生事業の竣工めどは2038年(令和20年)とまだまだ先の話ですが、四国最大のアーチダムがいずれ消えてしまうことには一抹の寂しさを感じてしまいます。 
 
(追記)
小見野々ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2129 小見野々ダム(1747) 
徳島県那賀郡那賀町木頭助 
那賀川水系那賀川 
 
 
62.5メートル 
151.8メートル 
16750千㎥/6500千㎥ 
四国電力(株) 
1968年 
◎治水協定が締結されたダム 
-------------- 
3712 小見野々ダム(再) 
徳島県那賀郡那賀町木頭助 
那賀川水系那賀川 
FP 
 
メートル 
メートル 
20150千㎥/11000千㎥ 
国交省四国地方整備局 
2020年~ 


追立ダム

2021-11-29 20:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 追立ダム
 
追立(おったち)ダムは左岸が徳島県那賀郡那賀町木頭名、右岸が同町坂州の那賀川水系坂州木頭川にある重力式コンクリート製砂防兼発電用取水ダムです。
1950年(昭和25年)に徳島県の那賀川総合開発事業が着手されますが、長安口ダムおよび日野谷発電所の建設用電源確保のために1952年(昭和27年)に建設されたのが追立ダムと坂州発電所です。 
追立ダムで取水された水は約1.7キロの導水路で坂州発電所(最大出力2400キロワット⇒現在は2500キロワット)に送られ、水路式発電を行っています。
さらに長安口ダム改造事業において、2028年(令和10年)の竣工をめどに追立ダム貯水池を掘削することで当ダムに新たな堆砂容量を設定するとともに、長安口ダム湖への土砂流入を抑止する方針となっています。
 
追立ダムの堤高は29.5メートルと15メートルをクリアしていますが、砂防法によって建設されたダムのため河川法のダムとは認められていません。
本来砂防ダムは見学対象には入れませんが、当ダムは長安口再生事業における堆砂対策の根幹を担うことから足を延ばしてみました。 
 
国道193号線追立橋からダムと正対できます。
 
非常に険しい峡谷を閉め切った砂防ダム。
折から紅葉の真っ盛り。
 
主堤部は全面溢流式
右岸(向かって左手)に排砂ゲートがあります。
溢流した水がダム中央部に集まるよう両袖から導流用の段差がついています。
 
排砂ゲートから河川維持放流が行われています。
 
坂州発電所
青い水圧鉄管が鮮やか。
放流口は写真左手のスロープになります。
 
河川法上のダムではなくあくまでも砂防ダムとなりますが、できれば参考掲載でダム便覧に載せてあげたい、そんな追立ダムです。
 
追立ダム
左岸 徳島県那賀郡那賀町木頭名
右岸        同町坂州
那賀川水系坂州木頭川
29.5メートル
79.5メートル
ーーーー千㎥/ーーーー千㎥
徳島県企業局
1952年

大美谷ダム

2021-11-29 12:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 大美谷ダム
 
大美谷(おおみだに)ダムは徳島県那賀郡那賀町木頭名の那賀川水系大美谷川にある四国電力(株)が管理する発電目的のアーチ式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編により誕生した四国電力(株)は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進めます。
徳島県を貫流する那賀川では中下流域は県企業局が那賀川総合開発事業に参画して日野谷発電所や川口発電所を建設する一方、上流域では四国電力による電源開発が進められ1960年(昭和35年)に竣工したのが大美谷ダムです。
大美谷ダムは取水ダム兼発電調整池で坂州木頭川と沢谷川の水を併せて広野発電所に導水し、最大3万6500キロワットのダム水路式発電を行います。
 
那賀町木頭広瀬で国道193号線から大美谷川沿いの町道を約3.5キロ東進すると大美谷ダムに到着します。
四国に3基しかないアーチダムの一つで、堤高31.5メートル、堤頂長86メートルの小ぶりなアーチです。
 
超広角で
左岸に放流ゲートがありますが、堤体外ゲートということで非越流型堤体となります。
 
広野発電所の案内板。
音声解説ボタンがあります。
通常この手のボタンは押しても反応しないところが多いんですがここはきちんと音声解説が流れます。
 
四国電力で散見される朱筆の銘版。
 
天端は立ち入り禁止。
左手の白い建屋は管理事務所ですが職員の常駐はありません。
 
左岸に放流ゲートと広野発電所への取水口があります。
 
 
慰霊碑。
 
右岸に坂州木頭川と沢谷川からの導水路流入口があります。
流域面積101.3平方キロのうち直接流域はわずか7.3平方キロ、間接流域が94平方キロを占め集水の9割以上は河道外です。
 
上流から
導水路流入口からの水勢が強く湖面が波打っています。
 
放流ゲートと取水口 
放流ゲートにはローラーゲート1門が備わっています。 
 
大美谷川からの集水は全体の1割にも満たず、実情は発電調整池です。
 
(追記)
大美谷ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2125 大美谷ダム(1746)
徳島県那賀郡那賀町木頭名 
那賀川水系大美谷川 
 
 
31.5メートル 
86メートル 
6451千㎥/309千㎥ 
四国電力(株) 
1960年 
◎治水協定が締結されたダム 


長安口ダム(再)

2021-11-29 02:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 長安口ダム(再) 
 
長安口ダム(再)は左岸が徳島県那賀郡那賀町長安、右岸が同町大戸の一級河川那賀川本流にある国交省四国地方整備局が管理する重力式コンクリートダムです。
1955年(昭和30年)に建設省(現国交省)の補助を受けた徳島県の事業により竣工、那賀川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給、徳島県企業局日野谷発電所での最大6万2000キロワットのダム水路式発電を目的とした補助多目的ダムとして運用が始まりました。
さらに1968年(昭和43年)には当ダム湖を下部調整池、同年完成した四国電力小見野々ダム(元)を上部池とした陰平発電所で最大4万6650キロワットの混合揚水式発電が稼働しました。
一般水力発電は徳島県企業局、混合揚水発電は四国電力(株)と異なる事業者での発電を行っており、このようなダムは当ダムのほか福島県の大川ダム、栃木県の深山ダムの計3例しかありません。

一方で那賀川上流の森林荒廃等により計画を超える堆砂が進行し、容量不足や濁水などダム運用の根幹にかかわる諸問題が顕在化します。
そこで国交省四国地方整備局は2007年(平成19年)に同ダムを国交省直轄管理に移管して『長安口ダム改造事業』に着手します。
改造事業は
①ダム右岸部へのゲート2門増設による洪水処理能力強化
➁発電用取水口への選択取水設備の新設による濁水問題の対処と利水能力強化
➂貯水池内の堆砂除去および貯水池への土砂流入の抑制
の3点を柱としています。
このうち①と②については2020年(令和2年)に完了し予備放流水位の引き下げが可能になるとともに、選択取水設備が新設されました。
⓷については支流坂州木頭川にある追立ダムの活用とベルトコンベアによる排砂作業を軸に2028年(令和10年)竣工をめどに事業が進められています。
 
下流の川口ダムから那賀川沿いの国道195号線を約15キロ西に走ると長安口ダム(元)に到着します。
下流には鉄骨トラス製の長安吊橋が架かりここからダムと正対できます。


広角で。


クレストには新旧合わせて8門のローラーゲートが並びます。
左岸(向かって右手)6門のローラーゲートが既存ゲート、右岸(向かって右手)の2門が新ゲートです
新ゲート増設に合わせて導流壁や減勢工が新調され、黒ずんだ旧堤体と真っ白な新調コンクリートの対比がアンバランスでまるでおもちゃのダムのように見えてしまいます。
減勢工では土砂排出作業中。

 
ダム下の仮排水路開口部
昭和20年代の長安ダム(元)建設時のものです。

 
今度はアングルを変え国道195号線から見てみます。


新ゲートをズームアップ
旧ゲートの高さが14.7メートルに対し、新ゲートは20.52メートルと19.64メートルとその大きさが際立ちます。
長安口ダムは予備放流によって洪水調節容量を確保しています。
新ゲート完成により予備放流水位を低下させ新たに100万立米の洪水調節容量が確保されました。


ダム手前左岸から
新ゲートの導流部は減勢のため大きなカスケードになっています。


ダムサイトの水利使用標識
こちらは県企業局日野谷発電所のものです。


銅板の概要と諸元。

残念ながら訪問時は電気関係の作業のため天端に立ち入りできませんでした。

 
予備ゲート運搬用のガントリーのレール。

 
予備ゲートはガントリーの下に横向きに格納。

 
天端に立ち入れなかったため貯水池の撮影ができませんでしたのでこの写真を添えることにします。
総貯水容量は5427万8000立米ですが、堆砂の進行が進み有効貯水容量は3680万立米にとどまります。

 
ちょっとわかりづらいですが、ゲート左手白い建屋から斜めに伸びるのが発電用取水口で、水中部分に選択取水設備が新設されました。
これにより那賀川下流の利水需要に合わせた選択取水が可能になるほか、濁水対策として清水の選択取水が可能となりました。
同様の取水設備は濁水が問題化している宮崎の一ツ瀬ダムでも採用されています。
取水設備手前にはインクラインと艇庫があります。

 
長安ダム本体の改造はほぼ作業を終えていますが、一番の堆砂対策についてはまだ道半ば。
また那賀川全体で見ても、国交省は2018年(平成30年)に那賀川水系河川整備計画を変更して、既存の四国電力小見野々ダム(元)を下流に移設し、新たに洪水調節機能を付加して多目的ダム化する『小見野々ダム再生事業』が採択されました。
 
(追記)
長安口ダム(元)には洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2122 長安口ダム(元)(1745)
左岸 徳島県那賀郡那賀町長安 
右岸        同町大戸
那賀川水系那賀川
FNP
85.5メートル
200メートル
54278千㎥/43497千㎥
国交省四国地方整備局
1955年 長安口ダム(元)竣工
◎治水協定が締結されたダム
----------------------
3314 長安口ダム(再)
左岸 徳島県那賀郡那賀町長安
右岸        同町大戸
那賀川水系那賀川
FNP
85.5メートル
200.7メートル
54278千㎥/36800千㎥
国交省四国地方整備局
2028年 長安口ダム(再)竣工予定

赤松ダム

2021-11-28 16:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 赤松ダム
 
赤松ダムは徳島県那賀郡那賀町雄の一級河川那賀川水系赤松川にある徳島県企業局が管理する発電目的の重力式コンクリート堰堤です。
1960年(昭和35年)に徳島県企業局により川口ダムおよび発電所が完成、ついで翌1961年(昭和36年)に竣工したのが赤松ダムです。
ここで取水された水は約1.4キロの導水路で川口ダム貯水池に送られます。本来川口ダム下流で合流する支流の赤松川の水を川口ダム貯水池への導水することで川口発電所の発電効率向上を目的としています。
ダムの諸元等は不明ですが、河川法上のダムの要件である堤高15メートルを満たしておらずダム便覧には未掲載です。
 
国道195号線から川口橋を渡って県道16号に入り、川沿いを1.6キロ走ると右手に赤松ダムへの降り口があります。
特に立ち入り禁止の標識もないためダムに降りてみます。
 
堰堤は自由越流頂2門、対岸に取水口があり余水放流路が伸びています。
 
右岸には魚道。
 
左岸の取水設備
スクリーンは河床近くの低い位置にあります。
 
天端から下流の眺め。
今は渇水期で魚道も機能していません。
 
川口ダム貯水池右岸の導水路流入口。
 
2016年(平成28年)に設置された赤松川支水路小水力発電設備。
 
最近はこの手の小堰堤はスルーすることが多いのですが、川口ダムから至近だったことや導水路吐口に小水力発電が設置されていたので立ち寄ってみました。
 
赤松ダム
徳島県那賀郡那賀町雄
那賀川水系赤松川
---メートル
---メートル
徳島県企業局
1961年

川口ダム

2021-11-28 12:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 川口ダム
 
川口ダムは左岸が徳島県那賀郡那賀町吉野、右岸が同町鉢の一級河川那賀川本流にある徳島県企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編により誕生した四国電力は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進めますが、包蔵水力豊富な四国では同社だけでは開発の手が足りず電源開発(株)や公営発電である各県企業局による電源開発が併せて進められました。
那賀川では県の那賀川総合開発事業に県企業局が発電業者として参加し、1960年(昭和35年)に建設されたのが川口ダムです。
川口ダムは同年に完成した日野谷発電所の逆調整池となっており、日野谷発電所の出力調整による水位変動を緩和するとともに、ダムに併設された川口発電所で最大1万1700キロワットのダム式発電を行っています。
 
下流の県道16号川口橋からダムを遠望。
堤体中央直下にダム式発電を行う川口発電所があり、両側にローラーゲート3門ずつ計6門を装備。

 
左岸から
発電所は川の中州の岩山をうまく利用した作りになっています。
ゲート扶壁前面にゲート操作建屋が乗り、支柱を経由したワイヤーでゲートを昇降させる、いわゆる中四国型タイプの発電ダムです。

 
ダムにはPR館である川口ダム自然エネルギーミュージアムが併設されており、水力発電についていろいろ学ぶことができます。
訪問時はイベント開催中で団体様来場中でした。

水利使用標識
川口発電所と赤松ダムダムからの導水を利用した赤松川支水路小水力発電施設の2枚。


堤体中央直下に発電所があるため、取水口が堤体中央に配置されています。


インクラインはなく左岸の桟橋に巡視艇が繋留されています。


左岸側の減勢工
コンクリートの叩きと副ダムがあります。
訪問時は発電所からの放流だけでゲートは閉じられていました。
 

6門のローラーゲートのうち、中央部2門にはフラッシュボードがついています。
ゲートの両側にフラップがあります。

 
天端は町道で車両の通行が可能。


ダム湖は総貯水容量は646万3000立米ですが、堆砂が進み有効貯水容量は95万立米。
堆砂率は85%を超えます。

 
川口ダムの予備ゲートは浮ゲートになっており、普段は右岸湖岸にあるこの施設に格納されています。

 
訪問時はゲート補修のため予備ゲートは絶賛稼働中。
格納施設からダムに曳航し、中に注水したのち直立させてゲート上部に嵌め込みます。

 
赤松ダムからの導水路を利用して小水力発電が行われています。 
2016年(平成28年)に稼働を始めた赤松川支水路小水力発電施設
最大出力はわずか800ワットですが、至近で小水力発電を見るれるのはうれしいですね。

 
ダムにはPR館である川口ダム自然エネルギーミュージアムが併設されており、水力発電についていろいろ学ぶことができます。
川の中央の岩山を利用したダム式発電所、浮ゲート方式の予備ゲート、さらには目の前で小水力が見れるなど非常に見どころの多い川口ダムです。
 
(追記)
川口ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2126 川口ダム(1744) 
左岸 徳島県那賀郡那賀町吉野
右岸        同町鉢 
那賀川水系那賀川 
 
 
30メートル 
182.5メートル 
6463千㎥/950千㎥ 
徳島県企業局 
1963年 
◎治水協定が締結されたダム 

正木ダム

2021-11-27 08:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 正木ダム 
 
正木ダムは徳島県勝浦郡上勝町正木の二級河川勝浦川本流にある徳島県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1960年(昭和35年)に勝浦川総合開発事業が採択され1964年(昭和39年)より正木ダム建設が着手され昭和40年不況による中断をはさみ、着工より14年後の1978年(昭和53年)に正木ダムが竣工しました。
正木ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、勝浦川の洪水調節(最大毎秒850立米の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、勝浦町・小松島市への新規灌漑用水の供給、小松島市への工業用水の供給、徳島県企業局勝浦発電所(最大出力1万1300キロワット)でのダム水路式水力発電を目的としています。
また2011年(平成23年)には河川維持放流を活用した正木ダム管理発電所が完成し小水力発電が稼働しました。
 
ダムの左右両岸を町道が走りますが今回は左岸からアプローチ
樹林の切れ間からダムを望めます
クレストラジアルゲート2門、木に隠れて1門しか見えませんがコンジット高圧ラジアルゲート2門を装備

 
前面に張り出したコンジットゲートハウスはいかにも昭和のダムといった風。
対岸に管理事務所があります。

 
上流面
左手は低流量および利水放流管用取水設備
クレストラジアルゲート2門の両側にコンジット予備ゲートが並びます。

 
右岸の徳島県企業局勝浦発電所の取水口
ここから約6.1キロの導水路で勝浦発電所に送水します。
自動除塵機付きの縦長のスクリーンが特徴的。

 
クレスト導流部と減勢工
かつてはダムから300メートルが無水区間でしたが、2001年(平成13年)より河川維持放流が開始されました。

 
天端は車両通行可
対岸に建設時のプラント遺構が残ります。

 
右岸から。

 
コンジットゲートハウスをズームアップ
放流されているのは河川維持放流。

 
さらに下流から
右から小水力発電所を兼ねた河川維持放流設備、低流量放流管、コンジットゲートハウス

 
親柱に嵌められた銅板。


右岸から上流面。

 
ダム湖は美愁湖で総貯水容量は1505万立米。


ダム下流に架かる沈下橋。

(追記)
正木ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2133 正木ダム(1743) 
徳島県勝浦郡上勝町正木 
勝浦川水系勝浦川 
FNAIP 
 
67メートル 
215メートル 
15050千㎥/11900千㎥ 
徳島県県土整備部 
1978年 
◎治水協定が締結されたダム 

福井ダム

2021-11-26 20:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 福井ダム 
 
福井ダムは徳島県阿南市福井町の二級河川福井川本流にある徳島県県土整備部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムで、福井川の洪水調節(最大毎秒470立米のカット)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給を目的として1995年(平成7年)に竣工しました。
 
ダム下は福井ダム公園として整備され、駐車スペースやトイレ、ベンチなどが置かれれています。
古い写真を見ると公園には巨大滑り台やジャングルジムなどの遊具があったようですが、現在は撤去され芝生の広場になっています。
クレスト自由越流頂8門、自然調節式オリフィス1門のゲートレスダムです。
右岸に放流ゲートがあり、副ダムの下流には洗堀防止のブロック工が敷かれています。


ゲートレスですが、バブル期着工のダムらしく天端のバルコニーなど凝った造りで今どきの大量生産型ダムと一線を画します。

 
左岸ダムサイトに上がります。
こちらもバブルの遺産。
補助ダムとしては珍しく資料館がありましたがすでに閉館。

 
下流面の写真を撮ろうとしたらちょうど陽が上がってきました。


陽が当たらないアングルでもう一枚
左右両岸には堤趾導流壁、対岸の建物は管理事務所。

 
上流面。
治水ダムなのでこれでほぼ常時満水位。

 
天端は車両通行可能
ちょっとわかりづらいけど、天端高欄には波型の化粧型枠が施されて手すりには当地特産の竹とタケノコが交互に並びます。

 
管理事務所をズームアップ
何をモチーフにしたのかわかりませんが、こちらも贅を尽くしたデザイン。

 
天端から減勢工を見下ろすと。


大小二つの副ダムが並び、下流には洗堀防止のブロック工が設置されています。
左岸が福井ダム公園でかつては遊具が並びましたが今は撤去され芝生の公園に。

 
ダム湖は総貯水容量475万立米。
堆砂容量と不特定利水容量分だけ貯留されています。
正面の岬先端には水質保全を目的とした人工滝があります。
これまたバブリー。

ダムサイトには波をモチーフにしたモニュメント。


右岸から
堤頂長191メートル、クレスト自由越流頂8門がずらっと並びます。


本体着工1990年(平成2年)はバブル真っ盛り。
完成当時はダム資料館を備え、ダム下の公園には遊具が並び、贅を尽くした管理事務所に天端高欄の凝った造りに人工滝・・・・などなど、予算が豊かだった時代の痕跡が各所に伺えます。
今や公園から遊具は消え、資料館も閉鎖、まさに兵どもが夢の跡といった風。
 
(追記)
福井ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2134 福井ダム(1742) 
徳島県阿南市福井町 
福井川水系福井川 
FN 
 
42.5メートル 
191メートル 
4750千㎥/4000千㎥ 
徳島県県土整備部 
1994年(ダム便覧)
1995年(徳島県県土整備部HP) 
◎治水協定が締結されたダム 

久木ダム

2021-11-26 15:00:00 | 高知県
2021年11月19日 久木ダム
 
久木ダムは高知県安芸郡北川村久木の二級河川奈半利川本流にある電源開発(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編により四国電力が誕生しますが、包蔵水力豊富な四国の電源開発を同社のみで手掛けるのは財務的、物理的にも困難で、公営発電や電源開発(株)による電力開発が併せて進められました。
上流域の年間降水量3000ミリと日本屈指の多雨地帯を流れる奈半利川では昭和30年代より電源開発(株)が発電事業が進めます。
そして1960年(昭和35年)年の平鍋ダム・長山発電所についで1963年(昭和38年)に平鍋ダム上流8キロ地点に建設されたのが久木ダムで、ここで取水された水は約8キロの導水路で二又発電所に送られ最大7万2100キロワットのダム水路式発電を行っています。
さらに1965年(昭和40年)には最上流部に魚梁瀬ダムと魚梁瀬発電所が稼働し、電源開発は奈半利川で計14万5000キロワットの発電能力を有するに至りました。
 
県道12号安田東洋線から右手の枝道に入ると樹間からライトブルーのゲートが垣間見えます。
完全に落葉すればもう少し見通しがよくなりそうですが、訪問時はこれが精いっぱい。
 
別アングルで。
ゲート右岸側から河川維持放流が行われています。
 
ダム手前に門扉があり、敷地には入れません。
フェンスの隙間から『久木ダム』の銘板を撮影。
左手の看板は水利使用標識っぽい。
 
ダムの写真が撮れるのはこのアングルのみ
ライトブルーのラジアルゲート3門を擁し、左岸(一番奥)のゲートはフラッシュボード付きです。
 
フラッシュボードのフラップ。
 
県道からなんとか上流面を遠望。
トリミングしたので画質は悪いです。
 
ダム下流で河原に降りようと思えばできないこともありませんでしたが、四国遠征初日、しかも夕暮れが迫っていたので自重しました。
 
(追記)
久木ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2315 久木ダム(1741) 
高知県安芸郡北川村久木 
奈半利川水系奈半利川 
 
 
28メートル 
94.5メートル 
2940千㎥/1340千㎥ 
電源開発(株) 
1963年 
◎治水協定が締結されたダム 

魚梁瀬ダム

2021-11-26 08:00:00 | 高知県
2021年11月19日 魚梁瀬ダム
 
魚梁瀬(やなせ)ダムは高知県安芸郡北川村久木の二級河川奈半利川本流上流部にある電源開発(株)が管理する発電目的のロックフィルダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編により四国電力が誕生しますが、包蔵水力豊富な四国の電源開発を同社のみで手掛けるのは財務的、物理的にも困難で、公営発電や電源開発(株)による電力開発が併せて進められました。
上流域の年間降水量3000ミリと日本屈指の多雨地帯を流れる奈半利川では昭和30年代より電源開発(株)が発電事業が進めます。
そして1960年(昭和35年)年の平鍋ダム・長山発電所、1963年(昭和38年)の久木ダム・二又発電所に次いで1965年(昭和40年)に最上流部に竣工したのが魚梁瀬ダムです。
ダム完成に合わせて魚梁瀬発電所(最大出力3万6000キロワット)が稼働し、奈半利川での電源開発(株)の発電能力は合計14万5000キロワットとなりました。
魚梁瀬ダムは四国に6基しかないロックフィルダムの一つで、堤高115メートルは早明浦ダムを凌ぎ四国ナンバー1。
また1億立米を超える貯水容量により奈半利川の河川流量の季節変動を平準化し、各発電所の発電効率向上を図るとともに、結果として奈半利川の減災や既得取水の安定化にも貢献しています。
 
まずはダム下へ。
堤高115メートルに対して堤頂長は202メートル。
一般的なロックフィルダムよりも横幅がない分、見上げるとその高さが際立ちます。
堤高115メートルは四国最高、下流面には高瀬ダムを彷彿させるジグザグの管理道路が続きます。
立入禁止の門扉の先には円形の魚梁瀬発電所。

 
洪水吐斜水路
カクカクしてるけど一応ジャンプ台。

 
クレストにはライトブルーのローラーゲートが2門。
奈半利川の電源開発の3基のダムはゲートがこの色で統一されています。

 
ダムの下流は紅葉真っ盛り。


いったん県道に戻り北上すると『魚梁瀬ダム』の大きな標識があります。


ここからダム管理道路に入ると右手に魚梁瀬ダムのリップラップが現れます。

 
ゲートとゲートピアをズームアップ。

 
こちらは右岸の取水設備。

 
ダム直上には展望台があります。


超広角で撮ったリップラップと魚梁瀬貯水池。
総貯水容量は1億立米を超え、上流部は湖畔にオートキャンプ場や民宿などがあるレジャースポットです。

 
リップラップと発電所を俯瞰。

 
発電所をズームアップ
『やなせ』の植栽がはっきり見えます。
明らかにこの展望台を意識して植えられてますね。

 
網場に繋留された巡視艇。

 
堤高四国ナンバー1はてっきり早明浦ダムだと思っていましたが、魚梁瀬ダムとはちょっと意外。
そして四国にはロックフィルダムが6基しかないことにもびっくりです。
 
(追記)
魚梁瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2321 魚梁瀬ダム(1740) 
高知県安芸郡北川村久木 
奈半利川水系奈半利川 
 
 
115メートル 
202メートル 
104625千㎥/72500千㎥ 
電源開発(株) 
1970年 
◎治水協定が締結されたダム 


平鍋ダム

2021-11-25 22:00:00 | 高知県
2021年11月19日 平鍋ダム
 
平鍋ダムは高知県安芸郡北川村平鍋の二級河川奈半利川本流にある電源開発(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編により四国電力が誕生しますが、包蔵水力豊富な四国の電源開発を同社のみで手掛けるのは財務的、物理的にも困難で、公営発電や電源開発(株)による電力開発が併せて進められました。
上流域の年間降水量3000ミリと日本屈指の多雨地帯を流れる奈半利川では昭和30年代より電源開発(株)が発電事業が進め1960年(昭和35年)年に同社四国初のダムとして完成したのが平鍋ダムです。
ここで取水された水は約8キロの導水路で長山発電所に送られ最大3万700キロワットのダム水路式発電を行います。
その後1963年(昭和38年)には久木ダム・二又発電所が、1965年(昭和40年)には魚梁瀬ダム・魚梁瀬発電所が稼働し、同社の奈半利川での発電能力は計14万5000キロワットに達しています。
 
国道493号線に平鍋ダムの大きな看板があり、ここから右手の管理道路に入ると平鍋ダムに到着します。
 
ダム手前に建設工事の殉職者を弔う慰霊碑があります。
訪問時はこの先で法面工事が行われていたため、ここから歩いてダムに向かいました。
 
200メートルほど進むと右手に平鍋ダムが姿を見せます。
深い谷が刻まれる四国山地南東部は同じ四万層群に含まれる紀伊半島の景色とよく似ています。
 
クレストにはラジアルゲート4門装備
右岸(向かって左側)に排砂用のローラーゲートがあります。
 
ゲートをズームアップ。
奈半利川の電源開発のダムはライトブルーのゲートで統一されています。
 
さらにアップ
ラジアルゲートのうち、右岸1門はフラッシュボードがついています。
写真でもフラップのついたフラッシュボードがはっきり見えます。
 
ダムが見れるのは下流側のみ、取水口などは窺うことができません。
 
(追記)
平鍋ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2313 平鍋ダム(1739) 
高知県安芸郡北川村平鍋 
奈半利川水系奈半利川 
 
 
38メートル 
124メートル 
4240千㎥/984千㎥ 
電源開発(株) 
1960年 
◎治水協定が締結されたダム 

奥出ダム

2021-11-25 17:00:00 | 高知県
2021年11月19日 奥出ダム
 
奥出(おくだし)ダムは高知県安芸郡芸西村馬ノ上の和食川水系奥出川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
芸西村一帯は少雨に加え大河がなく古くから灌漑用水源は溜池に依存してきました。
加えて昭和30年代からの減反政策により園芸農業に転換する農家が続出したことで、用水不足が顕著となります。
そこで既存溜池の再開発が行われる一方、園芸農業向け新規水源として農水省の補助を受けた県営事業で1991年(平成2年)に建設されたのが奥出ダムです。
芸西村は施設農業発祥の地と言われ、平野部にはピーマン、ナス、花卉等のハウスが立ち並ぶ全国屈指の園芸農業地帯となっています。
 
ダム下から
農業用コンクリートダムらしく洪水吐はクレスト自由越流頂2門だけ、放流設備もあるはずですが草が繁茂して確認できません。
クレストから薄く越流しています。
 
左岸から下流面。
 
天端は車両通行可能。
 
親柱には『奥出池』の表記
既設ため池を改修してコンクリートダム化したと思われます。
 
減勢工
副ダムにはスリットが入っています。
どこかに放流設備があるはずですが目視では確認できません。
 
総貯水容量は12万立米。
 
右岸から下流面。
 
奥出ダム右岸には直角の『カド』があります。
 
 
上流面
クレストゲートの隣に取水設備。

2981 奥出ダム(1738)
高知県安芸郡芸西村馬ノ上 
和食川水系奥出川
18.7メートル
62メートル
120千㎥/81千㎥
芸西村
1991年

和食ダム

2021-11-25 12:00:00 | 高知県
2020年11月19日 和食ダム
 
和食(わじき)ダムは高知県安芸郡芸西村馬ノ上の和食川本流に高知県土木部が建設中の多目的重力式コンクリートダムです。
1992年(平成4年)に和食川へのダム建設事業が着手されますが、公共工事見直し機運が強まる中2010年(平成22年)に国交省による検討対象ダムとなりました。
翌2011年(平成23年)に事業継続が決定し、2018年(平成30年)竣工をめどに2013年(平成25年)より本体工事が着工されました。
ところが左岸側面の地質に重大な問題点があったことから再掘削を余儀なくされ6年の工期延長と32億円の事業費増加が不可避となりました。
現在は2024年(令和6年)竣工をめどに建設工事が進行中です。
和食ダムは国交省の補助を受けた補助多目的ダムで、完成の暁には和食川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、芸西村への上水道用水の供給を目的として運用される予定です。
 
和食ダム完成予想図(高知県土木部HPより)
 
右岸ダムサイトに展望所があります。
ダム直下には巨大なクレーンが鎮座
右岸のコンクリート打設は終了している一方、左岸の地質に問題点があり再掘削を余儀なくされました。
 
 
右岸はコンクリート打設がほぼ終わっているものの、左岸は全く手つかず。
これはこれでレアな眺め。
 
対岸の山留工事
こういう作業を見ると命がけの仕事だと痛感させられます。

3178 和食ダム(1737) 
高知県安芸郡芸西村馬ノ上 
和食川水系和食川 
FNW 
 
51メートル 
131.5メートル 
730千㎥/680千㎥ 
高知県土木部 
2024年竣工予定 

鎌井谷ダム

2021-11-25 08:00:00 | 高知県
2021年11月19日 鎌井谷ダム
 
鎌井谷ダムは高知県香南市香我美町山北の香宗川水系鎌井谷川にある高知県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(国交省)の小規模ダム事業である生活貯水池事業の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、鎌井谷川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、山北地区の新規樹園地17.8ヘクタールへの灌漑及び防除用水の供給を目的として1997年(平成9年)に竣工しました。
生活貯水池ダムの多くはFNW(洪水調節・不特定利水・上水)を目的としていますが、山北地区は温暖な気候を生かし『山北みかん』のブランドや『土佐文旦』を中心に活発な果樹栽培がおこなわれており、鎌井谷ダムはミカン生産を支える貴重な水源となっています。
新規果樹園地への灌漑用水の補給を目的とする生活貯水池ダムとしては二十世紀梨果樹園向けの鳥取県の東郷ダムがあります。
 
ダム下流にある『鎌井谷ダム』の名が入ったモニュメント。
道路沿いに桜が植えられており、春にはもっと艶やかな景色になるんでしょう。

 
洪水吐はクレスト自由越流頂1門と自然調節式オリフィス1門という小規模ゲートレスダムの典型的スタイル。


堤体よりも減\勢工の作りに目が向かいます。 
減勢工の副ダム下流の落差工のような構造物、実はこれ量水計。

 
左岸から下流面。
ここだけ見るといわゆる大量生産型ダムの一つとも思えますが。


天端は車両も通れます。
取水設備と水位計建屋の屋根は円形で統一。
建屋の壁の一部には石垣風の化粧型枠が施されてます。
着工時期はまだバブルの余韻が残る時代、わずかながらも設計者の我が垣間見えます。


上流面
左から水位計、取水設備、洪水吐。

 
左岸管理事務所と東屋
職員の常駐はありません。

洪水吐導流部と減勢工
左手は放流設備。

左手の建屋は灌漑用水の調圧水槽。

 
ダムに至る道路が九十九折れになっています。
個人的に好きな『ダム下のヘアピン』の絵柄。

 
ちょっと見づらい写真ですが天端や東屋からは太平洋が遠望できます。


総貯水容量はわずか13万6000立米。
生活貯水池ダムの中でも極小サイズの貯水池です。

 
(追記)
鎌井谷ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

3019 鎌井谷ダム(1736) 
高知県香南市香我美町山北 
香宗川水系鎌井谷川 
FNA 
 
27.3メートル 
131メートル 
136千㎥/128千㎥ 
高知県土木部 
1997年 
◎治水協定が締結されたダム 

大淀川第一ダム

2021-11-02 05:16:51 | 宮崎県
2021年10月19日 大淀川第一ダム
 
大淀川第一ダムは左岸が宮崎県都城市高崎町笛水、右岸が同市高城町有水の一級河川大淀川本流にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なため、戦前から各河川で電源開発が進められてきました。
大淀川では電気化学工業(現デンカ)及び同社傘下の大淀川水力電気が電源開発を進め、1925年(大正15年)に電気化学工業によって建設されたのが轟ダムと大淀川第一発電所です。
当所の轟ダムは堤高15メートル未満の取水堰で、約3キロの導水路で大淀川第一発電所に送られ、最大1万5000キロワットの水路式水力発電を行っていました。
さらに1931年(昭和6年)には大淀川下流に高岡ダムおよび大淀川第二発電所が建設され最大3万キロワットのダム水路式発電が稼働します。
これらの発電施設は日本発送電の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により九州電力が事業継承しました。
 
しかし1954年(昭和29年)のジェーン台風により大水害が発生、轟ダムが流下を阻害し洪水被害を増幅させたとの批判が強まります。
これを受け九州電力は、轟ダム下流約3キロの大淀川第一発電所直上に大型洪水吐を備えた新ダムを建設に着手、1961年(昭和36年)に大淀川第一ダムが竣工しました。
ダム建設に合わせて新たに大淀川発電所1号機(最大出力4万2000キロワット)が増設され、2号機となった既存発電所と併せて出力合計は5万5500キロワットに増強されました。
この結果、大淀川第一発電所では1号機はダム式発電、2号機はダム水路式発電と一つの発電所で異なる方式の発電が行われています。
なおダム便覧では轟ダム竣工の1925年(大正15年)を大淀川第一ダムの竣工年度としていますが、轟ダムと当ダムでは建設地点が3キロ離れており同一ダムとみなすには無理があります
ここでは現ダムが竣工した1961年(昭和36年)を竣工年度とします。
 
ダム下への管理道路入り口には門扉があり普段は立ち入りできません。
今回は作業のため開放されており許可を得てダム下まで入らせていただきました。
クレストにラジアルゲート3門、その両側にオリフィスラジアルゲートが1門ずつ、計5門を装備
ダム直下には出力4万2000キロワットの大淀川第一発電所1号機があります。

少しズームアップ
右手が1号機。


ゲートをズームアップ
中央のクレスト3門と両端のオリフィス2門の越流高さが異なります。
両端2門の越流高が低くなっているのは両側の護岸が目的でしょう。
クレスト右手のゲートにはフラッシュボードがついています。


水圧鉄管はダム水路式発電の2号機用。


左岸から超広角で
右から堤体、第一発電所、開閉所の並びになります。


このアングルだと取水ゲートと水圧鉄管、発電所の配置がよくわかります。




天端。
訪問時は作業のため車が数台止まっています。


よく見ると天端にはレールが!!
今は使われていないようですが、かつては除塵機のゴミの排出や備品等の運搬にこのレールを使っていたようです。
天端にガントリーのレールが敷設してあるのは複数例ありますが、このような鉄道サイズのレールは初見。

上流面と貯水池
総貯水容量は850万立米、有効貯水容量295万立米で堆砂率は62%強
網場の向こうは水草が密生しています。

 
左手がダム水路式の2号機、右手がダム式の1号機の取水口
共に取水ゲート手前に除塵機が並びます。

 
ダムサイトの案内板。

 
1号機と2号機で発電方式が異なる発電所を持ち、また越流高の異なるラジアルゲートを装備するなど戦後の発電ダムの中でもちょっと毛色が異なる大淀川第一ダムです。
 
(追記)
大淀川第一ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2826 大淀川第一ダム(1735) 
左岸 宮崎県都城市高崎町笛水 
右岸     同市高城町有水 
大淀川水系大淀川 
 
 
47メートル 
178.6メートル 
8500千㎥/2950千㎥ 
九州電力(株) 
1925年轟ダム竣工 
1961年大淀川第一ダム竣工 
◎治水協定が締結されたダム