2016年 2月27日 竜ヶ池
2024年11月25日
竜ヶ池は山梨県甲府市古府中町の富士川水系相川左支流にあるかんがい目的のアースフィルダムです。
甲府市中心街北側は要害山から南下する相川によって形成された扇状地となっており明治期以降新田開発が進みますが、扇状地という地質的特性に加え水源となる相川は渇水が多く安定した水源確保のため溜池築造機運が高まります。
大正期に入り受益農家による相川村耕地整理組合が組織され、1915年(大正4年)に同組合の事業つまり受益農家の持ち出しによりに築造されたのが竜ヶ池です。
竜ヶ池建設に合わせて耕地整理も進められ現地記念碑によれば溜池完成当時は相川扇状地一帯130町歩(約129ヘクタール)の水田が開墾整備されました。
管理は耕地整理組合を引き継いだ相川土地改良区が行っていますが、甲府駅至近という地の利もあり戦後宅地開発が進み直近では土地改良区組合員は僅か20名余り、受益農地は2ヘクタールに減少しました。
こうした状況を受け管理費用捻出のため、非かんがい期に管理釣り場である『フィッシングパーク竜華池』が開設され今では県内でも人気の釣りスポットとなっています。
一方当池周辺は戦国期に武田氏の居城である躑躅ヶ崎館が置かれ現在跡地は武田神社になっています。
2017年(平成29年)にかけての老朽化改修工事に合わせて旧武田館など周辺の環境整備も進められ、竜ヶ池は釣りのほかバードウォッチング、歴史散策などが楽しめるレクリエーションエリアの一端を担っています。
竜ヶ池一番の特徴は逆コの字型の堤体で堤頂長は350メートル(ため池DB)に及びます。
また堤体表面は大正期の掘削時に掘り出された石が葺かれ、ぱっと見は巨大な石垣やロックフィルダムと見紛うような外見となっています。
堤高についてはダム便覧では17メートルとなっている一方、ため池データベースでは12メートルに留まり河川法のダムの要件未達となっています。
また竣工年度についても現地記念碑には1915年(大正4年)と記されていますが、ダム便覧は1956年(昭和31年)になっています。
後者は戦後の取水設備等の刷新事業の竣工年度と思われ、竜ヶ池の竣工年度は1915年とするのが妥当と思われます。
竜ヶ池には改修工事中の2016年(平成28年)2月に初訪、2024年(令和6年)11月に再訪しました。
掲載写真は最後の2枚を除きすべて再訪時のものとなります。
甲府市中心街から武田神社の標識に従い北上、境内直前を右に折れると竜ヶ池南端に到着します。
見えているのは竜ヶ池の堤体の南端部部、全体の一部に過ぎません。
池の手前は土地改良区の建屋でその左奥には3基の記念碑、右奥には底樋門があります。
ダム下の底樋と分水工
向かって左が底樋門、右手の小さなゲートがかんがい用水路ゲート、正面の大きなゲートは本来の河川流路となります。
訪問した11月はすでにかんがい期が終わっているため、かんがい用水路ゲートは閉まったままです。
池の南西端のカド。
手前には1934年(昭和9年)に建立された20周年記念碑が立ちます。
このほか改修工事竣工記念碑、大正期の竣工記念碑合わせて3基の記念碑が並びます。
池の西側堤体
この写真だけ見れば竜ヶ池がアースダムとはわからないでしょう。
ぱっと見ロックフィルダムの様相です。
こちらは上記分水工の東側にある洪水吐斜水路。
池の東側の地山を流下します。
底樋奥の階段を登ります。
堤体南側は犬走を挟んで2段構成。
管理橋の下を洪水吐が潜ります。
堤頂南端部は武田氏館跡や甲府市街を見下ろす展望台。
展望台からの眺め
甲府盆地が一望できます。
右手の森は武田神社でその左手は旧武田氏館の遺構。
眼下の市街の多くはかつては竜ヶ池の受益農地が広がっていましたが、市街化が進み現在の受益農地は僅か2ヘクタールに留まります。
展望台から西を向けば武田神社の社叢越しに南アルプス白峰三山、鳳凰三山、甲斐駒まで遠望できます。
堤体南側の斜樋、シャフトは3本
隣には巡視艇。
貯水池
総貯水容量はダム便覧で26万4000立米、ため池データベースで22万2000立米。
非かんがい期はニジマスが放流され管理釣り場となります。
受益農地は僅か2ヘクタールのため現実には武田神社や武田氏館跡など歴史遺構に隣接した修景池という色彩が濃いのかも?
洪水吐と斜樋。
天端は遊歩道の一端を担います。
平日午前ですが20人近くの釣り人が糸を垂れています。
池の北西端から
改修により上流面はコンクリート枠工+間中石工で護岸。
ここからの2枚は2016年(平成28年)の初訪時のもの
改修工事終盤で上流部の護岸や斜樋、洪水吐の工事は終わり底樋の最終工程に取り掛かっていました。
洪水吐を真上から、手前に越流堤があります。
私事ですが、10月初めに足を骨折しほぼ2か月のブランク。
7月以来4か月ぶりのダムの見学です。
復帰一番目が溜池というのがいかにも私らしい。
でも全国でも珍しい下流面い石が葺かれた異形の溜池。溜池愛好家なら必見の池です。
0956 竜ヶ池(0241)
ため池データベース
山梨県甲府市古府中町
富士川水系相川左支流
A
E
17メートル(ため池DB 12メートル)
382メートル(ため池DB 350メートル)
264千㎥(ため池DB 222千㎥)/264千㎥
相川土地改良区
1915年(現地記念碑)
1956年(ダム便覧)