ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

松尾川ダム

2022-04-07 08:00:00 | 徳島県
2022年3月28日 松尾川ダム 
 
松尾川ダムは左岸が徳島県三好市西祖谷山村坂瀬、右岸が同村小祖谷の吉野川水系松尾川源流部にある四国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した四国電力は戦後の電力不足に対応するため各所で新たな電源開発を進めます。
1953年(昭和28年)に完成した松尾川ダムもそんな発電施設の一つで、ここで取水された水は松尾川第一ダム(最大出力2万800キロワット)及び松尾川第二ダム(最大出力2万1400キロワット)に送られダム水路式発電に供されます。
当ダム集水面積103平方キロのうち自己流域は26平方キロにとどまり、その大半は祖谷川からの導水に依っており、取水ダムと言うよりは調整池と呼ぶ方が妥当です。
また1961年(昭和36年)に集水の大半を占める祖谷川取水堰直上に名頃ダムが完成したことで取水量の季節変動が平準化され松尾川発電所の発電効率が大きく向上しました。
 
今回は三繩ダムから松尾川沿いの県道139号線を使って松尾川ダムに至りましたが、県道とは名ばかりの酷道で至る所に落石、木の枝が散乱し22キロの距離を移動するのに1時間以上かかってしまいました。
下流からダムとすっきり正対できる場所はなく、下流面が撮れるのはこのアングルだけ。
余計な構造物を排したシンプルな造形。
クレストにはラジアルゲートを2門装備しています。


ダムサイトの水利使用標識。


上流面
堤頂長は195メートルで対岸に祖谷川からの導水路流入口があります。


円筒形の取水口。


取水ゲート。

 
関電か?と思わせる黒いゲート
昭和20年代のダムらしくゲート部分が高くなっています。


天端はフェンスのドアで閉じられていますが施錠されていません。
連絡先に確認したら立ち入り可能
見た目、堤体や導流壁のコンクリは何となく粗い作りのような気が?
後付けの河川維持放流用パイプが伸びています。


ダム湖は総貯水容量1430万立米
山は低く、源流感の強い眺め。


祖谷川はじめ支川からの導水路流入口
ダムの集水の7割超がこの導水路に依ります。


天端から
右手は管理事務所、左手はかつて職員が常駐していた時代の宿舎。


導水路流入口を直上から
発電所の使用水量から推察すると毎秒4立米以上の水が流れ込んでいると思われます。

 
帰路はダム東方を走る県道44号線を使いましたが、こちらの方が断然道がいい。
四国電力の巡回もこちらを使っているようで…

(追記)
松尾川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2121 松尾川ダム(1787)
左岸 徳島県三好市西祖谷山村坂瀬
右岸          同村小祖谷
吉野川水系松尾川
67メートル
195メートル
14300千㎥/12600千㎥
四国電力(株)
1953年
◎治水協定が締結されたダム

三繩ダム

2022-04-06 20:00:00 | 徳島県
2022年3月28日 三繩ダム
 
三繩ダムは左岸が徳島県三好市池田町川崎、右岸が同町松尾の吉野川水系祖谷川にある四国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
水量豊富で急流河川である吉野川水系では戦前から活発な電源開発が進められ、当地でも1912年(大正元年)に当時の四国水力(株)が最大2000キロワットの水路式発電を行う三繩発電所を建設しました。
日本発送電による接収ののち1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した四国電力が事業を継承しました。
同社は高度経済成長による電力需要拡大に対処するため各所で電源開発や既設発電施設の増強を進め、三繩発電所の再開発に合わせてその取水ダムとして1959年(昭和34年)に竣工したのが三繩ダムです。
再開発により新三繩発電所の能力は旧発電所の3.5倍となる最大7000キロワットに増強されました。
 
国道32号線から祖谷橋を渡り県道32号線を3.7キロ東進すると眼下に三繩ダムが見えてきます。
ダムへの管理道路には関係者以外進入禁止の警告板があります。
通常ならダムカード受け取りのため立ち入りができるのですが、訪問時はコロナ警戒中のためカードの配布は中止、敷地内への立ち入りはご遠慮くださいとのことで県道からの見学にとどまりました。
ちょうどダムそばの桜が満開、桜越しの見学となります。
右岸にローラーゲート3門、左岸は自由越流頂になっています。
ローラーゲートの導流部は石張りとのことですが、遠くからは視認できません。
通常なら天端も見学できるようですが、コロナのためそれも叶わず。

上流側から広角で。




ダムをズームアップ
ここに限らず祖谷川の水はとてもきれいです。
不純物が少なく光路長が長いので深い青やエメラルドグリーンになるようです。


こうなるとダムよりも桜がメイン。


水利使用標識。

 
追記
三繩ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2123 三繩ダム(1786)
左岸 徳島県三次市池田町川崎 
右岸        同町松尾
吉野川水系祖谷川
17メートル
80.8メートル
299千㎥/183千立米
四国電力(株)
1959年
◎治水協定が締結されたダム

若宮谷ダム

2022-04-06 08:00:00 | 徳島県
2022年3月28日 若宮谷ダム
 
若宮谷ダムは徳島県三好市西祖谷山村一宇の吉野川水系祖谷川右支流若宮谷川にある四国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
包蔵電力豊富な吉野川水系では戦前より複数の事業者により電源開発が進められ、これらの発電施設は日本発送電を経て四国電力に引き継がれました。
若宮谷ダムもそんな発電施設の一つで1935年(昭和10年)に四国で3番目のコンクリートダムとして四国水力(株)により建設されました。
若宮谷ダムは発電用調整池で祖谷川で取水された水をいったん貯留し、若宮谷川の水と併せて約300メートルの導水路で一宇発電所(最大出力8700キロワット)に送りダム水路式発電を行います。
 
西祖谷中心部から若宮谷川沿いの市道を300メートルほど東進すると若宮谷ダム右岸ダムサイトに到着します。
戦前のダムらしい年季の入った堤体が川を閉め切ります。
非越流型堤体なので『閉め切る』という言葉がぴったり。


道路わきの水利使用標識。


上流面
こちらも赤錆と苔が80年以上の時代感を醸し出しています。
堤体中央は排砂ゲートのバルブとシャフト、手前の円形は取水口。


こちらは祖谷川からの導水路吐口。
ゲートが2門あり、当ダムの水位に合わせて使い分けるようです。
エメラルドグリーンの水が美しい。
不純物が少なく光路長が長いのでこういう色になるようです。


天端も開放されています。
親柱は四角を基調にした意匠。


ここは非越流型堤体、では洪水吐はどこにあるのか?
きょろきょろ探したら右岸堤体直上にありました。
若宮谷川の流域面積が大きくないので、こんな簡易な洪水吐で十分なんでしょう。
越流した水は隧道で流下させます。


円形の取水口
手前の設備がよくわかりません。


天端から
直下に排砂ゲートがありますが、非越流型のため減勢工もありません。


ダム湖は総貯水容量9万4000立米
右手が上記祖谷川からの導水路流入口
奥に見える堰堤は砂防ダム。


天端高欄は親柱同様四角基調のデザイン。


左岸から下流面。

発電ダムとしては珍しく天端が開放されており、戦前のビンテージダムをじっくり堪能することができます。
水の美しさも印象的。
 
(追記)
若宮谷ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2120 若宮谷ダム(1785)
徳島県三好市西祖谷山村一宇
吉野川水系若宮谷川 
 
 
32.2メートル 
93メートル 
94千㎥/58千㎥ 
四国電力(株) 
1935年 
◎治水協定が締結されたダム 

名頃ダム

2022-04-05 20:00:00 | 徳島県
2022年3月28日 名頃ダム
 
名頃ダムは徳島県三好市東祖谷菅生の吉野川水系祖谷川上流部にある四国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
包蔵電力豊富な吉野川水系では戦前から活発な電源開発が進められてきましたが、1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した四国電力は高度経済成長による電力需要拡大に対処するため各所で電源開発や既設発電施設の再開発を進めます。
祖谷川では1954年(昭和29年)に高野発電所、1959年(昭和34年)に三繩発電所再開発が竣工、次いで1961年(昭和34年)に祖谷川最上流部に建設されたのが名頃ダムです。
ここで取水された水は約450メートルの導水路で名頃発電所に送られ最大1300キロワットのダム水路式発電を行ったのち、その放流水は約19キロの導水路で遠く松尾川ダムまで送られ、松尾川第1発電所(最大出力2万800キロワット)及び松尾川第2発電所(最大出力2万1400キロワット)の発電に供されます。
名頃ダムの完成により祖谷川流量の季節変動が平準化され、松尾川第1および第2発電所の発電効率が大きく向上しました。 

祖谷川沿いの国道439号を剣山方面に東進、三嶺登山口を過ぎると名頃ダムに到着します。
まずは下流から
クレストにラジアルゲート1門、雪が多いのか?ピアは被覆されています。

左岸(向かって右手)に放流設備があり、河川維持放流が行われています。


ゲートをズームアップ。


天端高欄には戦前、戦中のダムでよくみられる三日月形の『抜き』。
堤体のくたびれ具合も併せて、ぱっと見戦前のダムか?と思しき様相。


ダム右岸を国道が通りますが、ガードが厳しく撮影はこのアングルのみ。
総貯水容量136万7000立米に対し有効貯水容量115万立米と、発電ダムとしては堆砂がほとんどありません。


天端高欄の三日月形の抜きは下流側のみですが、このアングルで見た天端高欄の意匠は、戦中に建設された広島の高暮ダムを想起します。


水利使用標識。


ダム入り口の銘板
四国電力では『○○堰堤』という表記が多いのですが、ここは『ダム』。
 
追記
名頃ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2127 名頃ダム(1784)
徳島県三好市東祖谷菅生 
吉野川水系祖谷川
37メートル
119.4メートル
1367千㎥/1150千㎥
四国電力(株)
1961年
◎治水協定が締結されたダム

明谷ダム

2022-04-05 08:00:00 | 徳島県
2022年3月28日 明谷ダム
 
明谷(みょうだに)ダムは徳島県美馬郡つるぎ町一宇の吉野川水系貞光川左支流明谷川にある四国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
包蔵電力豊富な吉野川水系では戦前より複数の事業者により電源開発が進められ、これらの発電施設は日本発送電を経て四国電力に引き継がれました。
明谷ダムもそんな発電施設の一つで1931年(昭和6年)に貞光電力(株)により四国初のコンクリートダムとして建設されました。
明谷ダムは発電用調整池で貞光川で取水された水がいったん貯留され、明谷川の水と併せて約3.5キロの導水路で切越発電所(最大出力4500キロワット)に送られダム水路式発電を行います。
四国最古の貴重なコンクリートダムでしたが、老朽化が著しく2017年(平成29年)の改修で全面越流式ダムに生まれ変わり、この際当初19.6メートルあった堤高が14.7メートルになったためダム便覧からも削除されました。
しかし改修後も四国堰堤ダム88箇所巡りに採用されていること、名頃ダムへの途上にあることから立ち寄ることにしました。

貞光から国道438号線をひたすら南下、一宇地区に入り明谷川沿いの県道菅生伊良原線を2キロほど進むと明谷ダムに到着します。
樹間から真新しい白い堤体が姿を見せます。


堤体は全面越流式で左岸に放流ゲートがあります。


左岸から越流!かと思ったら、導流面に河川維持放流用の切れ込みがありそこから放流されています。


堤体に貼り付けられた真新しい銘板。


対岸の取水口。
手前側に貞光川からの吐口があるはずですが見ることはできません。


奥のコンクリートは水位観測施設。


天端から。


水利使用標識。

 
明谷ダム
左岸 徳島県美馬郡つるぎ町一宇 
吉野川水系貞光川左支流明谷川
14.7メートル
34.8メートル
52千㎥/---千㎥
四国電力(株)
1931年 竣工
2017年 再開発竣工

池田ダム

2022-04-03 20:00:00 | 徳島県
2022年3月28日 池田ダム 
 
池田ダムは左岸が徳島県三好市池田町西山、右岸が同市池田町ウエノの一級河川吉野川本流にある水資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
『四国三郎』の異名を持つ吉野川は、日本屈指の暴れ川でその治水は歴代為政者の至上命題となる一方、水利に乏しい瀬戸内海沿岸地域では水量豊富な吉野川からの導水が江戸時代からの悲願でした。
戦後、建設省を軸に『吉野川総合開発計画』が企図されますが利害の対立もあり調整は難航、一方当地には電源開発による大歩危ダムの逆調整池が建設される予定でしたが環境破壊を理由にこちらもとん挫。
そんな中、1966年(昭和41年)に『吉野川水系水資源開発基本計画』(フルプラン)が採択され、吉野川水系では水資源開発公団(現水資源機構)による河川総合開発が進められることになりました。
水資源開発公団は早明浦ダムを水源とする香川用水等の取水地点として当地に着目、1974年(昭和49年)に池田ダムが竣工しました。
池田ダムは水資源機構法(当時は水資源開発公団法)による多目的ダムで、吉野川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、香川用水を通じた上水道用水・工業用水・灌漑用水の供給、吉野川北岸用水を通じた灌漑用水の供給、旧池田町への上水道用水の供給、四国電力池田発電所でのダム式発電(最大5000キロワット)を目的としています。
 
右岸高台から
全長247メートル、9門のローラーゲートで吉野川を閉め切ります。


鋼鉄トラス製のゲートピアは同時期に建設された早明浦ダムと共通
天端は両岸の連絡道路として開放されそこそこの通行量。
手前上流側に池田発電所の取水ゲートが、下流に池田発電所があります。


右岸ダム湖畔に積まれた分割式予備ゲート。


上流面
右手は魚道用ゲート。

 
右岸の魚道
手前は発電所の放流口。


ダム湖右岸寄りにある旧池田町向け上水道用水取水塔。
ダム湖の総貯水容量は1265万立米ですが、死水容量が多く有効貯水容量は440万立米にとどまります。


左岸にある艇庫とインクライン
訪問したタイミングで出庫中。


左岸から下流面
ここからの眺めが一番いいかも?
対岸段丘上にはかつて甲子園で一時代を築き上げた池田高校があります。


左岸高台から。


左岸から上流面。


こちらはダム直上左岸にある吉野川北岸用水取水工
吉野川北岸土地改良区が管理を受託し約70キロの幹線水路で6000ヘクタール超の農地に灌漑用水を供給します。


ダム上流約1.8キロにある水資源機構香川用水取水工。
約8キロの阿讃トンネルを抜け香川県に送水されます。


取水ゲート
立入禁止ですが、職員さんの許可を得て撮影しました。


取水工の除塵機
奥は徳島道の『池田へそっこ大橋』。


早明浦ダムには『四国のいのち』の石碑がありますが、こちらは『四国は一つ』
四国を象った緑色片岩。

2230 池田ダム(1783)
左岸 徳島県三好市池田町西山 
右岸        同町ウエノ
吉野川水系吉野川
FNAWIP
24メートル
247メートル
12650千㎥/4400千㎥
水資源機構
1974年 

小見野々ダム(元)

2021-11-30 00:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 小見野々ダム(元)
 
小見野々(こみのの)ダム(元)は徳島県那賀郡那賀町木頭助の一級河川那珂川本流にある四国電力(株)が管理する発電目的のアーチ式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編により誕生した四国電力(株)は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進めます。
徳島県を貫流する那賀川では中下流域は県企業局が那賀川総合開発事業に参画して日野谷発電所や川口発電所を建設する一方、上流域では四国電力による電源開発が進められ1968年(昭和43年)に竣工したのが小見野々ダムです。
当ダムを上部池、県営(現在は国交省に移管)の長安口ダムを下部池として蔭平発電所で最大出力4万6650キロワットの混合揚水式発電を行います。 
 
一方那賀川では上流部での森林荒廃を主因として河床やダムで計画以上の堆砂が進行し、洪水調節や利水機能の齟齬が顕在化します。
そこで1998年(平成10年)より長安口ダム改造事業が着手される一方、2019年(令和元年)の那賀川水系河川整備計画変更により新たに『小見野々ダム再生事業』が採択されました。
具体的には貯水池内の堆砂の除去と1100万立米の洪水調節容量の確保を目的に2038年(令和20年)竣工をめどに下流への新ダム建設が進められる予定です。

長安口ダムから国道195号線を西へ約15キロ走ると小見野々ダムに到着します。
ダム下へ通じる道路もありますが、上記ダム再生事業のための地質調査が始まっており通行できませんでした。
こちらはダム管理道路わきの慰霊碑。
 
大美谷ダムと同じ仕様の蔭平発電所の説明版。
こちらもボタンを押せば音声解説が聞けます。
 
水利使用標識。
 
管理事務所の前に門扉がありダム敷地への立ち入りはできません。
通常ならば職員さんの都合がつけば中を案内していただけるようですが、訪問時はコロナ対応のため叶いませんでした。
クレストにはラジアルゲート9門を装備
そのほか放流管としてホロージェットバブル1条を備えています。
 
右岸3番目ゲートはフラッシュボードつき。
 
蔭平発電所の取水口。
 
左岸の巡視艇
クレーンで昇降させます。
 
総貯水容量1675万立米に対し有効貯水容量は1142万立米で堆砂率32%。
網場には大量の流木が掛かっています。
那賀川の堆砂問題は上流域の森林荒廃が主因とされており、流木の多さは森林荒廃の証左ともいえます。
 
上流から遠望
左手が管理事務所。
 
 
ダム下へのアプローチは国交省の地質調査で叶わず、ダム敷地内への立ち入りもコロナ対応で叶わず。 
ちょっと相性が良くなかった小見野々ダムです。 
小見野々ダム再生事業の竣工めどは2038年(令和20年)とまだまだ先の話ですが、四国最大のアーチダムがいずれ消えてしまうことには一抹の寂しさを感じてしまいます。 
 
(追記)
小見野々ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2129 小見野々ダム(1747) 
徳島県那賀郡那賀町木頭助 
那賀川水系那賀川 
 
 
62.5メートル 
151.8メートル 
16750千㎥/6500千㎥ 
四国電力(株) 
1968年 
◎治水協定が締結されたダム 
-------------- 
3712 小見野々ダム(再) 
徳島県那賀郡那賀町木頭助 
那賀川水系那賀川 
FP 
 
メートル 
メートル 
20150千㎥/11000千㎥ 
国交省四国地方整備局 
2020年~ 


追立ダム

2021-11-29 20:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 追立ダム
 
追立(おったち)ダムは左岸が徳島県那賀郡那賀町木頭名、右岸が同町坂州の那賀川水系坂州木頭川にある重力式コンクリート製砂防兼発電用取水ダムです。
1950年(昭和25年)に徳島県の那賀川総合開発事業が着手されますが、長安口ダムおよび日野谷発電所の建設用電源確保のために1952年(昭和27年)に建設されたのが追立ダムと坂州発電所です。 
追立ダムで取水された水は約1.7キロの導水路で坂州発電所(最大出力2400キロワット⇒現在は2500キロワット)に送られ、水路式発電を行っています。
さらに長安口ダム改造事業において、2028年(令和10年)の竣工をめどに追立ダム貯水池を掘削することで当ダムに新たな堆砂容量を設定するとともに、長安口ダム湖への土砂流入を抑止する方針となっています。
 
追立ダムの堤高は29.5メートルと15メートルをクリアしていますが、砂防法によって建設されたダムのため河川法のダムとは認められていません。
本来砂防ダムは見学対象には入れませんが、当ダムは長安口再生事業における堆砂対策の根幹を担うことから足を延ばしてみました。 
 
国道193号線追立橋からダムと正対できます。
 
非常に険しい峡谷を閉め切った砂防ダム。
折から紅葉の真っ盛り。
 
主堤部は全面溢流式
右岸(向かって左手)に排砂ゲートがあります。
溢流した水がダム中央部に集まるよう両袖から導流用の段差がついています。
 
排砂ゲートから河川維持放流が行われています。
 
坂州発電所
青い水圧鉄管が鮮やか。
放流口は写真左手のスロープになります。
 
河川法上のダムではなくあくまでも砂防ダムとなりますが、できれば参考掲載でダム便覧に載せてあげたい、そんな追立ダムです。
 
追立ダム
左岸 徳島県那賀郡那賀町木頭名
右岸        同町坂州
那賀川水系坂州木頭川
29.5メートル
79.5メートル
ーーーー千㎥/ーーーー千㎥
徳島県企業局
1952年

大美谷ダム

2021-11-29 12:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 大美谷ダム
 
大美谷(おおみだに)ダムは徳島県那賀郡那賀町木頭名の那賀川水系大美谷川にある四国電力(株)が管理する発電目的のアーチ式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編により誕生した四国電力(株)は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進めます。
徳島県を貫流する那賀川では中下流域は県企業局が那賀川総合開発事業に参画して日野谷発電所や川口発電所を建設する一方、上流域では四国電力による電源開発が進められ1960年(昭和35年)に竣工したのが大美谷ダムです。
大美谷ダムは取水ダム兼発電調整池で坂州木頭川と沢谷川の水を併せて広野発電所に導水し、最大3万6500キロワットのダム水路式発電を行います。
 
那賀町木頭広瀬で国道193号線から大美谷川沿いの町道を約3.5キロ東進すると大美谷ダムに到着します。
四国に3基しかないアーチダムの一つで、堤高31.5メートル、堤頂長86メートルの小ぶりなアーチです。
 
超広角で
左岸に放流ゲートがありますが、堤体外ゲートということで非越流型堤体となります。
 
広野発電所の案内板。
音声解説ボタンがあります。
通常この手のボタンは押しても反応しないところが多いんですがここはきちんと音声解説が流れます。
 
四国電力で散見される朱筆の銘版。
 
天端は立ち入り禁止。
左手の白い建屋は管理事務所ですが職員の常駐はありません。
 
左岸に放流ゲートと広野発電所への取水口があります。
 
 
慰霊碑。
 
右岸に坂州木頭川と沢谷川からの導水路流入口があります。
流域面積101.3平方キロのうち直接流域はわずか7.3平方キロ、間接流域が94平方キロを占め集水の9割以上は河道外です。
 
上流から
導水路流入口からの水勢が強く湖面が波打っています。
 
放流ゲートと取水口 
放流ゲートにはローラーゲート1門が備わっています。 
 
大美谷川からの集水は全体の1割にも満たず、実情は発電調整池です。
 
(追記)
大美谷ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2125 大美谷ダム(1746)
徳島県那賀郡那賀町木頭名 
那賀川水系大美谷川 
 
 
31.5メートル 
86メートル 
6451千㎥/309千㎥ 
四国電力(株) 
1960年 
◎治水協定が締結されたダム 


長安口ダム(再)

2021-11-29 02:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 長安口ダム(再) 
 
長安口ダム(再)は左岸が徳島県那賀郡那賀町長安、右岸が同町大戸の一級河川那賀川本流にある国交省四国地方整備局が管理する重力式コンクリートダムです。
1955年(昭和30年)に建設省(現国交省)の補助を受けた徳島県の事業により竣工、那賀川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給、徳島県企業局日野谷発電所での最大6万2000キロワットのダム水路式発電を目的とした補助多目的ダムとして運用が始まりました。
さらに1968年(昭和43年)には当ダム湖を下部調整池、同年完成した四国電力小見野々ダム(元)を上部池とした陰平発電所で最大4万6650キロワットの混合揚水式発電が稼働しました。
一般水力発電は徳島県企業局、混合揚水発電は四国電力(株)と異なる事業者での発電を行っており、このようなダムは当ダムのほか福島県の大川ダム、栃木県の深山ダムの計3例しかありません。

一方で那賀川上流の森林荒廃等により計画を超える堆砂が進行し、容量不足や濁水などダム運用の根幹にかかわる諸問題が顕在化します。
そこで国交省四国地方整備局は2007年(平成19年)に同ダムを国交省直轄管理に移管して『長安口ダム改造事業』に着手します。
改造事業は
①ダム右岸部へのゲート2門増設による洪水処理能力強化
➁発電用取水口への選択取水設備の新設による濁水問題の対処と利水能力強化
➂貯水池内の堆砂除去および貯水池への土砂流入の抑制
の3点を柱としています。
このうち①と②については2020年(令和2年)に完了し予備放流水位の引き下げが可能になるとともに、選択取水設備が新設されました。
⓷については支流坂州木頭川にある追立ダムの活用とベルトコンベアによる排砂作業を軸に2028年(令和10年)竣工をめどに事業が進められています。
 
下流の川口ダムから那賀川沿いの国道195号線を約15キロ西に走ると長安口ダム(元)に到着します。
下流には鉄骨トラス製の長安吊橋が架かりここからダムと正対できます。


広角で。


クレストには新旧合わせて8門のローラーゲートが並びます。
左岸(向かって右手)6門のローラーゲートが既存ゲート、右岸(向かって右手)の2門が新ゲートです
新ゲート増設に合わせて導流壁や減勢工が新調され、黒ずんだ旧堤体と真っ白な新調コンクリートの対比がアンバランスでまるでおもちゃのダムのように見えてしまいます。
減勢工では土砂排出作業中。

 
ダム下の仮排水路開口部
昭和20年代の長安ダム(元)建設時のものです。

 
今度はアングルを変え国道195号線から見てみます。


新ゲートをズームアップ
旧ゲートの高さが14.7メートルに対し、新ゲートは20.52メートルと19.64メートルとその大きさが際立ちます。
長安口ダムは予備放流によって洪水調節容量を確保しています。
新ゲート完成により予備放流水位を低下させ新たに100万立米の洪水調節容量が確保されました。


ダム手前左岸から
新ゲートの導流部は減勢のため大きなカスケードになっています。


ダムサイトの水利使用標識
こちらは県企業局日野谷発電所のものです。


銅板の概要と諸元。

残念ながら訪問時は電気関係の作業のため天端に立ち入りできませんでした。

 
予備ゲート運搬用のガントリーのレール。

 
予備ゲートはガントリーの下に横向きに格納。

 
天端に立ち入れなかったため貯水池の撮影ができませんでしたのでこの写真を添えることにします。
総貯水容量は5427万8000立米ですが、堆砂の進行が進み有効貯水容量は3680万立米にとどまります。

 
ちょっとわかりづらいですが、ゲート左手白い建屋から斜めに伸びるのが発電用取水口で、水中部分に選択取水設備が新設されました。
これにより那賀川下流の利水需要に合わせた選択取水が可能になるほか、濁水対策として清水の選択取水が可能となりました。
同様の取水設備は濁水が問題化している宮崎の一ツ瀬ダムでも採用されています。
取水設備手前にはインクラインと艇庫があります。

 
長安ダム本体の改造はほぼ作業を終えていますが、一番の堆砂対策についてはまだ道半ば。
また那賀川全体で見ても、国交省は2018年(平成30年)に那賀川水系河川整備計画を変更して、既存の四国電力小見野々ダム(元)を下流に移設し、新たに洪水調節機能を付加して多目的ダム化する『小見野々ダム再生事業』が採択されました。
 
(追記)
長安口ダム(元)には洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2122 長安口ダム(元)(1745)
左岸 徳島県那賀郡那賀町長安 
右岸        同町大戸
那賀川水系那賀川
FNP
85.5メートル
200メートル
54278千㎥/43497千㎥
国交省四国地方整備局
1955年 長安口ダム(元)竣工
◎治水協定が締結されたダム
----------------------
3314 長安口ダム(再)
左岸 徳島県那賀郡那賀町長安
右岸        同町大戸
那賀川水系那賀川
FNP
85.5メートル
200.7メートル
54278千㎥/36800千㎥
国交省四国地方整備局
2028年 長安口ダム(再)竣工予定

赤松ダム

2021-11-28 16:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 赤松ダム
 
赤松ダムは徳島県那賀郡那賀町雄の一級河川那賀川水系赤松川にある徳島県企業局が管理する発電目的の重力式コンクリート堰堤です。
1960年(昭和35年)に徳島県企業局により川口ダムおよび発電所が完成、ついで翌1961年(昭和36年)に竣工したのが赤松ダムです。
ここで取水された水は約1.4キロの導水路で川口ダム貯水池に送られます。本来川口ダム下流で合流する支流の赤松川の水を川口ダム貯水池への導水することで川口発電所の発電効率向上を目的としています。
ダムの諸元等は不明ですが、河川法上のダムの要件である堤高15メートルを満たしておらずダム便覧には未掲載です。
 
国道195号線から川口橋を渡って県道16号に入り、川沿いを1.6キロ走ると右手に赤松ダムへの降り口があります。
特に立ち入り禁止の標識もないためダムに降りてみます。
 
堰堤は自由越流頂2門、対岸に取水口があり余水放流路が伸びています。
 
右岸には魚道。
 
左岸の取水設備
スクリーンは河床近くの低い位置にあります。
 
天端から下流の眺め。
今は渇水期で魚道も機能していません。
 
川口ダム貯水池右岸の導水路流入口。
 
2016年(平成28年)に設置された赤松川支水路小水力発電設備。
 
最近はこの手の小堰堤はスルーすることが多いのですが、川口ダムから至近だったことや導水路吐口に小水力発電が設置されていたので立ち寄ってみました。
 
赤松ダム
徳島県那賀郡那賀町雄
那賀川水系赤松川
---メートル
---メートル
徳島県企業局
1961年

川口ダム

2021-11-28 12:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 川口ダム
 
川口ダムは左岸が徳島県那賀郡那賀町吉野、右岸が同町鉢の一級河川那賀川本流にある徳島県企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編により誕生した四国電力は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進めますが、包蔵水力豊富な四国では同社だけでは開発の手が足りず電源開発(株)や公営発電である各県企業局による電源開発が併せて進められました。
那賀川では県の那賀川総合開発事業に県企業局が発電業者として参加し、1960年(昭和35年)に建設されたのが川口ダムです。
川口ダムは同年に完成した日野谷発電所の逆調整池となっており、日野谷発電所の出力調整による水位変動を緩和するとともに、ダムに併設された川口発電所で最大1万1700キロワットのダム式発電を行っています。
 
下流の県道16号川口橋からダムを遠望。
堤体中央直下にダム式発電を行う川口発電所があり、両側にローラーゲート3門ずつ計6門を装備。

 
左岸から
発電所は川の中州の岩山をうまく利用した作りになっています。
ゲート扶壁前面にゲート操作建屋が乗り、支柱を経由したワイヤーでゲートを昇降させる、いわゆる中四国型タイプの発電ダムです。

 
ダムにはPR館である川口ダム自然エネルギーミュージアムが併設されており、水力発電についていろいろ学ぶことができます。
訪問時はイベント開催中で団体様来場中でした。

水利使用標識
川口発電所と赤松ダムダムからの導水を利用した赤松川支水路小水力発電施設の2枚。


堤体中央直下に発電所があるため、取水口が堤体中央に配置されています。


インクラインはなく左岸の桟橋に巡視艇が繋留されています。


左岸側の減勢工
コンクリートの叩きと副ダムがあります。
訪問時は発電所からの放流だけでゲートは閉じられていました。
 

6門のローラーゲートのうち、中央部2門にはフラッシュボードがついています。
ゲートの両側にフラップがあります。

 
天端は町道で車両の通行が可能。


ダム湖は総貯水容量は646万3000立米ですが、堆砂が進み有効貯水容量は95万立米。
堆砂率は85%を超えます。

 
川口ダムの予備ゲートは浮ゲートになっており、普段は右岸湖岸にあるこの施設に格納されています。

 
訪問時はゲート補修のため予備ゲートは絶賛稼働中。
格納施設からダムに曳航し、中に注水したのち直立させてゲート上部に嵌め込みます。

 
赤松ダムからの導水路を利用して小水力発電が行われています。 
2016年(平成28年)に稼働を始めた赤松川支水路小水力発電施設
最大出力はわずか800ワットですが、至近で小水力発電を見るれるのはうれしいですね。

 
ダムにはPR館である川口ダム自然エネルギーミュージアムが併設されており、水力発電についていろいろ学ぶことができます。
川の中央の岩山を利用したダム式発電所、浮ゲート方式の予備ゲート、さらには目の前で小水力が見れるなど非常に見どころの多い川口ダムです。
 
(追記)
川口ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2126 川口ダム(1744) 
左岸 徳島県那賀郡那賀町吉野
右岸        同町鉢 
那賀川水系那賀川 
 
 
30メートル 
182.5メートル 
6463千㎥/950千㎥ 
徳島県企業局 
1963年 
◎治水協定が締結されたダム 

正木ダム

2021-11-27 08:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 正木ダム 
 
正木ダムは徳島県勝浦郡上勝町正木の二級河川勝浦川本流にある徳島県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1960年(昭和35年)に勝浦川総合開発事業が採択され1964年(昭和39年)より正木ダム建設が着手され昭和40年不況による中断をはさみ、着工より14年後の1978年(昭和53年)に正木ダムが竣工しました。
正木ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、勝浦川の洪水調節(最大毎秒850立米の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、勝浦町・小松島市への新規灌漑用水の供給、小松島市への工業用水の供給、徳島県企業局勝浦発電所(最大出力1万1300キロワット)でのダム水路式水力発電を目的としています。
また2011年(平成23年)には河川維持放流を活用した正木ダム管理発電所が完成し小水力発電が稼働しました。
 
ダムの左右両岸を町道が走りますが今回は左岸からアプローチ
樹林の切れ間からダムを望めます
クレストラジアルゲート2門、木に隠れて1門しか見えませんがコンジット高圧ラジアルゲート2門を装備

 
前面に張り出したコンジットゲートハウスはいかにも昭和のダムといった風。
対岸に管理事務所があります。

 
上流面
左手は低流量および利水放流管用取水設備
クレストラジアルゲート2門の両側にコンジット予備ゲートが並びます。

 
右岸の徳島県企業局勝浦発電所の取水口
ここから約6.1キロの導水路で勝浦発電所に送水します。
自動除塵機付きの縦長のスクリーンが特徴的。

 
クレスト導流部と減勢工
かつてはダムから300メートルが無水区間でしたが、2001年(平成13年)より河川維持放流が開始されました。

 
天端は車両通行可
対岸に建設時のプラント遺構が残ります。

 
右岸から。

 
コンジットゲートハウスをズームアップ
放流されているのは河川維持放流。

 
さらに下流から
右から小水力発電所を兼ねた河川維持放流設備、低流量放流管、コンジットゲートハウス

 
親柱に嵌められた銅板。


右岸から上流面。

 
ダム湖は美愁湖で総貯水容量は1505万立米。


ダム下流に架かる沈下橋。

(追記)
正木ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2133 正木ダム(1743) 
徳島県勝浦郡上勝町正木 
勝浦川水系勝浦川 
FNAIP 
 
67メートル 
215メートル 
15050千㎥/11900千㎥ 
徳島県県土整備部 
1978年 
◎治水協定が締結されたダム 

福井ダム

2021-11-26 20:00:00 | 徳島県
2021年11月20日 福井ダム 
 
福井ダムは徳島県阿南市福井町の二級河川福井川本流にある徳島県県土整備部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムで、福井川の洪水調節(最大毎秒470立米のカット)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給を目的として1995年(平成7年)に竣工しました。
 
ダム下は福井ダム公園として整備され、駐車スペースやトイレ、ベンチなどが置かれれています。
古い写真を見ると公園には巨大滑り台やジャングルジムなどの遊具があったようですが、現在は撤去され芝生の広場になっています。
クレスト自由越流頂8門、自然調節式オリフィス1門のゲートレスダムです。
右岸に放流ゲートがあり、副ダムの下流には洗堀防止のブロック工が敷かれています。


ゲートレスですが、バブル期着工のダムらしく天端のバルコニーなど凝った造りで今どきの大量生産型ダムと一線を画します。

 
左岸ダムサイトに上がります。
こちらもバブルの遺産。
補助ダムとしては珍しく資料館がありましたがすでに閉館。

 
下流面の写真を撮ろうとしたらちょうど陽が上がってきました。


陽が当たらないアングルでもう一枚
左右両岸には堤趾導流壁、対岸の建物は管理事務所。

 
上流面。
治水ダムなのでこれでほぼ常時満水位。

 
天端は車両通行可能
ちょっとわかりづらいけど、天端高欄には波型の化粧型枠が施されて手すりには当地特産の竹とタケノコが交互に並びます。

 
管理事務所をズームアップ
何をモチーフにしたのかわかりませんが、こちらも贅を尽くしたデザイン。

 
天端から減勢工を見下ろすと。


大小二つの副ダムが並び、下流には洗堀防止のブロック工が設置されています。
左岸が福井ダム公園でかつては遊具が並びましたが今は撤去され芝生の公園に。

 
ダム湖は総貯水容量475万立米。
堆砂容量と不特定利水容量分だけ貯留されています。
正面の岬先端には水質保全を目的とした人工滝があります。
これまたバブリー。

ダムサイトには波をモチーフにしたモニュメント。


右岸から
堤頂長191メートル、クレスト自由越流頂8門がずらっと並びます。


本体着工1990年(平成2年)はバブル真っ盛り。
完成当時はダム資料館を備え、ダム下の公園には遊具が並び、贅を尽くした管理事務所に天端高欄の凝った造りに人工滝・・・・などなど、予算が豊かだった時代の痕跡が各所に伺えます。
今や公園から遊具は消え、資料館も閉鎖、まさに兵どもが夢の跡といった風。
 
(追記)
福井ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2134 福井ダム(1742) 
徳島県阿南市福井町 
福井川水系福井川 
FN 
 
42.5メートル 
191メートル 
4750千㎥/4000千㎥ 
徳島県県土整備部 
1994年(ダム便覧)
1995年(徳島県県土整備部HP) 
◎治水協定が締結されたダム 

夏子ダム

2018-01-10 14:57:32 | 徳島県
2017年12月21日 夏子ダム 
 
夏子ダムは徳島県美馬市脇町の吉野川水系曽江谷川上流部にある徳島県農林水産部が管理する灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
吉野川北岸地域は阿讃山脈から吉野川に注ぐ各支流が扇状台地を形成し平野部では軒並み伏流するため、古来より農業用水の確保は困難を極めていました。
さらに戦後、特産の藍が化学染料に押されて衰退し、藍農家の畑作転向が進んだことで農業用水需要が急増し新たな水源確保に迫られることになりました。
そこで徳島県は1979年(昭和54年)に曽江谷川への灌漑用ダム建設事業に着手、1994年(平成6年)に夏子ダムが竣工しました。
夏子ダムは夏子用水を通じて曽江谷川流域の農耕地に灌漑用水の供給を行うほか、2014年(平成16年)には河川維持放流を利用した小水力発電所が増設されました。
夏子ダムとほぼ同時に完成した国営の吉野川北岸農業用水により、吉野川北岸地区の悲願であった安定した用水確保がようやく実現したのです。
 
夏子ダムは国道193号線沿いにあります。
ダム手前の枝道を下るとダム下に出ます。
農業用コンクリートダムらしく洪水吐は自由越流式クレストゲート4門のみ。
 
ダムサイトに上がります。
『うだつの町並み』で有名な脇町らしく、右岸の管理事務所もうだつやなめこ土塀のが施された日本家屋風。
 
上流面
手前は取水設備。
 
天端
ゲート部分だけ前面に張り出しています。
 
右岸のインクラインと艇庫。
 
貯水池は総貯水容量160万立米
ダム湖右岸を国道が通り、湖岸にはパーキングがあります。
 
シュートブロック、バッフルピア、エンドシルと三点セットが並ぶ減勢工。
 
左岸から。
 
右手は2014年に完成した小水力発電所。
 
ダム湖上流のパーキングから。
 
ダム便覧では『なつこ』となっていますが、現地では『なつご』と訛るそうで、職員さんも『なつごダム』と話されていました。
 
追記
夏子ダムは洪水調節機能を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には水位低下運用もしくは事前放流により新たに3万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2136 夏子ダム(1203
徳島県美馬市脇町
吉野川水系曽江谷川
43.8メートル
133.5メートル
1600千㎥/800千㎥
徳島県農林水産部
1994年
◎治水協定が締結されたダム