軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

庭にきた蝶(3) アサギマダラ

2017-01-20 00:00:00 | 
今回はアサギマダラ。とても美しい蝶である。前翅長は50-60mm。我が家の庭のブッドレアには昨年8月と10月の2回吸蜜にきている。

8月の吸蜜の様子はすでに一度簡単な紹介をしているが、同時に撮影した他の写真と、その後10月に撮影したものを追加しての再登場になる。

この蝶は花に長い間とどまって吸蜜をするので、撮影した写真の枚数もとても多くなる。美しい蝶でもあり、ついついたくさんの写真を掲載したくなってしまうが、それらの中から選抜したものを紹介する。

幼虫の食草はガガイモ科で、年3回の発生。幼虫で越冬する。今回撮影したのは第2化成虫(7月から8月に発生)と第3化成虫(10月に発生)で、それぞれ羽化後間もない個体と思われ翅の傷みも無くとてもきれいな状態であった。

種類の同定は容易である。他に類似のもとして、外来種で近年その生育域を拡大しているといわれているアカボシゴマダラがいるが、アカボシゴマダラには後翅に赤斑列があるので容易に区別される。

雌雄の判別は、♂には後翅の肛門近くに黒斑の性標があるので、容易に行える。今回撮影したものはいずれも♀であった。比較のために、近隣の別荘地で撮影した♂の写真を最後に掲載しておいた。


庭のブッドレアの花で吸蜜するアサギマダラ♀1/10(2016.10.4 撮影)


庭のブッドレアの花で吸蜜するアサギマダラ♀2/10(2016.8.2 撮影)


庭のブッドレアの花で吸蜜するアサギマダラ♀3/10(2016.8.2 撮影)


庭のブッドレアの花で吸蜜するアサギマダラ♀4/10(2016.8.2 撮影)


庭のブッドレアの花で吸蜜するアサギマダラ♀5/10(2016.10.4 撮影)


庭のブッドレアの花で吸蜜するアサギマダラ♀6/10(2016.10.4 撮影)


庭のブッドレアの花で吸蜜するアサギマダラ♀7/10(2016.10.4 撮影)


庭のブッドレアの花で吸蜜するアサギマダラ♀8/10(2016.8.2 撮影)


庭のブッドレアの花で吸蜜するアサギマダラ♀9/10(2016.8.2 撮影)


庭のブッドレアの花で吸蜜するアサギマダラ♀10/10(2016.10.4 撮影)


飛び立つアサギマダラ♀(2016.10.4 撮影)

飛んでいる姿はこの一枚。とっさの撮影であったのとシャッタースピードが1/500のままであったことから、ピントがずれ、ややブレた写真になった。


夢中で吸蜜していたので簡単に捕えることができたアサギマダラ♀(2016.8.2 撮影)

最後に比較のために、近隣の別荘地内で撮影したアサギマダラの♂の写真を1枚。後翅・裏に性標が認められる。


別荘地のアザミの花で吸密するアサギマダラ♂(2016.10.6 撮影)

アサギマダラは他の蝶には見られない海を渡る蝶としてユニークな性質を持つ蝶である。このことが広く知られるようになったのは比較的最近の1980年代初頭のことで、愛用の原色日本蝶類図鑑(【増補版】江崎悌三校閲・横山光夫著、昭和39(1964)年 保育社発行)にはこの渡りの性質については触れられていない。

ただしかし、この本には「かつて筆者が支那海の中央を航行中、船上に舞おりたこの蝶を見たが、東京や大阪の都心でも度々見受けられて話題となっている。・・・」との記述があり、渡りをにおわせるものとなっている。

このアサギマダラの渡りについては、NHKの「ダーウィンが来た」や「クローズアップ現代」でも紹介されて、よく知られるようになった。

また、個人で10年間に14万頭余の膨大な数のマーキング(翅の一部に捕獲した地名、月日、記号、番号を油性ペンで記入すること)を施して再度放蝶することで、この蝶の渡りの研究を長年継続している栗田昌裕氏によると、人をあまり恐れないという「(「謎の蝶アサギマダラはなぜ海を渡るのか?」栗田昌裕 著、PHPエディターズ・グループ発行)。

実際、夢中で吸蜜をしているときに、手で簡単に捕えることができたのは上の写真で紹介したとおりである。

さて、アサギマダラが何故海を越えてまで1000km以上もの渡りをするのか、栗田氏は上記の本の中でその答えを推定し示している。

それは、アサギマダラの♂は、フェロモンを作るために必要としている物質(ピロリジジン・アルカロイド)を含む蜜を持った植物の開花を追うように移動するというもの。アサギマダラが海を越えてこの渡りをすることについては、南西諸島は過去には陸続きであったが、間氷期の海面上昇により海で隔てられるようになってから海を渡る蝶になったというものである。

しかし、海の向こうの目的地をどのような方法で見出しているのかなど、まだ多くの謎を秘めているようだ。

鳥類、魚類、昆虫など生物の中には長距離の渡り・移動をするものが多く知られていて、徐々にその渡りの方法が解明されている。

そして、ここに一つのヒントがあるかもしれない。それは、最近読んだ本(量子力学で生命の謎を解く、2015年 SBクリエイティブ発行)によると、北米に棲んでいるオオカバマダラ蝶は、触角の中にあるクリプトクロムという色素が持っている、量子力学で初めて理解できる働きを利用して、地磁気の伏角を”見”ていることが明らかにされたとしていることである。

北米のオオカバマダラは視覚や嗅覚、太陽コンパスに加えてこの地磁気の伏角を利用して数1000kmにおよぶ渡りをしていると考えられている。


「量子力学で生命の謎を解く」、ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・マクファデン著、水谷淳訳、
2015年9月25日 SBクリエイティブ株式会社発行 の表紙

このオオカバマダラと同類のマダラチョウであるアサギマダラの渡りの方法もこのようなものなのだろうか。いずれ解明されていくことであろうが、どのような結果が出るのかとても興味深い。


コメント
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