今回はアサマイチモンジ。前翅長は27-38mmの中型のタテハチョウ。名前にこの地方の「アサマ」の名がついた蝶は、このアサマイチモンジとアサマシジミである。
愛用の「原色日本蝶類図鑑・増補版」(保育社 昭和39年(1964年)発行)の索引には、この2種に並んでアサマモンキの名前を見ることができるが、最近の本ではどうかというと、「フィールドガイド 日本のチョウ」(誠文堂新光社 2013年発行)にはアサマモンキの名はどこにも見ることができないので、今はこの名前は使われていないようだ。
もっとも、原色日本蝶類図鑑でも、このアサマモンキはミヤマモンキチョウの地域別の名称で浅間山に産するものを指し、同種のものでも北アルプスに産するものはアルプスモンキとされている。
さて、昨年この2種の「アサマ・・・」のうち、我が家の庭のブッドレアの花を訪れたのはアサマイチモンジだけで、アサマシジミの方は見かけることがなかった。
軽井沢の蝶のことに詳しい故鳩山邦夫氏の著書「チョウを飼う日々」(講談社 1996年発行)にも、アサマシジミを信濃追分駅付近で見かけたとの記述はあるが、氏の別荘のある旧軽井沢周辺での発見記録はみあたらないので、我が家の庭にも来る可能性はなさそうである。
アサマイチモンジに話を戻す。この名前は浅間山麓で初めて発見されたことにちなんだものとされているがその生息分布域は広く本州全体に広がっている。
とてもよく似た種類にイチモンジチョウがいて、両者は長く区別されていなかったが、1936年以降になり初めて日本特産の独立種として認められたとある(原色日本蝶類図鑑)。
ところが、東信地域のチョウを紹介している「信州 浅間山麓と東信の蝶」(鳩山邦夫・小川原辰雄 著 2014年4月30日 信州昆虫資料館 初版第一刷発行 p29)には次のような記述もある。
「・・・1886年に日本で初めて出版されたチョウの図鑑である「日本蝶類図譜」(プライヤー著)にも、生息域を「浅間山」とする記述が多々見られるほか、「アサマイチモンジ」や「アサマシジミ」などアサマの名をいただいた種も見られるほどである。・・・」
これはどういうことなのだろうか、追って調べて見たいと思う。
種の同定だが、この2種は、名前どおり中央に1本の白色の帯があるので他種との区別は容易で間違えることは無い。一方、この2種間の識別は確かに難しい。
前翅表の中室内に大きく目立つ白斑のあるのがアサマイチモンジ、不明瞭なものがイチモンジチョウ。前翅の白色帯のうち中央の白斑がやや大きいのがアサマイチモンジ、小さく外側にずれるのがイチモンジチョウ、さらにこの中央の白斑とすぐ下の白斑の中心線がその下に続く3番目の白斑の外側に来るのがアサマイチモンジで内側に来るとイチモンジチョウとされる。
アサマイチモンジの食草はスイカズラ、タニウツギなどで、成虫の発生は5月下旬から9月初旬までの年3回、寒冷地では1~2回とされ、幼虫で越冬する。
昨年の夏、このアサマイチモンジが自宅庭のブッドレアに吸蜜に訪れたのは9月6日であった。下の写真のとおり翅は前後ともに痛々しいほどに傷んでいた。鳥に襲われでもして、かろうじて逃げ延びたのであろうか。残っている前翅表の紋様から何とかアサマイチモンジの特徴が確認できて、判別はできた。ただ、雌雄の判別は難しくできていない。
ブッドレアで吸蜜するアサマイチモンジ1/5(2016.9.6 撮影)
ブッドレアで吸蜜するアサマイチモンジ2/5(2016.9.6 撮影)
ブッドレアで吸蜜するアサマイチモンジ3/5(2016.9.6 撮影)
ブッドレアで吸蜜するアサマイチモンジ4/5(2016.9.6 撮影)
ブッドレアで吸蜜するアサマイチモンジ5/5(2016.9.6 撮影)
我が家には義父が蒐集した蝶標本が多数あり、日本産の蝶はほぼ揃っていて、その中にイチモンジチョウとアサマイチモンジがそれぞれ複数含まれている。庭に来た個体の翅の状態がかなりひどいので、参考までにもう少し良好な状態の標本写真を追加させていただく。
添付ラベルに記載の年号は昭和で、採集はどちらも1966年である。アサマイチモンジの採集地にユノコヤとあるのは群馬県の水上温泉郷にある湯の小屋温泉のことである。
イチモンジチョウ(左)とアサマイチモンジ(右)の標本写真(表)(2017.1.30 撮影)
イチモンジチョウ(左)とアサマイチモンジ(右)の標本写真(裏)(2017.1.30 撮影)
先の「信州 浅間山麓と東信の蝶」の目撃記録を見ると、このあたりでは5月23日から8月20日とされている。また、写真集「軽井沢の蝶」( 栗岩竜雄著 2015年8月8日 ほおずき書籍 第1刷発行)にも初見6月2日、終見10月15日とあるので、我が家に来た個体の翅が傷んでいるのも頷けた。
昨年アサマイチモンジが庭に吸蜜に訪れたのを見かけたのはこの1回だけで、それ以降見ることはなかった。庭の一角に植えたスイカズラも根付いてだいぶ成長してきているので、今年また来てくれることを願っている。
愛用の「原色日本蝶類図鑑・増補版」(保育社 昭和39年(1964年)発行)の索引には、この2種に並んでアサマモンキの名前を見ることができるが、最近の本ではどうかというと、「フィールドガイド 日本のチョウ」(誠文堂新光社 2013年発行)にはアサマモンキの名はどこにも見ることができないので、今はこの名前は使われていないようだ。
もっとも、原色日本蝶類図鑑でも、このアサマモンキはミヤマモンキチョウの地域別の名称で浅間山に産するものを指し、同種のものでも北アルプスに産するものはアルプスモンキとされている。
さて、昨年この2種の「アサマ・・・」のうち、我が家の庭のブッドレアの花を訪れたのはアサマイチモンジだけで、アサマシジミの方は見かけることがなかった。
軽井沢の蝶のことに詳しい故鳩山邦夫氏の著書「チョウを飼う日々」(講談社 1996年発行)にも、アサマシジミを信濃追分駅付近で見かけたとの記述はあるが、氏の別荘のある旧軽井沢周辺での発見記録はみあたらないので、我が家の庭にも来る可能性はなさそうである。
アサマイチモンジに話を戻す。この名前は浅間山麓で初めて発見されたことにちなんだものとされているがその生息分布域は広く本州全体に広がっている。
とてもよく似た種類にイチモンジチョウがいて、両者は長く区別されていなかったが、1936年以降になり初めて日本特産の独立種として認められたとある(原色日本蝶類図鑑)。
ところが、東信地域のチョウを紹介している「信州 浅間山麓と東信の蝶」(鳩山邦夫・小川原辰雄 著 2014年4月30日 信州昆虫資料館 初版第一刷発行 p29)には次のような記述もある。
「・・・1886年に日本で初めて出版されたチョウの図鑑である「日本蝶類図譜」(プライヤー著)にも、生息域を「浅間山」とする記述が多々見られるほか、「アサマイチモンジ」や「アサマシジミ」などアサマの名をいただいた種も見られるほどである。・・・」
これはどういうことなのだろうか、追って調べて見たいと思う。
種の同定だが、この2種は、名前どおり中央に1本の白色の帯があるので他種との区別は容易で間違えることは無い。一方、この2種間の識別は確かに難しい。
前翅表の中室内に大きく目立つ白斑のあるのがアサマイチモンジ、不明瞭なものがイチモンジチョウ。前翅の白色帯のうち中央の白斑がやや大きいのがアサマイチモンジ、小さく外側にずれるのがイチモンジチョウ、さらにこの中央の白斑とすぐ下の白斑の中心線がその下に続く3番目の白斑の外側に来るのがアサマイチモンジで内側に来るとイチモンジチョウとされる。
アサマイチモンジの食草はスイカズラ、タニウツギなどで、成虫の発生は5月下旬から9月初旬までの年3回、寒冷地では1~2回とされ、幼虫で越冬する。
昨年の夏、このアサマイチモンジが自宅庭のブッドレアに吸蜜に訪れたのは9月6日であった。下の写真のとおり翅は前後ともに痛々しいほどに傷んでいた。鳥に襲われでもして、かろうじて逃げ延びたのであろうか。残っている前翅表の紋様から何とかアサマイチモンジの特徴が確認できて、判別はできた。ただ、雌雄の判別は難しくできていない。
ブッドレアで吸蜜するアサマイチモンジ1/5(2016.9.6 撮影)
ブッドレアで吸蜜するアサマイチモンジ2/5(2016.9.6 撮影)
ブッドレアで吸蜜するアサマイチモンジ3/5(2016.9.6 撮影)
ブッドレアで吸蜜するアサマイチモンジ4/5(2016.9.6 撮影)
ブッドレアで吸蜜するアサマイチモンジ5/5(2016.9.6 撮影)
我が家には義父が蒐集した蝶標本が多数あり、日本産の蝶はほぼ揃っていて、その中にイチモンジチョウとアサマイチモンジがそれぞれ複数含まれている。庭に来た個体の翅の状態がかなりひどいので、参考までにもう少し良好な状態の標本写真を追加させていただく。
添付ラベルに記載の年号は昭和で、採集はどちらも1966年である。アサマイチモンジの採集地にユノコヤとあるのは群馬県の水上温泉郷にある湯の小屋温泉のことである。
イチモンジチョウ(左)とアサマイチモンジ(右)の標本写真(表)(2017.1.30 撮影)
イチモンジチョウ(左)とアサマイチモンジ(右)の標本写真(裏)(2017.1.30 撮影)
先の「信州 浅間山麓と東信の蝶」の目撃記録を見ると、このあたりでは5月23日から8月20日とされている。また、写真集「軽井沢の蝶」( 栗岩竜雄著 2015年8月8日 ほおずき書籍 第1刷発行)にも初見6月2日、終見10月15日とあるので、我が家に来た個体の翅が傷んでいるのも頷けた。
昨年アサマイチモンジが庭に吸蜜に訪れたのを見かけたのはこの1回だけで、それ以降見ることはなかった。庭の一角に植えたスイカズラも根付いてだいぶ成長してきているので、今年また来てくれることを願っている。