軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

庭にきた鳥(1)アカハラ

2019-04-12 00:00:00 | 野鳥
 軽井沢に住みはじめて4年が経過したが、移住早々から、野鳥の餌台を庭に置いてここに集まる小鳥たちを観察・撮影してきた。この餌台は2015年に転居のご挨拶に行ったことがきっかけで、ご近所のMさんから頂いたもので、元大工であったというだけに寄棟の屋根がついた立派なものである。
 最初のうちは家の南側にあるウッドデッキの脇に設置していたが、時々カラスが来て、シジュウカラ用にと置いていた牛脂を容器ごと持ち去ったりといったいたずらをするので、居間の東側の窓のすぐ外に移動させた。窓ガラスが1枚あるだけだが、ここに設置した餌台には小鳥たちは怖がることなくやってきて餌を食べているのに、カラスは来なくなった。

 ここによく集まる野鳥の代表格はシジュウカラだが、数からいえばやはりスズメが多い。大食漢のキジバトもよくやってくる。2015年にビデオ撮影をして、ここに来る野鳥の種類を調べたことがあって、数えてみると24種類くらいになった。シジュウカラ、ヤマガラ、コガラ、ヒガラ、などの今もよくやってくるカラの仲間のほか、アトリ、シメなどそれまで見たこともなかった野鳥の姿を間近に見ることができるようになった。

 今回、こうした多くの野鳥の中から、「庭にきた鳥」として最初に取り上げようと思ったのが、「アカハラ」であるが、その理由は「あいうえお」順にということではなく、アカハラは軽井沢町の野鳥に指定されているからである。
 このアカハラ、鎌倉に住んでいた時に一度だけ窓の外の、鎌倉特有の崖地に来て、落ち葉の間をガサゴソと動き廻っているのを見たことがある。その時は名前を知らなかったので、図鑑で調べてみて判ったのであったが、軽井沢に来て、アカハラが町の鳥であることを知り、すぐにでもまた出会えるのではと思っていたのに、なかなかその機会はこなかった。上記の24種類の中にも入っていなかった。

 そのアカハラが今年になって突然毎日のように餌台にやってくるようになった。きっかけは、庭にもう一つの小さな餌箱を設置したことであった。この餌箱も、やはりご近所のIさんからいただいたものだが、500ccの牛乳パックのような箱形状をしたもので、上の扉を開けて中に餌を入れることができて、下には隙間が開いている。小鳥たちが餌を食べると箱の中から受け皿の部分に自然に餌粒が流れ出すようになっている便利なものである。

 餌箱そのものをIさんから頂いたのは半年ほど前のことであったが、しばらく設置しないでしまってあった。それを取り付けようと思いたったのは妻の勧めもあったが、3月に一週間ほど旅行で留守にする計画を立てていたので、その間小鳥たちにひもじい思いをさせるのもかわいそうと思ったことが主な理由であった。この餌箱いっぱいに餌を入れて置けば、一週間程度は大丈夫と思えた。

 2月下旬にこの餌箱をカツラの木の幹に取り付けたところ、しばらくして見慣れない鳥が受け皿部分に止まっているのが2階の窓から見えた。背中の色がモスグリーンで、これまで見かけたことのない種で、直感的に「アカハラ」ではないかと思った。

 窓の外の餌台に向けてビデオカメラを設置してしばらく撮影をしていると、同じ鳥が餌台の方にもやってきた。アカハラであった。この時の様子は次のビデオのようである。餌を食べている途中、スズメがやってきたが、これに動じることなくけんかもしないで5分ほど餌をついばんで去って行った。このあと15分ほどして再びアカハラが餌台に来たが、この時も3分ほど餌を食べて飛び去った。これ以降、この餌台のことを覚えたのか、日課のようにアカハラが来るようになった。


庭の餌台に来たアカハラ1/2(2019.2.23 10:42-47 撮影動画を編集)

 アカハラが軽井沢町の「町の鳥」に制定されたのは2003年(平成15)、町制施行80周年を記念してのことで、このとき同時に「町の獣」として「ニホンリス」も決められた。このことは、軽井沢町や軽井沢観光協会が発行している資料に記載されているし、町営の各種施設にも写真が掲示されていて、目にする機会が多い。


2018町勢要覧表紙


「町勢要覧」に記載のアカハラの写真


2018軽井沢・美しい村表紙


「軽井沢・美しい村」に記載のアカハラの写真

 アカハラが「町の鳥」に決まった理由や経緯はどのようなものだろうか。町の公式HPには特にこの点についての記載はないので、資料をあたっていたところ、書籍「軽井沢のホントの自然」(2012年 ほおずき書籍発行)に次のような記述があった。アカハラは町民にとって一番馴染みある鳥であったようだ。

 「森の町のシンボル
  アカハラが「町の鳥」に指定されたのは2002年(*)のことでした。選定委員だった町議会議員の方々の間でもアカハラという鳥の知名度は案外高く、驚きました。明け方にあちこちのモミやカラマツの梢、屋根のテレビアンテナでもさえずる『キョロン、キョロン、チリリ』という3拍子に、皆さん馴染みが深かったようです。さすが高原の町です。」
 (*筆者注:議会で決まった年のことと思われる)


アカハラの写真が使われている「軽井沢ホントの自然」の表紙

 軽井沢に近い周辺の「市町村の鳥」というものが指定されているかどうかと思い調べると、群馬県側の高崎市と下仁田町は「ウグイス」、安中市は「オシドリ」、長野原町は「ヤマドリ」が指定されていたが、長野県側の佐久市、御代田町では見当たらなかった。

 さて、アカハラについてもう少し詳しく見ると、次のようである。
 「種名:アカハラ(赤腹)、学名:Turdus chrysolaus、英名:Brown Thrush(茶色のツグミ)。
 全長24cm、翼開長37cm、下面の橙色がよく目立つ種で、雌雄ともに頭から上面が緑灰褐色で、胸と脇が橙色。目の周囲は黄色。『野鳥観察図鑑』(2002年 成美堂出版発行 )」
 
 生態については、
 「我国で繁殖するツグミ類中最も普通の種類である。北海道では平地、山地の森林中で、また本州では中部以北の低山帯から亜高山帯下部にかけて多数繁殖しているが西日本からは繁殖の確証はない。冬季は関東地方にも少数見られるが多くは西南日本の温暖地に漂行しまた一部は琉球・台湾・中国南部・フィリピンなどに渡る。繁殖期にはキョロン、キョロン、ジーと美声でなく。『原色日本鳥類図鑑』(1973年 保育社発行)」

 とあり、軽井沢でも普通に見られるなき声の美しい野鳥とされているので、町の鳥を決める時に賛同を得られやすかったことが想像される。私が鎌倉で見かけたのは冬季に温暖な場所に移動していた個体であったと思われる。軽井沢など寒冷地では春から秋にかけて多く見られるようになるので、これからも餌台にやってくる個体数も増えるのではと期待される。

 繁殖に関しては、「巣は、木の枝の叉のようなところで、上から葉がかぶさって見えにくいようなところに、枯れ草などで作ります。地上から1.5~2メートルぐらいの高さが多いですが、10メートル近いときもあります。巣作りは数日かかりますが、メスだけが早朝にひっそり行うので、気づいたときにはもう庭の生け垣の中で卵を抱いているなどということもあります。

 卵は薄青色に赤褐色のまだら模様で、毎朝一個づつ、合計4個産みます。2週間ほどメスが温め、ヒナがかえると雌雄で協力して育てます。ヒナのえさは圧倒的にミミズです。ヒナは2週間ほどで巣立ちますが、さらに1~2週間ほどは親鳥の世話を受けます。

 図鑑などを見ると、アカハラの繁殖は1繁殖シーズンに1回ということになっていますが、それは十分に調べられていないだけだと思います。2度目、3度目の繁殖をすることもあるでしょう。
 アカハラは朝夕よくさえずる鳥ということになっていますが、6月、7月、8月と夏に向かうにつれ、日中もよくさえずります。『軽井沢のホントの自然』(前出)」とあって、地元で出版された本ならではの記述がみられる。

 カラ類が以前よりも活発に餌台に集まってくるようになった今週、久しぶりにビデオ撮影をして、アカハラの様子を調べてみた。今回も、シジュウカラ、ホオジロ、カワラヒワに混じって元気な姿が映っていた。いつものように画面左側から餌台に飛び上がってきて、しばらく餌をつついていたが、その後割り込んできたキジバトの夫婦に驚いて飛び去って行った。それから10分ほどして再び餌台に来たが、この時は後からきたカワラヒワと一緒に餌を食べ、約2分間ほどいて、飛び去って行った。

 この間、窓の内側のカメラが気になるのか時々覗き込むようなしぐさを見せたが、すでに何度も来ていて慣れたのか恐れる様子は見られなかった。


庭の餌台に来たアカハラ2/2(2019.4.7 9:56-10:09 撮影動画を編集)

 アカハラは1990年代から、どうも減っているようだとの声を受けて、『軽井沢のホントの自然』の著者石塚 徹氏が調査した結果がこの本に記されている。それによると、生息域が移動して、減少している場所がある一方で、増加している場所もあって、とくに減っていないということであった(2007年の調査)。開発により自然破壊が懸念されている軽井沢であるが、町の鳥アカハラはたくましく生きているようで、ほっとする話である。


コメント (2)
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