キアゲハの幼虫は孵化の後、4回の脱皮を繰り返して5齢で終齢になる。この後蛹へと変身するが、その前の状態を前蛹と呼ぶ。
ミツバの葉をたっぷりと食べて体長で40mmほどに成長した終齢幼虫は、蛹化の直前になると、それまでの粒状の糞とは異なる液状の便を出す。体内に残っている残渣をすべて排出するといった感じである。
この後、幼虫はミツバを離れて這い回るようになる。実際にはプラスチック製の飼育ケー内にミツバを水差しした容器を入れているので、ケース内をあちらこちらと動き回るのだが、うっかりしているとケースの壁面やフタの裏側で蛹になってしまう。
これを避けて、前蛹になる様子や、更に脱皮して蛹になる様子を撮影するために、終齢幼虫がミツバを離れて徘徊を始めると、ミツバの茎・葉を容器から抜き取り、その後にワリバシを差し込んで、前蛹そして蛹になる場所を用意した。
半日から1日程度容器の中を動き回った後、壁面などで静止した幼虫を無理やりこのワリバシに止まらせて、容器ごとビニール袋で覆ってしまうと、幼虫はワリバシを上下してみたり、場合によっては容器から離れて、ビニール袋内をさまようことになるが、頃合いを見計らって再びワリバシに移動させると、諦めてここで前蛹になる(ことが多い)。
この段階で、撮影のためにビニール袋を取り除いて、ビデオカメラをセットすることになる。割りばしに止まった終齢幼虫は、割りばしに糸を吐いて、前蛹になるための準備を念入りに始める。その後、蛹になった時に体の上部を支えるための糸を何重にもかける動作をする。10往復程糸かけの動作を終えたところで、器用に上半身を糸にくぐらせる。
キアゲハ終齢幼虫の糸かけ (2020.8.1, 22:40-22:43 撮影)
前蛹になった5齢幼虫は2日ほどその状態にとどまる。初めのうちは腹足や前あしで割りばしにつかまっているが、そのうち尻の先と、帯糸で体を支えるようになり、次第に体は細く「勾玉」のような形になり、蛹化が近くなると体の色は白っぽくなる。
次の動画はこうした約30時間の変化を追ったものであり、300倍のタイムラプスで撮影している。
その前に、ざっとこの間の変化を動画からのキャプチャー画像で見ておくと次のようである。

キアゲハの前蛹から蛹化の様子(2020.8.1, 23:40 - 8.3, 4:40 キャプチャー画像)
キアゲハの蛹化 1/3(2020.8.1, 23:39-8.3, 4:21 300倍タイムラプス撮影後編集)
次の動画は、ワリバシに移す間もなく、ミツバの茎で前蛹になっているところを見つけ、そのまま蛹化していった個体を撮影した時のもので、30倍のタイムラプスで撮影している。そのため前掲の300倍のタイムラプス撮影動画に比べると、脱皮の様子がより分かりやすいと思う。
キアゲハの蛹化 2/3(2020.7.29, 00:20 - 6:18 30倍タイムラプス撮影後編集)
この蛹化の様子を背中側から撮影したのが次の動画である。蛹の後頭部に現われる突起が起点になって、前蛹の皮が破れていく様子がわかる。
キアゲハの蛹化 3/3(2020.7.29, 18:21 - 20:21 30倍タイムラプス撮影後編集)
続く