軽井沢からの通信ときどき3D

移住して11年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

巨樹

2020-10-02 00:00:00 | 
 私が購読している新聞の文化欄には、毎週日曜日に書評が掲載されるが、9月13日の”本 よみうり堂”には「九州・沖縄の巨樹(写真集)」(榊晃弘著)が紹介されていて、「福岡市在住の80代半ばの写真家は、100本の名木を訪ね歩き、仰ぎ拝むように撮っている。・・・」と評されている。

 温暖な九州・沖縄は巨樹、中でも常緑高木、クスの宝庫だという。写真集にはこのほかスダジイ、スギ、イチョウ、ケヤキ、ヒガンザクラ、イチイ・・・などが紹介されている。

 今回の著者・榊氏に限らず、巨樹・巨木に魅せられる人は多いようで、全国を巡ってのスケッチ集や写真集などもこれまでにいくつも出版されている。

 私の手元にある「新 日本名木100選」(読売新聞社編 1990年発行)には北海道から沖縄までの各県の名木が選ばれているが、その大半は樹齢500年以上で、巨樹の仲間とも言えるだろう。

 この本に採り上げられた100本の名木の選定過程が「まえがき」に紹介されていて、それによると、まず新聞読者を対象に、日本各地で親しまれている木や由緒ある木の投票・推薦をしてもらったところ、全国から1万6188件の応募があったという。
 その中から、各都道府県ごとに10本の木を選び、合計470本の中から100本を選出したとされる。選出に際しては、各都道府県から(少なくとも)1本ずつ選ぶということで全委員の意見が一致したという。

 こうして選ばれた全国各地の100本の名木の他に、「選に落ちた木がもったいない」という声が多くあったので、更に「親しまれている木の部」、「イチョウ」、「マツ」、「サクラ」、「スギ」の5部門を設けて、それぞれ各10本計50本を追加して発表している。

 名木として選ばれた100本の樹齢分布をみると次図のようであり、樹齢500年を超える木が74%である。尚、樹齢100年以下と3001年以上にそれぞれ1本ずつが選ばれているが、3001年以上の1本は、ご存じの屋久島の縄文杉で樹齢は7200年である(出版当時、現在では諸説あるが3000年以上とされている)。

                樹齢(年)
「日本名木100選」に取り上げられている樹の樹齢分布(作成筆者)

 手元にあるもう一冊の本、「巨樹に会いにゆく」(2005年 学習研究社発行)には文字通り国内の巨樹が紹介されているが、採り上げられている59本のうち、前出の「日本の名木100選」と重複するものは10本と意外に少なく、対象を広げて各県ごとに10本づつ選ばれた計470本を見比べても、7本増えて合計17本であった。名木と巨樹では選定の基準も異なっているのであろうが、日本には巨樹・巨木とされるものが実にたくさん存在していることの証ともいえるようである。

 環境省では昭和63年(1988年)から巨樹・巨木林調査を実施しているが、それによると、初回に全国から55,798本の巨樹が報告されている。

 最近の環境省のHPには、全国最大級の巨木上位10位と、全国の樹種別巨木総数が、次の表のように纏められている。大きさの点ではクスノキが目立つ結果であるが、分布がどうしても温暖な地域に偏るので、全国的にみると数の多さではスギの数が断然多くなっている。

全国の巨木上位10位(環境省HPを参考に作成)

全国の樹種別巨木総数(環境省HPを参考に作成)

 樹齢では最長の屋久島の縄文杉であるが、意外にも幹周は1610cmであり、20位程度になるので、ここには登場しない。

 ちなみに、樹齢およそ3000年と縄文杉に並ぶ長寿の巨樹が3本知られているが、それらは次のとおりである。

*黄金水松(イチイ)樹齢3000年、幹周620cm 北海道芦別市
*杉の大杉(スギ)樹齢3000年、幹周1500cm(2本計2560cm) 高知県長岡郡
*川古のクス(クスノキ)樹齢3000年、幹周2100cm 佐賀県武雄市 

 私自身はというと、若いころから大きな樹木には多少の関心はあったものの、就職して長く神奈川県に住んでいた間は、特に名木・巨木に関心を持つこともなかったと思う。しかしその後、広島県三次市に転勤が決まった時に、どういう加減か先に紹介した本「日本名木100選」を買っている。

 三次に住むようになってから、月に1‐2度の週末は神奈川の自宅に戻っていたが、それ以外の休日には中国地方5県をドライブして過ごした。そのコースに、時には意識して「日本名木100選」に紹介されている名木を取り入れ、現地では写真撮影もしていた。

 今、その頃のアルバムを見かえしていると、少しづつ当時見た名木のことが思い出される。

 本などに紹介されている名木は山野および寺社にあることが多いが、中には個人の住居の庭に植えられているものもあって、ことわって見せていただいたこともあった。御調郡久井町吉田の「吉田のギンモクセイ」と「オガタマノキ」を見に出かけた時には、撮影を終えてお礼を言おうと住まいの方に行って声をかけると、「ご苦労様」といってコーヒーをごちそうになったこともあった。

 きちんと整理していなかったので、撮影時期の情報は正確ではないが、いずれも1993年から94年にかけての撮影である。アルバムから探し出したプリントには次のようなものがあった。結構あちらこちらに出かけていた。一覧表と共にご覧いただく。


撮影した巨樹・名木リスト


現地の説明板(1993-94年 撮影) 

下蚊屋(さがりかや)のミョウジンサクラ(鳥取県 幹周590cm/樹齢300年)

極楽寺のシダレザクラ(鳥取県 幹周260cm/樹齢170年)

伯耆の大シイ(鳥取県 幹周1140cm/樹齢1000年)

醍醐サクラ(岡山県 幹周920cm/樹齢700年)

菩提寺のイチョウ(岡山県 幹周1100cm/樹齢800年)

正伝寺のクロガネモチ(広島県 幹周340cm/樹齢350年)

唯称庵のカエデ林(広島県 幹周330cm/樹齢200年)

熊野神社のシラカシ(広島県 幹周480cm/樹齢400年)

小奴可の要害サクラ(広島県 幹周570cm/樹齢260年)

灰塚のナラガシワ(広島県 幹周351cm/樹齢300年)

吉田のギンモクセイ(広島県 幹周319cm/樹齢400年)

莇原(あぞうばら)のオガタマノキ(広島県 幹周200cm/樹齢300年)

大願寺の九本マツ(広島県 幹周360cm/樹齢120年)

熊野の大トチ(広島県 幹周1114cm/樹齢300年)


熊野神社の巨スギ群(広島県 幹周400cm/樹齢1000年)

徳佐八幡宮シダレザクラ(山口県 幹周データなし/樹齢195年) 

 今回30年近く前に撮影した中国地方の名木・巨木のことを改めてみることになったが、さてではこれから再び巨樹を求めて撮影に行ったものかどうか。

 日本には多くの魅力的な樹木がある。樹種別にみると次のようなデータもあり、長野県の樹も4本入っている。





樹種別の巨樹ランキング上位3位(環境省HPを参考に作成)

 冒頭紹介した写真家・榊晃弘氏が80代半ばであることを考えれば、私にはまだ時間はある気がするが。。。




 

 

  

 


 



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