軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

ヒメギフチョウ2023

2023-04-14 00:00:00 | 
 恒例の春のフキノトウ収穫の時期になったと妻の友人のMさんからお誘いがあり、群馬の畑に出かけたがフキノトウはすでに伸びきっていた。食べごろのものを探して少しだけ収穫して持ち帰り、今年はフキミソは諦め、てんぷらだけを味わった。

 この畑の近くの農家の庭先には、枝垂れ桜の立派な樹があり、また少し離れてはいるがカタクリの里もあるので、昨年は行き帰りの途中に立ち寄り花を楽しんだのであったが、今年はどちらもすでに盛りを過ぎていて、昨年同様の美しいサクラやカタクリの花を見ることができなかった。今年は昨年よりも春の到来が10日ほど早いと感じられた。

 そういえば、昨年訪れた東御地区のヒメギフチョウは今年はどうだろうか、すでに羽化しているのではないだろうかと気になって、早めに出かけることにした。昨年は4月13日、17日、20日に出かけ、カタクリの花やオオタチツボスミレの花で吸蜜するヒメギフチョウを撮影できたし、その後もウスバサイシンに産卵する様子を観察・撮影したのであった。

 今回、現地駐車場所に行ってみると、すでに先客の車が3台止まっていて、その内の1台からちょうど3人が降りてくるところであった。男性は大型レンズを装着したカメラをもち、迷彩色の服を着ており、同行の女性とその母親らしき2名は、「しばらく周辺を散歩しましょう」と言って歩き始めた。

 カタクリの花はそろそろ見ごろになっていたが、昨年に比べると株数が少ないように感じられた。先に来ていた2名の男性は、思い思いの場所に腰かけて、じっとヒメギフチョウが飛来するのを待っているようであった。私より少し先を歩いて行った迷彩服の男性は周辺の林の中を、足元を探るようにして歩き回っていた。

 カメラを抱え腰かけている男性の一人に声をかけると、「今日はまだヒメギフチョウはまったく飛んでこない・・・」との返事が返ってきた。

 もう一人に聞いても、「すでにヒメギフチョウは発生していて、下の方で見ることはできるが、このカタクリの花にはやってこないんです。今年は数が少ないようです・・・」という。

 二人ともカタクリの花で吸蜜するヒメギフチョウの姿を撮影することが主目的で、シャッターチャンスが来るのを辛抱強く待つ構えと思えた。

 そこまでのこだわりのない妻と私はこの場所でのチョウの撮影はあきらめて、咲いているカタクリの花と、葉が開き始めたウスバサイシンの株や周辺に沢山咲いているオオタチツボスミレの写真を撮りながら、駐車場所の方に戻ることにした。


カタクリの花(2023.4.5 撮影)


葉が伸び始めたウスバサイシン(2023.4.5 撮影)


満開のオオタチツボスミレ(2023.4.5 撮影)

 私たちも、駐車場所からカタクリの咲いているところまで来る途中で、足元を飛ぶヒメギフチョウの姿を見ていたので、そこまで戻ってとりあえず今日の証拠写真を撮影しておこう思ったのであった。

 カタクリの花のある場所と違って、山道には枯れ葉や枯れ草が積もっていて、周辺を飛び回っていたヒメギフチョウが舞い降りて道の上に止まったのを見定めて近寄っていくが、保護色でなかなか見つけることができない。

 気が付くとすぐ足元に止まっていた。

山道の落ち葉の上に止まるヒメギフチョウ(2023.4.5 撮影)

 さらに道を下っていくと別の個体が現れ、しばらくあたりを飛び回っていたが、やがてオオイヌノフグリの花に止まり吸蜜を始めた。よく見ると、この個体の右側後翅には異常が見られた。赤色や橙色の文様が左側に比べ不鮮明で、尾状突起も欠損している。しかし飛翔には影響がないようで、この後飛び立って別の花の方に移動していった。
 
オオイヌノフグリで吸蜜中のヒメギフチョウ(2023.4.5 撮影)

 ヒラヒラと飛んで行った先にまだ花が咲き残っている梅の木があり、そこにとまって吸蜜を始めた。この時、カタクリの咲いている場所でじっとヒメギフチョウが来るのを待っていた男性の一人も加わり、妻と3人で撮影会になった。

 翅表から見ても、やはりこの個体の右側後翅には異常が見られる。

咲き残るウメの花で吸蜜するヒメギフチョウ(2023.4.5 撮影)

 童謡の歌詞のように、梅の花に飽きたチョウは続いて、梅の木の根元に植えられているラッパスイセンの花に止まった。 

ラッパスイセンの花に止まるヒメギフチョウ(2023.4.5 撮影)

 この日はこうして、カタクリの花ではなかったが3種の花に止まるヒメギフチョウの姿を撮影することができ、この場を後にした。

 ここで、昨年同じ場所で撮影したヒメギフチョウの卵と孵化後の幼虫の様子を紹介しておこうと思う。昨年の当ブログ「山野で見た蝶(12)ヒメギフチョウ」(2022.4.22 公開)では産卵するところまでの紹介であったが、その後も現地に通って、産卵後の卵と孵化後の幼虫の姿も撮影してあった。以下では3か所のウスバサイシンの株(A、B、C)について追った写真を紹介する。

 次の写真は、株Aで2022年4月17日~5月10日までの変化を追ったものである。同じ葉の2か所に9個と7個の卵が産み付けられていたが、先に9個の卵から9匹が孵化し、卵の殻のすぐそばで葉に小さな穴をあけて食べ始めていた。翌日には続いて7個の卵から4匹が孵化した。1週間後に行った時には、この4匹は先に孵化していた9匹の幼虫に合流するようにして集団を形成していたが数は11匹に減り、さらに6日後には9匹に減り、集団で隣の葉に移動していた。
 
ウスバサイシンの葉裏に産み付けられたヒメギフチョウの9個と7個の卵からの孵化(2022.4.17~5.10 撮影)

 次は、先のブログ(2022.4.22 公開)で産卵シーンを紹介した株Bの18個の卵のその後の様子を追ったものである。産卵後約2週間で卵の中に黒いものが見られ、孵化が近いと思われた、1週間後に行った時にはすでに16匹が孵化して卵の周辺におおきな食痕を作っていた。さらに1週間後には幼虫はの数は15匹になっていた。

ウスバサイシンの葉裏に産み付けられたヒメギフチョウの18個の卵からの孵化(2022.4.20~5.18 撮影)

 次はウスバサイシンの株Cに産み付けられた14個の卵について。最初に写真を撮影した4月17日時点で、卵の間隔が広くなっていて、すでに産卵後時間が経っていることがわかる。


ウスバサイシンに産卵後やや日数の経ったヒメギフチョウの卵(2022.4.17 撮影)

 1週間後の4月26日には12個の卵の中に黒い斑点が見られるようになり、翌日27日には12匹の幼虫が孵化し、卵のあった場所近くに丸い食べ痕ができていた。

孵化前日のヒメギフチョウの卵(2022.4.26 撮影)

孵化直後の1齢幼虫(2022.4.27 撮影)

 さらに1週間後に訪れたときには、食痕の穴は3倍以上に広がっていたが、幼虫の姿は消えていた。周辺の葉も調べてみたが幼虫を見つけることはできなかった。4月27日の段階で孵化していなかった2個の卵はそのままで幼虫が出てきた様子はなく、表面にくぼみが認められた。

 この幼虫たちはどこへ行ってしまったのか。天敵に食べられてしまったのか、それとも・・・。

孵化後1週間、幼虫の姿が消えてしまった(2022.5.4 撮影)

 昨年の撮影経過は上記の通りだが、観察・撮影は5月中・下旬で中止した。現地が草深くなり、近寄りにくくまたマムシの生息域でもあるので、用心のためでもあった。

 今回紹介した3株のウスバサイシンの葉裏に産み付けられた合計48個の卵からは41匹の幼虫が孵化した。孵化率は85%強である。1週間おきの現地での観察・撮影なので詳細はわからなかったが、孵化後2週間以内に幼虫は脱皮し2齢になっていた。2齢幼虫の中には以下の写真に見るように臭角を見せるものもいた。この頃までの生存率は50%ということになる。

 昨年はこのように途中までになったが、今後今シーズンはもう少し詳しい観察・撮影を、できれば3Dビデオにより行ってみたいと考えている。


周囲に脱皮した殻が残っているので2齢になったと思われる(別のウスバサイシン株Dで 2022.5.10 撮影)

ウスバサイシン株Aの2齢と思われる9匹の幼虫(2022.5.10 撮影)


 

 


 
 





 

 
 

 


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする