軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

庭にきた鳥(3)シジュウカラ

2019-07-12 00:00:00 | 野鳥
 今回はシジュウカラ。リビングの窓のすぐ外側に、野鳥用の餌台を置いていて、普段はレースのカーテン越しに眺めるようにしているので、野鳥からは室内の様子が見えず、安心して餌を食べている。

 レースのカーテンを閉めなくても、室内外の明るさの差により、外からは室内がほとんど見えないので、窓から少し離れていると、鳥たちは安心するのか、室内にカメラやビデオカメラを置いて撮影しても気にしていないようである。
 
 牛脂を撒き餌と共に置いたこともあって、この餌台に真っ先にやってきたのは、シジュウカラであった。数ではスズメに及ばないが、この地方でもっとも普通に見られる種でもある。窓の外、すぐそばまでやってくるが、やはり人の気配を感じると、飛び去ってしまう。なかなか、手から餌を摂るという風にはいかないようである。

 餌台に来たときの様子は次のようである。シジュウカラのほかにもやや小型のヒガラ、コガラも警戒しながら、牛脂を突つきにやってきていた。


餌台に集まるシジュウカラたち(2016.2.28 10:08~11:34 に撮影したものを編集)

 シジュウカラ、ヒガラ、コガラの違いは次の写真で確認していただければよく判るが、シジュウカラは胸にネクタイのような黒帯が縦に通っているが、ヒガラにはこれがない。コガラは頭以外の背や腹が白から灰色で、くちばしの下の黒い範囲がごく狭い。


雪の日の朝、餌台の傍の木に止まるシジュウカラ1/2(2016.3.10 撮影)


雪の日の朝、餌台の傍の木に止まるシジュウカラ2/2(2016.3.10 撮影)


雪の日の朝、餌台の傍の木に止まるヒガラ1/2(2016.3.10 撮影)


雪の日の朝、餌台の傍の木に止まるヒガラ2/2(2016.3.10 撮影)


雪の日の朝、餌台の傍の木に止まるコガラ1/2(2016.3.10 撮影)


雪の日の朝、餌台の傍の木に止まるコガラ2/2(2016.3.10 撮影)

 餌台を設けるよりも前から、庭の大きなモミジの木に、シジュウカラ用に巣箱を取り付けていた。家を建築する時に、足場が組まれていたので、まだ工事中のある日、2階部分の足場に登らせてもらって、手を伸ばせば届くモミジの太目の枝にこの巣箱を取り付けたのであった。

 しかし、実際に我々が家に住むようになり、後になってよく考えてみると、巣箱は毎年中を手入れをしてやる必要があるのだが、工事用の足場がなくなってみると、もう簡単には手が届かないところになってしまった。

 2シーズンが過ぎた冬に、この巣箱を取り下ろしてみると、私たちは気がつかなかったが、中には子育てをした痕跡が残っていた。

 今度は、餌台のすぐ前のモミジの木の幹にこの巣箱を移して取り付け、観察しやすいようにした。ここは、居間からも見ることができ、撮影も可能な場所であった。

 しかし、3年目のこの年はどうも警戒されたようで、シジュウカラは中には入ってくれなかったので、枝などの関係が気に入らないのかと思い、4年目は場所を少しだけ移動してみた。

 巣箱へのシジュウカラの出入りは、一瞬の隙を突いているようで、なかなか目撃できないのと、この年からガラスショップの仕事を始め、自宅でゆっくり観察する時間もとれなくなったので、留守中はビデオ撮影をすることにし、カメラをセットして出かけた。

 帰宅後、ビデオを再生してみると、シジュウカラが巣箱に出入りしている様子が映っていた。その様子は次のようであった。ここでは出入りの部分だけをつなぎ合わせている。


シジュウカラの子育て2018(2018.5.27 9:48~10:52 撮影ビデオを編集)

 この時は、出入りの様子を撮影しただけに終わり、詳しい観察は行わなかった。その後も1週間ほど撮影を続けたが、しばらくして急に親鳥の姿が見えなくなったので、途中で営巣を放棄したのかもしれないと思っていた。

 この巣箱は今年になって中を清掃し、再び同じ場所に取り付けておいた。

 そして、今年の春、庭の別の場所にある、もう一本のモミジの木にも別の巣箱を取り付けた。こちらは、近くのホームセンターで購入した、セキセイインコ用の巣箱である。入り口の穴の大きさが、シジュウカラにはやや大きいのでどうかと思ってはいたが、シジュウカラは早速この巣箱の下見に来ているようであった。

 ある日、この新しい巣箱の周りにコムクドリの夫婦がやってきて、しきりに中を覗き込んでいるのが見られた。「軽井沢本当の自然」(石橋 徹著 2012年ほおずき書籍発行)にはこのコムクドリのことが書かれていて、「ご近所のコムクドリを庭に招こう」と呼びかけている。それによると、コムクドリ用の巣箱の出入り口の穴の大きさは、シジュウカラ用よりもやや大きめの4cm径程度が適当で、市販のセキセイインコ用の巣箱でも、中がやや狭いが入ると書かれていた。今回は撮影できなかったが、以前、南軽井沢で見かけたコムクドリを紹介する。


南軽井沢で見かけたコムクドリ(2013.4.28 撮影)

 そんなこともあり、この新しい巣箱には、思いがけずコムクドリが入るのではと、期待が膨らんだ。コムクドリ夫婦はその後も何度か下見を繰り返してようであったが、結果はシジュウカラの勝ちに終わったようであった。

 しばらくして、シジュウカラがこの新しい巣箱の周囲に頻繁にやってくるようになった。この巣を取り付けたモミジの木は、ウッドデッキのすぐそばに生えているが、ウッドデッキは私の作業場でもある。今年もまたここでウスタビガの飼育をしていて、幼虫の食葉のコナラの葉を取り替えたり、糞の掃除をしたりしていると、頭上で「ヂ・ヂ・ヂ・ヂ」というシジュウカラの鳴き声が聞こえる。ウスタビガの幼虫は、ちょうど食べごろ(?)の大きさに成長しているので、シジュウカラがそれを欲しがって鳴いているのかも知れないと妻と話し合った。

 シジュウカラの鳴き声に関しては、2年ほど前に研究の結果が新聞でも報じられていたことを思い出した。

 調べ直してみると、それは2016年5月10日付けのもので、次のようなものである。

 「総合研究大学院大学の鈴木研究員は、市街地で見かける身近な小鳥であるシジュウカラが、複数の『単語』を組み合わせた『文』を作り、情報を伝達する能力を持っていることを発見した。このような能力は、知能が高いとされているチンパンジーなどでも確認されておらず、ヒト以外の動物で確認されたのは初めて。 鈴木氏は『人間の言語能力獲得のプロセスを解明する手掛かりになるかもしれない』と話している。論文は3月9日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。」

 シジュウカラの鳴き声を聞いていると、「ピーツピー」という鳴き声と「ヂヂヂヂ」という異なる鳴き声がある。この「ピーツピ」の方は警戒する声で、「ヂヂヂヂ」の方は集合を呼びかけるのだという。「ピーツピ」という警戒する声の後に「ヂヂヂヂ」という集合を呼びかける声を続けると、周囲を警戒しながら集まるが、それが逆だとそのような行動はとらないため、独自の文法があるというのが分かっているという。

 「ヂヂヂヂ」が集まれという合図だとすると、今回、私がウッドデッキでウスタビガの幼虫の世話をしている時に聞こえてきた「ヂヂヂヂ」は、仲間に餌があるから集まるように連絡していたのだろうか。。。

 その後、ウドデッキで作業をしていると、巣箱の中から雛の鳴き声が聞こえるようになったので、ショップに出かける前に、ビデオカメラをセットし、撮影をすることにした。帰宅後見てみると、シジュウカラの親は頻繁に巣箱から出入りし、餌の青虫を運びこんでいる様子や、巣箱の中から雛のものと思われる糞を咥えて飛び去る様子が捉えられていた。

 撮影した映像を編集し、出入りの部分だけをつなぎ合わせたものは次の様である。


シジュウカラの子育て2019(2019.6.4 10:49~11:43 撮影ビデオを編集)

 ビデオを見ていても、出入りするときの動作は素早く親鳥のどちらなのかの判別もつかないことが多い。そこで、出入りの瞬間の画像を動画から切り出して確認することにした。16回の出入りがあったが、巣箱から出て来る時の画像は次のようである。これを見ると、雌雄の判別と口に何かを咥えている様子も確認できる。胸の黒い帯(ネクタイ)の太い方、写真では、1,2,4,5,6,7,9,11,12,14番目が雄である。


巣箱から出るシジュウカラ(2019.6.4 撮影ビデオからのキャプチャー画像) 

 初めのうちは、巣箱の中には親鳥のどちらかが常に残り、一羽だけが餌を探しに出かけていると思っていたので、出ていくところだけを確認していたが、出入りの時間間隔を知りたくなったので、時刻を確認し、さらに戻ってくるシジュウカラの雌雄の別を確認をしたところ、意外なことに気がついた。

 それを、まとめたのが次の表である。これを見ると、親鳥は巣箱に戻っても、すぐに外に出ていくことがわかる。平均的な巣箱での滞在時間は、雄の場合17秒と、とても短いことがわかる。雌の場合は1分28秒であった。

 しかも、予想に反して、親鳥のどちらかが餌を求めて外にいる間、他方が巣箱に留まるのではなく、常に両方の親鳥は巣に雛を残し、餌を探しに出かけていることがわかった。
 
 雄の平均的な餌探しの時間は8分4秒、雌の場合は10分25秒であった。自宅周辺は緑が多く、餌となる青虫なども沢山いるのではないかと思っていたが、意外にも餌探しに苦労しているシジュウカラの姿が浮かんできた。


シジュウカラの巣箱からの出入りの様子(2019.6.4 撮影ビデオをまとめた。出入りの時間は分:秒を示す)

 親鳥の巣箱への出入りを図示すると判りやすいかもしれない。次の図のように、親鳥は巣に戻ってもすぐに餌探しに出ていき、両方の親鳥が同時に巣箱にいるということはない。 


シジュウカラの巣箱からの出入り状況(2019.6.4 撮影ビデオから整理した)

 こうした巣箱の中の様子は、内部を撮影できるカメラをセットすればいいのだろうが、まだそこまではいかないでいる。

 さて、この後も撮影を続けたが、生憎の長雨で屋外での撮影ができない日が続いたある日の夕方、ショップから帰ってくると、雛の鳴き声が聞こえなくなっていた。この日は午後から日が差してきていたので、このタイミングで巣立って行ったものらしかった。

 翌朝、近くの林の方から巣立っていった雛のものらしい鳴き声が聞こえてきたが、実際のところは判らない。

 後日、巣箱を清掃するために取り下ろしたが、中には中央部分にややくぼみができた巣が残されていた。


シジュウカラの雛が巣立って行った巣箱の内部(2019.7.10 撮影)

 中に残されていた巣は、コケ類や動物の毛などで作られていた。


シジュウカラの巣(2019.7.10 撮影)

 巣立ちの瞬間を撮影できればと期待していたのであったが、これはまた次回以降に持ち越すことになった。





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