ここまでBroadway版のPRISCILLA Queen of the desertについて語ってきて、今後もしつこく語り続けそうなメガヒヨ。
ここらでそろそろ、原作である映画についても書いておくべきではないかと思い始めた。
オリジナルあってこその舞台。もちろんリスペクトしている。
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公開は1994年(日本は1995年)のオーストラリア映画。脚本・監督はステファン・エリオット。
出演は錚々たる俳優陣。
バーナデット…Terence Stamp
ティック/ミッチ…Hugo Weaving
アダム/フェリシア…Guy Pearce
ちなみに製作費は200万ドル。
約20年前の貨幣価値とはいえ、現在ではこれらの俳優さん一人のギャラにもならないんじゃないの?
まぁHugo WeavingとGuy Pearceはこの作品でブレイクに拍車を掛けたというのもあるんだけどね。
さて。映画版と舞台版、細かい差はあれどストーリーの流れはほとんど変わらず。
しかし映画版は、口パクのミュージックシーン、ダンスシーンはあるけれど、ミュージカルではない。
とは言えどもそのショーの光景は舞台版よりはるかにリアル。
生身のドラァグ・クィーンの画面から匂い立ってくる雰囲気とか、お客さんの白けた雰囲気まで容赦なく伝えてくる。
それはプリシラ号も同じこと。
舞台版のLEDライトがまぶしいドールハウスのようなバスとは違い、砂漠のロケで撮られたそれは埃っぽくて、内部はまるで体育会系の部室みたい。
キャストについても、華やかな容姿が重要な選考基準に数えられたであろうBroadway版の俳優に比べ、映画版の俳優は個性派揃い。
ちなみに映画版の俳優さんは全員がノンケでいらっしゃる。
あまりの演技力の高さに、「この人達、本当はゲイ?」って思っちゃいそうだけどね(笑)
ドラァグ・クィーン間の人間関係も厳しい。
Terence Stamp演じるバーナデットはGuy Pearce演じるアダム/フェリシアに対して、失言(禁句の本名、ラルフやラルフとかラルフなど)があれば遠慮なくボコボコにしている。
舞台版では例の発言があったところで、せいぜいバス急停車、親のしつけを疑う程度で、暴力はなし。アダムもそれを見越してバーナデットを舐め切っている。
まるで昭和の教育と、平成のゆとり教育の違いのようだ。
更にプリシラ号塗装にあたり、
一人黙々バスにペンキを塗るアダム。
その姿はまさに、寒い中花見の場所取りをする昭和の新入社員のごとく。
(telegraph.co.ukより拝借)
一方B'way版はみんな平等。三人で協力してペンキ塗り。
ゆるい、甘い、ゆとりすぎ!!
更にバックダンサーまで呼んじゃったりして(笑)
(Broadway.comより拝借)
あとはティック/ミッチの存在感かな?
舞台版だと、主役とされている割に可哀そうな位ほど出番が削られている彼。
第一幕の♪True Colorsを歌ったのち第二幕の♪MacArthur Parkのソロまで、脇役もしくは背景と化しているものね
だけど映画版は彼の「家族との再会」が軸になっているから、折にふれてその部分がクローズアップされている。
マリオンがベンジーを出産したときのフラッシュバックの映像は複数の箇所に仕込まれており、最後につじつまが合うようになっている。
しかし舞台版においては、ティックが妻や息子のことを思い出すシーンはそれほどない。
いや、アダムが♪Girls Just Wanna Have Funを歌っているあたりに、黙々と車の運転しながら家族のことを考えているのだろうけどね。
でもそれをミュージカル・シーンに仕立ててはもらえなかった様子。
さらに語ると、舞台版だとカットされたバーナデットの遭難シーン。
彼女を車に乗せてくれた地元住民が、女装のミッチを見て逃げ出す場面があった。
Hugo Weavingの爬虫類顔も相まってエキセントリックだった映画版ミッチ。
反面では家族のことを思ったり、副業の化粧品販売も真面目にこなしていたりして、厚みのあるキャラクターとして描かれている。
それに対して、舞台版のミッチはおとなしいの一色。
Broken Hillでのバス落書き事件以降、プライベートで女装をすることさえも無くなっている。
世間の自分たちに対する風当たりの強さは、♪True Colorを泣きながら歌う位に辛かったのだものね。
まぁそんな映画版、舞台版のミッチ共、ベンジーが自分の職業を知った際には強いショックを受ける訳なんだけど。
そうそう。バーナデットの戦闘能力も大きな違いが!!
映画版は半端なく怖いっっ
Coober Pedyにおいて、卑猥な言葉をふっかけてきたフランク。
この展開は映画も舞台も一緒なんだけど、映画版のバーナデットは「うぉら、殺すぞ!!」と強烈なひざ蹴りをかまし、荒くれ男どもを恐怖のどん底に突き落とす。
舞台版のバーナデット、Tony Sheldonは、観客が映画版のTerence Stampを観ていることを織り込み済みなのか。そのシーンのパロディとしておネエ的な回し蹴りを披露する。
今のは全く痛くないだろう!!と突っ込みたくなるような非力さ。でも効果音はアクション映画並み(笑)
言うまでもなく、一流の舞台役者であるTony先生は武闘シーンもちゃんとこなせるんだろうけどね。でもB'wayはお笑い要素も必須だということで。
Coober Pedyといえばみんなのお楽しみ(笑)、アダム/フェリシアの女装。
ここで映画版の謎なんだけど、メガヒヨはずっとアダムの女装はフランク以外のみんなにはバレバレだと信じ込んできたんだけど、実際どうなんだろう?
ビデオ屋さんはじめ村の人はみんな「男だろ、アレ」と感じつつも指摘出来ずにいる中、フランクだけはまんまと途中まで騙されちゃったと理解していたんだけど。
で、彼もアダムのムキムキの二の腕を見るうちにやっと男だと気づいて、「みんながドン引いている中、自分だけナンパをしてしまった。恥をかかされた!!」と怒りが一気に爆発したのではないかとずっと思っていた。
制作側の意図はどうだったのかな? ぜひ知りたい。
舞台版のアダムは文句なしにみんなを騙し込んでいるね。
Nickくんの二の腕は余裕でGuy Pearceを上回っているんだけど、ウィッグが取れるまでバレないことになっていた。
しかし見事フランクの一本釣りに成功した後はどうするつもりだったんだろう(笑)
まぁそんなこんなで細かいところまで比べていったらキリがない映画版と舞台版。
でも両者とも、マイノリティでも一生懸命生きている、辛いこともあるかも知れないけれど夢を叶えることだって出来るんだよ、という温かいメッセージがこもっている。
観ていると元気になれるというのも一緒だね。
最後にこの映画版。
現在でもオーストラリアを代表する名画ということで人々に愛され続けている。
その展開は現在でも続き、衣装のティム・チャペル、リジー・ガーディナー協力のもと、映画をベースにしたリアリティ番組が放送されているとのこと。
とっても面白そう!! 是非字幕付きで観てみたいなぁ。
BSでもいいので、是非日本でも放送してもらいたいと思うのであった。