新年を迎えたと思えば、もう一月の下旬になります。寒さに震える毎日であります。この時期は、私の業界では一番多忙になることについては、去年も述べました。それで、今年は若干工夫をしまして、今週から一方の仕事が全く無くなるようなところを担当させていただきまして、他方の仕事に全力を尽くそう!と画策したのであります。そのお陰で、かなり負担は少なくなりました。そうは言っても、今日も一日中机に向かっておりました。なかなかであります。
さて、音楽を鑑賞できる環境は、依然として改善されておりません。自分の部屋でヘッドホンで聴いています。これって、コードが邪魔ですね。コードがなければ楽ちんなんですがねえ。コードレスのもあるのでしょうが、まあ文句ばかり言っていても仕方ありません。もう少しの辛抱でしょうか。専ら、BOSEのQuietConfort3で聴いているのですが、音にはけっこう満足しています。
ということで、今回はベートーヴェンのピアノ・ソナタであります。器楽曲というのも、それほど熱心に聴いている人間ではないのですが、思いだしたかのように、聴いています。32曲ある中から、ピアノ・ソナタ第21番ハ長調作品53「ワルトシュタイン」であります。この曲は言わずと知れたベートーヴェンの中期の傑作。この標は、ベートーヴェンがこの曲をフェルディナント・フォン・ヴァルトシュタイン伯爵に献呈したことに由来します。これは、ベートーヴェンのこのジャンルの中でも、もっとも好きな曲のひとつです。特に、第3楽章がいいですねえ。そして、ベートーヴェンのピアノ・ソナタのCDも、このところ5000円ほどで買える昨今ですので、全曲を!という、昔ほどのことはないのです。今回は、ウィルヘルム・ケンプの演奏ですが、これも8枚組ですが、3648円で買いました。いつもいうのですが、一昔前に比べると夢のようです。
ケンプのこの全集は、シューベルトの全集と並んで、ケンプの最大の遺産でしょうねえ。日本でも多くの人にケンプの演奏は愛されています。ただ、いつも言われることですが、例えば「技巧的には難があった」や「左手の表現に表情がない」…。確かに他の演奏と比べても、演奏のキレであるとか一音一音の響き、安定感などにおいて、感じるところはあるのですね。しかし、この演奏は、惹かれるモノがあるんですよ。以前にもシューベルトの演奏でも触れたことがあるのですが、他の巧いピアニストの演奏に比べても、はるかに心に残るのです。聴いていると、いろんな不満も感じるのですが、次ぎに他の演奏を聴いてみると、あまりおもしろくないし、ケンプはこんなに弾いていたなあ、なんて思い出すのですねえ。この「ワルトシュタイン」、特に好きなところが、第3楽章。第2楽章から切れ目なしで演奏されますが、最初主題が登場しますが、この主題、他では絶対に聴けない、優しさや愛おしさに満ちあふれた演奏なんですね。この出だしの主題をここまで巧く表現したのもないだろうと思います。粒が揃わないなんていっているケンプのピアノの一音一音がこころにしみじみと入ってくるのです。それからこの楽章、次第に勢いを増して、しみじみとした音色から心に突き刺さる音色へと変貌してきます。この対比もみごとであります。またリズム感も独特のものを感じ、これも印象深い第3楽章ですね。第1楽章でも、冒頭の打楽器的な和音の連打も、他のピアニストはここを揃って畳みかけるような演奏なんですが、どことなくケンプは、頼りなさげな様子。しかし、それから続く展開においての音は、たいそうに柔和で音の広がりは大きく、豊かな音楽性までも感じてしまいます。そして、第2楽章もゆったりとした始まりは、超弱音での展開。一つ一つの音がしみじみと心に入って来ます。それがそのま知らぬ間に、第3楽章の超優しいメロディが始まります。もしかすると、この第2楽章の演奏は、第3楽章を一番効果的に開始させることのためのものだったのでしょうか。そして、第3楽章の世界にとっぷり漬かるのでありました。またケンプのピアノに酔うのでした。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタの世界も実に深遠であります。でも、ケンプが一番と思っているわけでは決してありませんので…。
(DG COLLECTORS 477 7958 2008年、輸入盤)
さて、音楽を鑑賞できる環境は、依然として改善されておりません。自分の部屋でヘッドホンで聴いています。これって、コードが邪魔ですね。コードがなければ楽ちんなんですがねえ。コードレスのもあるのでしょうが、まあ文句ばかり言っていても仕方ありません。もう少しの辛抱でしょうか。専ら、BOSEのQuietConfort3で聴いているのですが、音にはけっこう満足しています。
ということで、今回はベートーヴェンのピアノ・ソナタであります。器楽曲というのも、それほど熱心に聴いている人間ではないのですが、思いだしたかのように、聴いています。32曲ある中から、ピアノ・ソナタ第21番ハ長調作品53「ワルトシュタイン」であります。この曲は言わずと知れたベートーヴェンの中期の傑作。この標は、ベートーヴェンがこの曲をフェルディナント・フォン・ヴァルトシュタイン伯爵に献呈したことに由来します。これは、ベートーヴェンのこのジャンルの中でも、もっとも好きな曲のひとつです。特に、第3楽章がいいですねえ。そして、ベートーヴェンのピアノ・ソナタのCDも、このところ5000円ほどで買える昨今ですので、全曲を!という、昔ほどのことはないのです。今回は、ウィルヘルム・ケンプの演奏ですが、これも8枚組ですが、3648円で買いました。いつもいうのですが、一昔前に比べると夢のようです。
ケンプのこの全集は、シューベルトの全集と並んで、ケンプの最大の遺産でしょうねえ。日本でも多くの人にケンプの演奏は愛されています。ただ、いつも言われることですが、例えば「技巧的には難があった」や「左手の表現に表情がない」…。確かに他の演奏と比べても、演奏のキレであるとか一音一音の響き、安定感などにおいて、感じるところはあるのですね。しかし、この演奏は、惹かれるモノがあるんですよ。以前にもシューベルトの演奏でも触れたことがあるのですが、他の巧いピアニストの演奏に比べても、はるかに心に残るのです。聴いていると、いろんな不満も感じるのですが、次ぎに他の演奏を聴いてみると、あまりおもしろくないし、ケンプはこんなに弾いていたなあ、なんて思い出すのですねえ。この「ワルトシュタイン」、特に好きなところが、第3楽章。第2楽章から切れ目なしで演奏されますが、最初主題が登場しますが、この主題、他では絶対に聴けない、優しさや愛おしさに満ちあふれた演奏なんですね。この出だしの主題をここまで巧く表現したのもないだろうと思います。粒が揃わないなんていっているケンプのピアノの一音一音がこころにしみじみと入ってくるのです。それからこの楽章、次第に勢いを増して、しみじみとした音色から心に突き刺さる音色へと変貌してきます。この対比もみごとであります。またリズム感も独特のものを感じ、これも印象深い第3楽章ですね。第1楽章でも、冒頭の打楽器的な和音の連打も、他のピアニストはここを揃って畳みかけるような演奏なんですが、どことなくケンプは、頼りなさげな様子。しかし、それから続く展開においての音は、たいそうに柔和で音の広がりは大きく、豊かな音楽性までも感じてしまいます。そして、第2楽章もゆったりとした始まりは、超弱音での展開。一つ一つの音がしみじみと心に入って来ます。それがそのま知らぬ間に、第3楽章の超優しいメロディが始まります。もしかすると、この第2楽章の演奏は、第3楽章を一番効果的に開始させることのためのものだったのでしょうか。そして、第3楽章の世界にとっぷり漬かるのでありました。またケンプのピアノに酔うのでした。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタの世界も実に深遠であります。でも、ケンプが一番と思っているわけでは決してありませんので…。
(DG COLLECTORS 477 7958 2008年、輸入盤)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます