読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

12月刊行予定新書新刊、個人的注目本12冊

2013-11-29 07:27:55 | 本のお噂
12月に刊行される予定の新書新刊から、例によってわたくし個人が興味を惹かれた書目をピックアップしてみました。12月の刊行分には興味を惹かれる書目が多く、今回は12冊であります。
•••それにしても、2013年もとうとう、12月を残すのみとなったんだなあ。ほんと、月日の経つのは早いものですねえ。こうしてあっという間に月日が経ち、あっという間に歳をとって、そしてあっという間に死•••って、別にそこまで考えるこたないか(笑)。何はともあれ、今回も何か引っかかるような本があれば幸いに存じます。
刊行データや内容紹介のソースは、書店向けに取次会社が発行している情報誌『日販速報』の11月25日号、12月2日号とその付録である12月刊行の新書新刊ラインナップ一覧です。発売日は首都圏基準ですので、地方では1~2日程度のタイムラグがあります。また、書名や発売予定は変更になることもあります。

『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』 (速水健朗著、朝日新書、13日発売)
一瞬ギクっとするような書名であります。「食の安全のためにお金を使うことを厭わない人々と、安全よりも安さと量を重視する人々。食べ物、政治意識を導き出す」とのこと。食の傾向から、果たしていかなる政治意識などが見えてくるのか、気になるところであります。

『イギリス史10講』 (近藤和彦著、岩波新書、20日発売)
「ストーンヘンジの先史時代から、ビートルズの現代まで、複合社会イギリスを、繊細かつダイナミックに描く」と。なかなか奥深いところのあるイギリスという国を、長い歴史的スパンから捉えた内容のようで、興味を惹かれます。

『「道徳」を疑え! 自分の頭で考えるための哲学講義』 (小川仁志著、NHK出版新書、10日発売)
「多発するいじめや虐待、社会マナーの低下などを背景に、道徳の教科化の議論が持ち上がっている。現代人のモラル崩壊という問題の核心へと切り込む」とのこと。確かになんだか、地に落ちた感のある現代人のモラルやマナーですが、それを単純な感情論に流されることなく考えることができる本になっているかどうか、注目してみたいと思います。

『ビジネスを蝕む 思考停止ワード44』 (博報堂ブランドデザイン著、アスキー新書、10日発売)
「ビジネスには『思考を止める言葉』がある。例えば『成功例』『成長』『ニーズ』。それらがなぜ問題を起こすのかを局面ごとに解説」と。これもけっこう気になりますが、「アテンド、ガバナンス、リスケ、ブランディング」などの言葉の「単語の意味と成り立ち、正しい言い換えを示す」という『バカに見えるビジネス語』(井上逸兵著、青春新書インテリジェンス、2日発売)も、内容的にはつながるものがありそうで、こちらも気になります。

『東西「駅そば」探訪 和製ファストフードに見る日本の食文化』 (鈴木弘毅著、交通新聞社新書、16日発売)
12月刊行分の新書では、個人的に一番興味をそそられる書目であります。「『駅そば』研究の第一人者が『目と耳と舌』を駆使し、綿密な現地調査をもとに書き上げた『和製ファストフードに見る東西食文化史』」と。駅そばから見えてくる日本食文化の様相とはいかなるものなのか、すごく楽しみであります。

『古代世界の超技術』 (志村史夫著、講談社ブルーバックス、19日発売)
倒れない五重塔や、奈良の大仏建立の謎に迫った『古代日本の超技術』に姉妹編が登場。「最先端の材料工学の観点から『古代史の技術ミステリー』を読み解く」とのこと。今度はどんなすごい知恵が発掘されるのか、こちらにも期待したいですねえ。

『色彩がわかれば絵画がわかる(仮)』 (布施英利著、光文社新書、13日発売)
「ゴッホ、ラファエロ、ダ・ヴィンチ。絵画に秘められた芸術家たちの驚くべき技巧を紹介し、新たな視点で美術鑑賞を楽しむ」。美術のみならず解剖学にも精通した著者が、名画の技巧をどのように解剖してくれるのでありましょうか。

『日本ウイスキー 世界一への道』 (嶋谷幸雄・輿水精一著、集英社新書、17日発売)
「世界のウイスキー賞で最高賞が相次ぐ日本のウイスキー。世界一のウイスキーはどうやって造られたのか。至高の味わいの秘密を明かす」とか。普段、行きつけのバーでは海外のウイスキーばかり飲んでいるわたくしですが、日本のウイスキーの実力を見直すためにも、ちょっと読んでみたいなと思います。

『維新の後始末 明治めちゃくちゃ物語』 (野口武彦著、新潮新書、14日発売)
「侍たちの失業対策、幕府が残した借金返済、はじめての国際問題。国作りに励む明治新政府の苦闘を描きながら、近代国家日本の原点を探る」とのこと。今また、さまざまな局面で転機を迎えている日本。明治の「めちゃくちゃ」ぶりから、何かのヒントが見えてくるかもしれませんね。

『40歳からの会社に頼らない生き方』 (柳川範之著、ちくま新書、4日発売)
「先行きが見えない時代を生き抜くには、どうするべきか。『40歳定年制』で話題の経済学者が、新しい働き方を提案する」と。すでに40ン歳になっている不肖わたくしとしては、なんだか書名からして気になることしきり、なのですが•••。

『日本写真史(上) 幕末維新から高度成長期まで』 (鳥原学著、中公新書、20日発売)
「19世紀半ばの導入後、写真は戦争とメディアとともに成長。敗戦後はリアリズム、広告と多彩化する。1974年までの120年を描く」と。「安定成長から3.11後まで」との副題がついた下巻も同時刊行。こちらも楽しみです。

『絶対貧困と相対貧困(仮)』 (石井光太著、PHP新書、13日発売)
「世界に12億人存在する絶対貧困層と、約1200万人にのぼる日本の相対貧困層。その実態と差異について鋭く切り込む渾身の一冊」と。世界の壮絶な「絶対貧困」の現場を見てきている著者だけに、上滑りのない話が展開されるのではと期待します。

12月刊行分で他に気になる書目は、以下の通りであります。
『青春の上方落語』 (笑福亭仁鶴・笑福亭鶴瓶著、NHK出版新書、10日発売)
『世界を標的化するイスラム過激派 「アラブの春」で増幅した脅威』 (宮田律著、角川ONEテーマ21、10日発売)
『科学vs.キリスト教 世界史の転換』 (岡崎勝世著、講談社現代新書、17日発売)
『記憶のしくみ』(上) (R・カンデルエリック、R・スクワイアラリー著、講談社ブルーバックス、19日発売)
『現場主義の競争戦略 次代への日本産業論』 (藤本隆宏著、新潮新書、14日発売)
『温泉の科学』 (佐々木信行著、サイエンス・アイ新書、16日発売)
『あの元素は何の役に立っているのか?』 (左巻健男著、宝島社新書、9日発売)
『いのちと重金属 人と地球の長い物語』 (渡邊泉著、ちくまプリマー新書、4日発売)
『鉄道会社の経営 ローカル線からエキナカまで』 (佐藤信之著、中公新書、20日発売)
『北朝鮮経済のカラクリ』 (山口真典著、日経プレミアシリーズ、11日発売)
『「東京物語」と小津安二郎 なぜ世界はベスト1に選んだのか』 (梶村啓二著、平凡社新書、13日発売)
『デジタル教科書は子どもの学びを壊す』 (宮川典子著、ポプラ新書、上旬)