かっての名門、株式会社 東芝が瀕死の状態だ。2015年当時500円を超えていた株価は、今年2月末200円程度まで下がってしまった。2月26日の報道によれば、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と日銀が実質的に保有する東芝の持ち株比率は8.61%だそうだ。このような公的な機関は安定株主としての効果があるそうだ。してみると、現在、安定株主のお陰でかろうじて200円を維持しておられるだけなのかも知れない。
東芝の異変は、2008年のリーマンショックのころからだそうだ。当時社長だった西田厚聡氏が、業績を良く見せるために不正会計を始めたのだ。2009年に西田氏から社長を引き継いだ佐々木氏の時代に、この不正は更にエスカレートしたそうだ。お家芸の家電等の電気製品が、韓国や中国に押され始めたのもこの頃であろう。更に、追い打ちをかけたのが東日本大震災後の経営環境の激変だそうだ。
東芝は、2015年に不正経理が発覚し、名誉挽回のため、テレビ等の電気製品から撤退し、半導体事業と原子力事業を2本柱として立て直そうとした。そのための資金調達として、虎の子の東芝メディカルシステムズ株式会社を、競争相手のキヤノン株式会社に売り渡してしまった。東芝メディカルは、医療機器開発のトップメーカであり、業績好調で、しかも将来有望視される金の卵であるにも拘わらず。
ところが、経営の2本柱の一つとしていた原子力事業が足を引っ張り始めた。米国の原子力関係の子会社が大幅な赤字をもたらしたためだ。
東芝は、2006年米国の原子力メーカのウェスチングハウス・エレクトリック(WH)を子会社化していた。WHの買収には追加出資分も含めると約6000億円を要したそうだが、当時の西田社長は、世界中で原子力エネルギーの需要が増えるとして、原子力事業の規模を年2000億円から2015年には3倍以上に増やせると豪語していたそうだ。その豪語の裏には不正経理を隠そうとの思惑があったのかも知れない。
約6000億円で買収したWHが2015年に原発建設会社 CB&I ストーン・アンド・ウェブスター(S&W)を無償で譲り受けたのだ。S&Wの資産などの価値と負債などを比べ、ほぼ同額と判断して、安心して只で譲り受けたのであろう。その後、S&Wの維持のために想定外の大きな費用が必要になることが判明したのだ。無償と言うのに目が眩み、評価が甘くなったのに間違いないであろう。只より怖いものは無いとはこのことだ。
費用増大の原因は、原発事業は2011年の東京電力福島第一原発事故の後、米国でも規制が厳しくなり、安全対策費が増え、工期も長くなり、人件費が予想外に増大したからだそうだ。
S&Wは米国内で原発4基の建設工事を抱える。S&Wがこの原発4基を完了できなければ、親会社のWHは電力会社に違約金を払わなくてはならないらしい。WHが払えなければ、更に親会社の東芝が肩代わりする必要があり、東芝は7千億円を超える損失計上を迫られている訳だ。原発は未だ建設半ばであり、費用がこれ以上にならない保証はないそうだ。
そこで、東芝は資金調達のため大黒柱の半導体事業を手放さ無くてはならない事態に追い込まれている。そうなると東芝に残されるのは原子力事業のみとなるが、世界の原子力事業の将来は甘くない。原発は中国やインドにおいて建設が盛んであるが、先進国では衰退の方向である。
米国では、採掘技術の向上で石油や天然ガス価格が安くなったため、原発の費用面での競争力が落ちている。また、トランプ新大統領は地球温暖化は誤りであるとして、火力発電を復活させる政策をとることも弱り目に祟り目だ。
世界では、仏アレバが新型原発の建設コストが膨らんだことで、経営危機に陥っている。更にベトナム政府は資金不足や住民の反発を受け、日本が受注予定だった原発の建設計画の中止を決めた。
今となってみると、東芝がWHを買収できたのも、米国の投資家が原子力事業の先行きを見限っていた結果なのかも知れない。東芝は切り札を得たと喜んでいたが、とんだババを引いたのかも知れない。経産省は東芝を見放したとの噂だ。しかし、日本は福島第1原発の廃炉等では東芝に活躍してもらう必要がある。また、GPIFや日銀は大株主であり、簡単には手を引けない。原発事業は、核燃料サイクルの破綻、廃炉問題や核廃棄物の処理問題等、負の遺産を残したまま、甘い汁を吸いつくしてしまった。残っているのは抜け殻だけかも知れないが、後始末はしっかりやらなくてはならない。2017.03.04(犬賀 大好-317)
東芝の異変は、2008年のリーマンショックのころからだそうだ。当時社長だった西田厚聡氏が、業績を良く見せるために不正会計を始めたのだ。2009年に西田氏から社長を引き継いだ佐々木氏の時代に、この不正は更にエスカレートしたそうだ。お家芸の家電等の電気製品が、韓国や中国に押され始めたのもこの頃であろう。更に、追い打ちをかけたのが東日本大震災後の経営環境の激変だそうだ。
東芝は、2015年に不正経理が発覚し、名誉挽回のため、テレビ等の電気製品から撤退し、半導体事業と原子力事業を2本柱として立て直そうとした。そのための資金調達として、虎の子の東芝メディカルシステムズ株式会社を、競争相手のキヤノン株式会社に売り渡してしまった。東芝メディカルは、医療機器開発のトップメーカであり、業績好調で、しかも将来有望視される金の卵であるにも拘わらず。
ところが、経営の2本柱の一つとしていた原子力事業が足を引っ張り始めた。米国の原子力関係の子会社が大幅な赤字をもたらしたためだ。
東芝は、2006年米国の原子力メーカのウェスチングハウス・エレクトリック(WH)を子会社化していた。WHの買収には追加出資分も含めると約6000億円を要したそうだが、当時の西田社長は、世界中で原子力エネルギーの需要が増えるとして、原子力事業の規模を年2000億円から2015年には3倍以上に増やせると豪語していたそうだ。その豪語の裏には不正経理を隠そうとの思惑があったのかも知れない。
約6000億円で買収したWHが2015年に原発建設会社 CB&I ストーン・アンド・ウェブスター(S&W)を無償で譲り受けたのだ。S&Wの資産などの価値と負債などを比べ、ほぼ同額と判断して、安心して只で譲り受けたのであろう。その後、S&Wの維持のために想定外の大きな費用が必要になることが判明したのだ。無償と言うのに目が眩み、評価が甘くなったのに間違いないであろう。只より怖いものは無いとはこのことだ。
費用増大の原因は、原発事業は2011年の東京電力福島第一原発事故の後、米国でも規制が厳しくなり、安全対策費が増え、工期も長くなり、人件費が予想外に増大したからだそうだ。
S&Wは米国内で原発4基の建設工事を抱える。S&Wがこの原発4基を完了できなければ、親会社のWHは電力会社に違約金を払わなくてはならないらしい。WHが払えなければ、更に親会社の東芝が肩代わりする必要があり、東芝は7千億円を超える損失計上を迫られている訳だ。原発は未だ建設半ばであり、費用がこれ以上にならない保証はないそうだ。
そこで、東芝は資金調達のため大黒柱の半導体事業を手放さ無くてはならない事態に追い込まれている。そうなると東芝に残されるのは原子力事業のみとなるが、世界の原子力事業の将来は甘くない。原発は中国やインドにおいて建設が盛んであるが、先進国では衰退の方向である。
米国では、採掘技術の向上で石油や天然ガス価格が安くなったため、原発の費用面での競争力が落ちている。また、トランプ新大統領は地球温暖化は誤りであるとして、火力発電を復活させる政策をとることも弱り目に祟り目だ。
世界では、仏アレバが新型原発の建設コストが膨らんだことで、経営危機に陥っている。更にベトナム政府は資金不足や住民の反発を受け、日本が受注予定だった原発の建設計画の中止を決めた。
今となってみると、東芝がWHを買収できたのも、米国の投資家が原子力事業の先行きを見限っていた結果なのかも知れない。東芝は切り札を得たと喜んでいたが、とんだババを引いたのかも知れない。経産省は東芝を見放したとの噂だ。しかし、日本は福島第1原発の廃炉等では東芝に活躍してもらう必要がある。また、GPIFや日銀は大株主であり、簡単には手を引けない。原発事業は、核燃料サイクルの破綻、廃炉問題や核廃棄物の処理問題等、負の遺産を残したまま、甘い汁を吸いつくしてしまった。残っているのは抜け殻だけかも知れないが、後始末はしっかりやらなくてはならない。2017.03.04(犬賀 大好-317)