日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

トランプ大統領のWTO軽視政策

2017年03月15日 15時28分49秒 | 日々雑感
 米通商代表部(USTR)は3月1日、年次報告書を議会に提出した。報告書はトランプ政権の通商政策を初めてまとめたもので、その中で他国の不公正な貿易慣行に強力な対応策を取る方針を示し、世界貿易機関(WTO)の決定が米国の主権を侵害しているとみなせば従わない可能性があると表明した。貿易問題ではWTOの決定を尊重したオバマ政権の方針から大きな転換となる。

 トランプ氏は、大統領の選挙期間中でも、為替操作や不公正な政府補助金、知的財産の盗用、国営企業など市場をゆがめる行為をトランプ政権は”容認しない”と主張していたが、いよいよ具体的に動き出したのだ。対象は中国のみと思っていたが、そんなに甘くはなかった。

 その一環であろう、米政府が日本の農業や自動車市場の解放を求める意見書をWTOに提出していたのだ。今月8日にスイス・ジュネーブで開かれた日本の貿易政策に関するWTOの会合で米国の代表が声明を発表したのだ。トランプ政権が日本の貿易政策について公式に見解を示したのは初めてのようである。WTOは加盟国の貿易政策について数年おきに審査しているため、今年の日本の審査向けに出されたのだそうだ。

 トランプ氏は以前から、日本製の車は米国でよく売れるが、米国製が日本では売れないのは、日本政府が妨害しているからだと訴えていた。米国車の輸入関税はゼロの筈であり、何を見当違いしているのだろうと思っていたが、改めて日本の自動車市場の閉鎖性に強い懸念を示してきた。市場開放に向けて日本国内ルールや規制の変更を訴えてきたのだ。

 規制と言えば、日本の道路交通法は世界に冠たる厳しさがある。例えば、セグウェイなどで知られる立ち乗り型の電動二輪車は米国では公道を自由に走れるが、日本では特別な場所でしか走ることが出来ない。個人的には日本の狭い道では、4輪の小型車を禁止にして電動2輪車や電動車椅子のみを通行可能にしたいくらであるが、現状到底無理であろう。トランプ氏を日本に招き浅草周辺でも観光を兼ねて歩いてもらい、米国と日本の道路事情の差を充分知ってもらいたいものだ。

 一方農業に関しては、日本は米国の農産物にとって4番目に大きな市場だが、相当な障壁が残っているととして、関税の引下げを求めてきた。米国の貿易収支は全体では赤字額が増大しているが,農産物は米国にとって貴重な貿易黒字である。主な輸出品目は,大豆、トウモロコシ、綿花、小麦、果実、だそうで、日本の他、カナダ、メキシコや中国が輸出相手国だそうだ。

 米国の農業政策は,1930年代の大恐慌の時期にその基本が形成され,農家の経済的安定を目的として導入された農産物価格安定政策はその後も続けられ、現在でも手厚い農業保護を行っておるそうで、日本の農業保護政策が一方的に非難される話ではなさそうだ。

 WTOが生まれた背景には、1929年からの世界恐慌で保護主義が世界的に広がり、第2次世界大戦につながったとの反省がある。戦後、自由貿易を促進しようと関税貿易一般協定(GATT)ができ、それを引き継ぐ国際機関としてWTOが1995年に発足した。

 トランプ大統領は米国第1主義を掲げ、TPP離脱を表明し、保護主義に走るのではないかと懸念されている。WTOの活躍の実情はよく分かっていないが、WTOのお陰で世界の貿易ルールの枠組みは過去何度か大変な騒動を乗り越えてきたそうだ。

 近年、中国の台頭により先進国の工業が衰退し、経済のグローバル化が格差拡大をもたらしたとされ、自由貿易の行き過ぎの弊害が露わになってきた。一方、食料問題はその国の安全保障上からも重要であり、各国の農業の保護政策はある程度やむを得ないと思うが保護主義の行き過ぎは国同士の争いになると歴史が教えている。

 自由貿易と保護主義の兼ね合いが重要となろう。これらの問題をWTOが単独で解決するのは至難の業であろうが、何とか頑張って欲しい。2017.03.15(犬賀 大好-320)