日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

自由貿易協定と農業改革

2017年03月05日 11時23分46秒 | 日々雑感
 トランプ米大統領は環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱し、二国間自由貿易協定(FTA)にすると宣言している。自動車の貿易に関しては日米間の不平等の是正を訴えているが、農産物に関しては何も発していない。それもそのはず、農産物の輸出入に関しては、日本の一方的な輸入だ。農産物の中でもとうもろこしが一番多いが約80%が米国からだ。大豆、小麦も大半が米国からだ。

 TPP交渉では、日本政府は農家の反対を押し切って農産物の大幅な関税引き下げに合意したが、2国間の本格的な交渉になれば、農家に対する補助金がやり玉に上がり、更に関税撤廃等の要求をしてくるかもしれない。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓など16か国の参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が2013年に交渉開始されている。TPPの挫折により、豪州、ニュージランドは高い水準での自由化を主張しているとのことだ。対象は当然農産物だ。

 更に、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)も2013年に開始されている。日本の要求は、家電や自動車の関税撤廃であり、欧州の要求は、チーズ、ワインなどの農産物の関税引き下げであるそうだ。

 既に日本の食料自給率は40%以下であり、安全保障の面から更なる自由化はリスクの増大を招くと懸念される。このため、日本の農業に何とか国際競争力を付けて貰わなくてはならないが、これまでの保護政策のぬるま湯から抜け出せず、遅々として進まないのが現状であろう。

 安倍政権はコスト削減や輸出など販売ルートの開拓に向けた地域農業の創意工夫を促す政策を掲げている。農家の収益力を向上させ、農業を成長産業に変える戦略だが、肝心の全国農業組合連合会(JA全農)や全国農業協同組合中央会(JA全中)は重い腰を挙げない。

 政府の規制改革推進会議は、資材の購買事業の1年以内の縮小、等の抜本改革を迫ったが、自民党農林族の反発で大幅に修正することとなり、結果従来通り各農協の“自主性”に任せるとの内容となってしまったようだ。自主性とは非常に美しい言葉であるが、高齢化が進んだ農業従事者にとって、これまでと同様にやることであり、結果座して死を待つことになるだろう。

 しかし、若者の間に新しい動きが出てきたのは明るい材料だ。昨年9月に、青森県立五所川原農林高校(五農)のG-GAP (Global G.A.P )審査の様子が紹介されたのだ。農業のグローバル化の波に打ち勝つ為には国際的な第三者認証が必須となるとし、「りんご」と「コメ」の認証審査に取り組んだそうだ。G-GAP認証への取り組みを通じ、これからの日本農業を支える若い人材が世界に目を向け始めて行けば、日本の農業も展望が開けるだろう。

 GAP(Good Agricultural Practice)とは、一般にはあまり知られていないが、農業生産工程管理であり農産物の安全に関わる認証制度である。農業生産活動を行う上で必要な関係法令等の内容に則して定められる点検項目に沿って、農業生産活動の各工程の正確な実施、記録、点検及び評価を行うことによる持続的な改善活動のことだそうだ。

 ロンドン五輪では、この規格か、同等の規格で認証を得た生産者の食材が中心になったそうだ。3年後の東京オリンピック・パラリンピックで選手などに提供される食材の調達基準になる可能性があるとのことであるが、小池都知事にも是非そのようになるようお願いしたい。

 現在東京都は築地市場から豊洲市場移転で、土壌汚染がどうのこうのともめているが、食の安全に関しては、流通過程における工程管理も必要になるだろう。流通工程管理とG-GAPの関係はよく理解していないが、日本は農産物の国際力強化のために、総合的に取り組まなくてはならないだろう。G-GAPが日本に合わなければ、合うように積極的に日本が提案していけばよいのだ。

 現在でも、日本の農産物は安全との評価が高いようであるが、更にG-GAPにより裏付けすれば確固たるものになる。このような取り組みは高齢者にとって苦手であり、老人に任せておくといずれ死を迎える。若者は常に新しいものが好きだ。この動きが全国の若者の間に広がるように政府も大いに支援すべきである。2017.03.08(犬賀 大好-318)