日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

築地と豊洲の理想的な役割分担は誰にも分らない

2017年07月01日 14時23分09秒 | 日々雑感
 東京・築地市場の豊洲移転問題で、小池百合子都知事は6月20日、中央卸売市場の機能を豊洲に移転させる方針を正式に表明した。一方で、「築地は守る・豊洲を活かす」とのスローガンも掲げた。内容は、豊洲はIT(情報技術)を活用した総合物流拠点とし、築地は食のテーマパークとして発展させるであるが、資金計画が無い、具体性に乏しいと、各方面から批判が出ている。

 小池氏は築地、豊洲両方に市場機能を持たせるとしているが、現在の市場機能をそのまま両者に持たせるのは無駄であり、また無理であろう。今後、市場機能は急激に変化せざるを得ないと思われるからである。

 現在でも、築地の市場規模はどんどん縮小しているとのことだ。世の中、生産者と消費者の直接取引が盛んになり、”競り”で代表される市場機能の必要性は漸減の方向だ。現在膨張しつつある東京も、2015年 1,331万人の人口も、2020年にピークを向かえ、その後は減少し2035年には1,278万人にまで減るという予測もあり、この面でも市場の役目は減少していくだろう。

 市場機能ばかりでなく流通業界は変貌が著しい。時代の先端を走る米国において、特にネット通販の隆盛と大型店の衰退が現れ始めている。

 ウォルマートは、アメリカ合衆国の最大のスーパーマーケットチェーンであり、日本の西友を含め世界28ヵ国1.2万店舗を有する。しかし、昨年1月全米154点を一気に閉める計画を発表した。原因はネット通販に押されたためである。

また、今年6月16日、世界最大のネット通販会社アマゾンは米高級食材チェーン大手、ホールフーズ・マーケットヲ約1.5兆円で買収すると発表した。アマゾンはネット通販の対象領域をどんどん広げていくつもりであろう。

 ネット通販の流行はわが国でも急であり、そのしわ寄せが配達員の仕事量の多さに現れている。ヤマト運輸は昨年8月、神奈川の支店が元社員のドライバーらに残業代の一部を支払わず昼食休憩もとらせなかったとして、横浜北労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けた。

 これを受けて、ヤマト運輸は宅急便の配達時間帯を制限する等のサービス内容を変更したが、こんなことには関係なくネット通販は隆盛を極めていくであろう。

 最近ドローンによる宅配の実証実験が行われているとのことである。都会の高層住宅におけるばかりでなく、地方の過疎地における宅配が可能になれば、益々盛んになる。

 わが国では、大都市の郊外に出現した大型店舗が駅前通りをシャッター商店街に変えた。現状では大型店舗は、暇を持て余す高齢者や電子機器を扱えない人にとって快適、便利であり、店舗に併設された娯楽施設は魅力的であり、賑わっているとの話だ。大型店舗はしばらくは我が世をおう歌するであろうが、時代はどんどん変わっていく。

 流通業界の変革は激しい。それと共に市場のありかたも変化していくであろう。小池都知事は、”築地は守る・豊洲を活かす”と宣言したが、20~30年後の時代にふさわしい市場がどうあるべきか、誰も分かっていない。

 現在ある築地市場の機能をそのまま豊洲に移転すれば、やがてじり貧状態に陥るのは確実である。将来、築地は食のテーマパーク、豊洲は総合物流拠点にするとしているが、その具体的な構想は示されていない。

 それを示せば、必ず反対意見が出される。構想を示さないのは、皆に勝手な夢を見させるためであり、明日に迫った都議会選挙対策であろうが、20~30年後の理想的な姿を描けないのが本当の所であろう。2017.07.01(犬賀 大好-351)