日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

北朝鮮に対する各国の対応のチグハグさは金正恩を利する

2017年07月12日 09時28分38秒 | 日々雑感
 ティラーソン米国務長官は6月27日、北朝鮮について「強制労働によって違法な収入源をつくり出している」と批判したそうだ。これは、人権侵害に対する非難より、この資金が核開発に利用されていることへの批判であろう。

 米国は北朝鮮に対し、これまで様々な軍事的な圧力をかけたが、一向に効果を上げていない。米国の狙いは、北朝鮮の非核化であるが、北朝鮮にその動きは全く見られない。

 米国政府は中国に影響を行使するよう迫っているが、中国は北朝鮮の崩壊は望む所で無く、本気に制裁を科しているとは思えない。中国は、北朝鮮と米国の対話が必要だと言って更なる制裁を避けているが、米国は核放棄が前提で無ければ交渉はしないとの方針だ。

 しかし、米政権は北朝鮮への圧力強化とともに対話の可能性も探り、核・ミサイル問題の本格交渉につなげようとしていたようでもある。だが、観光目的で北朝鮮を訪れていた米国人大学生が拘束され、その後昏睡状態で解放されたが、結局死亡したため、北朝鮮との対話の可能性は遠のいたとのことである。

 米国は、北朝鮮に軍事的な圧力のみをかけていると思っていたが、一方では対話の可能性も探っていたのだ。拘束されていた学生の死によって、対話は遠のいたかも知れないが、何処かで誰かはきっと探っているに違いない。国の外交には常にそんな側面もあるのだろう。

 一方、北朝鮮の朝鮮中央通信は6月21日付の記事で中国を批判した。「北朝鮮に対する経済制裁に固執するならば、北朝鮮との関係に破局的な結果を及ぼすと覚悟をしておかなければならない」と、明らかに中国を念頭に置いた批判をした。 

 更に、北朝鮮政府高官が昨秋に協議した米政府元高官に対して、核・ミサイル協議に関して中国を関与させないことを求めていることが分かったとの報道が、6月24日にあった。

 中国と北朝鮮の関係は悪化の一途をたどっているようだ。血の同盟の関係にひびが入るばかりか、対立状態となっているとすら言える。先日、北朝鮮問題の専門家である中国の沈志華氏は、中国の対北朝鮮政策が劇的に変化する可能性が高まっていると指摘している。

 中国はこれまで通りの言うがままに従う北朝鮮を希望するのであろうが、金正恩氏は中国からの独立も考えているに違いない。何しろ朝鮮半島は歴史的にずーっと中国の属国であり、屈辱を味わってきたに違いない。

 トランプ大統領と文在寅韓国大統領の首脳会談が、6月30日行われ北朝鮮に対し、圧力の必要性では一致したと両国の友好関係を強調した声明であったが、友好状態であることを誇張した演出であったとの論調が強い。具体的な対策に関しては相違点が多々あるとのことである。

 文政権は、「北朝鮮が核・ミサイルの追加挑発を中断すれば、北朝鮮と条件なしに対話を行うことができる」、「制裁、対話などあらゆる手段を活用した段階的な非核化構想」と南北対話再開を重視し、金正恩が例外的に対外交流を積極的に進めるスポーツ分野を入り口に、北朝鮮政権との接触を図ろうと、平昌で開催される冬季オリンピックの共催等を提案している。

 しかし、7月4日の米独立記念日にタイミングを合わせたミサイル発射によって、北朝鮮の金正恩は、北朝鮮のICBM発射はあり得ないとしたドナルド・トランプ米大統領の面子をつぶし、文在寅氏のラブコールを一蹴した。

 北朝鮮に対する対応は各国まちまちであり、現段階では世界を敵に回した金正恩氏の一方的な勝利であり、この余勢をかって小型核爆弾の実験に突き進むのではないかと懸念される。それが成功すると、世界は核保有国として認めざるを得なくなるだろう。

 トランプ氏は米国内ばかりでなく、世界の信用も失っている。トランプ氏に残された道は、北朝鮮問題の解決である。北朝鮮が核実験を行った場合、一発逆転ホームランを狙い、一か八かの勝負に出るのではないかと懸念する。

 また、中国は金正男氏の息子、金漢率氏をどこかに匿っていると思われる。氏は北朝鮮では金正男氏と並ぶ正統な体制承継者と見なされ得るため、金正恩を排し、傀儡政権の樹立を企んでいると憶測する。これが中国が考える一発逆転ホームランである。2017.07.12(犬賀 大好-354)