日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

新型コロナウイルス用ワクチンの人体実験

2020年09月23日 08時43分32秒 | 日々雑感
 新型コロナウイルス用のワクチンを開発中の欧米の製薬会社9社は、9月8日、安全を最優先するとの共同声明を発表した。また、効果が確認されるまでは当局に承認を求めないことも申し合わせた。

 米国では臨床試験終了を待たずに緊急的な接種を認めることが政府内で検討されており、業界側から政治的な動きに釘を刺したのだ。これはトランプ大統領が11月の大統領選挙を前に実績を焦っているが、中国やロシアのように大統領のごり押しがあっても企業は耳を貸さないだろう。

 トランプ氏は米ファイザーなど3社のワクチン開発が順調に進んでいると指摘したうえで、まもなく承認を発表できるだろう、と語り、今年末までに1億回分を生産して希望者への接種を始め、来年4月までに希望者全員が接種できる状態になると主張している。

 製薬会社トップによる共同声明を出したのは、英アストラゼネカ、米ファイザー、仏サノフィなどであり、これらの企業は一方では激しい開発競争を繰り広げているが、ここで大統領に安易に妥協すれば、国民の信頼を一気に失うであろう。

 共同声明では、(1)安全と接種する人の健康を最優先する(2)科学と倫理の高い基準を維持して臨床試験や製造をする(3)最終的な試験を終えて安全と効果が確認された場合にのみ当局に承認を求める(4)グローバルな供給体制を整える――ことを確認した。

 最近、スペインや英国で感染拡大が再び起きているようだが、どの国の政府もワクチンを少しでも早く入手したいとワクチンメーカに圧力を掛けるであろうし、企業も世界で初の開発成功に名声を獲得し、また莫大な儲けも約束されるであろうので、各メーカは抜け駆けしたい所であろうが、共同声明は一定の歯止めとなるだろう。

 トランプ大統領の楽観的な予測に対し、米疾病対策センター(CDC)の所長は議会公聴会で、ワクチンが米国人に一般的に接種可能になるのはおそらく来年の第2四半期(4~6月)の後半から第3四半期(7~9月期)になるだろう、との見通しを示した。

 トランプ氏はそれでも強気の姿勢を崩さないが、大統領選の他、ロシアや中国の動きも背景にある。ワクチンの開発には3段階に亘る臨床試験の必要であり、特に最終の臨床試験は、効果、安全性、副作用など 幅広く調査する必要がある。新型コロナウイルスの特性が大分分かってきたと言えども、若者の感染者に無症状が多い理由など、未知の部分も多い。

 ロシアは、国立研究所が開発した新型コロナウイルス感染症のワクチンについて、最終段階の臨床試験が終了して効果が証明されるのを待たず、接種を開始する計画だそうだ。

 中国のカンシノ・バイオロジクスが開発しているワクチンは、中国では軍事使用が承認されており、同社が大規模な臨床試験を完了する前に複数の国で緊急承認を得るための協議を行っていると報じられた。

 ロシアや中国は欧米に先んじようと開発を焦っているようで、十分な安全性が確認される前に、接種を始めるつもりのようだ。接種が自国内で留まっておればまだしも、感染防止を渇望する開発途上国で行うとは、戦時中捕虜に行われていた人体実験を思い出す。2020.09.23(犬賀 大好-637)