日本商工会議所は、今年7月18日から24日間、全国の中小企業を対象にアンケートを行い、3120社から回答を得た。それによると人手が ”不足している”と回答した企業が68%と前回の2月より3.7ポイント増え、2015年の調査開始以来過去最悪となったそうだ。この調査によるまでもなく、介護・看護、宿泊・飲食、運輸、建設の各業種で人手不足が深刻になっているとの話はよく耳にする。
現在の日本は「人口減少」と「超高齢化社会」という2つの深刻な問題を抱えている。中でも、物流業界では2024年問題として深刻になっていることは以前から指摘されている。これは、働き方改革関連法によって来年2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されるからだ。労働人口の減少に伴う人材不足で長時間労働が常態化している現状を改善しよう言う訳だ。これにより労働環境は改善されるかも知れないが人材不足は相変わらずだし、物流コストが大幅に上昇するだけでなく、一部で貨物が運べなくなる事態が発生すると懸念されている。近年ネット通販が益々盛んになっているが、頼めば翌日配達等の便利さも無くなる恐れが出てくる。
トラックドライバーだけではなく、バスの運転手やタクシーの運転手不足の話題もしばしばマスコミに取り上げられる。タクシー会社にドライバーがいない為遊んでいる車が沢山あるとか、外国人の運転手が働き始めたとか。また、バス路線の廃止や運転間隔を長くして運転手を減らしている等の話題である。
先述の日本商工会議所の調査でも、人材確保への取り組みの為全体の72.5%の中小企業が賃金引き上げを、2割未満と少数ながらフレックスタイム制やテレワークといった多様で柔軟な働き方を推進しているが、人手不足は日本全体の問題であり、これらの工夫だけでは問題の解決とはならない。自動車の自動運転も話題にはなるが、当面解決策にはならない。
日本の人口減少は今に始まったことではないが、岸田首相も人口を増やす必要性を待った無しの問題として認識しているようだが、日本の抱える課題は少子化対策だけではない。借金大国日本の財政問題、脱炭素等の気候変動対策、核廃棄物の処理法等の原子力政策、生成AI等のIT対策、ジェンダーフリー等枚挙に暇がない上、これらの問題は複雑に絡み合っているため、解決は容易でない。
岸田首相は、先日の総合経済対策で、1)物価高から国民生活を守る、2)持続的賃上げ、所得向上と地方の成長、3)成長力につながる国内投資促進、4)人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革、5)国土強靭化など国民の安心・安全、を5本柱にする説明をした。しかし、これらの項目は抽象的で具体策は全く分からない。この内一つでも解決されれば内閣支持率は上がり、この秋にでもあると言われる総選挙に勝てるかも知れないが期待薄だ。2023.10.01(犬賀 大好ー950)
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