東京オリンピックの聖火リレーが3月25日に始まった。菅首相は、福島県のサッカー施設で行われる聖火リレー出発式典を欠席したが、現在コロナウイルスの感染が再拡大する兆候が全国各地に見られ、五輪に浮かれている場合ではないとの世論を懸念しての判断であろう。
しかし、文書で五輪について”人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会として、安全・安心な大会を実現するという決意は変わっていない”と改めて開催を強調したそうだが、そもそも聖火リレーは何のために行うのであろうか。
首相も”広く日本中の皆様に大会が近づいていることを実感していただく貴重な機会として、聖火が全国を巡ることを期待している”と言っているように、全国各地を巡業することにより国民のオリンピック開催ムードを盛り上げる起爆剤としたいためであろう。
実際有名人の登場するリレーには、大勢の観客が蜜状態に集まり、コロナ感染が心配される程である。余りに多くの人が集まった場合、その場のリレーをスキップするとの主催者の発表であるが、主催者としては五輪の起爆剤とするためには多くの人が集まった方が良いに決まっている。
スキップの例は未だ聞かれない。マスクをしている人々が蜜状態に集まってもお互いに会話が無ければ感染リスクもそれほど高くならないとの判断かも知れないが、問題は気の緩みである。主催者がこの蜜状態を容認すれば、それをテレビ等で見る人は当然この程度のことかと思い、影響が感染リスクの高い飲食関連にまで及び、感染拡大は全国に及ぶであろう。
さて、東京五輪の開催に対する世論は、3月22日の朝日新聞の調査では、「今年の夏に開催する」は27%、「再び延期する」が36%、「中止する」が33%だったそうだ。今夏開催希望は1月調査11%→2月調査21%→3月調査27%と徐々に増えているが、聖火の全国リレーの効果で賛成者が爆発的に増えるようには思えない。
大手マスコミは、連日聖火リレーの様子を放映するが、リレーの全体像に関してはほとんど触れていない。ネットには、初日の25日に沿道で目にしたのはランナーより目立つスポンサー車両によるお祭り騒ぎだったとのニュースもある。
リレーを先導する宣伝車両は早歩きくらいのスピードでのろのろ進む。その周りで、マスクを着用した10人ほどのスタッフがダンスを披露する等してお祭り気分を盛り上げている。この日、リレーの沿道での印象は「商業五輪」「スポンサーファースト」だったそうだ。
聖火リレーそれ自体が多額の協賛を受けた広告イベントだからやめるわけにいかないであろうが、リレー後の組織委の会見で「これが復興五輪、ウィズコロナにふさわしい演出なのか」との質問に対し、中村大会開催総括は「そういった意見を地元と相談して、みんなにとって良い聖火リレーにしたい」と淡々と答えたそうだが、恐らく大幅な変更はないだろう。
今朝も主要なニュースは、聖火リレーとコロナ感染拡大の相矛盾する話題だ。菅首相の悩みは尽きない。2021.03.31(犬賀 大好ー690)
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