菅首相は第204回国会での施政方針演説の中で、”我が国の長年の課題に答え”と題する項目の中で、デジタル社会やグリーン社会の実現を掲げた。このような社会の到来は世界の大きな流れでもあり、遅きに失した感もするがまずは始めることが肝心だ。
デジタル社会の実現では新たにデジタル庁を立ち上げ、これまで行政機関が保有する法人などの登録データを整備し、デジタル社会の形成に不可欠なデータ利活用を進めるとしたが、鳴り物入りで始めたマイナンバーカードの普及も覚束なく、世界の先端から一周あるいは二周遅れの感もするが、少しでも遅れを取り戻すべく頑張ってもらいたいものだ。
ところで、次世代に向けた6G等の通信技術、人工知能(AI)等は、米国のみならず中国も国を挙げて推し進めており、日本も相当の覚悟で進めなければ遅れは大きくなるばかりだ。
グリーン社会の実現では、2050年温室効果ガス排出実質ゼロを宣言したが具体的手法は全く見えていない。次世代太陽光発電、低コストの蓄電池、カーボンリサイクルの他、水素や、洋上風力等の再生可能エネルギーが項目として挙がっているが、日本は個々の要素技術では世界をリードできる可能性があるが、それらを纏めるシステム化力が弱く他国に先導される恐れは充分にある。
デジタル社会やグリーン社会は目的がはっきりしており、そこで必要となる技術もほぼ明確になっている。しかし、科学技術立国の底辺にあるのは目的が明確ではない基礎科学である。
歴代のノーベル賞を受賞した人たちが指摘しているのは、日本の大学の地盤低下である。例えば大学院の博士課程を修了した後、任期付きの職に就いているポスドクと称する研究員は、ポスドクの主な就職先となる大学や研究機関のポストは増えず、このような状況では博士課程に進みたい人間は減る一方であり、当然研究力も低下する。
菅首相も科学技術立国・日本にとって、20年近くも続く研究力の低迷は、国の将来を左右する深刻な事態であると認識し、今後5年間の目標として、政府の研究開発予算を30兆円、官民の研究開発費の総額を120兆円とし、博士課程学生の支援を拡大し、未来を担う若手研究者を育成するとしているが、具体的な内容は不明だ。
中国が2008年から始めた”千人計画”は外国で活躍する研究者を国籍を問わず集める国家プロジェクトだそうだ。約10年で中国系を中心に約8千人が対象となったそうで、日本からの参加者もいるそうだが、日本でも同様に世界から人材を集めることが出来るであろうか。
資源の少ない日本は科学技術立国しか生きる道は無い。中国の科学技術強国政策に立ち向かうためには資金面の充実等、国を挙げて対策を講じなくてはならないが、このためには資金は当然であるが、4月の入学制度等、大学の運営に関することも多々あり、一つ一つ解決していかなくてはならない。2021.03.13(犬賀 大好ー685)
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